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正義と忠義



劉鳳が前方の銀の鎧を睨むのは、そこに正義があるからだ。
クールギンが前方の男に剣を向けるのは、そこに忠義があるからだ。
二人が戦いを挑むのは、戦わねばならないからだ。

その理由を最初に翳し、一歩踏み出したのはクールギンの方だった。
目の前の男の気概を見て、相手がただの人間ではないというのは概ねわかっている。
が、ただの人間だろうとただの人間でなかろうと、ここは先手必勝。相手の出方を伺うのもいいが、今は一歩でも踏み出て、自分の実力を示しておこう。
彼が格闘技の達人にせよ、何にせよ、結局は先に相手の自信を折っておけば勝機が浮かびやすい。
その外形が人間である以上は、クールギンも多少甘く見てしまう余地があった。

「甘いッ!」

地を削いで、クールギンの前方に異形の化け物が現われる。
その名も絶影。アルターのことを知らないクールギンは、突然現われたその機械的な物体に戸惑い、後退した。
その後退は一瞬後にクールギンがいた地面を突いた絶影の動きを読んでいたのだろうか。
マントをなびかせ、クールギンは剣の構えを変える。剣技を使うクールギンは、常に相手の攻撃の一歩先を読むほどの達人でもある。
よって、絶影に対抗しうる構えが必要だった。
首の横で剣を立て、絶影の両腕を凝視した。両腕というには何かが違った。
第三、第四の腕とも言える何かが生えている。──この一つ一つの動きを読まねばならないのか。
気は抜けそうに無い。

「貴様、何者だ!?」

その問いを詰めるにも、時間がかかった。
絶影に攻撃する隙がなく、また何かを待っているかのように敵も動かない。
だから、その問いをするのには異様な間があった。
その問いに律儀に答える劉鳳か、──断じて否。
無論、悪に名乗る名など無いと一瞥で答える。
クールギンには、余計な質問に答えてもらう権利すらないということだ。つまりは、今は攻撃するしかない。
相手の出方を伺うにも、絶影はクールギンの攻撃を待っているように二王立ちするのみ。

即座に絶影の懐に入り、まずはその宙を浮かせる足を狙い、一瞬で斬れ心地を確かめる。
この足は絶影自身が自由自在に動ける部位の範囲らしい。ということは、まずはここを斬り、一番ヒットの長い攻撃箇所を封じるのが乙だろう。
アルターによって構成された足さえも、クールギンの剣は斬る。
クールギン自体が、メカを斬ることに慣れたほどの剣の達人であったことも一因だろう。
クールギンは下半身を失った絶影の上体が崩れ落ちてくる可能性を心配し、しゅたっと後ろに後退した。当然のように、絶影は地面に崩れ落ちていく。

「──どうだ、戦闘ロボットはこの凱聖クールギンがスクラップにしてやったぞ」

が、クールギンも構えを崩すことはできなかった。
絶影に死の色を感じなかったからだ。敵を破った感覚とは何かが違う──。
そう、機能停止する戦闘ロボットの火花も、暴走もアルターである絶影にはない。又、実際に絶影はアルターとしての消滅を見せていなかった。
それは即ち、この絶影がまだ戦えるということを示していた。

しかし、敢えてここでは劉鳳がクールギンに向かって走っていく。
人としては並ならぬ走力だ。腕を振るような様子がなく、両手の先を後方下に下げたような形で、風を切って走っていた。
というのも、彼は一瞬の腕の疲れを気にしたのだろう。
クールギンとの間合いが詰められると、「毒虫が…」と呟くと共に上段回し蹴りでクールギンを狙った。
それもクールギンの左腕が身体や頭に直接当たるのを防いでいる。
クールギンの鎧がかなり硬い材質でできているということはわかったが、攻撃をやめるつもりなど毛頭ない。鎧だろうと何だろうと、撃ち貫くまで打つのみ。
長い足や手は、敵の各所を狙って何度も打たれる。そのほぼ全てをクールギンは最低限のダメージで済むよう、腕で防御を繰り返した。

このとき、クールギンは相手が所詮人間であるということに気付く。
劉鳳の一撃一撃は、蚊に刺されたような痛み痒みさえない。
最低限のダメージに済むよう受けているとはいえ、これでは最大限のダメージでも大差はないということだろう。
一度、胸に彼の蹴りを受け、一瞬の隙とともに剣を構えなおす。
正面突き。
フェンシングのように、前方へと愛用の剣を突き出した。

……届かない?

剣が劉鳳の体に当たることはなかった。
劉鳳との戦いの最中に、地面をすべるようにして現われた絶影の体がクールギンの両腕を固めていた。
絶影の両腕が、クールギンの体に絡められ、クールギンの自由は奪われる。

「……顔を見せろ!! 貴様を『『『断罪』』』する!」

劉鳳は早歩きでクールギンに近寄ると、その鎧兜を抉り投げた。だが、その下にもまた彼は仮面を被っている。

「首を斬るか?」

「いや、貴様のその捻じ曲がった性格を、修正してやる!」

劉鳳は怒りに任せ、クールギンの顔に一発正拳を浴びせた。
クールギンがこの程度でへこむはずはないが……その一撃はなかなか効く。想像以上だ。
生身とは、存外痛みを伴うものだと再確認させられる。

その刹那──

「……絶影?」

次の一撃を加えようと拳を構えたとき、絶影がアルターを発動するときのまだら模様を発したのが見えた。
それは、アルターの消滅を意味する。
直後に絶影の姿は消えた。もちろん、クールギンの両腕の自由も解放される。
クールギンは、剣で劉鳳を殺そうとしたが────やめた。
ここでこれ以上やりあうメリットを感じない。なぜ絶影を消したのかはわからないが、ともかくこのタイミングで絶影が消えるというのは少々不気味で、何か思惑があるのではないかという恐怖にも繋がっていた。
この男の正体や素性に関してもわからないことが多すぎる。

クールギンは、地面に叩きつけられた自らの鎧兜を拾い上げ、再び被る。
劉鳳はその様を見ているが、どうやらそこに戦意は見られない。

「──次に会う時は、貴様の首を貰い受ける」

「構わん。……無論、できたらの話だが」

互いにきつい言葉を浴びせあい、その場は互いの戦意を止めておいた。
劉鳳には目的がある。相手の戦意を失わせたのだから、しばらくあの男が殺し合いをするということはなさそうに見えた。おそらく、自分のような人間が何人もいる可能性が見え、少しは怯えることだろう。それに、絶影が消えたことも気になる。
クールギンもまた、これほどの強者と正面から戦うことにメリットを感じなかった。劉鳳を殺すのが必ずしもクールギンより強い者とは限らない。それがバトル・ロワイアルだ。今、ここで倒しておいて得なのは確かかもしれないが、今確実に倒せる保障がない。この場は撤退が堅実だ。

劉鳳は真正面に、遊園地に向かっていく。
クールギンは、彼とは違う方向の街の中に消えていく。

(なぜ、絶影が消えた……? わからない、だが約束を取り交わした以上は、それを反故にすることは許されない……!)

一抹の不安を胸に、劉鳳はその場を後にした。

047:等価交換 投下順 048:狂気に変わりゆく
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