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イモリの発生のメカニズム
最終更新:
bioota2010
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DATE:2010年05月20日、2011年05月20日
カエル(脊椎動物)の発生:カエルの「卵割→桑実胚→原腸胚→神経胚→尾芽胚→生体」の確認。そして、ウニ(無脊椎動物)とカエル(脊椎動物)の相違。
ところで、「なぜ、どの動物も(ウニもカエルもヒトも)発生の系は同じなのだろうか?」 これは、ホメオボックスの機能による。つまり、発生の諸プロセスを統御する遺伝子のパッケージは、多くの動物に共通している。
ところで、「なぜ、どの動物も(ウニもカエルもヒトも)発生の系は同じなのだろうか?」 これは、ホメオボックスの機能による。つまり、発生の諸プロセスを統御する遺伝子のパッケージは、多くの動物に共通している。
■ウニとカエルの発生の過程の比較
【ウニ(図)】
受精卵 → 2細胞期 → 4細胞期 → 8細胞期 → 16細胞期 → 桑実胚期 → 胞胚期(孵化) → 原腸胚期 → プルテウス幼生 → 幼生 → 成体
【ウニ(図)】
受精卵 → 2細胞期 → 4細胞期 → 8細胞期 → 16細胞期 → 桑実胚期 → 胞胚期(孵化) → 原腸胚期 → プルテウス幼生 → 幼生 → 成体
【カエル(図)】
受精卵 → 2細胞期 → 4細胞期 → 8細胞期 → 16細胞期 → 桑実胚期 → 胞胚期 → 原腸胚期 → 神経胚期(孵化) → 幼生 → 成体
受精卵 → 2細胞期 → 4細胞期 → 8細胞期 → 16細胞期 → 桑実胚期 → 胞胚期 → 原腸胚期 → 神経胚期(孵化) → 幼生 → 成体
■器官の形成と由来する胚葉
原腸胚では、細胞群は3種類に分けられます。外部表面の外胚葉(ectoderm)、空洞へ潜り込んで新たな細胞層となった中胚葉(mesoderm)、胚の下部に位置している内胚葉(endoderm)。これらそれぞれの胚葉から、まったく別々の器官が将来形成されることになります。それぞれの胚葉の担う複雑さは、ウニとイモリとでは段違いです。棘皮動物のウニの場合、脊椎動物のイモリと違って、①脳・中枢神経系が存在せず、②心臓も血管系も持たず、③骨格は欠片として体内に散らばっているため、形成される器官も少なくなっています。
原腸胚では、細胞群は3種類に分けられます。外部表面の外胚葉(ectoderm)、空洞へ潜り込んで新たな細胞層となった中胚葉(mesoderm)、胚の下部に位置している内胚葉(endoderm)。これらそれぞれの胚葉から、まったく別々の器官が将来形成されることになります。それぞれの胚葉の担う複雑さは、ウニとイモリとでは段違いです。棘皮動物のウニの場合、脊椎動物のイモリと違って、①脳・中枢神経系が存在せず、②心臓も血管系も持たず、③骨格は欠片として体内に散らばっているため、形成される器官も少なくなっています。
3つの胚葉を発見したのはドイツのパンダー(1794-1876)。ニワトリの卵が孵化するまでの一連の発生過程を記戦し、器官形成に先立って胚は複数の胚葉に分かれ、各胚葉からそれぞれの器官が分化・形成することを1828年に明らかにしました。翌年には、ザリガニ(無脊椎動物)においても「胚葉説」が成り立つことが示されます。動物の形態は異なっているのに初期の発生過程では胚葉という同一の構造から出発することは、大きな発見でした。
〔外胚葉に由来する器官・組織〕
表皮:皮膚の表皮、眼のレンズ、角膜
神経管:脳、脊髄、眼の網膜
表皮:皮膚の表皮、眼のレンズ、角膜
神経管:脳、脊髄、眼の網膜
〔中胚葉に由来する器官・組織〕
脊索:(退化・消失)
体節:骨格、骨格筋、皮膚の真皮
腎節:腎臓、輸尿管
心臓:内臓筋、腸間膜
脊索:(退化・消失)
体節:骨格、骨格筋、皮膚の真皮
腎節:腎臓、輸尿管
心臓:内臓筋、腸間膜
〔内胚葉に由来する器官・組織〕
消化管:胃・腸の内面
呼吸器:肺、えら
内分泌腺:肝臓、甲状腺
消化管:胃・腸の内面
呼吸器:肺、えら
内分泌腺:肝臓、甲状腺
Why? なぜ、ウニもイモリもヒトも発生の系は同じなのか? なぜこのようなプロセスを経ない個体発生・形態発生がありえないのか?
―この問いかけは次のように言い換えることができる→
What? 動物(さらにいえば多細胞生物)の形態形成にとって決定的に重要なファクターはなにか? つまり、もしそれがなければウニもイモリもヒトもその体を形成することができないような条件とはなにか?
① 細胞同士が互いに相手を識別し、接着すべき細胞同士は接着し、離れるべき細胞とは離れること。
② 前後、背腹の体軸が決定されること。
③ 諸器官が形成されること。(誘導が起こること)
④ 体の各部分の構造や区画が決定されること。
これらの条件を満たす発生のメカニズムをとることができた生物種が、結果的に進化の過程で現在まで残ったから、さまざまな動物種の間で発生の系は同じなのだと仮説をたてることができます。
② 前後、背腹の体軸が決定されること。
③ 諸器官が形成されること。(誘導が起こること)
④ 体の各部分の構造や区画が決定されること。
これらの条件を満たす発生のメカニズムをとることができた生物種が、結果的に進化の過程で現在まで残ったから、さまざまな動物種の間で発生の系は同じなのだと仮説をたてることができます。
この4つの条件のなかで、「①細胞同士が互いに相手を識別し、接着すべき細胞同士は接着し、離れるべき細胞とは離れること」については胞胚までの時期に各細胞間で接着がなされることに前回、簡単に触れました。「②前後、背腹の体軸が決定されること」については割愛 。「③諸器官が形成されること(誘導が起こること)」については期末試験までのあいだに触れたいと思います。
「④体の各部分の構造や区画が決定されること」については、遺伝子――ホメオボックスが深く関連しています。胚の初期発生ではなく、比較的後期の形態形成に関わる重要な遺伝子群が、ホメオボックスと呼ばれる「ホメオティック遺伝子群(homeoticgenes)」です。
ホメオティック遺伝子群について説明する前に、まずホメオシス(homeosis)の研究を紹介しましょう。動物の標本をいろいろと調べていくと、稀に形態異常を持つものが発見されます。このような形態異常をいろいろと調べていくと、まったく説明不可能な異常も多くありますが、体の一部が他の部分になってしまっているという大変奇妙な異常個体があることに気づきます。たとえば、チョウの後脚が前脚に置き換わっていたり、ハエやハチの触角が脚に置き換わっていたりする異常型が代表的です。このような異常がホメオシスです。ホメオティック突然変異とはある構造物が類似の部分に置き換わった変異であるという意味です。
1940年代末にエドワード・ルイスはキイロショウジョウバエのホメオティック突然変異の研究を開始しました。写真bは後胸が中胸と同じ形態に変化して四枚翅となった個体です。写真cでは触覚が前脚に分化しています。
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これらのホメオシスの原因となった遺伝子がホメオティック遺伝子です。フォルハルトとエリックは、キイロショウジョウバエの体節構造の形成と体制body plan を決定する上で、核心的に重要な15の遺伝子を同定し分類しました。
「④体の各部分の構造や区画が決定されること」について考える上で、このホメオティック遺伝子群が発見されたこと、さらにこのホメオティック遺伝子群が多くの動物種の間で共通することが多いことは、発生学のみならず、「なぜ相同器官をもつ種がこれほど多いのか?」という進化論の問いかけにも一定の答えを与えるものでした。ルイス、ニュスライン、エリックはこの功績によって、1995年のノーベル医学・生理学賞を受賞しています。