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億泰「学園都市つってもよォ~」②
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meteor089
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億泰「学園都市つってもよォ~」 ① ② ③
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:35:21.91 ID:L0ZTmZoC0 [5/17]
■学園都市・柵川中学校前
■学園都市・柵川中学校前
ギラギラと照りつける眩しい太陽を恨めし気に睨み上げながらため息をつく佐天。
佐天「…はぁ~」
初春「だ、大丈夫ですか?」
佐天「ダイジョブじゃないよまったく…」
昨夜は、初春の部屋の床でふざけながらいつの間にか眠りこんでしまった佐天と初春。
硬い床の上で眠ってしまったせいか、身体中が軋み悲鳴をあげていた。
硬い床の上で眠ってしまったせいか、身体中が軋み悲鳴をあげていた。
佐天「あぁ~ 背中痛いぃ~ 暑いぃ~」
そうブツブツと文句を言いながらストレッチのような体操をして前を歩く佐天の鞄から何かがポトリと落ちた。
初春「あれ? 佐天さん? 何か落ちましたよ?」
佐天「え? あっ!」
ヒョイと初春が拾い、マジマジとそれを見つめる。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:36:23.02 ID:L0ZTmZoC0 [6/17]
初春「これ…お守りですか? 随分と年季の入ったお守りですね~」
初春「これ…お守りですか? 随分と年季の入ったお守りですね~」
佐天「あ、うん…これあたしのお母さんがくれたお守りなんだよね…」
初春「いいお母さんじゃないですかー」
佐天「えー? 口うるさいし非科学的なことばっか言うんだよー?」
初春「だって。 佐天さん、お守り大事にしてるじゃないですか」
佐天「……そ、そっかな? と、でも紐切れちゃったのかー」
そういってなんとなくお守りを掲げる佐天。
ふらりとたよりなく風に吹かれるそれを見る佐天の眼は何処か遠くを見ているようだった。
ふらりとたよりなく風に吹かれるそれを見る佐天の眼は何処か遠くを見ているようだった。
初春「佐天さん? それ…どうするんですか?」
佐天「んー? どうしよっかなー あたし家庭科の成績あんま良くなかったしー」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:39:14.66 ID:L0ZTmZoC0 [7/17]
初春「…あの、もしよかったら私がそのお守り…直しておきましょうか?」
初春「…あの、もしよかったら私がそのお守り…直しておきましょうか?」
佐天「え? いいの?」
初春「任せてくださいー! こう見えて私家庭科は5でしたから! と、そういえば知ってますか? お守りって一針一針想いを込めて創るものなんですよー」
佐天「へー じゃあ初春もたーっぷり想いをこめてよねー なんちゃって」
そういってふざける佐天だったが予想外の答えが返ってきた。
初春「あったりまえじゃないですか!」
トンッと音を立てて胸を叩く初春。
佐天「え? いやいや、冗談だよ?」
アハハと茶化す佐天。
しかし初春は真剣だった。
しかし初春は真剣だった。
初春「佐天さんは私の一番の親友なんですよ! もう込めまくっちゃいますから!」
佐天「プッ もぉー! 大袈裟だよ初春ー」
胸をはったままの初春。
そんな初春の姿を見て笑う佐天につられ初春も笑い出す。
そんな初春の姿を見て笑う佐天につられ初春も笑い出す。
しかし、少女たちは気づいていなかった。
照りつける太陽がゆっくりと黒いアスファルトを溶かし、ドロドロとしたコールタールのような悪意が足元を覆おうとしていることに。
照りつける太陽がゆっくりと黒いアスファルトを溶かし、ドロドロとしたコールタールのような悪意が足元を覆おうとしていることに。
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:41:29.07 ID:L0ZTmZoC0 [8/17]
■風紀委員第一七七支部
■風紀委員第一七七支部
億泰「ちーっす」
自動ドアを開け部屋に入ってきた億泰の視界に飛び込んできたのは一心不乱にキーボードに向かう初春と書類にペンを走らせている黒子の二人だった。
初春「あ、虹村さん。 こんにちはー」
黒子「ああもう! 風が吹きこんで書類が飛んでいくじゃないですの! さっさと入ってくださいの!」
凄まじい速度でタイピングを続けたまま挨拶をする初春、鼻と口でペンを挟みながら唸りだす黒子。
億泰「…なんだかよぉ~ …ズイブンと忙しそうじゃあねぇーかよぉ~?」
事情が飲み込めずに、すぐそばにあった椅子に座りながらそう問いかける億泰。
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:43:05.04 ID:L0ZTmZoC0 [9/17]
気怠げに話す億泰の口調にイライラしたのか少しばかり刺のある言葉をぶつける黒子だったが億泰はさして気にする様子もなく。
気怠げに話す億泰の口調にイライラしたのか少しばかり刺のある言葉をぶつける黒子だったが億泰はさして気にする様子もなく。
億泰「ふぅ~ん。 まぁいいけどよぉ~… っと。 なんだぁ~コレ?」
そう言って机の上に置かれていた小さな袋をつまみ上げる。
初春「あっ それ佐天さんのお守りなんです。 空いてる時間で繕おうと思ったんですけど…忙しくて中々とりかかれないんですよー」
そう言ってテヘヘと笑う初春。
億泰「あ~…お守りかぁ~ そういやあったなぁ~ ンなのものもよぉ~」
ボーっとそれを眺めはするもののそれ以上特に興味を示さず、そのままお守りを机の上に戻す億泰。
その時、支部に備え付けられていた電話が鳴り響いた。
黒子「はい 第一七七支部、白井黒子ですの…え? 爆弾魔が!? 判りました、直ちに急行しますですの!」
その言葉と共に勢い良くと立ち上がる白井黒子。
黒子「初春! 『例』の件で出ますわ! あとは適当におまかせですの!」
初春「はっはい! わかりました!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 01:43:47.01 ID:L0ZTmZoC0 [10/17]
■学園都市・第7学区常盤台中学側
■学園都市・第7学区常盤台中学側
御坂「熱っー…」
ジワジワと照り返される太陽光に辟易したかのように呟く御坂。
人通りの少ない道を歩いていると、突如頭上から声が降ってきた。
人通りの少ない道を歩いていると、突如頭上から声が降ってきた。
黒子「やーっと見つけましたわ! お姉様」
シュンっと音を立てながら宙より白井黒子が降ってきた。
御坂「黒子? 私さ今日はもう帰ってシャワー浴びて寝たいんだけど…」
黒子「それが…問題が発生しましたの…例の爆弾魔が意識不明で倒れたとの報告が」
御坂「へ?」
呆気にとられた御坂の腕を掴んだとほぼ同時に演算を行う白井黒子。
目指す先は爆弾魔の介旅初矢が収容されている水穂機構病院。
空間跳躍により、次の瞬間には二人の少女は忽然とその姿を消していた。
目指す先は爆弾魔の介旅初矢が収容されている水穂機構病院。
空間跳躍により、次の瞬間には二人の少女は忽然とその姿を消していた。
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:04:02.19 ID:L0ZTmZoC0 [11/17]
■柵川中学校学生寮・佐天涙子の自室
■柵川中学校学生寮・佐天涙子の自室
佐天「レ・ベ・ル・ア・ッ・パ・ーと。 …ま、見つかるわけないよねー」
なんとなく学校で聞いた噂。
ただそれを確かめたかっただけだった。
当然ウェブページなどで検索したところで『それ』があるはずもなく。
ただそれを確かめたかっただけだった。
当然ウェブページなどで検索したところで『それ』があるはずもなく。
佐天「あーあ。 やっぱ噂は噂かー」
ため息をつきながら背伸びをしたその瞬間モニターの画面がパッと切り替わった。
佐天「…ん? 何だコリャ? …隠しページ?」
背伸びをした拍子にマウスのサブキーを押したのだろう。
しかし、佐天涙子はそこに表示されている味気ない只の文字列をマジマジと見つめていた。
しかし、佐天涙子はそこに表示されている味気ない只の文字列をマジマジと見つめていた。
┌─────────┐
│TILTLE:LeveL UppeR│
│ARTIST:UNKNOWN │
│ DownloaD NoW? │
└─────────┘
│TILTLE:LeveL UppeR│
│ARTIST:UNKNOWN │
│ DownloaD NoW? │
└─────────┘
佐天「…こ、これって」
震える指でマウスをクリックしながら携帯電話を取り出す佐天涙子。
連絡先は言うまでもなく一番の親友に向けてだった。>>26
連絡先は言うまでもなく一番の親友に向けてだった。>>26
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:05:16.46 ID:L0ZTmZoC0 [12/17]
■学園都市・水穂機構病院
■学園都市・水穂機構病院
むわりとした熱気に包まれたリノリウムの白い廊下をカツカツと音を立ててあるく小柄な女性。
目の下に濃いクマを貼り付かせたその女性は額に浮かび上がる汗を無造作に袖口で拭きながら名乗る。
目の下に濃いクマを貼り付かせたその女性は額に浮かび上がる汗を無造作に袖口で拭きながら名乗る。
木山「お待たせしました…水穂機構病院院長から招聘を受けました木山春生です。」
黒子「ご丁寧にありがとうございますの わたくしはジャッジメント第一七七支部の白井黒子、そしてこちらが」
御坂「えーっと…付き添いの御坂美琴です…」
木山「そうか……ところで突然済まないのだが」
黒子「はい?」
木山「私は暑いのが苦手でな…場所を変えて話したいのだが…」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:09:57.51 ID:L0ZTmZoC0 [13/17]
■学園都市・ファミリーレストランJONES
■学園都市・ファミリーレストランJONES
木山「…なるほど。 君達の話は判った。 つまりレベルアッパーが見つかったら私に調査してもらいたい…と」
黒子「えぇ…現段階では公表を見送り調査に専念するべしというのがわたくしたちの共通見解ですの」
木山「ふむ…確かに今の状況ではそれが最も妥当な判断だろうな。 判った。 その話引き受けよう。」
黒子「はい…お願いしますの」
木山「なに、構わんよ。 …ところで。 さっきから気になっていたんだが…」
黒子「はい?」
木山「窓の外に張り付いているあの子たちは知り合いかね?」
御坂「あっ… 初春さんに佐天さんじゃない」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:18:48.19 ID:L0ZTmZoC0 [14/17]
初春「へー 脳の学者さんなんですかー」
初春「へー 脳の学者さんなんですかー」
黒子「えぇ…最近話題になってるレベルアッパーの件でご相談を…」
初春「えっと…それでどうなったんですか?」
佐天「ん? レベルアッパー? それなら私」
ポケットに手を突っ込み音楽プレーヤーを取り出そうとした佐天だったが…
黒子「レベルアッパーの所有者は例外なく捜索し保護するべきという結論になりましたわ。 なぜなら…」
訥々と続く黒子の言葉を聞いてピクリと固まってしまう佐天。
佐天「…」
初春「はぁー… ? どうしました佐天さん?」
佐天「…えっ? や、別に?」
慌てて誤魔化そうとするも、青くなった顔色は隠せるわけもなく。
御坂「佐天さん大丈夫? なんか顔色悪いんじゃない?」
佐天「アハッアハハッ! ちょーっと熱中症かなー? うん、なんか調子悪いみたいだし…あたし帰るねっ!」
心配されるも無理やり笑い飛ばして席を立とうとする佐天だったが、その背中に声がかかった。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:20:03.80 ID:L0ZTmZoC0 [15/17]
初春「あっ! 待ってください佐天さん!」
初春「あっ! 待ってください佐天さん!」
佐天「…な、なに?」
初春「直りましたよ! これ!」
そう言って初春が差し出された手には見違えるほど綺麗になったお守りが乗っていた。
佐天「あ…ありがとう…初春」
初春「いえいえー お安い御用ですよー!」
佐天「そっそれじゃゴメンッ! あたしもう行くねっ!」
パタパタと足音を立てて店から出て行く佐天。
木山「…熱中症ならば走ったりなんかしてはダメだろうに」
黒子「…」
そう呟く木山の言葉を聞きながら黒子は遠ざかっていく佐天の背中から目を離そうとはしなかった。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:26:27.52 ID:L0ZTmZoC0 [16/17]
木山「さて…話はこれくらいでいいかな? 私も帰って研究の続きをしようと思うんだが」
木山「さて…話はこれくらいでいいかな? 私も帰って研究の続きをしようと思うんだが」
そう言って立ち上がる木山。
黒子「えっ? あ、はい。お忙しい中ありがとうございましたですの」
木山「なに。 私も楽しかったよ。 …昔を思い出した」
そう言って淋しげな笑顔を浮かべると学園都市の夕暮れに消えていく木山春生。
その後姿を眺めながらぽつりと初春が呟く。
その後姿を眺めながらぽつりと初春が呟く。
初春「なんだか…変わった感じの人でしたねー」
御坂「そうねー。 美人なのに…なんていうかちょっと残念って感じの人。 ね? 黒子もそう思わない?」
しかし、黒子がそれに返事を返すことはなかった。
下唇を噛みながら何事かを考えている黒子。
下唇を噛みながら何事かを考えている黒子。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 02:30:11.60 ID:L0ZTmZoC0 [17/17]
御坂「黒子?」
御坂「黒子?」
黒子「…」
初春「白井さん? どうしたんですか?」
黒子「…なんだか嫌な予感がしますの」
初春「予感…ですか?」
そう問い返した初春だったが答えは返ってくることはなく。
黒子「初春。 あなたはこのまま支部に直行。 連絡その他の中継をお願いしますの」
ただテキパキとした指示が返ってきた。
初春「え? ええ?」
黒子「それじゃあ頼みましたわよ!」
そう言って微かな音を立てて消える黒子。
ビルの上、電柱の上へと瞬時にテレポートを繰り返しながら黒子は探す。
ビルの上、電柱の上へと瞬時にテレポートを繰り返しながら黒子は探す。
今の黒子が目指すのは場所ではなく人だった。
『彼女』の引きつった笑い顔には覚えがあった。
その笑みを浮かべたのは他ならぬ幼い頃の自分。
目の前に立ち塞がる巨大な壁に絶望したときにこぼれた自暴自棄な笑みと同じもの。
『彼女』の引きつった笑い顔には覚えがあった。
その笑みを浮かべたのは他ならぬ幼い頃の自分。
目の前に立ち塞がる巨大な壁に絶望したときにこぼれた自暴自棄な笑みと同じもの。
黒子(思い違いならばそれでいいんですの… 佐天さん…貴方は今どこにいるんですの?)
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 16:45:19.08 ID:DctGvfjp0 [1/11]
■学園都市・裏通り
■学園都市・裏通り
佐天涙子はぼんやりと歩いていた。
手の上で鈍く光る音楽プレーヤーの中にはレベルアッパーがインストールされている。
しかし、今の佐天はそれを素直に試してみる気にはなれなかった。
手の上で鈍く光る音楽プレーヤーの中にはレベルアッパーがインストールされている。
しかし、今の佐天はそれを素直に試してみる気にはなれなかった。
佐天(みんなが頑張ってるのにズルして能力を手に入れるのは悪いこと…そんなのわかってる)
佐天(でもこれを聞いたら…力が手に入るかもしれない……レベルゼロじゃなくなるかもしれないんだ…)
揺れる心のままフラフラと歩いていく佐天の足を止めたのは甲高い悲鳴と乱暴な音を立てる廃材だった。
少年「痛っ! か、かんべんしてくれっー」
不良B「あー? ガタガタうっせーなー!」
不良C「10万ポッチでレベルアッパーが手に入ると思ったんかブタァ!」
ほんの数十メートル向こうで地味な服装をした小太りの少年が殴られ、蹴られ、叩かれていた。
小突き回しながら下品な笑い声をあげているのはスキルアウトとおぼしき不良ども。
小突き回しながら下品な笑い声をあげているのはスキルアウトとおぼしき不良ども。
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 16:46:35.74 ID:DctGvfjp0 [2/11]
佐天「…うわ最悪 なんだってこんなところに出くわすのよ…」
佐天「…うわ最悪 なんだってこんなところに出くわすのよ…」
ジャッジメントかアンチスキルに連絡をとろうとするも、運悪く携帯電話は電池切れ。
佐天(……しょーがないよね。 相手はいかにもな三人組だし)
足音を立てないようにこっそりと後ろに退がりながら自分に言い聞かせる。
佐天(この間までランドセルを背負ってたあたしが。 レベルゼロのただの中学生が。 何とかできるわけないしね)
曲がり角のところまで来てピタリと足が止まった。
ここを駆け抜ければ何事も無く日常に戻ることができる。
途中にあるアンチスキルの詰所に連絡をいれておけば、あの少年も酷いことにはならないだろう。
だが、何故か佐天の足はそれ以上動こうとはしなかった。
ここを駆け抜ければ何事も無く日常に戻ることができる。
途中にあるアンチスキルの詰所に連絡をいれておけば、あの少年も酷いことにはならないだろう。
だが、何故か佐天の足はそれ以上動こうとはしなかった。
佐天(でも…でも…)
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 16:51:00.09 ID:DctGvfjp0 [3/11]
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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「だってさ…こーんな不良がプリンパフェなんて可愛らしいもん食べてるだなんて…誰も想像しないじゃない?」
「なぁ…オメーだって知ってるはずだぜぇ~? プリンはよ…あまくてよぉ…ウメェよなぁ?」
「え?…う、うん。 そう…だけど?」
「だったらよぉ~ …別にオレが好きでも何の問題もねぇーだろがよぉー?」
「はぁ…もう好きにしなさいよ」
「なぁ…オメーだって知ってるはずだぜぇ~? プリンはよ…あまくてよぉ…ウメェよなぁ?」
「え?…う、うん。 そう…だけど?」
「だったらよぉ~ …別にオレが好きでも何の問題もねぇーだろがよぉー?」
「はぁ…もう好きにしなさいよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
佐天の脳裏をよぎるのは最近知り合ったおかしな男。
威圧的な外見に間延びした喋り方、甘いモノが大好きでケチ臭くて空気を読もうともしない失礼なヤツ。
威圧的な外見に間延びした喋り方、甘いモノが大好きでケチ臭くて空気を読もうともしない失礼なヤツ。
佐天(あんな『バカ』もいるんだし。 もしかしたら…もしかしたら話せば判ってくれるかもしれない…)
気がつけば佐天は震えながらも来た道を引き返していた。
哂いながら見知らぬ少年を嬲るスキルアウトたち。
佐天涙子は精一杯の勇気を振り絞る。
哂いながら見知らぬ少年を嬲るスキルアウトたち。
佐天涙子は精一杯の勇気を振り絞る。
佐天「もっもうやめなさいよっ!」
だがしかし。
佐天の制止はまったくこれっぽっちも意味をなすことはなかった。
佐天の制止はまったくこれっぽっちも意味をなすことはなかった。
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:00:31.93 ID:DctGvfjp0 [4/11]
不良B「あー? なんだよ? 文句あんのか? コラァ!」
不良B「あー? なんだよ? 文句あんのか? コラァ!」
ガッシャーン!
怒声と共に蹴りあげられる立て掛けられた廃材が騒がしい音をあげる。
佐天「ヒッ!」
目の前でいとも容易く行われる破壊行動に肩がすくむ佐天。
怯える佐天の顎を掴み品定めをするように眺めるチーマーのような格好をしたチンピラ。
不良C「へ… そこそこいいツラしてるじゃん」
その瞬間、自分が勘違いをしていたことに気づく佐天。
あの男…虹村億泰と言葉を交わしすぎたのかもしれない。
道いく通行人が避けて通っていくような格好をした億泰と口喧嘩できる自分はどこか特別だと思っていたのかもしれない。
あの男…虹村億泰と言葉を交わしすぎたのかもしれない。
道いく通行人が避けて通っていくような格好をした億泰と口喧嘩できる自分はどこか特別だと思っていたのかもしれない。
蛇に睨まれた蛙のように動くこともできない佐天の頭を乱暴に掴むオールバックの男。
リーダー「はっ! 何の力もねえガキがゴチャゴチャ俺らに指図する権利があると思ってんのかぁ?」
その理不尽な主張に怯えきった佐天が答えられるはずもない。
そのとき、第三者の静かな声が響いた。
そのとき、第三者の静かな声が響いた。
197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:11:53.37 ID:DctGvfjp0 [5/11]
?「力があれば指図できるのということですわね? ならばわたくしが貴方達に指図しますわ。 彼女をお離しなさい」
?「力があれば指図できるのということですわね? ならばわたくしが貴方達に指図しますわ。 彼女をお離しなさい」
聞き覚えのあるその声。
カラカラになった喉で佐天はその声の主の名を呟いた。
カラカラになった喉で佐天はその声の主の名を呟いた。
佐天「…し、白井…さん」
不良B「んっだテメエ!」
黒子「ジャッジメントですの!」
腕章を見せるようにポーズをとった黒子に飛びかかっていく男たち。
不良B「うっせーよバーカ!」
不良C「その高慢ちきなツラをボッコボコにしてやらぁ!」
黒子「…あなたがたのようなクズは、抵抗してくれたほうがいいですわね」
襟首を掴まれながらも余裕たっぷりでそう呟き、次の瞬間には姿をかき消えていた。
不良C「なっ?」
驚くスキルアウトの頭上から声が降ってきた。
黒子「こうやって思い切りブチのめせるのですから」
不良たちの背後に跳び、あっという間に二人のスキルアウトを叩きのめす黒子。
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:17:55.00 ID:DctGvfjp0 [6/11]
リーダー「カカカカッ おもしれー能力だな」
リーダー「カカカカッ おもしれー能力だな」
悶絶して地に伏せる仲間を見て、男は笑っていた。
黒子「…他人事のようにおっしゃいますけど…次は貴方の番ですのよ?」
そう淡々と告げる黒子。
数瞬の睨みあいの後、相手の方に一歩足を踏み出したのはリーダー格のスキルアウトだった。
数瞬の睨みあいの後、相手の方に一歩足を踏み出したのはリーダー格のスキルアウトだった。
リーダー「俺達はよ てめえらウザってージャッジメントをいっつもギタギタにしてやりてーって思ってたんだぜ?」
その言葉と共に黒子に飛びかかる。
その手にはいつの間にか取り出した大きな折り畳みナイフがあった。
その手にはいつの間にか取り出した大きな折り畳みナイフがあった。
黒子(言葉が通じない相手のようですし…肩にでも金属矢を打ち込ませて戦意を撃ちこ)
ドカッッ!
黒子「ギッ!?」
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:21:20.97 ID:DctGvfjp0 [7/11]
男の蹴りが脇腹に直撃し、苦痛の声をあげる白井黒子。
放たれた金属の矢がカランと後方で小さな音をたて、壁に突き刺さる。
男の蹴りが脇腹に直撃し、苦痛の声をあげる白井黒子。
放たれた金属の矢がカランと後方で小さな音をたて、壁に突き刺さる。
黒子(そんなっ!? この距離で座標指定をしくじる? おかしいですの!)
リーダー「おい なーに余所見してんだぁ?」
黒子(来たっ! まず…鞄でガードしてこの違和感を確かめなくてはっ!)
蹴りあげられる進行上に鞄を用意し、目を凝らす黒子。
だが身を守るために盾として用いた鞄はなんの意味も持たなかった。
だが身を守るために盾として用いた鞄はなんの意味も持たなかった。
黒子「がっ!?」
男の蹴りはまるで鞄をすり抜けるように黒子の脇腹に直撃。
吹き飛ばされた黒子はガラスを突き破り廃ビルの中で脇腹の痛みに顔をしかめる。
吹き飛ばされた黒子はガラスを突き破り廃ビルの中で脇腹の痛みに顔をしかめる。
佐天「白井さんっっ!!」
派手に吹き飛んだ黒子が心配になり大声をあげる佐天。
201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:23:29.70 ID:DctGvfjp0 [8/11]
黒子(足が曲がっているように… もしや…自分の周囲の光を捩じ曲げる能力!?)
黒子(足が曲がっているように… もしや…自分の周囲の光を捩じ曲げる能力!?)
相手の能力を分析しながらフラフラと立ち上がる黒子。
そんな黒子の様子を見ながらニヤニヤと笑う歯抜けの男。
そんな黒子の様子を見ながらニヤニヤと笑う歯抜けの男。
リーダー「カカカッ 今のはいーい感触だったわぁ アバラ何本かイッた感じだなぁ!」
黒子(…金属矢は最後の一本。 ですが私の推測が正しければっ!)
振り返りざま金属矢を投擲するが、それは黒子の『予想通り』あさってのほうに飛んでいった。
リーダー「おいおい何だぁ? まさかもうテレポートできねえってんじゃねーだろーなー?」
黒子(…っ! こうなったら仕方ありませんの!)
ゆっくりと後ずさり、そのままビルの奥に走りだす黒子。
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:26:51.29 ID:DctGvfjp0 [9/11]
リーダー「逃げ…た?」
リーダー「逃げ…た?」
ニヤリと哂うスキルアウトのリーダー。
黒子が飛び込んでいった廃ビルの奥に向かい大きな声を張り上げる。
リーダー「次は鬼ごっこかぁ? いいぜぇー 10秒だけ待ってやるよぉ!」
リーダー「けど『ゲーム』には『ルール』が必要だよなー?」
リーダー「てめぇが逃げまわっていいのはこのビルの中だけだ」
リーダー「このビルから逃げたら外の女とデブ、両方やっちまうからなぁー?」
そう宣言しながらビルの中に足を進める男。
カチカチとナイフを振り回しながら空いた手でポケットを探り、目的のものを取り出す。
その手に握られているもの。
それは『携帯電話』が握られていた。
その手に握られているもの。
それは『携帯電話』が握られていた。
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:30:35.58 ID:DctGvfjp0 [10/11]
■廃ビル前
■廃ビル前
そびえたつ無機質な灰色のコンクリートを心配そうに見上げる佐天。
そんな佐天にオドオドとした声がかかった。
そんな佐天にオドオドとした声がかかった。
少年「ね、ねえ君」
声の主は先程までスキルアウトに絡まれていた小太りな少年。
殴られ蹴られ、腫れ上がった顔のまま少年は続ける。
殴られ蹴られ、腫れ上がった顔のまま少年は続ける。
少年「…今のうちに逃げよう」
佐天「そんな! 白井さんがまだ!」
予想外のことを言われ言い返す佐天。
だが。
だが。
少年「…ぼ、僕達がいてもどうにもならないじゃないか」
佐天「――っ」
少年「君もレベル0なんだろ? だったら判るはずだよ。 僕達に出来ることなんて何も無いんだ…」
少年「そうさ。 僕達レベル0は足手まといなんだ。 危ない闘いはジャッジメントやアンチスキルに任せればいいっ!」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 17:34:05.00 ID:DctGvfjp0 [11/11]
少年「さあっ! 一緒に逃げようっ!」
少年「さあっ! 一緒に逃げようっ!」
そう言って佐天に差し伸ばされる右手。
少年の言葉は隠してきた自分の本心をズバリ言い当てていた。
嫉妬や羨望の感情を他人に代弁され、呆然とする佐天涙子。
少年の言葉は隠してきた自分の本心をズバリ言い当てていた。
嫉妬や羨望の感情を他人に代弁され、呆然とする佐天涙子。
確かに、今の自分が出来ることは何も無い。
少年の言うとおり逃げるのが最も賢い選択だということは分かっていた。
少年の言うとおり逃げるのが最も賢い選択だということは分かっていた。
けれど。
目の前に差し出された少年の右手を握ったその瞬間…取り返しの付かないナニカを捨ててしまうような。
そんな気がして躊躇う佐天。
そして…幸か不幸か佐天涙子が決断をする前に予想外のことが目の前でおきた。
そんな気がして躊躇う佐天。
そして…幸か不幸か佐天涙子が決断をする前に予想外のことが目の前でおきた。
バキィッ!
少年「ブフッ!」
突然殴り飛ばされる少年。
その拳の先を見て佐天は絶句する。
その拳の先を見て佐天は絶句する。
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:01:04.35 ID:p+o8WyD10 [1/41]
不良B「おいおい。 誰が逃げていいって言ったぁ?」
不良B「おいおい。 誰が逃げていいって言ったぁ?」
そこに立っていたのは先程黒子に叩きのめされた不良の男達だった。
不良C「痛っててて… クソッあのアマァ!」
佐天「そっ…そんな」
不良B「『そっそんなぁ』じゃねえよブス! おらこっち来い!」
不良C「てめえもだデブ! 手間かけさせんじゃねーよ!」
佐天「痛っ! やめてっ! やめてくださいっ!」
少年「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
必死に抵抗するも、少女の細腕で男の腕力に適うはずもなかった。
無造作に髪を掴まれビルの中に引きずり込まれていく佐天と少年。
無造作に髪を掴まれビルの中に引きずり込まれていく佐天と少年。
不良B「もしもーし? こっちは問題無いっすよリーダァー」
そう『携帯電話』に何事かを報告しながらビルの中に入っていくスキルアウトと佐天達。
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:12:52.53 ID:p+o8WyD10 [2/41]
■廃ビル内
■廃ビル内
黒子「がっ!? …痛っ」
顔を殴られ床に転がる黒子。
黒子「な、何故…?」
1階から2階へ空間跳躍し、『ゲーム』の『ルール』の裏をかいたはずの黒子の目の前にスキルアウトの男がいたのだ。
リーダー「言い忘れたけどよ」
ナイフを弄びながら笑う男。
リーダー「この廃ビルは俺らの溜まり場でなー。 中のことは隅から隅まで熟知してるんだわ」
黒子(くっ……最終手段をとるしかありませんわね)
再び空間跳躍を行ない姿を消す黒子。
リーダー「ほぉー まだ逃げる力が残ってんのか…」
黒子が飛んだ先から漏れる足音を聞いてほくそ笑む。
リーダー「せいぜい逃げ回れや… 跳べなくなったときが終わりなんだからなぁ」
階段へと向かうその顔には凄惨な笑みが浮かんでいた。
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:18:42.64 ID:p+o8WyD10 [3/41]
■廃ビル内・最上階
■廃ビル内・最上階
リーダー「オラァ! もう隠れる場所なんてねーだろが! さっさと出てこいよぉ!」
空間跳躍を繰り返し、最上階の柱に隠れた黒子。
フロアの出入口には男がよりかかり笑いながら吠えていた。
フロアの出入口には男がよりかかり笑いながら吠えていた。
黒子(出ろと言われてノコノコ出ていくオマヌケが何処にいるんですの?)
リーダー「カカカッ… まぁ別に構わないけどよ? テメエが出てこないってんならこの女とデブで遊ばさせてもらうだけだからなぁ!」
黒子(なっ!?)
想像だにしなかった言葉を聞き、目を見開く黒子。
そして…最も聞きたくない悲鳴が聞こえてきた。
そして…最も聞きたくない悲鳴が聞こえてきた。
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:22:13.76 ID:p+o8WyD10 [4/41]
佐天「やっやめてよぉ…」
佐天「やっやめてよぉ…」
不良B「ヘヘヘッ」
不良C「おらぁ! とっとと歩けや!」
デブ「痛っ! 痛いっ!」
怯えきった弱々しい声と複数の足音。
黒子(そんな…これじゃあビルの支柱を切断してビルを潰す計画がっ…)
必死に考えを巡らすも、解決策は見当たらなかった。
リーダー「さーて…どーすんだぁ? このまま外にテレポートして逃げるかー? 別にそれでもいいぜー?」
黒子「…」
数秒後歯噛みをしながら黒子が柱の陰から姿を現した。
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:25:46.13 ID:p+o8WyD10 [5/41]
リーダー「カカカッ 手こずらせやがって… よーやく観念したかぁ?」
リーダー「カカカッ 手こずらせやがって… よーやく観念したかぁ?」
ニヤニヤと笑いながらリーダー格の男が黒子の顎を掴む。
汚らわしい感触に眉をしかめながらも気丈に言い返す黒子。
汚らわしい感触に眉をしかめながらも気丈に言い返す黒子。
黒子「『ゲーム』には『ルール』が必要…そう言ってましたわよね?」
リーダー「あぁー? オレは飽きっぽくてなぁー 忘れちまったわ」
ヘラヘラと馬鹿にしきった顔でおどける男。
リーダー「それよりもだ…てめぇは放っておくほどオレは『馬鹿』じゃあねえ」
言うが早いか懐より取り出した小瓶を黒子の眼前に突きつけた。
酷い刺激臭が黒子を襲う。
酷い刺激臭が黒子を襲う。
黒子「ゴホッ!? なっ、らにを!?」
途端、腰が抜けたようにガクリと足元から崩れ落ちる黒子。
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:29:07.00 ID:p+o8WyD10 [6/41]
リーダー「ひゅう~ スゲエなおまえ 意識あんのかよ?」
リーダー「ひゅう~ スゲエなおまえ 意識あんのかよ?」
小瓶を懐にしまい込みながら口笛を吹く男。
リーダー「いいぜ、説明してやる。 オレたちが取り扱ってるブツはな、レベルアッパーだけじゃねえんだ」
リーダー「今、おめえに嗅がせたのは揮発性の麻酔薬みたいなもんでよ」
ガクガクと震える手足でなんとか上半身を奮い立たせる黒子。
黒子「…ま、まふいやく?」
リーダー「おおともよ! 能力者ってのはよー脳で演算してることぐらいテメエも知ってんだろ? こいつはな。 一時的に脳の思考回路を掻き乱すんだよ」
衝撃的な言葉を聞き、反射的に演算をするが…
黒子(…っ! ダメですわ…本当に跳べなくなっている!?)
呆然と自分の両手を見つめる黒子。
そんな黒子に無慈悲な声がかかった。
そんな黒子に無慈悲な声がかかった。
リーダー「さてと…よくもまぁ好き勝手に強がってくれたなぁ?」
黒子「グフッ」
言うが早いか、黒子の頬が張り手で叩きとばされる。
脱力してしまった小柄な少女がその威力に耐え切れるわけもなく、部屋の片隅まで転がっていく。
脱力してしまった小柄な少女がその威力に耐え切れるわけもなく、部屋の片隅まで転がっていく。
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:30:57.76 ID:p+o8WyD10 [7/41]
佐天「白井さんっ!」
佐天「白井さんっ!」
悲痛な叫び声をあげる佐天。
黒子を殴り飛ばし、佐天の悲鳴をあげさせた男がニンマリと笑っていた。
黒子を殴り飛ばし、佐天の悲鳴をあげさせた男がニンマリと笑っていた。
リーダー「カカカッ いいなぁテメエ。 打てば響くってのはこのことだわ。 あー…なんか興奮してきたぜぇ」
ベロリとヨダレにまみれた舌で自らの唇を舐める男。
その瞳には嗜虐と愉悦の色が浮かんでいた。
その瞳には嗜虐と愉悦の色が浮かんでいた。
リーダー「おい…おまえらにはその女やるわ…オレは今からよ…この女をヤっから」
黒子「なっ!?」
ジリジリと両手を広げて近づいてくる男。
逃げようとするも薬により弛緩した手足では這いずることが精一杯の黒子。
それはまるで蜘蛛の網にかかった無力な蝶のようだった…
逃げようとするも薬により弛緩した手足では這いずることが精一杯の黒子。
それはまるで蜘蛛の網にかかった無力な蝶のようだった…
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:34:54.67 ID:p+o8WyD10 [8/41]
■裏通り
■裏通り
先程の争いの後は影も形もなく。
廃ビルは静けさを取り戻し、そこにそびえ立っている。
廃ビルは静けさを取り戻し、そこにそびえ立っている。
――否。 ひとつ。 僅かな違いがあった。
道の真ん中で頼りなく風に吹かれている小さな小さな布の袋。
『それ』はビルに連れ込まれる際に抵抗し、揉みあった時に佐天のポケットからこぼれ落ちた。
『それ』はビルに連れ込まれる際に抵抗し、揉みあった時に佐天のポケットからこぼれ落ちた。
――大きなビル風が吹く。
風に吹かれ軽い音をたてながら『それ』は地を転がっていく。
だが…それもビル風が吹いているほんの少しの間のみ。
突風が収まるとともにパサリと音を立て、それきり動かなくなる。
風に吹かれ軽い音をたてながら『それ』は地を転がっていく。
だが…それもビル風が吹いているほんの少しの間のみ。
突風が収まるとともにパサリと音を立て、それきり動かなくなる。
しかし。
『それ』に生命があったのならば、それは正しく自らに込められた思いを、使命を実行した。
足元に転がった小さな布の袋を拾い上げる手。
丁寧にゆっくりと埃を払い、ポケットにしまいこむ。
顔をあげたその先には、まるで彼が進むべき道を示すかのように金属の矢が鈍く光を放っていた…
丁寧にゆっくりと埃を払い、ポケットにしまいこむ。
顔をあげたその先には、まるで彼が進むべき道を示すかのように金属の矢が鈍く光を放っていた…
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:39:23.06 ID:p+o8WyD10 [9/41]
■廃ビル内・最上階
■廃ビル内・最上階
黒子を脅すようにわざとゆっくりと逃げ道を塞いでいくリーダー格の男を見て苦笑いをこぼす男たち。
不良B「あーあー リーダーの悪いクセが出たよ… ところで、コイツらどうすっか?」
佐天「ヒッ!」
身体を舐め回されるような視線に怯え身を縮こまらせる佐天。
その佐天の悲鳴を聞き、黒子が懸命に声を張り上げる。
黒子「やっ! やめらさいっ…そのかたたちは無関係れすのっ」
リーダー「カカカッ ろくに呂律も回んない状態でよく言うよなぁ!」
部屋の片隅に追い詰めながら哂うスキルアウトの男達。
231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:45:27.29 ID:p+o8WyD10 [10/41]
不良C「そーだなー…女一人だしなぁ。 俺3P嫌いだし」
不良C「そーだなー…女一人だしなぁ。 俺3P嫌いだし」
不良B「俺だってテメーの汚ねえチンコなんざ見たくねーっての」
ギャハハと下品な笑い声をあげる二人の男。
そして、不意に一人が手をポンと叩いた。
そして、不意に一人が手をポンと叩いた。
不良B「おっ! 俺いーいこと思いついたわぁー。 おいデブ…テメエこっちこいよ」
少年「はっはい!」
怒声に逆らう気もなく言われるがままに動く少年。
不良B「おいテメーもだよメスガキッ」
そう言って男は佐天を引きずり起こし。
そのまま胸元の服を掴み。
力任せに。
一気に引き下ろした。
そのまま胸元の服を掴み。
力任せに。
一気に引き下ろした。
バリィィィィッ!
パステルカラーのワンピースが無惨に引き裂かれ音を立てる。
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:49:45.85 ID:p+o8WyD10 [11/41]
佐天「……い…いやぁぁぁぁぁ!!!」
佐天「……い…いやぁぁぁぁぁ!!!」
無理やり服を剥がれペタリと座り込む佐天。
不良B「ヒハハハ んだよ! 悪くねえ身体してんじゃねえか」
下卑た笑い声をあげる男。
腐った思考を持つもの同士、もう一人の男は何をしようとしているのか察する。
腐った思考を持つもの同士、もう一人の男は何をしようとしているのか察する。
不良C「おいデブー? テメーもだよ …とっとと服脱げ」
少年「…えっ?」
不良C「えっ? じゃねーだろ! 死にたくねーならさっさと脱げよ!」
少年「は、はい」
ゴソゴソと震える手で服を脱いでいく少年。
ブリーフ一枚にまでなった少年を見て男たちが下品な笑い声をあげた。
ブリーフ一枚にまでなった少年を見て男たちが下品な笑い声をあげた。
不良B「…プッ ギャハハハ! きったねーなおい! ブヨブヨの白豚じゃねーか!」
少年「…う、うう…こ、これでいいでしょうか?」
震えながら憐れみを誘うように卑屈な声で許しをこう少年。
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:54:45.87 ID:p+o8WyD10 [12/41]
しかし、少年の言葉はいとも容易く笑い飛ばされる。
しかし、少年の言葉はいとも容易く笑い飛ばされる。
不良C「はぁー? こっからだろ? どうせテメエ童貞だろ? 俺らに感謝しろよぉ? そこのメスガキでよ…」
不良C「テメーの童貞卒業させてやる」
少年「なっ!?」
佐天「ヤダッ! そんなの絶対ヤダッ!」
恐ろしすぎる言葉を聞き怯える佐天。
なんとか腕で露出した身体を隠そうとするも二本の細い腕だけでは不可能だった。
白く美しい肌を薄暗いビルの光に晒しながら佐天が必死に拒絶する。
しかし…
なんとか腕で露出した身体を隠そうとするも二本の細い腕だけでは不可能だった。
白く美しい肌を薄暗いビルの光に晒しながら佐天が必死に拒絶する。
しかし…
不良B「おいおいデブ! てめえなーにチンコ縮こまらせてんだよ」
少年「お、お願いします…や、やめてあげてください…」
不良B「テメエに決定権なんざねーよバーカ」
ガタガタと震えながら懇願する少年だが、その言葉が届くはずもなく。
さらに絶望的な言葉が男の口から放たれた。
さらに絶望的な言葉が男の口から放たれた。
不良C「ったくしょうがねえな…おいガキ。 …しゃぶれ」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 18:58:52.14 ID:p+o8WyD10 [13/41]
佐天涙子に向かって放たれた言葉は残酷な命令だった。
佐天涙子に向かって放たれた言葉は残酷な命令だった。
佐天「嫌…やだよぅ…嫌だよぉ…」
半狂乱になって、否定の言葉を口にする佐天。
だがそれを見た男はサディスティックに哂いながら恐ろしい言葉を口にした。
だがそれを見た男はサディスティックに哂いながら恐ろしい言葉を口にした。
不良C「嫌でもやってもらうぜー? おまえが拒むならよ、このデブ…殺しちゃうかもなぁ?」
佐天「…え?」
少年「痛っ!?」
その言葉と共にチクリと不良の持ったナイフが少年の喉を突付いた。
赤く細い液体が少年の白い身体を伝っていく。
赤く細い液体が少年の白い身体を伝っていく。
不良B「おらおらどうすんだぁ? あと三秒で決めろよなぁ? おらぁ! さぁーん! にぃー!」
佐天の視線の先には白い肥満した身体をした少年。
首筋から垂れた赤い糸のような血が白いブリーフに吸い込まれ赤い染みをつくる。
首筋から垂れた赤い糸のような血が白いブリーフに吸い込まれ赤い染みをつくる。
245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:05:46.28 ID:p+o8WyD10 [14/41]
不良B「いーちぃ!」
不良B「いーちぃ!」
そう言ってナイフを振り上げる男。
だが、その動きは佐天の小さな呟きでピタリと止まった。
だが、その動きは佐天の小さな呟きでピタリと止まった。
佐天「ま…待ってくだ…さい…」
不良C「あぁー?」
佐天「…」
不良B「コラァ! 何か言いてえならはっきり言えよクソが!」
ガシャンと壁を蹴られ、ビクリと震える佐天。
震える喉を無理やり動かしてボソボソと言葉を吐き出す。
震える喉を無理やり動かしてボソボソと言葉を吐き出す。
246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:07:55.51 ID:p+o8WyD10 [15/41]
佐天「あ、あの……殺さないで…お願い…やめて…やめてください…」
佐天「あ、あの……殺さないで…お願い…やめて…やめてください…」
目を合わせることも出来ず視線は地に伏せたまま佐天がそう答えた。
不良C「ほぉー… てえことはこのブタのチンコしゃぶって童貞卒業させてやるってことだよなぁ?」
佐天「…」
不良C「おら! 黙ってちゃあ判んねえだろ! デブのきったねー包茎チンポ咥えて腰振るんだよなぁ!」
さらにバシンと壁を蹴られ縮こまりながらも…コクリと頷く佐天。
それを見た男たちが嫌味に声をかける。
それを見た男たちが嫌味に声をかける。
不良B「テメエの穴に突っ込まれるチンコだ。 愛情こめてしゃぶってやれよなぁ?」
不良C「よかったなぁデブ? ようこそ男の世界へ…なんちってなぁ!」
ギャハハハと下卑た笑い声をあげながら少年を殴る男たち。
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:13:52.19 ID:p+o8WyD10 [16/41]
リーダー「おーおーあっちも随分と盛り上がってんなぁー」
リーダー「おーおーあっちも随分と盛り上がってんなぁー」
カチャカチャとバックルの音を鳴らしながら哂う男。
視線の先には盛大に笑い声をあげながら少年を殴りとばしている仲間達がいた。
視線の先には盛大に笑い声をあげながら少年を殴りとばしている仲間達がいた。
黒子「あ、あにゃたたち…こんなころをして…只で…すむらなんて思わないことれすわよ…」
力の入らない身体で一生懸命距離をとろうとしながらも黒子が脅す。
しかし、そんな脅しの効果はまったく意味を成さなかった。
しかし、そんな脅しの効果はまったく意味を成さなかった。
リーダー「カカカッ なーに言ってんだ? もうおまえらはな…終わりだよ。」
黒子「なっ…らにを?」
鈍った思考回路では目の前の男が何を言ったのか理解できず聞き返す黒子。
リーダー「俺らが扱ってる薬はレベルアッパーだけじゃねえって言っただろ?」
リーダー「この後はオメエらメスガキは俺らのアジトの第十学区へご招待だ」
黒子「そっ! そんなころっ!」
恐怖のあまり後ずさるが、無情にも黒子の背中を壁が押し返した。
黒子の目の前に立ち、そのまま力が入らない黒子の手を片手で掴み耳元で囁くリーダー。
黒子の目の前に立ち、そのまま力が入らない黒子の手を片手で掴み耳元で囁くリーダー。
253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:18:50.11 ID:p+o8WyD10 [17/41]
リーダー「なんせヤク中で狂ったオッサンの汚ねえ尻からひり出された糞を喜んで喰えるようになるまでぶっ壊れるんだ」
リーダー「なんせヤク中で狂ったオッサンの汚ねえ尻からひり出された糞を喜んで喰えるようになるまでぶっ壊れるんだ」
リーダー「案外…幸せかもしんねぇなぁ~?」
そう言いながら覆いかぶさろうとする男の身体。
黒子「やっ…やめらさいっ!」
必死に押し返そうとするも、無力な少女の細腕では些細な抵抗にしかならない。
リーダー「キキッ! いいねぇー。 そうやって抵抗されたほうが興奮するぜぇ!」
リーダー「おら! 泣け! 喚け! 許しを請え! 許しゃしねえけどよ!」
黒子「い、いや…おねえはま…おねえさまぁっ!」
黒子の悲鳴を聞き、ニヤリと笑う。
リーダー「ま、どーしてもって言うならその状態で解放してやっても構わないぜぇ~?」
黒子「!?」
260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/07(木) 19:24:40.28 ID:p+o8WyD10 [18/41]
リーダー「そのお姉さまとやらは…糞まみれになって恍惚となったテメエを見てどう思うかなぁ?」
リーダー「そのお姉さまとやらは…糞まみれになって恍惚となったテメエを見てどう思うかなぁ?」
黒子「なッ…」
それは単なる思いつきの言葉であったが、白井黒子を絶望させるには充分な一言だった。
リーダー「ヒッ! ヒヒヒッ! たまんねえ!」
リーダー「ジャッジメントだぁ? アンチスキルだぁ? カカカッ! おまえらとはなぁ! ココが違うんだよぉ!」
コンコンと指の先で自らの頭を叩く。
勝ち誇った哂い声が部屋に響く。
勝ち誇った哂い声が部屋に響く。
リーダー「テメエら『馬鹿』とは頭のデキが違うんだ! 頭のデキがなぁっ!」
その言葉に答えが返ってきた。
低く静かな声。
低く静かな声。
「オレもよぉ~…『馬鹿』だからよぉ~…難しいこたぁ判んねぇんだよなぁ~…」