③凶報
『全隊退却用意』
相手を撃ち落した事を示す爆発音に続いて、耳につけた通信機から指令が聞こえた。
俺は周りに敵がいないことを確認すると、設定してある退却方向に機体を向けた。
『敵の応援、ワープ航路より接近中』
「ちょっと遅かったな」
俺は戦闘機の中で独り言をつぶやくと、ワープレバーを引いた。
「初戦としては上々だったんじゃないか」
母艦の中を歩きながら、マーウィが言った。俺はポケットに両手を突っ込んだまま、笑って肩をすくめる。
まあこれで里菜に胸張って自慢してやれるかな。俺がいなくて無事にやってんのかな。
そんな事を考えてるうちに、中央広場に出た。重要な報告や結団式なんかをやるところだ。そこが何やら騒がしい。人があちこちに集まって、興奮した、不安そうな様子で話している。アルタが走って話を聞きに行った。マーウィと俺は壁際に立って、黙って顔を見合わせた。
しばらくして早足に帰ってきたアルタの返事は、短かった。
「俺たちの留守に、駐留所が襲われた」
俺は心臓がぽっかり消えてなくなったような感覚がした。
「里菜は、ミラは、無事なのか」
俺は唇を震わせながら言った。アルタの顔がまともに見られない。
アルタが視線をそらしながら唇を噛んだ。俺はそれを見て、のどが詰まった。そんな、あり得ない……。
俺は耳をふさいで冷たい壁にもたれて、ずるずるとへたりこんだ。耳鳴りがする他は、何も聞こえなかった。息が苦しかった。
(続く……)
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最終更新:2012年01月20日 16:35