桂木弥子の世にも不幸せな物語 ◆ROYAL9uibY
桂木弥子は思い出す。
あの体育館での惨劇を、思い出す。
あの体育館での惨劇を、思い出す。
「あんまりだよ……こんなのってないよ……」
目の前で少女が死んだ。
頭を爆破され、死んだ。
知らない子ではあったが、そんなものは関係なかった。
一人の人間が、一つの命が、その生涯を閉じたのだ。
なんとも言えない空虚な気持ちが、桂木弥子の心を満たしていた。
頭を爆破され、死んだ。
知らない子ではあったが、そんなものは関係なかった。
一人の人間が、一つの命が、その生涯を閉じたのだ。
なんとも言えない空虚な気持ちが、桂木弥子の心を満たしていた。
「………………」
何分経過しただろうか。
「……何やってんのよ私は!」
ばしっ、と自分の頬を叩き喝を入れる。
いつまでも悲しみに暮れていては、立ち止まっていては、先刻のように人の死に何もできないまま終わってしまう。
それでは駄目だと弥子は自分に言い聞かせた。
まずは人を探そう。
ネウロと、そして平戸ロイヤルについて何か知っているらしい黒神めだかという女性。
他にも仲間になってくれそうな人を探しに行こう。
体育館に集まった人達を見て思ったが、一般人らしき人が大半だった。
頭の爆弾は確かに怖いが、電子ドラッグで操られているわけでもあるまいし、
普通の人がそう簡単に人殺しなどという重い犯罪に走るとは思えない。
いつまでも悲しみに暮れていては、立ち止まっていては、先刻のように人の死に何もできないまま終わってしまう。
それでは駄目だと弥子は自分に言い聞かせた。
まずは人を探そう。
ネウロと、そして平戸ロイヤルについて何か知っているらしい黒神めだかという女性。
他にも仲間になってくれそうな人を探しに行こう。
体育館に集まった人達を見て思ったが、一般人らしき人が大半だった。
頭の爆弾は確かに怖いが、電子ドラッグで操られているわけでもあるまいし、
普通の人がそう簡単に人殺しなどという重い犯罪に走るとは思えない。
弥子の行動指針は決まった。
あとは行動を開始するばかりである。
あとは行動を開始するばかりである。
「………………」
しかし、弥子は動けない。
高所のため、強い風が弥子の肌の上を吹き抜けている。
足元は瓦。
頭上は満天の星空。
高所のため、強い風が弥子の肌の上を吹き抜けている。
足元は瓦。
頭上は満天の星空。
「………………」
日本式の城。
その天守閣の屋根の上に弥子は居た。
その天守閣の屋根の上に弥子は居た。
「ここからどうしろって言うのよ……」
弥子が立っているのは城の最上部。その斜面だ。
辺りを見渡すが闇しか広がっておらず、遠くに見える明りから、
自分の居る場所が落ちれば一溜まりも無い高所であることを知ることができた。
辺りを見渡すが闇しか広がっておらず、遠くに見える明りから、
自分の居る場所が落ちれば一溜まりも無い高所であることを知ることができた。
「……デイバッグの中身を確認しよう」
いつの間にか背負わされていたデイバッグを肩から降ろし手前に移動させ、中に何があるのかを確認しようと開ける。
すると、中から杖棒状の何かが突き出し、弥子の眉間を正確に打ち抜いた。
すると、中から杖棒状の何かが突き出し、弥子の眉間を正確に打ち抜いた。
「痛っ!」
「ファースナー!」
次いで飛び出る謎の生物。
その姿はぬいぐるみのようだ。
体色は薄い赤。
顔を縦に走るものが一つ。首周りに一つ。合計二つのファスナーが付いている。
その姿はぬいぐるみのようだ。
体色は薄い赤。
顔を縦に走るものが一つ。首周りに一つ。合計二つのファスナーが付いている。
鎌のような細い手足を持つその生物(?)は、弥子が取り落としたデイバッグの上に二足で降り立った。
弥子の額を突いた棒は、細い両手で挟むように持っている。
弥子の額を突いた棒は、細い両手で挟むように持っている。
「ファシュ?」
そこで怪生物は気付いた。
周りの景色が動いている。否、自分の方が動いている。
斜面に落ちたデイバッグに降り立ってしまったことで、瓦の上を滑り始めてしまったのだ。
周りの景色が動いている。否、自分の方が動いている。
斜面に落ちたデイバッグに降り立ってしまったことで、瓦の上を滑り始めてしまったのだ。
「ファスナー!?」
時すでに遅し。
ファスナーの体はデイバッグと一緒に屋根の縁から飛び出していた。
デイバッグを蹴って屋根に戻ろうにも、デイバッグが先に重力に引かれてしまっていて足から離れていた。
ファスナーの足は空を蹴る。
ファスナーの体はデイバッグと一緒に屋根の縁から飛び出していた。
デイバッグを蹴って屋根に戻ろうにも、デイバッグが先に重力に引かれてしまっていて足から離れていた。
ファスナーの足は空を蹴る。
「ファ、スナー!」
しかしファスナーは諦めない。
手に持った棒を屋根の縁に引っかけ、なんとか落下を免れようと試みる。
だが、届かない。
棒と屋根の縁までの距離は数センチだったが、その数センチの距離が遠い。
手に持った棒を屋根の縁に引っかけ、なんとか落下を免れようと試みる。
だが、届かない。
棒と屋根の縁までの距離は数センチだったが、その数センチの距離が遠い。
ファスナーと屋根との距離は加速度的に離れている。
その距離が縮まることはもうない。
その距離が縮まることはもうない。
「危ない!」
そんなファスナーに手を伸ばす人影があった。
桂木弥子だ。
ファスナーが滑り落ちていくのを見て、弥子は駆けだしていた。
もう命が失われるのは嫌だった。
何もできないまま終わってしまうのが嫌だった。
桂木弥子だ。
ファスナーが滑り落ちていくのを見て、弥子は駆けだしていた。
もう命が失われるのは嫌だった。
何もできないまま終わってしまうのが嫌だった。
初めて見る生物かどうかも怪しい何かだし、出会い頭に額を突かれるというとても良好とは言い難い出会いではあった。
でも、気付けば弥子の体は自然と動いていた。
瓦の上を走るのは怖かったが、しっかりと作られているらしく瓦が外れる様子はなかった。
屋根を駆け下りた弥子は、ぎりぎりの所で右腕を伸ばす。
そして、その手がファスナーの持つ棒の先端を力強く握った。
でも、気付けば弥子の体は自然と動いていた。
瓦の上を走るのは怖かったが、しっかりと作られているらしく瓦が外れる様子はなかった。
屋根を駆け下りた弥子は、ぎりぎりの所で右腕を伸ばす。
そして、その手がファスナーの持つ棒の先端を力強く握った。
「ファスナー……」
ファスナーの目には安堵と感謝の念が浮かんでいるように見えた。
弥子とファスナー。
二人の目と目がお互いを見つめていた。
弥子とファスナー。
二人の目と目がお互いを見つめていた。
その時、不思議な事が起こった。
「「ファス?」」
疑問の声が二人から上がる。
ファスナーは「ファスナー」しか言えないから仕方がないとして、桂木弥子は「え?」と声を発したつもりだった。
なのに「ファス?」などという鳴き声とも言える奇妙な声が出てきたのは何故か。
ファスナーは「ファスナー」しか言えないから仕方がないとして、桂木弥子は「え?」と声を発したつもりだった。
なのに「ファス?」などという鳴き声とも言える奇妙な声が出てきたのは何故か。
その答えは目の前に存在していた。
弥子の目の前。
そこには棒を持った『ファスナー』の姿があるはずである。
しかし、彼女の目の前に居るのは『桂木弥子』だ。
桂木弥子の目の前には、棒を両手で挟んだ『桂木弥子』の姿があった。
それで口から疑問の声が出たのだが、その声は『ファスナー』の鳴き声だった。
中空で棒を挟む『桂木弥子』も不思議そうな顔をしている。
まるで自分と同じ感情を抱いているようだ。
『目の前に何故自分の姿があるのか』と、疑問に思っている表情だ。
弥子の目の前。
そこには棒を持った『ファスナー』の姿があるはずである。
しかし、彼女の目の前に居るのは『桂木弥子』だ。
桂木弥子の目の前には、棒を両手で挟んだ『桂木弥子』の姿があった。
それで口から疑問の声が出たのだが、その声は『ファスナー』の鳴き声だった。
中空で棒を挟む『桂木弥子』も不思議そうな顔をしている。
まるで自分と同じ感情を抱いているようだ。
『目の前に何故自分の姿があるのか』と、疑問に思っている表情だ。
弥子の視界に細い腕が映った。
ファスナーを救うために、棒を握り締めた右腕だ。
その右腕は今、人間の腕ではなくなっている。
黒く、固く、細い。
まるで鎌のような腕が弥子の視界に映っていた。
ファスナーを救うために、棒を握り締めた右腕だ。
その右腕は今、人間の腕ではなくなっている。
黒く、固く、細い。
まるで鎌のような腕が弥子の視界に映っていた。
弥子はその腕に見覚えがあった。
自分が助けようとしたぬいぐるものような生き物の腕だ。
それが自分の視界に映っている。
まるで自分の腕のように、前方に向かって伸びている。
自分が助けようとしたぬいぐるものような生き物の腕だ。
それが自分の視界に映っている。
まるで自分の腕のように、前方に向かって伸びている。
目の前にある自分の姿。
自分から発せられたおかしな鳴き声。
そして、自分の腕のように視界に映っているファスナーの腕。
これらの疑問は、『桂木弥子』と『ファスナー』の体が入れ換わったと言うとんでもない答えで解決する。
自分から発せられたおかしな鳴き声。
そして、自分の腕のように視界に映っているファスナーの腕。
これらの疑問は、『桂木弥子』と『ファスナー』の体が入れ換わったと言うとんでもない答えで解決する。
その『とんでもない答え』に至った弥子は気付く。
さっきまで自分は、ファスナーを助けようと右腕を伸ばし、棒を握っていた。
だがそれはついさっきまでの話だ。
今の彼女の腕には指が無い。
細く鋭利な、鎌のような手だ。
そんな手を使って、どうやって棒を握ればいいのだろうか。
さっきまで自分は、ファスナーを助けようと右腕を伸ばし、棒を握っていた。
だがそれはついさっきまでの話だ。
今の彼女の腕には指が無い。
細く鋭利な、鎌のような手だ。
そんな手を使って、どうやって棒を握ればいいのだろうか。
「ファス!!」
急いで両手を使い目の前の棒を掴もうとする。
ファスナーが両手で挟んで棒を持っていたように。
しかし、弥子が両腕を伸ばした時には、棒はその鎌のような腕を滑り落ち、すでに届かぬ存在へと移行した後だった。
ファスナーが両手で挟んで棒を持っていたように。
しかし、弥子が両腕を伸ばした時には、棒はその鎌のような腕を滑り落ち、すでに届かぬ存在へと移行した後だった。
(あ………)
目の前にあった『桂木弥子の体』は、重力に引かれて屋根の陰に隠れてしまった。
「ファシュナー!!」
叫び声が聞こえる。
その声は確かに『桂木弥子』の声だったが、声の発生源は屋根の下だ。
その声は確かに『桂木弥子』の声だったが、声の発生源は屋根の下だ。
米俵を落としたような音と共に、叫び声が途切れた。
次いで、瓦の上を『何か』が滑る音がする。
がらがらというその音が聞こえなくなると、がっ、ごっ、と『何か』が落ちる音が続き、最後に数秒の間を置いてから、
陶器が割れるような音がした。
次いで、瓦の上を『何か』が滑る音がする。
がらがらというその音が聞こえなくなると、がっ、ごっ、と『何か』が落ちる音が続き、最後に数秒の間を置いてから、
陶器が割れるような音がした。
弥子の頭が真っ白になる。
自分の腕を見る。
鎌のような細い腕だ。
人間のものではない。
自分の腕を見る。
鎌のような細い腕だ。
人間のものではない。
体を見る。
薄い赤色をした、ぬいぐるみのような体だ。
薄い赤色をした、ぬいぐるみのような体だ。
視線をさらに落とすと足も細い。
立っているのに屋根との距離が異様に近い。
目と屋根との距離は、二頭身ほどしかなかった。
立っているのに屋根との距離が異様に近い。
目と屋根との距離は、二頭身ほどしかなかった。
(いや……)
少し考えればわかることだ。
自分とファスナーの体は入れ替わった。
そしてその入れ替わった自分の体は屋根から落ちた。
ここは相当の高所。
何度か他の屋根に落ちたらしかったが、最後は落ちるのに三秒程の時間を要していた。
人が死ぬには、十分な高さだった。
自分とファスナーの体は入れ替わった。
そしてその入れ替わった自分の体は屋根から落ちた。
ここは相当の高所。
何度か他の屋根に落ちたらしかったが、最後は落ちるのに三秒程の時間を要していた。
人が死ぬには、十分な高さだった。
(いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)
悲鳴は鳴き声となって空気を震わせた。
その『鳴き声』を聞くのがいやで、すぐに声を発するのを止める。
彼女の頭はパニックに陥っていた。
自分の体が入れ換わった原因がわからない。
自分の体が落ちたのを認めたくない。
彼女は心の中で慟哭を上げる。
その『鳴き声』を聞くのがいやで、すぐに声を発するのを止める。
彼女の頭はパニックに陥っていた。
自分の体が入れ換わった原因がわからない。
自分の体が落ちたのを認めたくない。
彼女は心の中で慟哭を上げる。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
気付けば、弥子の目の前には『桂木弥子の死体』があった。
頭はぱっくりと割れ、中身が少しだけはみ出している。
頭の周りには、小さな血溜まりができていた。
腕や脚がおかしな方向に曲がっている気がする。
曲がってはいけない場所で曲がり、曲がってはいけない方向に曲がっている。
頭はぱっくりと割れ、中身が少しだけはみ出している。
頭の周りには、小さな血溜まりができていた。
腕や脚がおかしな方向に曲がっている気がする。
曲がってはいけない場所で曲がり、曲がってはいけない方向に曲がっている。
足元は瓦屋根から、グラウンドのように硬い地面に変わっていた。
いつの間に移動したのだろうか。
あまり覚えていない。
思い出す気にもならない。
体に異常がないということは、屋根から降りても平気だったのだろう。
これなら助けに行かなくても良かったのではないか、と一瞬だけ考えてしまったが、すぐにその考えを振り払う。
命を助けることに後悔するなど、やって良いことではない。
もしかしたら破風側にある格子の隙間から中に入って降りてきたのかもしれないし、
一つ下の屋根に降りてから天守閣に入ってここまで来たのかもしれない。
いつの間に移動したのだろうか。
あまり覚えていない。
思い出す気にもならない。
体に異常がないということは、屋根から降りても平気だったのだろう。
これなら助けに行かなくても良かったのではないか、と一瞬だけ考えてしまったが、すぐにその考えを振り払う。
命を助けることに後悔するなど、やって良いことではない。
もしかしたら破風側にある格子の隙間から中に入って降りてきたのかもしれないし、
一つ下の屋根に降りてから天守閣に入ってここまで来たのかもしれない。
弥子はしばらくぼうっと自分の死体を眺めた後、ふらふらと近付き死体を調べた。
心臓は止まり、脈はない。
生きていないことの確認を終えた後、またしばらくの間弥子の動きが止まる。
心臓は止まり、脈はない。
生きていないことの確認を終えた後、またしばらくの間弥子の動きが止まる。
十分程経っただろうか。
弥子が活動を再開した。
人間ではないファスナーの体が動かしにくいのか、それとも精神的に参っているせいなのか。
まるで幽鬼のような足取りで、近くに落ちていたデイバッグへと歩を進める。
弥子が活動を再開した。
人間ではないファスナーの体が動かしにくいのか、それとも精神的に参っているせいなのか。
まるで幽鬼のような足取りで、近くに落ちていたデイバッグへと歩を進める。
デイバッグの許に辿りついた弥子は、その中身を確認する。
ルールブックや支給品を確認し、自分に何が起こったのか。いや、何が起こったのかはわかっている。
どうして体が入れ換わったのか。その理由を理解した。
ルールブックや支給品を確認し、自分に何が起こったのか。いや、何が起こったのかはわかっている。
どうして体が入れ換わったのか。その理由を理解した。
支給品の一つ。正確には二つ。
『ファスナー』と『トッカエ・バー』が原因だった。
『ファスナー』と『トッカエ・バー』が原因だった。
『ファスナー』は生物だ。
知能も高く、感情もあるらしい。
知能も高く、感情もあるらしい。
そして、ひみつ道具と呼ばれる超科学の産物、『トッカエ・バー』。
この棒の形をした道具は、両端を二人の人物が持った時にその効果を発揮する。
両端を握った者同士の心をそのままにして、肉体のみを入れ替えるのだ。
結果、ファスナーと弥子の肉体は入れ替わり、このような惨事が起こってしまった。
この棒の形をした道具は、両端を二人の人物が持った時にその効果を発揮する。
両端を握った者同士の心をそのままにして、肉体のみを入れ替えるのだ。
結果、ファスナーと弥子の肉体は入れ替わり、このような惨事が起こってしまった。
自分の死体を自分で見ている。
他人の死を見た時とは違った、空虚な、まるで夢でも見ているような気持ちになった。
トッカエ・バーを再び使用したとして、戻るのは自分の死体なのだろうか。それとも傷までは入れ換わらないのだろうか。
多分、前者だろう。
そんな気がした。
それに、心を亡くした死体に使っても有効なのかも疑問だ。
仮に有効だとしても、それが自分の体だとしても、試しに使う気にはなれなかった。
他人の死を見た時とは違った、空虚な、まるで夢でも見ているような気持ちになった。
トッカエ・バーを再び使用したとして、戻るのは自分の死体なのだろうか。それとも傷までは入れ換わらないのだろうか。
多分、前者だろう。
そんな気がした。
それに、心を亡くした死体に使っても有効なのかも疑問だ。
仮に有効だとしても、それが自分の体だとしても、試しに使う気にはなれなかった。
これからどうすべきか。
殺し合いに乗って自分の体を元に戻してもらう?
そんなことはできない。
他人を殺してまで叶えたい願いなどない。あって良いはずがない。
殺し合いに乗って自分の体を元に戻してもらう?
そんなことはできない。
他人を殺してまで叶えたい願いなどない。あって良いはずがない。
「ファス……」
他者と接触を図りたかったが、人語を話せないのが痛かった。
地面に文字は書けるが、体が入れ換わった事など信じてくれるだろうか。
一応、トッカエ・バーの実物と説明書がある。
ネウロならばすぐに自分だと見抜いてくれそうな気がするが、他の人に信じてもらえるかはわからない。
地面に文字は書けるが、体が入れ換わった事など信じてくれるだろうか。
一応、トッカエ・バーの実物と説明書がある。
ネウロならばすぐに自分だと見抜いてくれそうな気がするが、他の人に信じてもらえるかはわからない。
「ファスナー……」
自分のものではない自分の声。
心の中が悲しみで満たされる。
視界が涙でぼやける。
涙が出るということは、やはりファスナーは生物らしい。だが、そんなことを考える余裕は弥子にはなかった。
心の中が悲しみで満たされる。
視界が涙でぼやける。
涙が出るということは、やはりファスナーは生物らしい。だが、そんなことを考える余裕は弥子にはなかった。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
一しきり泣いた後、弥子は自分の死体をデイバッグの中へと仕舞った。
このまま放置することはできなかった。
死体を入れたデイバッグの重さは変わらない。
持ちあげて移動するのは簡単にできる。
このまま放置することはできなかった。
死体を入れたデイバッグの重さは変わらない。
持ちあげて移動するのは簡単にできる。
これからどうするのか。
答えを出さなければならない問題が、再び持ち上がる。
病院へ向かおうかとも思うが、死体を生き返らせる医療技術など聞いたことがない。
病院に行ったところで、死体は死体のままだろう。
病院へ向かおうかとも思うが、死体を生き返らせる医療技術など聞いたことがない。
病院に行ったところで、死体は死体のままだろう。
(ネウロ……)
やはり、ここはネウロを探すしかないと弥子は思った。
名簿にある知っている名前は『脳噛ネウロ』、『X』、『アイ』、『黒神めだか』の四つ。
名簿にある知っている名前は『脳噛ネウロ』、『X』、『アイ』、『黒神めだか』の四つ。
『X』。
怪物強盗と呼ばれる彼とは話し合いができるかどうかわからない。
仲間ではないし、むしろ敵対している関係だ。
出会い頭に『箱』にされてもおかしくはないだろう。
怪物強盗と呼ばれる彼とは話し合いができるかどうかわからない。
仲間ではないし、むしろ敵対している関係だ。
出会い頭に『箱』にされてもおかしくはないだろう。
『アイ』。
Xの一番近くに居て、Xの身の回りの世話をしていた女性。
でも、この女性は殺された。
思い出したい思い出ではないけれど、シックスによって頭を撃ち抜かれたのを確かに見た。
多分同姓同名の……性格には同名の別人だろう。
『多分』、というのは、『桂木弥子』、『脳噛ネウロ』、『X』、『アイ』、と名簿に知り合い同士で連続して名前が載っているからだ。
……いや、死人が生き返るなどありえない。
同名の別人だ。
弥子はそう結論付けた。
もしかしたら、Xと同じくクローンなのかもと考えたが、馬鹿馬鹿しいと自分で一蹴した。
やはり、ネウロに頼るしかなさそうだった。
こんな状態で、頼れるのはネウロしか居なかった。
最初に集められた体育館で名探偵としてみんなの前に出されたのに、無駄になっちゃったな、と 少しだけ申し訳ない気持ちになった。
Xの一番近くに居て、Xの身の回りの世話をしていた女性。
でも、この女性は殺された。
思い出したい思い出ではないけれど、シックスによって頭を撃ち抜かれたのを確かに見た。
多分同姓同名の……性格には同名の別人だろう。
『多分』、というのは、『桂木弥子』、『脳噛ネウロ』、『X』、『アイ』、と名簿に知り合い同士で連続して名前が載っているからだ。
……いや、死人が生き返るなどありえない。
同名の別人だ。
弥子はそう結論付けた。
もしかしたら、Xと同じくクローンなのかもと考えたが、馬鹿馬鹿しいと自分で一蹴した。
やはり、ネウロに頼るしかなさそうだった。
こんな状態で、頼れるのはネウロしか居なかった。
最初に集められた体育館で名探偵としてみんなの前に出されたのに、無駄になっちゃったな、と 少しだけ申し訳ない気持ちになった。
(………あれ?)
そこで、違和感を覚えた。
名探偵として紹介された時の、紹介された者達の表情だ。
何かがおかしかった。
これでも『桂木弥子』は名の知れた探偵だ。
アヤ・エイジア事件を始めとして、
HALによる電子ドラッグの脅威や原子力空母乗っ取りも解決した今となっては、その知名度は世界規模となっている。
なのに、あのみんなの表情はなんなのだろうか。
今まで何度もネウロに名探偵として名乗らされてきたから、有名人になって町を歩くたびにたくさんの視線を浴びてきたから覚える違和感。
テレビの向こう側で知っていた有名人を前にした表情ではない。
知らない人を見るような、初めて知った人物を見るような。
そんな表情を『全員がしていた』。
名探偵として紹介された時の、紹介された者達の表情だ。
何かがおかしかった。
これでも『桂木弥子』は名の知れた探偵だ。
アヤ・エイジア事件を始めとして、
HALによる電子ドラッグの脅威や原子力空母乗っ取りも解決した今となっては、その知名度は世界規模となっている。
なのに、あのみんなの表情はなんなのだろうか。
今まで何度もネウロに名探偵として名乗らされてきたから、有名人になって町を歩くたびにたくさんの視線を浴びてきたから覚える違和感。
テレビの向こう側で知っていた有名人を前にした表情ではない。
知らない人を見るような、初めて知った人物を見るような。
そんな表情を『全員がしていた』。
(……………?)
疑問が起こったが、『名探偵桂木弥子』は消えてしまった。
今は頭が割れた状態でデイバッグの中に入っている。
もしくは、ファスナーの体で動いている。
今は頭が割れた状態でデイバッグの中に入っている。
もしくは、ファスナーの体で動いている。
これから、どうするか。
三度目の同じ問題。
ネウロを探す。
ネウロに会って、これまでの事を話す。
他の参加者に会ったら、コミュニケーションをとる。
桂木弥子だと信じてもらえるかはわからないけど、なんとかそのことを伝えてみる。
そして、ネウロの事を知らないか訊いてみる。
デイバッグの中身は見せられない。
怪しまれるのは当然だし、何より自分の死体を見せたくなかった。
それに、出会った人物が変装したXだった場合、中身が見たいと言って箱にされかねないというのもある。
それは嫌だ。自分の体がこれ以上壊れるのは見たくない。
ネウロを探す。
ネウロに会って、これまでの事を話す。
他の参加者に会ったら、コミュニケーションをとる。
桂木弥子だと信じてもらえるかはわからないけど、なんとかそのことを伝えてみる。
そして、ネウロの事を知らないか訊いてみる。
デイバッグの中身は見せられない。
怪しまれるのは当然だし、何より自分の死体を見せたくなかった。
それに、出会った人物が変装したXだった場合、中身が見たいと言って箱にされかねないというのもある。
それは嫌だ。自分の体がこれ以上壊れるのは見たくない。
「………ファス」
弥子はデイバッグを持ちあげた。
ここから移動し、ネウロを探すためだ。
城の中には誰もいなかった……と思う。
視線を移し、地面に染み込んだ血溜まりを見る。
そしてすぐに視線を逸らした。
ここに長居をしたくなかった。
早くこの場から離れてしまいたいと思った。
ここから移動し、ネウロを探すためだ。
城の中には誰もいなかった……と思う。
視線を移し、地面に染み込んだ血溜まりを見る。
そしてすぐに視線を逸らした。
ここに長居をしたくなかった。
早くこの場から離れてしまいたいと思った。
小さな影が月下の下を動いている。
デイバッグを両手で頭上に持ち上げ、とぼとぼと歩いている。
その影は次第に小さくなり、闇の中に溶けて見えなくなった。
残ったものは、小さな血溜まりの跡だけだ。
その跡も、月が雲に隠れて見えなくなった。
城の周りは、不気味な闇に包まれている。
デイバッグを両手で頭上に持ち上げ、とぼとぼと歩いている。
その影は次第に小さくなり、闇の中に溶けて見えなくなった。
残ったものは、小さな血溜まりの跡だけだ。
その跡も、月が雲に隠れて見えなくなった。
城の周りは、不気味な闇に包まれている。
【H-4 一日目・深夜】
※日本式の城の敷地内に桂木弥子の血による小さな血溜まりがあります。
地面に吸収されて跡になっています。
場所は石垣の近くです。
地面に吸収されて跡になっています。
場所は石垣の近くです。
【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【状態】 ファスナーの肉体。精神的に疲弊。
【装備】 デイバッグ
【持ち物】 基本支給品一式、トッカエ・バー@ドラえもん、桂木弥子の死体、不明支給品一つ。
【思考】
基本: ネウロを探す
1: ネウロを見つける。
2: 他の人に自分の死体は見せたくない。
3:
【備考】
※参戦時期はアイ死亡後のどこかです。
※ファスナーと肉体が入れ換わりました。
※頭の中に悪魔のような女性が存在するかもしれません。
※頭の中の爆弾も一緒に交換されたかもしれません。
※肉体が死亡したため、もしかしたら死亡扱いになったかもしれません。
※死体がレーダーに引っかかるのか、ファスナーとなった弥子自身が引っかかるのかは不明です。
※日本式の城内部を移動しましたが、あまり覚えていません。
【状態】 ファスナーの肉体。精神的に疲弊。
【装備】 デイバッグ
【持ち物】 基本支給品一式、トッカエ・バー@ドラえもん、桂木弥子の死体、不明支給品一つ。
【思考】
基本: ネウロを探す
1: ネウロを見つける。
2: 他の人に自分の死体は見せたくない。
3:
【備考】
※参戦時期はアイ死亡後のどこかです。
※ファスナーと肉体が入れ換わりました。
※頭の中に悪魔のような女性が存在するかもしれません。
※頭の中の爆弾も一緒に交換されたかもしれません。
※肉体が死亡したため、もしかしたら死亡扱いになったかもしれません。
※死体がレーダーに引っかかるのか、ファスナーとなった弥子自身が引っかかるのかは不明です。
※日本式の城内部を移動しましたが、あまり覚えていません。
【ファスナー@パンティ&ストッキングwithガーターベルト】
桂木弥子に支給された。
デイモン姉妹のペットというかマスコット的な立ち位置。
鳴き声は「ファスナー」。
チャックを目の敵にしている。
その鎌のような腕は鋭利で、切れ味は抜群。
車の運転もできる。
両手を閉じてから開くことで『kiiiiiiii』という文字を発生させ、刃物として使用できる。『k』は三つに分解可能なのかもしれない。
頭のファスナーを下げると生命活動が停止するが、戻せば生き返る。
首のファスナーを開けると双頭の龍となり、空を飛んだり翼で周囲を切り刻むことが可能。
頭の中には悪魔のような女性が住み着いている。
この女性はチャックの脳内に住む男性と知り合いらしい。
桂木弥子に支給された。
デイモン姉妹のペットというかマスコット的な立ち位置。
鳴き声は「ファスナー」。
チャックを目の敵にしている。
その鎌のような腕は鋭利で、切れ味は抜群。
車の運転もできる。
両手を閉じてから開くことで『kiiiiiiii』という文字を発生させ、刃物として使用できる。『k』は三つに分解可能なのかもしれない。
頭のファスナーを下げると生命活動が停止するが、戻せば生き返る。
首のファスナーを開けると双頭の龍となり、空を飛んだり翼で周囲を切り刻むことが可能。
頭の中には悪魔のような女性が住み着いている。
この女性はチャックの脳内に住む男性と知り合いらしい。
【トッカエ・バー@ドラえもん】
桂木弥子に支給された。
ドラえもんのひみつ道具の一つ。
棒状の道具。
二人の人物が棒の両端を各々持つと、心はそのままにお互いの肉体のみを入れ替える。
桂木弥子に支給された。
ドラえもんのひみつ道具の一つ。
棒状の道具。
二人の人物が棒の両端を各々持つと、心はそのままにお互いの肉体のみを入れ替える。
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ロイヤルボックス | 桂木弥子 | それが彼と彼女のa cappella |