闇のゲーマー



深沢小夜子の歩く道は孤独であった。
 同行者であった毛利小五郎の安否はわからない──あのまま死んだかもしれなければ、まだ生きているかもしれない。
 だが、あの怪人がいる以上、小夜子はそちらに戻ることができないのだ。
 万が一戻ってきて殺されてしまったら……それこそ哀れで意味のないものになる。


 もう、あのことを後悔するのはやめよう。
 毛利小五郎はおそらく、生きていないだろう。
 だから、自分を救ってくれた彼への敬意と、逃げることしかできなかった自分の罪を受け入れてこの先も生きていこうと小夜子は思った。


 ──自分には心の底から会いたいと思っている人がいる。
 ──その人が笑顔を見せられるのは今、自分だけだ。
 ──その人が今、笑顔でいられるために。
 ──その人がまた、みんなに笑顔を見せられるようになるために。


 小夜子は医者だ。まだまだ、ここで出来ることはたくさんある。
 さすがに怪人と戦うときは逃げるしかないけど、傷ついた人を助けることくらいならできるはずだ。
 小夜子は何より、自分を心の支えにしてくれる人がいたから、こうして強く生きていける。
 まだ彼女に「好き」と言ったことはないけれど、橘朔也という、恋人が……。


「……お疲れのようですね、お嬢さん」


 後方から、男性の声がして小夜子は身構えた。
 何やら特殊な格好をしているようだったが、……良かった。怪人じゃない。
 だが、油断は禁物。最低限の警戒心を払わずに受け応える。


「少し、走ってきたので……」

「近くに休めるところならいくらでもあるでしょう。やましい気持ちはありませんから、一緒に休んでいきましょう」

「はぁ……」

「俺は石堀光彦。橘朔也の知り合いと言えば信じてもらえるかな?」


 小夜子が驚愕するのを、石堀は間近で見つめていた。心の底でニヤリと笑う。
 そう、彼女はこの橘という男性を大切に思っていることだろう。彼女を信頼させるには、この男の名前を出すのが一番。


「以前、小学校の同窓会で再会しましてね。小学校の頃は仲が良かったんです。以前、酔っ払ってあなたの写真を見せて話してくれたことがあります。深沢小夜子さんですよね?」

「彼が私の話を……?」


 一度、小夜子は橘が酔っ払って自分の話をするところを想像した。思ったよりもありえそうな光景である。
 彼はだいたい、その日あったことを何か教えてくれたりもするが、同窓会の話など聞いたことはなかった。
 いや、酔っ払って覚えていなかったとか?


「確か開業医をしていると聞きました。私、当時腕に怪我をしていたので、薦めてもらいました。まあ、結局仕事の都合上そちらに行くことはできなかったんですが……。しかし、こんなところで会うことになるとは、奇遇ですね」

「そうだったんですか……。橘くん、何か変なこと言ってませんでした?」

「いえ、元々彼と話したのも偶然近くの席になったからです。怪我の話であなたの名前を聞いただけで、あまり詳しくは知らないんですよ。あいつが今どういう仕事をしているのかも知りませんし……小学校の頃は仲が良かったんですけどね。近くで休みながら、今のあいつがどうしてるのか聞いてみたいですね」

「あ、それなら私も。橘くんが小学校のとき、どんな子供だったのか聞きたいです」


 警戒心の欠片もない、油断に満ちた笑顔で小夜子は石堀の話を聞き始めた。
 ともかくは、接触に成功した。毛利蘭よりもまずは、情報が手に入りやすい橘朔也の殺害が優先だ。
 毛利蘭──その特徴も石堀は知らないし、その精神状態も想像し難い。
 だが、橘朔也ならば……? 小夜子からいくらでも情報が手に入る。
 そういえば死者の放送というのもあった……。あのシステムが勝手に毛利小五郎の死を蘭に伝えてくれる。
 蘭に関して動くのはその後だ。彼女の外見も知らない今、無闇に彼女を捜そうとしても仕方がない。
 まあ、ともかくは小夜子が蘭やコナンという人間の存在を思い出してそちらに動くことを待つのみ。
 この女の反応を見る限りでは、橘という人間との間に芽生えた愛情はなかなか太いものと見える。……そう、実の親子を引き裂くのとは、また違った面白味があるかもしれない。


 それまで、この女は殺さないし殺させない。────ダークファウストやダークメフィストのような、ザギの操り人形となる存在に作り上げるためにも、この女は徹底的に保護する。まあ、死なない程度にだ。多少の怪我はどうとでもなる。
 そうして小夜子の信頼リストに入った石堀という男が、愛する橘を殺したら……? それこそ闇など解放する手間もなく、勝手に狂ってしまうようなもの。
 まあ、橘が勝手に死のうと、橘が生存のためにこの女を襲おうと……どういう形であれ面白ければいい。
 操り人形を駆使してこの殺し合いを徹底的に楽しみ、優勝さえ手にしてみせる。
 この女は適当に作り話でなんとかすればいい。先に大学以降の橘の性格を把握し、それを元にしたデータで小学校時代の橘の性格をイメージする。……そうすれば作り話も楽にできる。
 石堀はどちらにせよ、人を騙しきるには自信があった。



【1日目 黎明/D-4 街】


【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:今は小夜子と共に行動。橘が現われるまで彼女を保護。
2:毛利蘭を見つけて闇を解放してやる。
3:できたら小夜子の闇も解放したい。
4:そのためにも橘を殺す。今は橘の特徴について把握する。
5:後は凪にデュナミストの光が回ってくるのを待つ。
6:あの男(リュウガ)は何者?
※少なくとも凪がデュナミストになる前からの参戦です。
※小五郎と小夜子の交換した情報を立ち聞きしました。支給品や知りあいについて知っています。


【深沢小夜子@仮面ライダー剣】
【状態】疲労(中)
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、ガーベラの種@仮面ライダーTHE FIRST、リコの絵@ウルトラマンネクサス
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いからの脱出。
0:ともかく一度、石堀さんと休んで橘の話をする。
1:医者としてできる限りのことをする。
2:蘭、コナン、橘を捜す。
3:毛利さん…
4:石堀と行動する。およそ信頼。
※石堀について、幼少期の橘の知り合いと聞いてます。

065:私たち、正義のために戦います 投下順 067:料理でハラショー ~ルルーシュ編~
065:私たち、正義のために戦います 時系列順
050:漆黒の怪人 石堀光彦
050:漆黒の怪人 深沢小夜子

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最終更新:2011年08月25日 00:10