公園カメラ


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 公園を囲む金網の向こうから、女がビデオカメラを構えていた。
 巨大な黒目のようなレンズがこちらを凝視している。歩く俺に合わせてゆっくり黒目をストーキングさせる。
「……おい」
 ドスを利かせて威嚇すると、女がビクッと肩をすくませた。
「ななななんでしょうかかか」
「そこで何をしている」
「……人間観察」
 そーっとスコープから顔を離すと、怯えた少女の表情が覗いた。
「なるほど、それじゃ観察と盗撮の違いを分かりやすく教えてくれ」 というか全然隠れてないだろ。
 瞬間、汗がどっと吹き出して両目がキョロキョロし始めた。コイツ、言い訳考えてやがるな。
「あ、あ、あなたのお肌の状態を診ているのですよダンナぁ!」
「必死に見繕った言い訳がその程度か!」
 それに美容外科医と寿司屋の大将の区別もはっきりさせて欲しい。
「いやー鮮明な映像で毛穴までクッキリですなーさすが新しいカメラは違いますなぁー」
 胡散臭い口調でカメラの売り込みをおっ始めた。金網の向こうなので一発蹴りを入れられないのが残念だ。
「よし、ひとまずこっちに出てこい。そしてカメラのメモリーカードをこっちによこせ」
「えっとー、そのメモカ……っていうのは新製品の名前ですのかね?」
「しっかり略称知ってるだろうがお前! それで無知を装ったつもりなのか!」
 痺れを切らした俺は、数m先の公園の入口に足を向けた。
「あ、ちょっちょちょっとどこ行くんですダンナぁー!?」
「今からお前のところへ向かう。そこで大人しく待っていろ」
「いやあのちょっとそれはやめておいた方がよろしいかとぉー」
「卑劣な盗撮魔をケーサツの前に突き出すまでは俺の気が静まらん!」
「あいやだからそういう意味ではなくてですねぇー」
 女を無視して公園の入口に近づく。足を庭内へ踏み込もうとしたその時――
 バチィッッ
「あだあぁっ!!!???」
 痛みと驚きと疑問が同時に身体を襲った。思わずバランスを崩して尻もちをつく。
 一瞬、何が起こったか、分からなかった。
 公園の入口に差し掛かる境界線、そこから<電撃>が発せられた。
「……は?」
 しばらく口を塞ぐことを忘れていた。はっとして今の現象を反芻する。右脚を喰らったはずだが、なぜか左手に痺れを感じる。これはあれか、身体の左側の部位の運動を繰り返すと右脳が鍛えられるとかいう胡散嘘臭い学説と少しは関係あったりするのか? なんてしょうもない他愛ない事を一瞬考えてしまったくらいに混乱していた。
「ほらぁーだから言ったじゃないっスかーやめとけってぇー」
 少女の頓狂な声が耳に障る。俺は身体を起こして少女を睨んだ。
「おい、何が起こってる、説明しろ」
「いやーそれはこっちがむしろ聞きたい事情なんですよねー困ったことにぃー」
 本当に困ったような顔をしていないのでこれはウソ決定事項だ、と俺は勝手に決め付け、内ポケットからケータイを取り出した。
「ここに電話がある。なので俺は今すぐケーサツに連絡することができる。さて、お前の回答は?」
「早まったことはやめてください准将ぉ!」
 寿司屋の大将からずいぶんジャンル違いの昇進を果たした。しかも准将てまたマニアックな。
「……わかった……わかった。説明するのでそのトカレフを下ろして冷静になりましょうねぇー……」
「どこの高校生がそんなイカツイ銃持ってるんだ!」
 若干ツッコミ所を間違えてるけど気にしたら負けだ。
 まあとにかくも交渉に応じたので携帯をポケットにしまった。ここまで来るのに大分体力を使った気がする。
「あのですねー、私、出られなくなっちゃったんですよぉー」
「それは……この公園からってことか?」
「はいそのとおりですぅー」
 への字に歪むまゆ毛。何回見てもワザとらしい仕草にしか見えない。
「お前はいつから中に居るんだ」
「えっとー、お日様を5回くらい見ましたかねぇー」
 つまり、この少女は5日間近くをこの公園で過ごしたことになる。にしては空腹で苦しんでいる感じでもない。食事処があるような公園でもないし。ますます怪しい。
「」