2-20

プリン虐

作者:茶色

ププリン
ふうせんポケモン
 たかさ 0.3m
 おもさ 1.0kg  
その姿は野生では発見することはできず、存在が確認されたのもごく最近のことである。
なぜその存在を知る者が今まで居なかったのか。
いや、知っている者達は確かにいた。


晴れた梅雨の夕暮れ、村は多くの人で賑わっていた。
出店が並び、誰もが陽気に酒を飲む。何を祝っているのだろうか?
今日は卵が孵る日なのだ、それもただの卵ではない。
村一番の美しい毛並みを誇るプリン(♀)と村一番の強さを誇るプクリン(♂)の子にして、
初めて発見されたポケモンの卵である。
元々村外との交友が浅い村人達は、内輪だけで祝うことにしたのだった。

「めでてぇことだ。村一番のプリンと村一番のプクリンの子だぁ、
  大層なもんが生まれるにちげぇねぇ。」
「んだぁ、それこそ村で一番強くて、美しいポケモンだんべぇ。」

チリンチリンチリン

卵の孵化が始まった事を知らせるチリーンの鈴の音が響き渡る。
村人の足は、卵の祭られている広場へと向かう。
静まり返った広場。
村中の人間が見つめる先で、卵の殻が新たなる生命によって破られる。

パキッパキパキッ






「おおぉ、なんてことだ・・・。」
「これがポケモンなのか、」
「なんという醜い姿だ・・・。」

村人達からは歓声ではなく、どよめきが広がる。
プリンが生まれると思われていた卵からは、似ているようで異なる生き物が生まれた。
蒼いはずの瞳は、悪魔のように紅く、大きく一巻きされているはずの前髪部分は、
綿を千切って貼り付けたかのように美しくない。
なにより、プリンよりも二回りは小さいであろう体が可愛いどころか逆に不気味である。
この瞬間こそ、ププリンが初めて人間に姿を見せた瞬間であった。

村人のどよめきを余所に、ププリンは本能から産声の代わりに歌いだす。
しかし、声帯が未発達な為、綺麗な声を出すことができず、
不気味な鳴き声となった音は、村人の恐怖心を一層掻き立てた。

「あ、悪魔だ!悪魔が生まれたんだ!」
「災いが起こるぞぉ!もう村はお終いだぁ!」
「殺せ!そいつを殺してしまえ!災いから村を守るんだ!」

村人は足元の小石を拾いププリンに投げつける。
ププリンは抵抗する力も逃げる術もなく、
四方八方から襲い来る罵声と暴力に、生まれたばかりの命を枯らすこととなる。
しかし、村人の恐怖は収まらない





「生贄だ、生贄が必要だ。お天道様に生贄を捧げ村を守っていただくのじゃ。」
「なら、こいつの親を生贄にするべきだ!悪魔を生んだポケモンだ!殺してしまえ!」

ププリンの親であるプリンとプクリンに、村人のポケモンが襲い掛かる。
村一番の強さを誇るプクリンも、大勢相手では歯が立たない。
村一番の毛並みを誇るプリンも、肉を食いちぎられ、血に染まると美しくない。
こうして、命の誕生を祝う祭りは、文字通り血祭りとなった。

―ポケモンの卵の存在が広く知られることになるのは、これより5年以上先のことである―
最終更新:2011年04月16日 14:27
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