プレ・ストーリー


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本編の前置きとなるお話です。用語集と若干の誤差アリかも。

(現世の公式記録より抜粋)

母星に当時存在していた現世人は、我々同様知能が高く、それゆえ高度な文明を誇り、争いを好まぬ穏やかな性質であった。
彼らの尽きぬ好奇心は、科学技術をまさに日進月歩という言葉が相応しく加速的に発展させていた。
そしてまもなく彼らの技術は、恒星系全体を支配下に置く一大文明の建設を射程圏内に収めたのであった。

だがこれには一つの問題があった。惑星間の連絡に時間が掛りすぎるのだ。解決法として、超光速の通信・移動手段が求められていた。
その一つとして、ワープ航法が研究された。当時奇形的に発達していた空間位相学を応用することで望みは叶うかに思われたが、手に入ったのは全く予期せぬものであった。すなわち、パラレル・ワールドへの転移法である。意外な発明に当時の人々は驚き喜んだが、並行世界のこちらと大して変わらぬ有様にやがて興味を失っていき、転移法の発見に続くワープ航法の完成にであって、パラレル・ワールドのことなどすっかり忘れてしまった。

それから数十年後、事件は起きた。
母星に接近する小惑星が発見されたのだ。回避は不可能とされ、衝突によって母星は最低でも二百年は人の住めない星になるとの試算がなされた。当時すでに小規模なスペース・コロニー、および他惑星におけるドーム都市は完成していたが、とても母星の人間全てをまかなうことはできなかった。衝突は約5年後。人々は慌てたが、パラレル・ワールドが再び脚光を浴びたことによって、ある案が提示された。

それは、並行世界への一時的退避を唱えるものであった。母星を後にすることに強い抵抗を示す者は少なくなかったが、他に有効な案はなく、現世人はパラレル・ワールドへの移住を決意したのだった。
移住先に選ばれたのは、母星よりも大きく、また原生人類がそれほど生存圏を拡大していない未開の世界であった。新たな世界に降り立った彼らは、すぐさま住み良い都市を建設し、二百年の間借りの地とした。
だが、間借りする以上、家主たる原生人類には、何らかのメリットを享受する権利があろう。原生人類に対する後ろめたさもあったのであろうか、彼らは原生人類に知識と文明とを与えることにした。
小規模な農耕を営み、未だ金属器すら持たず、最大のコミュニティーは村という原始的な彼らに挨拶するため、現世人は住居に出向こうとして、あることに思い至り、通信用のコミュニケーション・ロボットを送り込んだ。
突然村に現れたロボットに案の定、槍を投げつけようとする原生人たちの姿をモニターごしに見て苦笑しながら、彼らは自らの意思を伝えた。
はじめは戸惑う様子を見せた原生人も、やがて現世の技術の有用性を理解したらしく、進んで教えを請うようになった。
その暮らしも同時に改善されてゆき、十年も経つころには、以前とは比べ物にならぬ水準の文明を誇るに至った。
文明を手にした後の彼らの反応は様々だった。文明をもたらした現世人を神と崇める者、科学に興味を持ち、知識の探求に励む者、そして、さらなる知識と技術を独占しようと、現世人に挑む者などがいた。
現世人は彼らを軽くあしらい、相手にしなかった。未熟さゆえの過ちと水に流すことにしたのだ。いずれ彼らがより精神的に高度に成長したとき、過ちに気付いて自らの所業を恥じることになろう。真に対等な友好関係を気付くのはその後のことになりそうだった。

二百余年に及ぶ滞在の後、現世人はこの世界を後にした。再び実り多き地へと戻った彼らの故郷に帰るためである。
出発に際し、彼らは原生人たちに土産を残した。いずれ彼らが文明を発達させた時に開けられるよう封印を施したそれは、パラレル・ワールドへの転移装置であった。その土産が後に破局をもたらそうとは、この時誰も考えていなかった。

そして数千年の年月が流れた。
それ以後大規模な天災もなく、さらに高度な文明を恒星圏内に誇るに至った現世人の前に現れたのは、かつて彼らが与えた知識を以って強力な文明を建設したものの、資源の不足のため外部膨張の方針を採った、あの星の原生人たちであった。
主要なコロニーをいくつか消滅させられ、原生人たちの目的が友好ではなく侵略だと分かると、現世人たちはすぐに行動に移った。交渉するテーブルなどもはや無かったのである。

こうして二つの世界は真っ向から激突した。現世人たちは勝利を確信していた。彼らが考えたのは戦術や戦略ではなく、道を踏み外した文明に対しいかなる罰をあたえるべきかということであった。
だが、事態は思わぬ方向に進んだ。文明そのもののレベルで圧倒的優位に立っていたはずの現世人は各地で敗走を重ねていた。
現在では、敗因として現世人に比べ原生人が戦争になれていたことや、現世人が全くといっていいほど兵器の類を発達させてこなかったことなどが挙げられているが、本当のところははっきりしていない。当時の状況は混乱を極めており、正確な情報を得るのが難しいのだ。
ともかくも、全盛期に恒星系外にまで版図をひろげていた現世人の文明は、母星とその周辺のいくつかの惑星、および数少ないコロニーを所有するのみとなった。原生人たちはいつ頃からか阿修羅と呼ばれるようになり、その攻勢は衰えることを知らなかった。現世人の終焉は時間の問題であった。

敗北と破滅を目前にして、現世人たちは考えた。もはや正攻法での撃退は不可能である。我らは知識の探求を存在意義としてきた知恵の生き物である。我らは、我らの最も得意とするところで、蛮族に対抗すべきではないか。
かつて蛮族に知識と文明とを与えてやったのは我らに他ならぬ。全ての始まりとなったあの技術で、全てに決着をつけよう。

現世人の最後の賭け、「干渉計画」が始動したのである。