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ヤドン虐

作者:虐待犯

 暗くてじめじめした井戸の中で、おれは間抜けな鳴き声を聞いている。
 「や~?やー!やぁ~」

 さっきから穴の中でこだましているのは、ヤドンの声だ。尻尾を切った
痛みを感じて、昨日から数時間前にかけて切った奴が泣いているのだ。
 何十匹もが時間差を置いて泣き喚くから、非常にやかましかった。

 「そこの新入り、なにしとんねや!ちゃっちゃと尻尾切ったらんかい!」
 口やかましく叫ぶのは、地元出身の団員だ。ジョウト弁はドスが利いて
いるが、このオッサンが叫ぶとお笑いにしか聞こえない。

 「今やってまーす!」
 俺は適当に返事をすると、傍にいたヤドンを一匹捕まえた。のろまポケモンと
呼ばれるほど鈍く、日照り続きで泳ぐ水もないから、捕まえるのは簡単だった。

 今俺がやっているのは、犯罪結社ロケット団の活動だ。ヤドンのしっぽは
珍味や漢方に使われるもので、そこそこの値で売れる。しかもしっぽはしばらく
するとまた生えて来るので、何度でも採取可能という訳だ。

 「要はヤクザの珍味売り・・・と。うちの組織も随分落ちたもんだ」
 ボスがガキに潰されて解散宣言を出してから、R団はちりぢりになった。
 一時は大企業ビルの制圧までやってのけた組織も、今では都落ちして
職にあぶれた二級団員か、熱狂的なボス信奉派しか残っていない。

 俺はと言えば・・・あぶれ組の方だった。トレーナーとしてはトウが
立ちすぎているし、今さら娑婆に戻れるとも思わなかった。



 「さてと」
 俺は一息吸ったあと、ヤドンのしっぽの付け根を押さえた。どうせ一日は
変化に気付かないから、ねんりきでやられる心配はない。もっとも一日遅れで
発動したESPに、不意打ちで肋骨を折られた奴はいたが。

 腰から私物の軍用ナイフを抜くと、俺は尻尾に切れ込みを入れる。手に
伝わる柔らかい感触は、やはり余り心地よくない。生き物を殺すのも切るのも
苦手だし、第一俺は偵察要員だったのだ。肉の切り方は心得ていない。

 それでもさすがは通販で70000円(ローン36回払い)しただけはあって
ナイフはさっくりと筋肉を切った。傷口から血とも水とも分からない液が
浸みだすが、ヤドンはただ手足をばたつかせるだけだ。多分まだ歩いている
つもりなのだろう。

 尻尾は刃渡りよりも太いから、すぐには切れない。骨と神経も中央に
通っているから、取り敢えず周りの肉を切断していく。太い血管が何本も
切れたせいか、尻尾全体が水びたしのようになる。

 もちろん服は汚れるが、元々取水地代わりだった井戸に入るのだ。制服は
ゴム仕様のものになっているし、手袋とブーツもコーティングしてある。
 「R」の赤いロゴが無かったら、ほとんど下水掃除と変わらない。

 「地下下水か・・・恐怖の白アリゲイツなんて映画があったな」
 古い映画のネタを思い出しながら、段々と尻尾の中心に刃を入れる。
 ここから先が案外面倒なのだ。



 尻尾は周りが切れたため、傷口からピンク色の肉が覗いている。皮下脂肪の
白とくっきり別れた色合いは、まるでアメの断面に見える。アメにしては
汁まみれで異様に生臭いが。

 「よっ」
 俺は一回ナイフを抜くと、血を拭き取って持ち手を逆さまにした。いくら
ヤドンが柔らかいとは言っても、神経の束と骨は切りづらい。だからここから
先は、ワイヤーカッターにも使われる、背中のノコギリの出番だ。

 「せぇのっ!」
 俺は力を込めると、ノコギリの部分を押し当てて一気に引いた。ゴリゴリと
骨のすり潰される音がして、白い粉がどんどん傷口の汁と混じり合っていく。
 何回も何回も引いて押している内に、骨の周りの部分が切れた。

 骨の中からぶよぶよした部分が染み出してきて、汁と混ざってえらく奇妙な
色になった。粘りけが強くて刃や手にべったりとなるので、何回か拭き取って
作業を続ける。その内に最後の部分、中央にある神経の束に行き着いた。

 神経の束は赤や青が集まっていて、爆弾のコードみたいに絡まっている。
 汁や粘りは少ない代わりに、手にブチブチと振動が伝わってきてかなり
気持ち悪い。俺はさっさと切り落とす事にした。

 一気に力を入れると、骨の反対側まで切断出来た。周りの肉は切ってあるから
これでヤドンのしっぽの出来上がりだ。一本3~4分位で終わるが、結構
手間が掛かる。 



 俺は近くのしっぽカゴにしっぽを放り込む。しっぽばかりが山盛りになって
いるカゴの中は、まるでうねるオクタンの触手だ。懐かしのパニック・ムービー
なら、ここで怨みの宿ったしっぽがウネウネしながら俺達を襲って・・・

 などとバカな事を考えていると、突然誰かが大声で悲鳴を上げた。
 何だ?まさかホントに怨み念法しっぽ地獄か!?

 そう思った俺が振り返ると、そこには帽子をあみだに被った妙なガキが
立っていた。しかも傍にはヒノアラシまで連れている。他にも数匹、かなり
強そうなポケモンが周りを固めていた。

 ・・・またガキにやられるのか。ロケット団ももう終わりだな・・・
 俺は飛んでいく仲間とそのポケモンを見ながら、ぼんやりそう思った。

 多分俺達はガキに呪われてるな。人のためになる仕事でもして、
何とかこの呪いは解けないもんかなぁ。
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