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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」②
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meteor089
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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」②
107 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/20(水) 00:31:29.70 ID:sVoXyt0Go
ちょっと大き目の総合病院の婦人科。
その待合室で、上条と吹寄は軽く手を繋いでソファに座る。
周りのほとんどは、当然のことながら20代や30代と思わしき女性で埋め尽くされている。
付き添いの男性の姿もちらほら見かけるが、上条と違いきちんと収入を得て、家庭を築く能力のある人に見えた。
吹寄が、付き添ってくれと上条にお願いするくらい不安を抱えているのに、
こんな素っ気無い触れ合い方しか出来ない理由は、簡単だった。
だって心底不安そうに上条の腕なんて抱えていたら、誰がどう見ても若気の至りで大変なことになっちゃったカップルだからだ。
そうではないのだ。確かに自分は母乳が出てしまうというおかしな状態にあるが、別に妊娠はしていない。
そもそも数日前にアレは終わったばかりだ。
まさかそこから古代中東のとあるご婦人のように、男性と逢坂の関を越えずに懐胎するわけはないだろう。
さすがに自分は聖母なんていうしち面倒くさい運命は背負っていないと吹寄は信じている。
その待合室で、上条と吹寄は軽く手を繋いでソファに座る。
周りのほとんどは、当然のことながら20代や30代と思わしき女性で埋め尽くされている。
付き添いの男性の姿もちらほら見かけるが、上条と違いきちんと収入を得て、家庭を築く能力のある人に見えた。
吹寄が、付き添ってくれと上条にお願いするくらい不安を抱えているのに、
こんな素っ気無い触れ合い方しか出来ない理由は、簡単だった。
だって心底不安そうに上条の腕なんて抱えていたら、誰がどう見ても若気の至りで大変なことになっちゃったカップルだからだ。
そうではないのだ。確かに自分は母乳が出てしまうというおかしな状態にあるが、別に妊娠はしていない。
そもそも数日前にアレは終わったばかりだ。
まさかそこから古代中東のとあるご婦人のように、男性と逢坂の関を越えずに懐胎するわけはないだろう。
さすがに自分は聖母なんていうしち面倒くさい運命は背負っていないと吹寄は信じている。
「け、結構待たされるな」
「そうね……。よく混んでいるもの」
「そうね……。よく混んでいるもの」
なんとかクラブと名前のついた育児や出産にかかわる雑誌をめくる女性が多い中、
ひたすら上条は居心地の悪さを感じていた。
女性から向けられる視線は、たぶん上条と吹寄どちらにも同等の非難が込められているように思う。
責任も取れないのに早まった男と、それに流された尻の軽い女、そういう非難だろう。
一方、数少ない男性からは、はっきりと上条は怒りのようなものをぶつけられているように思った。
責任も取れないくせにやってはいけないことをした男、そういう非難らしい。
……まあ、もし上条が吹寄を妊娠させたのなら、周囲の視線の非難はごもっともだと思う。
問題は上条はこれっぽっちもそんなことはしていないことなのだが。
ついでに言うと、たしか自分の両親は上条の歳にプラス5くらいの年齢で上条を授かっているので、
ちょっとくらい若くても、本人達が望んでいるならそれで良いのではないかと上条は思っていた。
ひたすら上条は居心地の悪さを感じていた。
女性から向けられる視線は、たぶん上条と吹寄どちらにも同等の非難が込められているように思う。
責任も取れないのに早まった男と、それに流された尻の軽い女、そういう非難だろう。
一方、数少ない男性からは、はっきりと上条は怒りのようなものをぶつけられているように思った。
責任も取れないくせにやってはいけないことをした男、そういう非難らしい。
……まあ、もし上条が吹寄を妊娠させたのなら、周囲の視線の非難はごもっともだと思う。
問題は上条はこれっぽっちもそんなことはしていないことなのだが。
ついでに言うと、たしか自分の両親は上条の歳にプラス5くらいの年齢で上条を授かっているので、
ちょっとくらい若くても、本人達が望んでいるならそれで良いのではないかと上条は思っていた。
「吹寄制理さん」
「っ! は、はい!」
「先生がこちらでお待ちです」
「っ! は、はい!」
「先生がこちらでお待ちです」
ナースが吹寄の名を呼ぶと、緊張を隠せない様子で吹寄が立ち上がった。
鞄を上条に預け、そっと目線を重ねあわす。
鞄を上条に預け、そっと目線を重ねあわす。
「ここで待ってるから」
「……うん。ありがと、上条」
「……うん。ありがと、上条」
緊張を緩ませてやれたのだろうか、すこしだけ吹寄の目じりが柔らかい曲線を描くようになった気がした。
吹寄は踵を返し、診察室のほうへと消えて行った。パタリと、扉が閉められる。
――さて、ここからだむしろ我慢のときだった。
何せ、上条は制服を着ている。場違いなことこの上ない。
せめて私服を着てくれば、童顔であることくらいは目を瞑ってもうちょっと大人に見てもらえたかもしれないのに。
暇を潰せるような何かでもあればよかったのだが、なんとかクラブとかいう育児雑誌も、なんとかページとかいう料理雑誌も、なんとかセブンとかいう女性誌も、正直どれにも上条は手を伸ばせない。
もうちょっと男性に優しい空間にする配慮はないのだろうか。
男性誌なり漫画の一冊でもあれば、もっと周囲の視線を無視する方法もあったのに。
上条は、チクチクとした非難の視線を実情の10倍くらいに増幅させて感じながら、部屋の隅で縮こまる。
あと、何分で吹寄は出てくるだろうか。
すぐ終わる手術だから、みたいな事を言われて30分とか1時間とか掛かったら、自分は息苦しさで窒息しかねなかった。
すがる思いで、吹寄が入って行った扉を眺める。勿論すぐに吹寄が出てくるわけなんて無いのに。
だが、思いが届いたみたいに、不意に上条の視線の先でその扉がガチャリと音を立てた。
出てきた女の人が、中へと頭を下げて挨拶している。
108 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/20(水) 00:35:08.54 ID:sVoXyt0Go
吹寄は踵を返し、診察室のほうへと消えて行った。パタリと、扉が閉められる。
――さて、ここからだむしろ我慢のときだった。
何せ、上条は制服を着ている。場違いなことこの上ない。
せめて私服を着てくれば、童顔であることくらいは目を瞑ってもうちょっと大人に見てもらえたかもしれないのに。
暇を潰せるような何かでもあればよかったのだが、なんとかクラブとかいう育児雑誌も、なんとかページとかいう料理雑誌も、なんとかセブンとかいう女性誌も、正直どれにも上条は手を伸ばせない。
もうちょっと男性に優しい空間にする配慮はないのだろうか。
男性誌なり漫画の一冊でもあれば、もっと周囲の視線を無視する方法もあったのに。
上条は、チクチクとした非難の視線を実情の10倍くらいに増幅させて感じながら、部屋の隅で縮こまる。
あと、何分で吹寄は出てくるだろうか。
すぐ終わる手術だから、みたいな事を言われて30分とか1時間とか掛かったら、自分は息苦しさで窒息しかねなかった。
すがる思いで、吹寄が入って行った扉を眺める。勿論すぐに吹寄が出てくるわけなんて無いのに。
だが、思いが届いたみたいに、不意に上条の視線の先でその扉がガチャリと音を立てた。
出てきた女の人が、中へと頭を下げて挨拶している。
108 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/20(水) 00:35:08.54 ID:sVoXyt0Go
「先生、どうもありがとうございました。失礼します」
――ざわ、ざわ。
上条は、自分達よりその女性のほうがはるかに周囲の視線を集めていることに気付いた。
そりゃあ、無理も無いだろう。吹寄が婦人科にいるより、不自然だ。
身体的特徴はさておいて、どうしてあの人はあの可愛らしい色使いのワンピースを着ているのだろうか。
……あの歳で。
ついでに言うと恐らく事実を知らない周囲の人々は、十代前半、それも小学生くらいの女の子が、
一人で婦人科に診察に来ているものと勘違いしていることだろう。
上条が周囲と違う理由は簡単だ。
何せ、その身長135センチの極めて童顔の女性は、上条のクラスの担任、月詠小萌なのだから。
上条は、自分達よりその女性のほうがはるかに周囲の視線を集めていることに気付いた。
そりゃあ、無理も無いだろう。吹寄が婦人科にいるより、不自然だ。
身体的特徴はさておいて、どうしてあの人はあの可愛らしい色使いのワンピースを着ているのだろうか。
……あの歳で。
ついでに言うと恐らく事実を知らない周囲の人々は、十代前半、それも小学生くらいの女の子が、
一人で婦人科に診察に来ているものと勘違いしていることだろう。
上条が周囲と違う理由は簡単だ。
何せ、その身長135センチの極めて童顔の女性は、上条のクラスの担任、月詠小萌なのだから。
「――!! やっべ!」
不味い、コレは不味い。
こんなところで担任に見つかるとか、どんな罰ゲームだよって言いたくなるくらい不味い。
やましい事があるかどうかではないのだ。
普通の男子高校生として、婦人科の待合室にいるところを見られるなんて、恥辱以外の何者でもなかった。
身を隠すところはないかと振り返る。
だが、当たり前だが病院の待合室にそうそう気の利いた死角があるはずも無い。
そして小萌は良い先生だった。視界の中に知っている学生がいれば、ちゃんと気付いて見守って挙げられるような。
……そういう教師の美徳が、今はとにかく邪魔に感じる上条だった。
慌てて鞄からテキトーに本を取り出して広げて、思いっきり下を向く。
腰をずり下げて座高を低くし、ちょっとでも視界に入りにくいようにと涙ぐましい努力をする。
あとは、見つからないようにと願うことしか出来なかった。
こんなところで担任に見つかるとか、どんな罰ゲームだよって言いたくなるくらい不味い。
やましい事があるかどうかではないのだ。
普通の男子高校生として、婦人科の待合室にいるところを見られるなんて、恥辱以外の何者でもなかった。
身を隠すところはないかと振り返る。
だが、当たり前だが病院の待合室にそうそう気の利いた死角があるはずも無い。
そして小萌は良い先生だった。視界の中に知っている学生がいれば、ちゃんと気付いて見守って挙げられるような。
……そういう教師の美徳が、今はとにかく邪魔に感じる上条だった。
慌てて鞄からテキトーに本を取り出して広げて、思いっきり下を向く。
腰をずり下げて座高を低くし、ちょっとでも視界に入りにくいようにと涙ぐましい努力をする。
あとは、見つからないようにと願うことしか出来なかった。
「それでは、診察料がこちらになります」
「はい、ありがとうございますです」
「はい、ありがとうございますです」
上条からは離れた受付で、小萌先生が支払いを済ませる声がする。
出口は受付の真横だ。このまま、何事もなく過ぎてくれそうだ。
ほっと、肩の力を緩めるように、息をする。
まさか、それが仇となったわけではあるまいが。
出口は受付の真横だ。このまま、何事もなく過ぎてくれそうだ。
ほっと、肩の力を緩めるように、息をする。
まさか、それが仇となったわけではあるまいが。
「で、上条ちゃん? どうしてここにいるですか?」
ビクゥ! と上条は飛び上がりそうになった。
慌てて確認すると、小萌先生は上条の目の前にいた。
にっこりと微笑むその後ろに、何割かの怒りと、そして心配を覗かせていた。
慌てて確認すると、小萌先生は上条の目の前にいた。
にっこりと微笑むその後ろに、何割かの怒りと、そして心配を覗かせていた。
122 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/20(水) 23:49:39.63 ID:sVoXyt0Go
「え、えーと先生。落ち着いて聞いてくれますか」
「落ち着いて聞けるような状況ですか!? 上条ちゃん、その鞄うちの学校のですよね?」
「落ち着いて聞けるような状況ですか!? 上条ちゃん、その鞄うちの学校のですよね?」
微笑んだのは最初の一声の前だけだった。
小萌先生は瞬時に激昂して上条が抱えた鞄に目をやる。吹寄のと、二つ。
要するにここで上条が、同じ高校の女の子の診察に付き添っていることがバレバレだった。
小萌先生は瞬時に激昂して上条が抱えた鞄に目をやる。吹寄のと、二つ。
要するにここで上条が、同じ高校の女の子の診察に付き添っていることがバレバレだった。
「ま、まあ見てのとおりです。てか先生! その、先生も体の都合がアレなんですか」
「も? つまり上条ちゃんが付き添っている女の子は……そういうことになってるんですか?」
「そういうことって、いやあの」
「上条ちゃん。小萌先生は、学生さんがそうやって隠し立てをした事にも出会ったことがあるです。
だから、分かるなんて言ったら怒るかもですけど、上条ちゃんの気持ちも、
相手の女の子の気持ちも、たぶん分かるです。
親御さんに話すのは、きっと先生に話すよりもっと辛いでしょう?
絶対に笑ったりしないし、絶対に裏切ったりなんてしないから、全部、先生に話してくれませんか?
……こういうことで、彼氏も彼女も不幸になる姿を、先生は絶対に絶対に、見たくないです。
だから上条ちゃん。真剣に先生に向き合ってください。
お付き合いしてる女の子を、幸せにしてあげたいですよね?」
「も? つまり上条ちゃんが付き添っている女の子は……そういうことになってるんですか?」
「そういうことって、いやあの」
「上条ちゃん。小萌先生は、学生さんがそうやって隠し立てをした事にも出会ったことがあるです。
だから、分かるなんて言ったら怒るかもですけど、上条ちゃんの気持ちも、
相手の女の子の気持ちも、たぶん分かるです。
親御さんに話すのは、きっと先生に話すよりもっと辛いでしょう?
絶対に笑ったりしないし、絶対に裏切ったりなんてしないから、全部、先生に話してくれませんか?
……こういうことで、彼氏も彼女も不幸になる姿を、先生は絶対に絶対に、見たくないです。
だから上条ちゃん。真剣に先生に向き合ってください。
お付き合いしてる女の子を、幸せにしてあげたいですよね?」
怒ってると思ったら、あっという間に小萌先生は泣き顔になって、上条に自首を勧めだした。
そんな若気の至りをやらかしていない潔白な身としては対応に困る言い草だった。
ちょっと回りを見回すと、周囲の女性が一斉に上条から視線を外した。
そんな若気の至りをやらかしていない潔白な身としては対応に困る言い草だった。
ちょっと回りを見回すと、周囲の女性が一斉に上条から視線を外した。
「え、えっと。先生」
「なんですか、上条ちゃん」
「別に、そういう話でここにいるんじゃなくてですね」
「じゃあその手に持ってる本はなんですか!」
「え?」
「なんですか、上条ちゃん」
「別に、そういう話でここにいるんじゃなくてですね」
「じゃあその手に持ってる本はなんですか!」
「え?」
上条が手にしているのは、さっき小萌先生から顔を隠すのに慌てて鞄から取り出したノートかテキストだ。
ろくに確認もしていなかったので、今になってようやく目を落とす。
開かれたページには、いやらしさを感じさせないタッチの女の子の裸と、子宮だとかそういう体の描写と、
十月十日とかおしべめしべとかそういう感じのことが書かれていた。保健体育の教科書だった。
健全な男子としてこんな教科書を上条は絶対に鞄に入れて持ち運びなどしない。
まず間違いなく、きっと真面目な吹寄が鞄に入れていたものだった。
――――というか、状況証拠としてこの上なく怪しい書物のヤバげなページを上条は開いていた。
ろくに確認もしていなかったので、今になってようやく目を落とす。
開かれたページには、いやらしさを感じさせないタッチの女の子の裸と、子宮だとかそういう体の描写と、
十月十日とかおしべめしべとかそういう感じのことが書かれていた。保健体育の教科書だった。
健全な男子としてこんな教科書を上条は絶対に鞄に入れて持ち運びなどしない。
まず間違いなく、きっと真面目な吹寄が鞄に入れていたものだった。
――――というか、状況証拠としてこの上なく怪しい書物のヤバげなページを上条は開いていた。
「ちちちち違います! これは上条さんが先生から顔を隠すためにですね」
「上条ちゃん」
「上条ちゃん」
慌てて誤魔化そうとした上条に、ぽつんと小萌先生が一言こぼす。
目じりには、もう涙がじわっと来ていた。
諭すように、怒るように小萌先生は上条を睨みつける。
目じりには、もう涙がじわっと来ていた。
諭すように、怒るように小萌先生は上条を睨みつける。
「駄目です。上条ちゃんが、そうやって嘘をついて相談できる人を減らしたら、
一番苦しむのは上条ちゃんの彼女さんなのですよ。
誰にも話せない苦しみなんて、きっと男の人には想像も出来ないことです。
先生は、上条ちゃんが女の子を苦しませて平気な子だとは思いません。
上条ちゃんだってきっと、現実を受け止めるのは苦しいことでしょうけど、
上条ちゃんの彼女と、お腹にいる新しい命のために、上条ちゃんは大人にならなきゃいけないです」
「先生……」
一番苦しむのは上条ちゃんの彼女さんなのですよ。
誰にも話せない苦しみなんて、きっと男の人には想像も出来ないことです。
先生は、上条ちゃんが女の子を苦しませて平気な子だとは思いません。
上条ちゃんだってきっと、現実を受け止めるのは苦しいことでしょうけど、
上条ちゃんの彼女と、お腹にいる新しい命のために、上条ちゃんは大人にならなきゃいけないです」
「先生……」
まくし立てられて、上条は弁解のタイミングを失った。
その隙を突くように、小萌先生が上条を、慈しむように抱きしめる。
その隙を突くように、小萌先生が上条を、慈しむように抱きしめる。
123 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/20(水) 23:51:12.32 ID:sVoXyt0Go
「先生の前でなら、どんなに弱音を吐いても良いし、心の弱い部分を見せても良いです。
そんなことで、先生は上条ちゃんを見限ったりなんてしません。
だから、彼女さんの前では、上条ちゃんは強くいてあげてください。
ほら、妊娠確認の尿検査に、たぶんもう少ししたら診察室から出てくるです。
それまでにしゃんとしてください」
「いやだから先生」
「っ!」
そんなことで、先生は上条ちゃんを見限ったりなんてしません。
だから、彼女さんの前では、上条ちゃんは強くいてあげてください。
ほら、妊娠確認の尿検査に、たぶんもう少ししたら診察室から出てくるです。
それまでにしゃんとしてください」
「いやだから先生」
「っ!」
言い募ろうとすると、さらに上条は強く抱きしめられた。
どうも、理由を説明しようとすると上条が言い訳をしているように思われるらしい。
そしてそれほどに上条が追い詰められているのかと思い込んで、せめて心を癒せるようにと、
精一杯心を込めて、上条を抱きしめてくれているらしかった。
……上条が顔を上げるたびにすっと外される視線が、ひたすら痛い。
学生のうちに相手を妊娠させた高校生と思わしき少年が、身長135センチのお子様に抱きしめられているのだ。
これを見たらもう犯罪というか、一体どういう状況なんだと問わずにはいられない状態に違いなかった。
上条は誤解を解こうと思うのだが、どうも、小萌先生は聞く耳持っちゃいなかった。
吹寄が帰ってきて、誤解を解いてくれるのを待つほうがいいだろうか。
どうも、理由を説明しようとすると上条が言い訳をしているように思われるらしい。
そしてそれほどに上条が追い詰められているのかと思い込んで、せめて心を癒せるようにと、
精一杯心を込めて、上条を抱きしめてくれているらしかった。
……上条が顔を上げるたびにすっと外される視線が、ひたすら痛い。
学生のうちに相手を妊娠させた高校生と思わしき少年が、身長135センチのお子様に抱きしめられているのだ。
これを見たらもう犯罪というか、一体どういう状況なんだと問わずにはいられない状態に違いなかった。
上条は誤解を解こうと思うのだが、どうも、小萌先生は聞く耳持っちゃいなかった。
吹寄が帰ってきて、誤解を解いてくれるのを待つほうがいいだろうか。
「先生」
「なんですか、上条ちゃん?」
「先生は、何で病院に?」
「……ただの生理不順です。先生にはお相手はいませんから、そういうことではないのですよ」
「なんですか、上条ちゃん?」
「先生は、何で病院に?」
「……ただの生理不順です。先生にはお相手はいませんから、そういうことではないのですよ」
何気なく聞いて、何気なく答えられてから上条は不味いと思った。
女の人に婦人科に来た理由を問うなんて、失礼もいいところだった。
女の人に婦人科に来た理由を問うなんて、失礼もいいところだった。
「上条ちゃん、落ち着きましたか?」
「はあ、先生こそ、落ち着きました?」
「ふぇ?」
「はあ、先生こそ、落ち着きました?」
「ふぇ?」
上条の胸、もといおなかから埋めた顔を上向かせて、小萌先生が首をかしげた。
「ちゃんと俺の話し、聞いてくれますか、先生」
「勿論です! 先生はさっきからずっと上条ちゃんの言葉を待ってるです!」
「いや、そうじゃなくて」
「勿論です! 先生はさっきからずっと上条ちゃんの言葉を待ってるです!」
「いや、そうじゃなくて」
まるで聞いちゃいなかった。
「いいです先生。とりあえず診察室からアイツが戻ってきたら、話するってことで」
「わかりました。ちゃんと、話してくださいね」
「ええ、全部話します」
「わかりました。ちゃんと、話してくださいね」
「ええ、全部話します」
小萌先生はちょっと怒った感じで、とすんと乱暴に上条の隣に腰を下ろした。
そして上条の隣でキッと顔を上げ、周りの視線から上条を間持つように、周囲を見渡した。
そういう気遣いという意味では、小萌先生はとてもいい先生なのだった。
二人で座っていると、ほどなくて診察室の扉が開き、吹寄が出てきた。
ありがとうございましたとお礼を言い、丁寧に頭を下げて踵を返す。
そして、さっきよりもいくらか晴れやかになった顔で、こちらに戻ってきた。
……はずだったのだが、こちらの様子に気付いた瞬間、困った顔に変わっていた。
そして上条の隣でキッと顔を上げ、周りの視線から上条を間持つように、周囲を見渡した。
そういう気遣いという意味では、小萌先生はとてもいい先生なのだった。
二人で座っていると、ほどなくて診察室の扉が開き、吹寄が出てきた。
ありがとうございましたとお礼を言い、丁寧に頭を下げて踵を返す。
そして、さっきよりもいくらか晴れやかになった顔で、こちらに戻ってきた。
……はずだったのだが、こちらの様子に気付いた瞬間、困った顔に変わっていた。
「吹寄ちゃん、だったですか」
「え? 先生?」
「上条ちゃんの、赤ちゃんを授かったのは」
「――へ?」
「え? 先生?」
「上条ちゃんの、赤ちゃんを授かったのは」
「――へ?」
口を手で覆ってもう今にも泣きそうな小萌先生を前に、吹寄は混乱するしかなかった。
145 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/22(金) 03:47:13.84 ID:n3GpRAbqo
「あの……先生、何を」
「吹寄ちゃん、その、今から検査ですか?」
「いえ、もう診察は終わりです。というか先生、勘違いを」
「それって……! じゃあ吹寄ちゃん、赤ちゃんを授かってはいなかったですか?」
「え、ええ。それはまあ」
「吹寄ちゃん、その、今から検査ですか?」
「いえ、もう診察は終わりです。というか先生、勘違いを」
「それって……! じゃあ吹寄ちゃん、赤ちゃんを授かってはいなかったですか?」
「え、ええ。それはまあ」
上条を含め吹寄は男性とそういう仲になった覚えは無い。
だから当然そう返事をするわけだが、どうも小萌先生は違う受け取り方を下らしい。
はぁぁぁぁ、と安堵のため息を深くついて、それからキッと二人を睨みつけた。
だから当然そう返事をするわけだが、どうも小萌先生は違う受け取り方を下らしい。
はぁぁぁぁ、と安堵のため息を深くついて、それからキッと二人を睨みつけた。
「とりあえず、吹寄ちゃん。大変なことになっていないのは良かったです。
でも、二人にはちゃんと、先生として言っておかなければいけないことがあります。
ちょっとこっちに来るです!」
でも、二人にはちゃんと、先生として言っておかなければいけないことがあります。
ちょっとこっちに来るです!」
小萌先生はそう言ってバッグを持って婦人科を出て行った。
「……どうする?」
「どうするって、先生が来なさいって言っているんだから行くしかないでしょ」
「仕方ないか。それで吹寄、体、大丈夫だったのか?」
「どうするって、先生が来なさいって言っているんだから行くしかないでしょ」
「仕方ないか。それで吹寄、体、大丈夫だったのか?」
そう上条が尋ねると、吹寄は少し嬉しそうな顔をして微笑んだ。
「うん。飲んだ薬の組み合わせが悪かったんだって。前例があるみたいで、すぐわかったのよ。
一週間くらいは続いちゃうから面倒なんだけど、体とかに別条は無いって」
「そっか、良かったな、吹寄。病気だったらやっぱり辛いもんな」
「そうね。……ありがと、上条」
「お、おう」
一週間くらいは続いちゃうから面倒なんだけど、体とかに別条は無いって」
「そっか、良かったな、吹寄。病気だったらやっぱり辛いもんな」
「そうね。……ありがと、上条」
「お、おう」
ふわりと笑った吹寄の笑顔が、いつになく険が取れていて可愛らしかった。
ドギマギしてちゃんと返事を返せなかった自分が恥ずかしくなった。
ドギマギしてちゃんと返事を返せなかった自分が恥ずかしくなった。
「上条、責任とるって言ったこと、後悔してない?」
「突然なんだよ」
「もし、病気だったら、責任取らないでいいって言うつもりだったのよ。
だってそんな風に付き合うって言ってくれた人に、病気持ちの自分を押し付けるのは嫌だから。
でも、そう言うのじゃないなら責任取ってって、言ってもいいのかなって」
「責任とか、そういう言葉はもういいだろ」
「え?」
「好きでお前の隣にいるんだから、そういう言葉使うなよってことだ」
「突然なんだよ」
「もし、病気だったら、責任取らないでいいって言うつもりだったのよ。
だってそんな風に付き合うって言ってくれた人に、病気持ちの自分を押し付けるのは嫌だから。
でも、そう言うのじゃないなら責任取ってって、言ってもいいのかなって」
「責任とか、そういう言葉はもういいだろ」
「え?」
「好きでお前の隣にいるんだから、そういう言葉使うなよってことだ」
それだけ言って、上条がぷいとそっぽをむいた。
なんだか、その照れた態度が嬉しくなる。
見守ってくれる人だとか、見守ってあげる人だとかになりがちな年の差カップルじゃなくて、
上条とは対等な感じがする。そういう、等身大の上条が傍にいてくれるのが嬉しかった。
なんだか、その照れた態度が嬉しくなる。
見守ってくれる人だとか、見守ってあげる人だとかになりがちな年の差カップルじゃなくて、
上条とは対等な感じがする。そういう、等身大の上条が傍にいてくれるのが嬉しかった。
「ほら、小萌先生待たすとまた怒られるし、さっさと行こうぜ」
「うん」
「うん」
上条が出した手に、吹寄は軽く自分の手を絡めた。
156 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/23(土) 12:27:33.06 ID:Bel3T35Uo
二人で婦人科を出て、先に出た小萌先生をさがす。
階段を下りた先、総合受付の片隅にあるソファで、先生は待っていた。
階段を下りた先、総合受付の片隅にあるソファで、先生は待っていた。
「先手必勝で、とりあえず誤解を解かなきゃな」
「そうね。なんか、変な誤解をされたままなのは、ちょっと困るし」
「そうね。なんか、変な誤解をされたままなのは、ちょっと困るし」
何せ小萌先生の脳裏では、上条と吹寄が大人の階段を上ってしまったことになっているのだ。
まだキスと胸を吸ったことしかない上条としては、ちょっと困る。
小萌先生もこちらに気付いたらしく、コクリと頷いて二人を招いた。
まだキスと胸を吸ったことしかない上条としては、ちょっと困る。
小萌先生もこちらに気付いたらしく、コクリと頷いて二人を招いた。
「上条ちゃん、吹寄ちゃん」
「先生、とりあえず俺の言うこと聞いてください」
「え?」
「先生、とりあえず俺の言うこと聞いてください」
「え?」
諭すつもりで、主導権を握ろうとした小萌先生を上条は制止する。
不意を突かれた小萌先生が戸惑いを見せた。
その隙に、上条は言葉をさしはさむ。
不意を突かれた小萌先生が戸惑いを見せた。
その隙に、上条は言葉をさしはさむ。
「先生は俺と吹寄が、その、そういうことをして吹寄を妊娠させちまったとか、
そういうことを疑ってましたけど、別にそういう理由で俺達はここに来たんじゃありません」
「えっ?」
「上条の言っていることは本当です。あの、ご心配をおかけしてすみません。
全然、そういうのとは違うんです。あたしこの間体調不良で薬を飲んで、次の日能力開発受けたじゃないですか」
「あっ、もしかしてここ最近問題に挙がってるアレに、吹寄ちゃんも」
そういうことを疑ってましたけど、別にそういう理由で俺達はここに来たんじゃありません」
「えっ?」
「上条の言っていることは本当です。あの、ご心配をおかけしてすみません。
全然、そういうのとは違うんです。あたしこの間体調不良で薬を飲んで、次の日能力開発受けたじゃないですか」
「あっ、もしかしてここ最近問題に挙がってるアレに、吹寄ちゃんも」
思い当たる節が、小萌先生にはあるらしかった。
「はい。さっきお医者さんも言っていました。こないだ飲んだ能力開発の新薬、ちょっと問題になっているって」
「たしか、月経の終わり頃の女の子によくある風邪薬と一緒に飲ませると、その、おっぱいが」
「……ええ、まあ。それで困っていたんです」
「たしか、月経の終わり頃の女の子によくある風邪薬と一緒に飲ませると、その、おっぱいが」
「……ええ、まあ。それで困っていたんです」
完全幼児体形の小萌先生に見つめられ、居心地悪そうに吹寄は体を揺らした。
そりゃこの胸じゃ母乳くらい出てもおかしくないわな、みたいな事を思われてないかと、
大きすぎる胸にコンプレックスのある吹寄としては気になってしまうのだ。
そりゃこの胸じゃ母乳くらい出てもおかしくないわな、みたいな事を思われてないかと、
大きすぎる胸にコンプレックスのある吹寄としては気になってしまうのだ。
「えっと、それじゃ上条ちゃんは……?」
「俺はただの付き添いです。吹寄が困ったことになったの、今日の放課後らしくて。
それでたまたま悩んでるところに出くわしたんで、病院探したりとか、そういうのに付き合ったんです」
「……そうだったですか」
「俺はただの付き添いです。吹寄が困ったことになったの、今日の放課後らしくて。
それでたまたま悩んでるところに出くわしたんで、病院探したりとか、そういうのに付き合ったんです」
「……そうだったですか」
157 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/23(土) 12:29:06.15 ID:Bel3T35Uo
ようやく、小萌先生は納得してくれたらしい。はぁー、っと脱力しながらため息を漏らし、ソファの上でくたりとなった。
「先生の早とちりが悪かったですけど、本当にびっくりしました。
上条ちゃんと吹寄ちゃんがお付き合いしてるのかと思って、それが一番意外でしたし、
それに、そんなに深い関係になってるのかって、本当に驚いてしまいました。
二人とも、変なことを言ってしまってごめんなさいです」
「いえ、分かっていただけたらいいんです。あ、でもまだ先生、勘違いをしています」
「ふぇ?」
「その、あたしと上条が付き合っているっていうのは、本当の事です」
「え、えぇっ? そ、そうだったんですか?!」
「付き合い始めたのさっきなんで、知らなくてむしろ当然ですけど」
上条ちゃんと吹寄ちゃんがお付き合いしてるのかと思って、それが一番意外でしたし、
それに、そんなに深い関係になってるのかって、本当に驚いてしまいました。
二人とも、変なことを言ってしまってごめんなさいです」
「いえ、分かっていただけたらいいんです。あ、でもまだ先生、勘違いをしています」
「ふぇ?」
「その、あたしと上条が付き合っているっていうのは、本当の事です」
「え、えぇっ? そ、そうだったんですか?!」
「付き合い始めたのさっきなんで、知らなくてむしろ当然ですけど」
なんだか突然の展開に頭の整理が追いつかないらしく、小萌先生はしばらく目をしばたかせていた。
二人としてはその間が居心地が悪い。なにせ、こんなことを担任に告白するなんて気恥ずかしいことこの上ない。
視線を落として二人が頭を掻いたり制服の裾を摘んで伸ばしたりしていると、やがて小萌先生が上条に尋ねた。
二人としてはその間が居心地が悪い。なにせ、こんなことを担任に告白するなんて気恥ずかしいことこの上ない。
視線を落として二人が頭を掻いたり制服の裾を摘んで伸ばしたりしていると、やがて小萌先生が上条に尋ねた。
「上条ちゃん、吹寄ちゃんが胸の、母乳が出てしまったことで困っているところに出くわしたって、言いましたよね?」
「はい」
「それは、吹寄ちゃんの裸を見たって、そういうことじゃないですか?」
「はい」
「それは、吹寄ちゃんの裸を見たって、そういうことじゃないですか?」
上条のことを良く知っているからだろうか、鋭い洞察だった。
真実を言っても怒られることは無いだろう。上条に、別に落ち度は無いのだから。
すこし視線をさまよわせてから、正直に答えた。
真実を言っても怒られることは無いだろう。上条に、別に落ち度は無いのだから。
すこし視線をさまよわせてから、正直に答えた。
「……そういうことです」
「それで、上条ちゃんは責任を取って、彼氏になるって言ったですか?」
「え?」
「それで、上条ちゃんは責任を取って、彼氏になるって言ったですか?」
「え?」
責任を取る、という響きはつい今吹寄と交わしたばかりの言葉だった。
「吹寄ちゃんも、見られたからっていう理由で、上条ちゃんと付き合ってるですか?」
「先生?」
「余計なお節介だったら謝ります。ちゃんと二人は、好きだから、お付き合いを始めたですか?」
「先生?」
「余計なお節介だったら謝ります。ちゃんと二人は、好きだから、お付き合いを始めたですか?」
それもまた、ついさっき確認しあったばかりのことだった。
吹寄と目を合わせ、二人でクスリとなった。
上条が吹寄の腕に手を添えると、上条の腕を抱くように、吹寄が腕を絡めた。
吹寄と目を合わせ、二人でクスリとなった。
上条が吹寄の腕に手を添えると、上条の腕を抱くように、吹寄が腕を絡めた。
「きっかけは、先生の言うとおり変則的なんです。でも」
「俺は吹寄のこと、好きです」
「……馬鹿。あたしも上条のこと、その、好きです」
「俺は吹寄のこと、好きです」
「……馬鹿。あたしも上条のこと、その、好きです」
背中がむずがゆい。それは二人とも共通した感想だ。
だってなんで、こんな婚姻の誓いみたいに誰かに宣言しているんだ。
その表情を見つめていた小萌先生は、いつしか満足そうに微笑を浮かべ、うんうんと頷いた。
だってなんで、こんな婚姻の誓いみたいに誰かに宣言しているんだ。
その表情を見つめていた小萌先生は、いつしか満足そうに微笑を浮かべ、うんうんと頷いた。
「先生、勘違いばっかりで本当にすみません。二人とも、言い顔をしているです。
二人の組み合わせは、ちょっと意外だったですけれど、お似合いですね」
「お、お似合いなんてそんな」
「吹寄ちゃん、否定するですか?」
「う……」
158 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/23(土) 12:30:37.65 ID:Bel3T35Uo
二人の組み合わせは、ちょっと意外だったですけれど、お似合いですね」
「お、お似合いなんてそんな」
「吹寄ちゃん、否定するですか?」
「う……」
158 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/23(土) 12:30:37.65 ID:Bel3T35Uo
お似合いなわけが無い、と言うのは上条に失礼だ。
でもお似合いなんて、きっとそんなわけはないのに。
でもお似合いなんて、きっとそんなわけはないのに。
「上条ちゃん!」
「は、はい」
「今日のは勘違いでしたけど、一応言っておくです。男の子と女の子ですから、深い仲になりたいと思うのは当然です。
でも、特に上条ちゃんは良く考えて、吹寄ちゃんとイチャイチャするですよ。何かあったら、皆が傷つくんですから。
上条ちゃんも吹寄ちゃんも、周りの大人も、そして、おなかに宿ってしまった新しい命にとっても」
「……はい」
「赤ちゃんは、授かりたいと思ったときに授かるのが一番幸せですから。節度は、絶対にもって恋愛するですよ。
お堅い学校の先生からの、忠告です」
「は、はい」
「今日のは勘違いでしたけど、一応言っておくです。男の子と女の子ですから、深い仲になりたいと思うのは当然です。
でも、特に上条ちゃんは良く考えて、吹寄ちゃんとイチャイチャするですよ。何かあったら、皆が傷つくんですから。
上条ちゃんも吹寄ちゃんも、周りの大人も、そして、おなかに宿ってしまった新しい命にとっても」
「……はい」
「赤ちゃんは、授かりたいと思ったときに授かるのが一番幸せですから。節度は、絶対にもって恋愛するですよ。
お堅い学校の先生からの、忠告です」
それだけ言って小萌先生はバッグを肩に掛け、よしと呟いた。
「それじゃ、先生はもう行きますね。ちゃんと完全下校時刻を守って帰ってくださいね」
「はい。あの先生! 心配してくれて、ありがとうございます」
「ありがとうございました」
「はい。あの先生! 心配してくれて、ありがとうございます」
「ありがとうございました」
二人で頭を下げると、いい顔をして小萌先生は病院を去って行った。
それを見送り、二人でため息をつく。
見詰め合うと、なぜかクスリと笑いあってしまった。
それを見送り、二人でため息をつく。
見詰め合うと、なぜかクスリと笑いあってしまった。
「今の勘違いは酷いよな」
「そうね、もうちょっと、あたしのことは信用してくれるかと思ったんだけど」
「俺は信用されてなくて普通だって言うのかよ」
「その通りでしょ?」
「ひでぇ」
「だったら普段の生活態度をあらためなさいよ。これからは、私も協力するから」
「お、おう」
「そうね、もうちょっと、あたしのことは信用してくれるかと思ったんだけど」
「俺は信用されてなくて普通だって言うのかよ」
「その通りでしょ?」
「ひでぇ」
「だったら普段の生活態度をあらためなさいよ。これからは、私も協力するから」
「お、おう」
そんな風に助けてもらえるのはありがたいが、同時にちょっと情けない上条だった。
「……ねえ、上条」
「ん?」
「結局、原因が分かったら不安はかなり消えたけれど、根本的に解決していないのよね。
母乳が出ちゃって、ブラが汚れることは」
「そっか、そうだな」
「だから、あの。これからも、お願いしていい……?」
「ん?」
「結局、原因が分かったら不安はかなり消えたけれど、根本的に解決していないのよね。
母乳が出ちゃって、ブラが汚れることは」
「そっか、そうだな」
「だから、あの。これからも、お願いしていい……?」
一週間くらいはこの症状は続くらしい。吹寄のお願いはつまり、その期間中は母乳を飲んで欲しいという事だ。
やっぱり、どこかに捨てるのには抵抗があるから。
やっぱり、どこかに捨てるのには抵抗があるから。
「あ、ああ。お前が嫌じゃないなら、勿論引き受ける。次はいつだ?」
周りに会話が聞こえぬよう、そっと二人の間で囁いていると、僅かな逡巡を置いて吹寄がお願いをした。
「夜……これから、うちで、吸って欲しいの」
確かに吹寄はそう、お願いをした。
227 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/27(水) 00:44:26.33 ID:beT5DRcPo
カチャリと、吹寄が自宅の鍵を開く。
あれから言葉少なに、二人で家のほうへと戻ってきたところだった。
あれから言葉少なに、二人で家のほうへと戻ってきたところだった。
「玄関で、しばらく待ってて」
「ん、わかった」
「ん、わかった」
女子寮に男子を連れ込んでいるので、当然廊下に上条を立たせておく訳には行かない。
仕方無しに玄関に上条を立たせ、吹寄は部屋の奥へと進んだ。
もとより整理は行き届いているほうだ。
椅子にかけたパーカーとベッドの上に広げたままの通販雑誌を片付けて辺りを見渡すと、
それで上条を招き入れても問題ないくらいの状態になった。
仕方無しに玄関に上条を立たせ、吹寄は部屋の奥へと進んだ。
もとより整理は行き届いているほうだ。
椅子にかけたパーカーとベッドの上に広げたままの通販雑誌を片付けて辺りを見渡すと、
それで上条を招き入れても問題ないくらいの状態になった。
「いいわ。こっちに来て」
「おう」
「おう」
若干挙動不審になりつつ、上条がリビングへと進む。
部屋の作りは男子寮と女子寮でそう変わらないので、勝手知ったるレイアウトだった。
上条に勉強机の前の椅子を勧めて、吹寄はベッドに腰掛けた。
ふう、とため息をつく。なんだかんだで長い一日だったから。
部屋の作りは男子寮と女子寮でそう変わらないので、勝手知ったるレイアウトだった。
上条に勉強机の前の椅子を勧めて、吹寄はベッドに腰掛けた。
ふう、とため息をつく。なんだかんだで長い一日だったから。
「お疲れさん、吹寄」
「うん、本当に一時はどんな酷い病気なんだろとか考え出して、精神的にキツかったしね。
何事もなくて良かったわ。……まあ、上条がここにいるって言うのが、一番の変化なんだけど」
「まあ、そうだよな」
「うん、本当に一時はどんな酷い病気なんだろとか考え出して、精神的にキツかったしね。
何事もなくて良かったわ。……まあ、上条がここにいるって言うのが、一番の変化なんだけど」
「まあ、そうだよな」
結局母乳が出る症状は一時的なものだと判ったが、吹寄との付き合いはむしろ一時的では困る。
そういう意味では吹寄にとっての一番の変化は、きっと上条と付き合うことに決めたことだろう。
そういう意味では吹寄にとっての一番の変化は、きっと上条と付き合うことに決めたことだろう。
「吹寄、家に帰って落ち着いたか?」
「うん、そりゃそうだけど」
「我に返って、付き合うって言っちまったの後悔したりはしてないか?」
「えっ?」
「うん、そりゃそうだけど」
「我に返って、付き合うって言っちまったの後悔したりはしてないか?」
「えっ?」
図星を突かれたように、ドキリと吹寄の心臓が反応した。心の中に罪悪感めいた気持ちが湧き上がる。
上条の前では気付かない振りをしてきたが、たぶん、自分は戸惑いを覚えていた。
上条が、彼氏という肩書きを持って自分の隣にいることに。
その状況を反芻して、吹寄は自分に問う。後悔を、自分はしているのか。
そうではないと、思った。
上条の前では気付かない振りをしてきたが、たぶん、自分は戸惑いを覚えていた。
上条が、彼氏という肩書きを持って自分の隣にいることに。
その状況を反芻して、吹寄は自分に問う。後悔を、自分はしているのか。
そうではないと、思った。
「……弱みを見せるような物言いは嫌いなんだけど」
「ん?」
「やっぱり、誰かと付き合うって不安じゃない。自分の思い通りにならない相手に、自分の人生の一部を預けるんだから」
「そりゃまあ、そうだな」
「後悔はしてないわよ。上条が相手として悪いとかそんなことも思ってない。けど、やっぱり戸惑うのは、仕方ないでしょ」
「そっか」
「ん?」
「やっぱり、誰かと付き合うって不安じゃない。自分の思い通りにならない相手に、自分の人生の一部を預けるんだから」
「そりゃまあ、そうだな」
「後悔はしてないわよ。上条が相手として悪いとかそんなことも思ってない。けど、やっぱり戸惑うのは、仕方ないでしょ」
「そっか」
上条が、吹寄の手をそっと握った。両手で包み込むようにして、そのきめ細かな肌を撫ぜる。
そしてくいと引っ張って、吹寄に立つよう促した。
それに抗わず吹寄が腰を上げると、上条もまた立ち上がり、吹寄を抱きしめた。
そしてくいと引っ張って、吹寄に立つよう促した。
それに抗わず吹寄が腰を上げると、上条もまた立ち上がり、吹寄を抱きしめた。
228 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/27(水) 00:45:32.89 ID:beT5DRcPo
「……上条?」
「案外似たもの同士なのかね。俺も、ちょっと自信がねーんだ。
こういう成り行きで吹寄と付き合って、ちゃんとお前のこと幸せにしてやれるかなって」
「案外似たもの同士なのかね。俺も、ちょっと自信がねーんだ。
こういう成り行きで吹寄と付き合って、ちゃんとお前のこと幸せにしてやれるかなって」
そんな言葉を聞いて、むしろ吹寄は安心した。
全幅の信頼、無償の愛、そういう綺麗なものを自分が持っていないことを、吹寄は自覚している。
もし上条がそういうものを吹寄に与えていてくれたなら、きっと罪悪感で自分は上条の傍にいられなくなった気がする。
たどたどしい手つきで、上条の背中に手を回した。
全幅の信頼、無償の愛、そういう綺麗なものを自分が持っていないことを、吹寄は自覚している。
もし上条がそういうものを吹寄に与えていてくれたなら、きっと罪悪感で自分は上条の傍にいられなくなった気がする。
たどたどしい手つきで、上条の背中に手を回した。
「吹寄」
「何?」
「抱きしめると思うんだけどさ、お前、可愛いよな」
「……馬鹿」
「そういう反応も可愛い」
「……」
「俺も今、たぶん吹寄に人生の一部を預けてみて、お前のことどれくらい好きか、自分で測ってるんだと思う」
「そっか」
「何?」
「抱きしめると思うんだけどさ、お前、可愛いよな」
「……馬鹿」
「そういう反応も可愛い」
「……」
「俺も今、たぶん吹寄に人生の一部を預けてみて、お前のことどれくらい好きか、自分で測ってるんだと思う」
「そっか」
なんだか納得のいく説明だった。
上条の胸の中にいると、上条の匂いがする。吹寄とは違う洗剤を使った服の匂いと、上条の汗の匂い。
上条の胸の中にいると、上条の匂いがする。吹寄とは違う洗剤を使った服の匂いと、上条の汗の匂い。
「人生を預けるって、表現が結構重たいわね」
「吹寄が先に言ったんだろ」
「うん。そうね。あ……」
「吹寄が先に言ったんだろ」
「うん。そうね。あ……」
上条がぐっと頭を抱いて胸に引き寄せ、吹寄の髪に頬を寄せた。
「ちょ、ちょっとやめてよ」
「何をだよ」
「その、今日汗かいたし」
「……少なくとも嫌な匂いなんてこれっぽっちもない」
「嗅ぐな! 馬鹿!」
「何をだよ」
「その、今日汗かいたし」
「……少なくとも嫌な匂いなんてこれっぽっちもない」
「嗅ぐな! 馬鹿!」
上条が少し、強引だった。吹寄にとっては強めで抗うのが難しいくらいの力が掛かって、ぎゅっと抱き寄せられる。
そのこと自体は嫌ではないのだが、今は困った状況にある。
そのこと自体は嫌ではないのだが、今は困った状況にある。
「駄目よ、上条」
「抱きしめちゃ駄目か?」
「……だって、また出ちゃう、し」
「あ、悪い。そういうことか」
「抱きしめちゃ駄目か?」
「……だって、また出ちゃう、し」
「あ、悪い。そういうことか」
物足りないような、寂しいような顔をした上条をみて吹寄は申し訳なくなった。
抱きしめたいと思ってもらえるのはやっぱり嬉しいし。
抱きしめたいと思ってもらえるのはやっぱり嬉しいし。
「ごめんね、上条。……急かすわけじゃないんだけど、そろそろ」
「ん、わかった。なあ、脱ぐか脱がされるか、どっちがいい?」
「え?」
「ん、わかった。なあ、脱ぐか脱がされるか、どっちがいい?」
「え?」
その発想は、なかった。
上条に脱がせて貰うというのは。
上条に脱がせて貰うというのは。
229 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/27(水) 00:48:49.02 ID:beT5DRcPo
「なななな、何言ってるのよ!」
「いや、半分くらいはマジで言ってるんだけど……」
「自分で脱ぐわよ!」
「いや、半分くらいはマジで言ってるんだけど……」
「自分で脱ぐわよ!」
見るな、とキッときつい視線をくれてから、後ろを向いて吹寄は制服を脱ぎに掛かる。
脱ぐ前に下に着たキャミソールをスカートから引き抜いたりと、肌を見せるタイミングをなるべく遅らせて。
脱ぐ前に下に着たキャミソールをスカートから引き抜いたりと、肌を見せるタイミングをなるべく遅らせて。
「……吹寄」
「え、あっ……!!」
「え、あっ……!!」
後ろから、上条に抱きしめられる。
「ちょ、ちょっと、あ……だめ……」
振り返ろうと上条の胸の中で暴れたら、そっと頬に手を当てられた。
優しい力で、顎を持ち上げられる。
そのまま、了解もとりつけずに、上条がキスをしてきた。
優しい力で、顎を持ち上げられる。
そのまま、了解もとりつけずに、上条がキスをしてきた。
「ん、ふ――」
「……吹寄、可愛いよ」
「強引過ぎるわよ、馬鹿」
「……吹寄、可愛いよ」
「強引過ぎるわよ、馬鹿」
上条の手が吹寄の恥じらいなんてお構い無しに、服の内側まで滑り込んできた。
おなかのほうから這い上がって、ブラに手を届かせる。
唇を離して、目で上条に問うと、もう一度キスされた。
その間に、不器用な手つきであれこれとホックを探し、息苦しくなるくらい長いキスになりつつようやくぷつんと外した。
重力の影響をはっきりと受けるだけの豊かなサイズのバストが、ぷるんと震えた。
おなかのほうから這い上がって、ブラに手を届かせる。
唇を離して、目で上条に問うと、もう一度キスされた。
その間に、不器用な手つきであれこれとホックを探し、息苦しくなるくらい長いキスになりつつようやくぷつんと外した。
重力の影響をはっきりと受けるだけの豊かなサイズのバストが、ぷるんと震えた。
「上条。もっと……優しくしてよ」
「あ、わ、悪い。つい――」
「ついじゃないわよ。ったく」
「あ、わ、悪い。つい――」
「ついじゃないわよ。ったく」
遠慮したのか、目的を達成したからか、上条が服の中から手を引いた。
そして吹寄の正面に回って、ちゃんと吹寄の目を見つめた。
そして吹寄の正面に回って、ちゃんと吹寄の目を見つめた。
「好きだよ、吹寄」
「う、うん」
「なんで目逸らすんだよ」
「恥ずかしいのよ……」
「そういうの、地味に傷つく」
「……だから恥ずかしいの! もう、わかったわよ」
「う、うん」
「なんで目逸らすんだよ」
「恥ずかしいのよ……」
「そういうの、地味に傷つく」
「……だから恥ずかしいの! もう、わかったわよ」
吹寄が、ちょっと怒ったような顔をして上条の目を見つめる。
そのままにらめっこみたいに、二人で見詰め合った。
吹寄の反応が欲しくて、上条は頬を指でなぞる。
そのままにらめっこみたいに、二人で見詰め合った。
吹寄の反応が欲しくて、上条は頬を指でなぞる。
「キス、していいか」
「聞かないでよ」
「嫌だからか」
「……嫌だったら、部屋になんて入れるわけないでしょ。そういうの、言わせないでって言ってるの」
「じゃあ聞かないぞ。キス、するからな」
「もう、そういう断りも恥ずかしいのよ。ん……」
「聞かないでよ」
「嫌だからか」
「……嫌だったら、部屋になんて入れるわけないでしょ。そういうの、言わせないでって言ってるの」
「じゃあ聞かないぞ。キス、するからな」
「もう、そういう断りも恥ずかしいのよ。ん……」
今度は、文句を言いながらも見詰め合ったまま、キスにこぎつけた。
所在なさげだった吹寄の左手に、自分の右手を絡めてやりながら長いキスをした。
そして、頬を撫でていた左手を、顎に這わせ、鎖骨に触れながら、その下へと滑らせていく。
ピクリと、吹寄が体を堅くしたのが判った。
救い上げるように持ち上げると、ブラのホックも外れて、ありのままの重みが上条のてに伝わった。
そっと唇を離すと、コクリと頷いた。
所在なさげだった吹寄の左手に、自分の右手を絡めてやりながら長いキスをした。
そして、頬を撫でていた左手を、顎に這わせ、鎖骨に触れながら、その下へと滑らせていく。
ピクリと、吹寄が体を堅くしたのが判った。
救い上げるように持ち上げると、ブラのホックも外れて、ありのままの重みが上条のてに伝わった。
そっと唇を離すと、コクリと頷いた。
246 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/30(土) 01:34:09.53 ID:ocFpstT1o
吹寄から体を離すと、そっと制服の袖から腕を腕を引き抜いた。
袖をそっと持ち上げてやると、吹寄はきゅっと制服の中で縮こまって、上条が脱がせるのに従った。
恥ずかしいのだろう、眉がきゅっとなる。
彼女になった女の子のことをこう評価するのもなんだが、上条は、
吹寄はどちらかというと険のある顔をしていると思う。
真面目がとりえの女の子だし、気も強い。
だけど、こうやって服を脱がされて無防備になっていくときの顔が、
なんだか不安げで落ち着かない感じで、やっぱりそれは可愛いと思うのだった。
袖をそっと持ち上げてやると、吹寄はきゅっと制服の中で縮こまって、上条が脱がせるのに従った。
恥ずかしいのだろう、眉がきゅっとなる。
彼女になった女の子のことをこう評価するのもなんだが、上条は、
吹寄はどちらかというと険のある顔をしていると思う。
真面目がとりえの女の子だし、気も強い。
だけど、こうやって服を脱がされて無防備になっていくときの顔が、
なんだか不安げで落ち着かない感じで、やっぱりそれは可愛いと思うのだった。
「吹寄は、自分で服脱げるよな」
「はぁ? 何を言っているの?」
「いや、わかってるんだけどさ。なんか、すげー可愛いから」
「言ってることが支離滅裂なのよ……馬鹿」
「はぁ? 何を言っているの?」
「いや、わかってるんだけどさ。なんか、すげー可愛いから」
「言ってることが支離滅裂なのよ……馬鹿」
肩にかかったキャミソールの紐をさっと払う。
隙を突かれた吹寄が、あっと声を上げて瞳を揺らした。
さっきも見た、可愛らしい柄のブラが露わになる。
ホックは外れているから、それは胸の輪郭をいくらか隠す程度の力しかない。
もう一度上条が肩に手を掛けると、ちょっと拗ねたような顔をして吹寄がそっぽを向いた。
隙を突かれた吹寄が、あっと声を上げて瞳を揺らした。
さっきも見た、可愛らしい柄のブラが露わになる。
ホックは外れているから、それは胸の輪郭をいくらか隠す程度の力しかない。
もう一度上条が肩に手を掛けると、ちょっと拗ねたような顔をして吹寄がそっぽを向いた。
「な、なによ。変なタイミングでジロジロ見るな」
「脱がすぞ」
「……うん」
「脱がすぞ」
「……うん」
ブラを剥ぎ取られるのを警戒して曲げていた肘を吹寄はゆるめ、そっと上条に従う。
キスをしながら、上条は最後の砦を優しく壊した。
保健室で見たのと同じ、豊かに膨らんだ乳房が露わになる。
部屋のライトの照り返しや張った下乳のラインが、瑞々しさを感じさせる。
実際、食めば口の中に味わいが広がるという意味で、それはたわわな果実だった。
キスをしながら、上条は最後の砦を優しく壊した。
保健室で見たのと同じ、豊かに膨らんだ乳房が露わになる。
部屋のライトの照り返しや張った下乳のラインが、瑞々しさを感じさせる。
実際、食めば口の中に味わいが広がるという意味で、それはたわわな果実だった。
「吹寄。吸わせて、もらうな?」
「……うん」
「……うん」
上条は吹寄の腰を、くいと抱き寄せた。
二人とも、今はベッドサイドに立ち上がっているからこのままでは乳房を吸う事は出来ない。
何をするのかと、吹寄が戸惑った顔をする。
上条は最後の駄目押しに、もう一度キスをした。
少しでも互いの距離感を縮めて、吹寄に感じさせる精神的負担が減ればいいと思いながら。
二人とも、今はベッドサイドに立ち上がっているからこのままでは乳房を吸う事は出来ない。
何をするのかと、吹寄が戸惑った顔をする。
上条は最後の駄目押しに、もう一度キスをした。
少しでも互いの距離感を縮めて、吹寄に感じさせる精神的負担が減ればいいと思いながら。
「ん……ふ……」
長めのキスに、吹寄が鼻に掛かった吐息をつく。
息を止めているわけにもいかない長さだからそれは自然なことだが、
そういう反応が嬉しくて、つい、意地悪な気持ちが湧いてくる。
吹寄がいつ止めるのかと困惑気味に目を見つめ返してくるまで、
ずっとキスを続けてやった。
あまりに至近距離のそれに、僅かに目を合わせたらまた、吹寄は目を瞑ってしまった。
キスの間中、ずっと髪を撫でていた手をそっと下ろし、胸に触れさせた。
そして、ベッドにとすんと腰を下ろす。
吹寄は立ったままで、ちょうど上条の目線に吹寄の乳房が来た。
流れに身を任せ、上条はそれに吸い付こうと、体を軽く前に倒した。
息を止めているわけにもいかない長さだからそれは自然なことだが、
そういう反応が嬉しくて、つい、意地悪な気持ちが湧いてくる。
吹寄がいつ止めるのかと困惑気味に目を見つめ返してくるまで、
ずっとキスを続けてやった。
あまりに至近距離のそれに、僅かに目を合わせたらまた、吹寄は目を瞑ってしまった。
キスの間中、ずっと髪を撫でていた手をそっと下ろし、胸に触れさせた。
そして、ベッドにとすんと腰を下ろす。
吹寄は立ったままで、ちょうど上条の目線に吹寄の乳房が来た。
流れに身を任せ、上条はそれに吸い付こうと、体を軽く前に倒した。
247 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/30(土) 01:34:46.12 ID:ocFpstT1o
「だ……駄目!」
「へっ?」
「へっ?」
駄目よ駄目よもなんとやらとかいう、そういうニュアンスじゃなくて、
割と本気の拒絶をされて、上条は戸惑う。
だって、ちゃんとキスして雰囲気作って、そっから胸を吸う流れにしたのに。
割と本気の拒絶をされて、上条は戸惑う。
だって、ちゃんとキスして雰囲気作って、そっから胸を吸う流れにしたのに。
「駄目って、なんでさ」
「そ、その……。キスしてすぐは、駄目」
「はい?」
「そ、その……。キスしてすぐは、駄目」
「はい?」
ちゃんと、恋人らしく出来たと思う。
作業みたいに吸ったりとか、ムードもそっちのけでいきなり胸に吸い付くとか、
そういう吹寄の心に寄り添ってないようなことはしなかったつもりなのだが。
どうも、それもまた吹寄のお気に召さないらしかった。
作業みたいに吸ったりとか、ムードもそっちのけでいきなり胸に吸い付くとか、
そういう吹寄の心に寄り添ってないようなことはしなかったつもりなのだが。
どうも、それもまた吹寄のお気に召さないらしかった。
「キスして、そのあと胸って……その、そういうことみたいじゃない」
「まあ、そうだけど」
「だから駄目なの。……あたしと上条は、まだそこまで行くには早いわよ」
「あの、吹寄さん。では一体どうしろと?」
「まあ、そうだけど」
「だから駄目なの。……あたしと上条は、まだそこまで行くには早いわよ」
「あの、吹寄さん。では一体どうしろと?」
つまり、成熟した男女の行う愛の営みの一環として胸を吸われるのは、
吹寄にとってまだNGなのだった。それには、上条との関係はまだ早い。
付き合って24時間にもならないのに、それはよくない。
だから、恋人のキスをしてからすぐにおっぱいをあげるのは、ナシなのだ。
吹寄にとっては。
吹寄にとってまだNGなのだった。それには、上条との関係はまだ早い。
付き合って24時間にもならないのに、それはよくない。
だから、恋人のキスをしてからすぐにおっぱいをあげるのは、ナシなのだ。
吹寄にとっては。
「ちょ、ちょっと待って」
上条が思わずカッコよく見えてしまった自分の気の迷いを、頑張って振り払う。
そしてちょっと乱暴に上条の頭を掴み、ぐっと胸の谷間に押し付けた。
突然の暴挙に上条が暴れるが、吹寄はそれで上条を離したりしない。
だんだん上条が大人しくなってきたのを見計らって、抱きしめたまま髪を両手で撫でる
ちょっとずつ上条が可愛く見えてきて、上条に心を預けるような気持ちから、
上条の心を受け止めるような余裕のある心境に変わってきた。
拘束を緩めて、上条の顔を胸の間から解放してやる。
そしてちょっと乱暴に上条の頭を掴み、ぐっと胸の谷間に押し付けた。
突然の暴挙に上条が暴れるが、吹寄はそれで上条を離したりしない。
だんだん上条が大人しくなってきたのを見計らって、抱きしめたまま髪を両手で撫でる
ちょっとずつ上条が可愛く見えてきて、上条に心を預けるような気持ちから、
上条の心を受け止めるような余裕のある心境に変わってきた。
拘束を緩めて、上条の顔を胸の間から解放してやる。
「ぷは! し、死ぬかと……」
「何を馬鹿なことを言っているの。ほら、もういいから、その」
「お、おう。それじゃ、吸うぞ」
「どうぞ」
「何を馬鹿なことを言っているの。ほら、もういいから、その」
「お、おう。それじゃ、吸うぞ」
「どうぞ」
上条を見下ろして、変なことをされないかと若干警戒しながら腰を僅かに捻り、
その口に乳首をあてがってやる。
上条は大きめに口を開き、形を確かめるようにしながら、吹寄の乳首にむしゃぶりついた。
その、口腔内の熱くて湿った吐息と、そして直後にぬるりとした感触を覚えて、
吹寄は背中にゾクッとした何かが這い上がるのを感じた。体が、自分の意志を超えてそれに反応する。
その口に乳首をあてがってやる。
上条は大きめに口を開き、形を確かめるようにしながら、吹寄の乳首にむしゃぶりついた。
その、口腔内の熱くて湿った吐息と、そして直後にぬるりとした感触を覚えて、
吹寄は背中にゾクッとした何かが這い上がるのを感じた。体が、自分の意志を超えてそれに反応する。
「んっ! ……!!」
保健室でも、何度かあった。
吹寄は、それが快感の『種』なのに気付いていなかった。
心と体が噛みあって、そして自分と上条の心がちゃんと通じ合えば、
それは恋人同士がその営み中で自然と漏らす喘ぎ声になるものだ。
だが今はまだ、吹寄の心の中では、自分の体が示すその反射は戸惑いの種でしかなかった。
どうしよう、と吹寄は心の中で呟く。
今日今から、自分は何度この電流みたいなのに負けないようにしなければいけないのだろう。
うっかりと声を漏らすのは、酷く恥ずかしかった。
吹寄は、それが快感の『種』なのに気付いていなかった。
心と体が噛みあって、そして自分と上条の心がちゃんと通じ合えば、
それは恋人同士がその営み中で自然と漏らす喘ぎ声になるものだ。
だが今はまだ、吹寄の心の中では、自分の体が示すその反射は戸惑いの種でしかなかった。
どうしよう、と吹寄は心の中で呟く。
今日今から、自分は何度この電流みたいなのに負けないようにしなければいけないのだろう。
うっかりと声を漏らすのは、酷く恥ずかしかった。
「っ……!」
声を押し殺す。吐息のリズムが不安定なのが気取られないかと不安になる。
上条がお尻の上辺りから背中までをさする、その感触が迷惑だった。
だって、なんだか色々と上条に預けて、乳首を吸われる感覚に耽溺してしまいそうだったから。
上条がお尻の上辺りから背中までをさする、その感触が迷惑だった。
だって、なんだか色々と上条に預けて、乳首を吸われる感覚に耽溺してしまいそうだったから。
280 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/31(日) 11:38:31.93 ID:5WqC4+7vo
吹寄が戸惑いながら、時々ピクリとなることに、とうの昔に上条は気付いていた。
さっき吹寄が言ったことと、今吹寄の体が示している反応の矛盾に、ちょっと上条は拗ねていた。
吹寄の乳房を吸うという行為に、セクシュアルな感情を覚えているのは何も上条だけじゃない。
吹寄だって、感じているくせに。
舌で、そろそろ硬くなり始めた乳首を、弾くように舐め上げる。
さっき吹寄が言ったことと、今吹寄の体が示している反応の矛盾に、ちょっと上条は拗ねていた。
吹寄の乳房を吸うという行為に、セクシュアルな感情を覚えているのは何も上条だけじゃない。
吹寄だって、感じているくせに。
舌で、そろそろ硬くなり始めた乳首を、弾くように舐め上げる。
「んっ!」
ほら、やっぱり。
可愛らしい声が、吹寄の口から漏れる。
普通の女の子がどんなものかなんて判らないが、少なくとも吹寄は、
乳首を舐められたら結構敏感に反応するみたいだった。
可愛らしい声が、吹寄の口から漏れる。
普通の女の子がどんなものかなんて判らないが、少なくとも吹寄は、
乳首を舐められたら結構敏感に反応するみたいだった。
「吹寄、可愛い」
「だ、黙って吸ってなさい!」
「だ、黙って吸ってなさい!」
その文句に取り合わず、指先を尾てい骨の辺りに添える。
そして肌の感触を楽しむようなゆったりとしたスピードで、背骨に沿って撫ぜ上げていく。
これもさっき気付いたことが、吹寄は背中を撫で上げられるのに弱い。
そして肌の感触を楽しむようなゆったりとしたスピードで、背骨に沿って撫ぜ上げていく。
これもさっき気付いたことが、吹寄は背中を撫で上げられるのに弱い。
「ん! ……は、ん」
声にならない声で、肺にたまった空気を吐き出す。
乱れた呼吸は吹寄から理性を奪い、さらに呼吸を乱す。
上条の肩と頭に添えられた手に力が込められる。
理由は簡単だ。立っているのが辛くなって、ぐらりとなったから。
乳房も僅かに左右に揺れた。上条の口から離れていく。
もう一度くちゅりと音を立てながら咥えなおすと、
一層、上条を抱きしめる吹寄の力が強まった。
乱れた呼吸は吹寄から理性を奪い、さらに呼吸を乱す。
上条の肩と頭に添えられた手に力が込められる。
理由は簡単だ。立っているのが辛くなって、ぐらりとなったから。
乳房も僅かに左右に揺れた。上条の口から離れていく。
もう一度くちゅりと音を立てながら咥えなおすと、
一層、上条を抱きしめる吹寄の力が強まった。
「ちょ、ちょっと上条」
「ん?」
「吸い方が、いやらしいのよ……」
「ほうか?」
「そうなの? もう、咥えたままで喋らないで、って、ん、ん!」
「ん?」
「吸い方が、いやらしいのよ……」
「ほうか?」
「そうなの? もう、咥えたままで喋らないで、って、ん、ん!」
唇の力で乳首を強く噛んでやる。もちろん強くといっても歯で噛むのとは大違いだが。
じわじわと、舌の上に甘い吹寄の母乳がたまっていくのが判る。
夕方に吸ったときほどの勢いはなかったが、味は濃いような気がした。
じわじわと、舌の上に甘い吹寄の母乳がたまっていくのが判る。
夕方に吸ったときほどの勢いはなかったが、味は濃いような気がした。
「上条の、馬鹿……」
「はんでだ?」
「なんでって、貴様がいやらしいのが、悪いのよ」
「はんでだ?」
「なんでって、貴様がいやらしいのが、悪いのよ」
吹寄の足が内股になっているのに上条は気付いた。
時々、ガクガクとなっているのがわかる。
時々、ガクガクとなっているのがわかる。
「気持ちよくて、力が抜けちまうのか?」
「――――?! 馬鹿! 馬鹿、そんなわけない!」
「じゃあこれは何だよ?」
「――――?! 馬鹿! 馬鹿、そんなわけない!」
「じゃあこれは何だよ?」
281 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/31(日) 11:41:35.08 ID:5WqC4+7vo
スカート越しに、お尻に手を触れる。
そしてそのまま手のひらを舌に滑らせて、必死に体を支える膝に触れてやった。
そしてそのまま手のひらを舌に滑らせて、必死に体を支える膝に触れてやった。
「あっ!」
ガクリとなって、吹寄の胸がぐっと押し付けられた。
上条は両腕と顔面を使って、吹寄が倒れないように支えてやる。
上条は両腕と顔面を使って、吹寄が倒れないように支えてやる。
「大丈夫か?」
「……うん」
「なあ吹寄」
「なに?」
「体勢、変えたほうがいいか? たったままは、しんどそうだし」
「い、いいわよ別に。大したことじゃないから。それに変えるって、どうするわけ?」
「吹寄が寝そべってくれれば、それはそれで吸いやすい」
「!?!? そんなの駄目に決まってるでしょうが!」
「なんで?」
「だ、だってそんなの……っ! こ、恋人がそういうことしているみたいじゃない」
「俺と吹寄は、たしか恋人同士だったと記憶しているんですが」
「でもまだそういうのには早いって言っているのよ」
「……うん」
「なあ吹寄」
「なに?」
「体勢、変えたほうがいいか? たったままは、しんどそうだし」
「い、いいわよ別に。大したことじゃないから。それに変えるって、どうするわけ?」
「吹寄が寝そべってくれれば、それはそれで吸いやすい」
「!?!? そんなの駄目に決まってるでしょうが!」
「なんで?」
「だ、だってそんなの……っ! こ、恋人がそういうことしているみたいじゃない」
「俺と吹寄は、たしか恋人同士だったと記憶しているんですが」
「でもまだそういうのには早いって言っているのよ」
どうしてわかってくれないの、とジトリとした目を上条に向ける。
再び、乳首を咥えた上条とそれで目が合った。途端に、吹寄は自分の頬が熱を持ったのがわかる。
いくら彼氏とて、自分の胸を咥えている人と眼が合うのは、気恥ずかしかった。
再び、乳首を咥えた上条とそれで目が合った。途端に、吹寄は自分の頬が熱を持ったのがわかる。
いくら彼氏とて、自分の胸を咥えている人と眼が合うのは、気恥ずかしかった。
「……わかった。じゃあ、このままするぞ?」
「い、言わなくていいわよ」
「吹寄」
「もう、何度も何よ!」
「大好きだ」
「――!」
「い、言わなくていいわよ」
「吹寄」
「もう、何度も何よ!」
「大好きだ」
「――!」
もう一度、上条が大きな口をあけて、たっぷりと乳房を吸い込んだ。
好きだ、なんて言葉のせいだろうか。そうは思いたくない。
そんな自分が安直だとは認めたくない。
だけど、ゾクゾクとした何かが背筋から這い上がってきてしまうのだ。
吸われる胸や、吹寄が倒れないようにと支えてくれる手のひらの温かみが、
むしろ吹寄の理性を奪って、泥のように崩れ落ちてしまいたくなるような、
溺れてしまいたくなるような、そういう力を持っているのだった。
好きだ、なんて言葉のせいだろうか。そうは思いたくない。
そんな自分が安直だとは認めたくない。
だけど、ゾクゾクとした何かが背筋から這い上がってきてしまうのだ。
吸われる胸や、吹寄が倒れないようにと支えてくれる手のひらの温かみが、
むしろ吹寄の理性を奪って、泥のように崩れ落ちてしまいたくなるような、
溺れてしまいたくなるような、そういう力を持っているのだった。
「……ん、ん、かみ、じょう」
「好きだよ、吹寄」
「あたしも、大好き」
「好きだよ、吹寄」
「あたしも、大好き」
思考の片隅で、流されちゃってるんじゃないのか、と見つめる自分がいる。
だって付き合おうっていって数時間で大好きなんて言っちゃう思考は、きっと浅はかだ。
でもなんだか、それが嘘偽りのない自分の気持ちのような気もしているのだ。
胸を吸う上条は可愛いし、自分のことを気にかけてくれる上条は格好いいし、
やっぱり自分は、上条のことが大好きであっているんじゃないか。
撫でてくれるその手つきが嬉しくて、んっ、とまた吹寄の体は切ない声を漏らした。
だって付き合おうっていって数時間で大好きなんて言っちゃう思考は、きっと浅はかだ。
でもなんだか、それが嘘偽りのない自分の気持ちのような気もしているのだ。
胸を吸う上条は可愛いし、自分のことを気にかけてくれる上条は格好いいし、
やっぱり自分は、上条のことが大好きであっているんじゃないか。
撫でてくれるその手つきが嬉しくて、んっ、とまた吹寄の体は切ない声を漏らした。
288 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/31(日) 12:21:57.75 ID:5WqC4+7vo
「ん、はん。……あっ」
一体、もう何分くらいされているのだろう。
夢見心地で吹寄は時間間隔を失いつつあった。
時計を見ても、この部屋にたどり着いた時間を覚えていないせいもあって、
数字が全然意味合いを帯びてこなかった。
自分の乳首がすっかり熱を持って、ふやけてしまっているような気もする。
吸い終わったほうの乳房はもう上条の唾液も乾きつつあったが、
時折かかる上条の鼻息でひんやりとするたびに、吹寄の体は反応を示すのだった。
いつしか、お尻を触られることに文句を言うのも止めてしまった。
夢見心地で吹寄は時間間隔を失いつつあった。
時計を見ても、この部屋にたどり着いた時間を覚えていないせいもあって、
数字が全然意味合いを帯びてこなかった。
自分の乳首がすっかり熱を持って、ふやけてしまっているような気もする。
吸い終わったほうの乳房はもう上条の唾液も乾きつつあったが、
時折かかる上条の鼻息でひんやりとするたびに、吹寄の体は反応を示すのだった。
いつしか、お尻を触られることに文句を言うのも止めてしまった。
「吹寄?」
「え……?」
「吹寄、スゲーとろんとしてる」
「えっ?! え、嘘」
「……可愛いな」
「え……?」
「吹寄、スゲーとろんとしてる」
「えっ?! え、嘘」
「……可愛いな」
雫を舐めとるように、ちゅ、と上条が乳首の先端に吸い付いた。
「ぁ、ん」
「とりあえず、もうほとんど出なくなっちまった。そろそろ終わりか?」
「えっ? そ、そうね……」
「とりあえず、もうほとんど出なくなっちまった。そろそろ終わりか?」
「えっ? そ、そうね……」
そりゃあ目的からして、出るものが出なくなれば終わりだ。
上条の表情が可愛らしい。
上条の表情が可愛らしい。
「名残惜しそうな目をしているわよ」
「それは吹寄だろ」
「な、何を言ってるのよ」
「事実だろ?」
「変なことを言わないで!」
「まあいいや。ほら、疲れただろ? 座れよ」
「うん……」
「それは吹寄だろ」
「な、何を言ってるのよ」
「事実だろ?」
「変なことを言わないで!」
「まあいいや。ほら、疲れただろ? 座れよ」
「うん……」
上条が立ち上がって、体を支えてくれる。
それに身を任せながら、自分のベッドに腰を下ろした。
上条と、隣り合わせになる。
自然と体が動いて、上条に寄りかかった。
その警戒感のなさに、むしろ吹寄自身がびっくりした。
それに身を任せながら、自分のベッドに腰を下ろした。
上条と、隣り合わせになる。
自然と体が動いて、上条に寄りかかった。
その警戒感のなさに、むしろ吹寄自身がびっくりした。
「ほら、吹寄」
「あっ……!」
「あっ……!」
289 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/31(日) 12:23:52.31 ID:5WqC4+7vo
胸の中に、抱き寄せられた。
上条の制服の感触が背中に触れる。暖かくて、なんだか安心した。
見上げると、そのままキスされた。
上条の制服の感触が背中に触れる。暖かくて、なんだか安心した。
見上げると、そのままキスされた。
「ん……上条」
「吹寄、好きだ」
「うん。あたしも……」
「あたしも、で止めるなよ。続きはなんだ?」
「あたしもね、上条のこと、大好き。――ん」
「吹寄、好きだ」
「うん。あたしも……」
「あたしも、で止めるなよ。続きはなんだ?」
「あたしもね、上条のこと、大好き。――ん」
至近距離で、微笑んでくれた上条の顔が優しかった。
ドキドキする。だけど、心臓が苦しいようなのじゃなくて、嬉しい気持ちに近い。
もう一度キスすると、僅かに上条の舌が、吹寄の口の中に割り込んできた。
ドキドキする。だけど、心臓が苦しいようなのじゃなくて、嬉しい気持ちに近い。
もう一度キスすると、僅かに上条の舌が、吹寄の口の中に割り込んできた。
「ん!」
驚きに目を見開くと、上条と目が合った。
何を言うでもなく、見詰め合う。
そのまま上条が舌を入れるのを再開した。
戸惑いはなかった。なんだか、見つめられたままならこれもアリかと思ってしまう自分がいた。
何を言うでもなく、見詰め合う。
そのまま上条が舌を入れるのを再開した。
戸惑いはなかった。なんだか、見つめられたままならこれもアリかと思ってしまう自分がいた。
「んん……」
おずおずと、こちらからも舌を返す。そしてつんつんと感触を確かめ合う。
他人の舌と触れ合うのは、変な感じだった。
そしてトロリと、上条のほうから唾液が流れてきた。
どうしよう、と戸惑って上条の目を見る。
何も上条は言わなかったけれど、吹寄はどうするべきか、それで悟った。
コクリと、僅かしかないそれを飲み干した。
彼氏の唾液を受け入れてあげるというのは、なんだか不思議な行為だと思う。
……ついでに味にも、一言物申したかった。
他人の舌と触れ合うのは、変な感じだった。
そしてトロリと、上条のほうから唾液が流れてきた。
どうしよう、と戸惑って上条の目を見る。
何も上条は言わなかったけれど、吹寄はどうするべきか、それで悟った。
コクリと、僅かしかないそれを飲み干した。
彼氏の唾液を受け入れてあげるというのは、なんだか不思議な行為だと思う。
……ついでに味にも、一言物申したかった。
「美味しくない……」
「そうか?」
「当然でしょう。自分の、その、母乳の味なんて。薄いし」
「んー、薄いのは俺の口の中にちょっと残ってただけだからだろ。
ちょっと待ってろ」
「えっ? ちょっと私はその、あっ」
「そうか?」
「当然でしょう。自分の、その、母乳の味なんて。薄いし」
「んー、薄いのは俺の口の中にちょっと残ってただけだからだろ。
ちょっと待ってろ」
「えっ? ちょっと私はその、あっ」
上条がもう一度、吹寄の胸に吸いついた。
そしてしばらく乳房を咥え、そっと離す。嚥下した様子はなかった。
要するに、つまりそれは。
そしてしばらく乳房を咥え、そっと離す。嚥下した様子はなかった。
要するに、つまりそれは。
「んんっ……!」
上条が、吹寄が嫌がる暇すら与えず、もう一度キスをした。
そして唇の間から、たった今飲んだばかりの母乳を、吹寄の口の中へと伝え流す。
さっきと量が段違いだ。はっきりとした風味が吹寄の口に広がる。
もちろん、飲んだからといってさっきと感想が変わることはないのだが。
そして唇の間から、たった今飲んだばかりの母乳を、吹寄の口の中へと伝え流す。
さっきと量が段違いだ。はっきりとした風味が吹寄の口に広がる。
もちろん、飲んだからといってさっきと感想が変わることはないのだが。
290 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/31(日) 12:24:38.46 ID:5WqC4+7vo
「どうだ?」
「別に。全然、美味しくはないわよ」
「え、そうか?」
「だって味、薄いじゃない。香りもなんか変だし」
「んなこたねーよ」
「別に。全然、美味しくはないわよ」
「え、そうか?」
「だって味、薄いじゃない。香りもなんか変だし」
「んなこたねーよ」
その上条の反応に、ちょっと吹寄は首を傾げてしまった。
母乳は他でもない、吹寄自身のものなのだが、イマイチだと言われて上条は不機嫌そうだった。
でも、悪い気はしない。
母乳は他でもない、吹寄自身のものなのだが、イマイチだと言われて上条は不機嫌そうだった。
でも、悪い気はしない。
「まあ、病気の味じゃあ、ないのかな」
「当たり前だ。飲んでて、スゲー落ち着くんだ」
「……変態ね。それも度し難い」
「べ、べつにそんなことはないだろ。だいたい元はといえば――」
「当たり前だ。飲んでて、スゲー落ち着くんだ」
「……変態ね。それも度し難い」
「べ、べつにそんなことはないだろ。だいたい元はといえば――」
図星で恥ずかしいのか、拗ねた態度で上条は言い返そうとして、言葉を止めた。
「何よ」
「いや、吹寄だって不安だったんだもんな。責める様なこと、言うのはお門違いだし」
「……上条。今日は、ありがとう」
「礼なんていいって。恋人同士だろ?」
「うん。でも、だからかな。ちゃんと言いたいの。
支えてくれて、ありがとう。その……嬉しかった」
「吹寄が笑ってくれて、俺も嬉しいよ」
「いや、吹寄だって不安だったんだもんな。責める様なこと、言うのはお門違いだし」
「……上条。今日は、ありがとう」
「礼なんていいって。恋人同士だろ?」
「うん。でも、だからかな。ちゃんと言いたいの。
支えてくれて、ありがとう。その……嬉しかった」
「吹寄が笑ってくれて、俺も嬉しいよ」
二人で見詰め合って、ふっと笑いあった。
そしてブラやキャミソールを拾い上げて、着けるのを上条が手伝ってくれた。
そしてブラやキャミソールを拾い上げて、着けるのを上条が手伝ってくれた。
「ねえ」
「ん?」
「恋人同士なのに、苗字って、やっぱり変よね」
「……だよな。実は、俺もそれ切り出そうかなって思ってた」
「そっか。かみ……あなたは、その、嫌じゃない?」
「むしろ呼んで欲しい。そっちはどうだよ」
「恥ずかしいけど。……二人きりのときなら」
「教室じゃ駄目なのか?」
「あ、当たり前でしょう! 不純異性交遊は認められてないんだし」
「ん?」
「恋人同士なのに、苗字って、やっぱり変よね」
「……だよな。実は、俺もそれ切り出そうかなって思ってた」
「そっか。かみ……あなたは、その、嫌じゃない?」
「むしろ呼んで欲しい。そっちはどうだよ」
「恥ずかしいけど。……二人きりのときなら」
「教室じゃ駄目なのか?」
「あ、当たり前でしょう! 不純異性交遊は認められてないんだし」
そういう問題か、と思わないでもなかった。
ベッドに腰掛ける吹寄に、上条はまたキスをする。
そして見つめ合って。
ベッドに腰掛ける吹寄に、上条はまたキスをする。
そして見つめ合って。
「好きだよ、制理」
「あたしも、好き。……と、当麻」
「あたしも、好き。……と、当麻」
照れて、ちょっと怒ったみたいな顔をした吹寄の顔が、たまらなく可愛かった。
「これからも、よろしくね」
「ん、こっちこそ」
「ん、こっちこそ」
気安く、上条はそう返す。
……よろしくの意味が、母乳が出る状況が収まるまで一定時間ごとに授乳をするのでよろしく、
という意味であることには、あんまり気付いていない上条なのだった。
……よろしくの意味が、母乳が出る状況が収まるまで一定時間ごとに授乳をするのでよろしく、
という意味であることには、あんまり気付いていない上条なのだった。