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ダイゴ虐


私のご主人様の趣味は石探しだ。
ご主人様のバトルの実力はかなりのものだ。しかしバトルは殆どせず、こうして毎日ずっと石を探し続けている。
宝の持ち腐れならず、力の持ち腐れとでも言うのであろうか。実に勿体無いものである。
しかし、それはご主人様自身の事なのであって、私が口出しする権利も無い。
もっとも、私とご主人様はポケモンと人間。種族も違えば言語も違う。口を出そうにも言葉が通じないのだが。


私はご主人様を愛している


もちろん恋愛的な感情ではない。が、それに近い感情が私の中にはある。
ごく稀に行うバトルを通じて絆を深めていくにつれ、その感情はどんどん大きくなっていった。
私は一生涯このお方に仕えていきたい。このお方に忠誠を尽くしたい。
ご主人様は私だけでなく、他の手持ちにも均等に愛情を注いでくれる。
しかし私はその度に、気分が悪いどろどろとした感情が心の隅に出来るのを自覚していた。
それは「嫉妬」と呼ばれる感情なのかも知れない。

性格の所為でもあるのか、私は独占欲が激しいとよく他人に言われる。
そして、感情を押さえておく事も苦手である。というか、我慢できない。
ご主人様も自分だけの物にしてしまいたい・・・・・・
私はモンスターボールの中から、壁に向かっているご主人様を見た。
ふつふつと湧き上がってくるこの感情を押さえる事など、できそうにも無かった。



「どうしたんだい?ボスゴドラ」
ご主人様は石を掘る手を休め、不思議そうに私を見上げた。
指示もしていないのにボールから手持ちのポケモンが出てきたので、当然の反応かもしれない。
ご主人様はそのまま暫く無言で私を見た後、急に理解したような顔で言った。
「もしかしてお腹空いたのかい?じゃあ一旦休憩してみんなでお昼にしようか」

またそれだ
いつもいつも「みんなで」である
ご主人様には私だけを見ていてほしいのに

ついカッとなってしまい、私はご主人様を地面に押し倒した。
そして素早くご主人様の両腕に足を置き、一気に体重を掛ける。
ご主人様の腕など、私にとってはマッチ棒同然だ。
細い枝を踏んだような感触が足に来て、すぐにご主人様の両腕は腕としての役目を果たさぬ物になった。
ご主人様の叫び声に心を痛めながらも私は足を退かし、こんどはご主人様の両足にそれを乗せて、同じように体重を掛けた。
腕とは違う多少鈍い音と共に、ご主人様の足は容易く折れた。
折れたと言うより砕けたと言った方が正しいのかも知れないが。
ご主人様は大きく目を見開き、声にならない声で何かを叫んでいる。
私はそんなご主人様の腰から他のモンスターボールを掴み、横にあった水路へ投げ捨てた。
赤と白の鮮やかなボールは水の流れに乗り、あっという間に見えなくなった。



これでご主人様は助けも呼べず、ここから逃げる事も出来ない。
これでご主人様は私だけを見ていてくれる。
ご主人様は私だけの物になったのだ。

余りの嬉しさから、私はご主人様をそっと抱き上げた。
「ボスゴドラっ・・・ど・・・・して・・・・・・」
ご主人様は酷く悲しそうな顔だった。
ああ、ご主人様。どうしてそんなに悲しそうに泣いておられるのですか。
やっと余計なものは居なくなったのです。ですからどうか泣き止んで、私にいつもの笑顔を見せてください。
私はご主人様を抱きしめた。ご主人様を慰める為に。
「ぐっ・・・・ぁ・・・・」
しかし人間というものは恐ろしく華奢なもので、私が抱きしめるとご主人様の体はごきんと音を立てて壊れてしまった。
しかし私は構わず抱擁を続けた。ご主人様を私だけの物にできた喜びを押さえることができなかった。




突然、耳につく電子音が鳴り、洞窟に響いた。
私はその音に驚き、思わずご主人様を落としてしまった。
ご主人様が落ちた時に、小さな機械がご主人様の顔の辺りまで転がった。
電子音の正体はポケナビという機械だった。
落ちたはずみで通話が可能な状態になったらしく、声が聞こえる。

『やっと通じた・・・まったく、仕事もせずに石ばかり追いかけて。私の苦労も少しは考えてもらいたいものです。・・・って・・・聞いてるんですか!?』

私はこの声に聞き覚えがある。確かご主人様の親友であったはずだ。
またあの嫌な感情が湧いてきた。これ以上誰にも私達の邪魔をさせはしない。
その機械を踏み潰そうと、私はご主人様の方へ歩み寄った。
ご主人様を踏みつけぬよう注意を払ってゆっくりと足を持ち上げたとき、ご主人様が微かに動いた。
私は足を止め、ご主人様を見た。ご主人様は首をゆっくりと機械の方へ動かし
「ミクリ・・・たす・・・け・・・・・・・」
『何?』
「石の・・・洞窟・・・・・早・・く」
ご主人様は弱弱しい声で確かにそう言ったのだった。






助けて?ご主人様は私と居るのが嫌なのですか?
あれほど忠誠を誓ったのに、せっかく二人きりになれたのに。
ご 主 人 様 は 私 が 嫌 い な の で す か ? 

頭をハンマーで思い切り殴られたような、そんな衝撃が全身を駆け巡った。
やはり私は感情を押さえるのが苦手なようだ。
裏切られたと思った私は、ご主人様を片手で掴み上げ、そのまま岩の壁に力の限り叩きつけた。
しかし私の怒りは収まらない。
動かなくなったご主人様を再度掴み上げ、地面に叩きつけようと腕を振り上げた。
「ミロカロス、みずのはどう!!」
突然後ろから私の大嫌いな水が押し寄せてきて、たまらず私は倒れこんだ。
私が気がついた時にはすでにご主人様は私の手の中から消えており、横には見覚えのある人間がご主人様を抱えて立っていた。
立ち上がって今すぐにでもこの男を捻り殺したかったが、あのミロカロスのお陰で体に力が入らない。
見覚えのある人間は無言で私を見た後、ご主人様を抱えたまま出口へと歩いていった。
返せ。ご主人様を返せ!
私は吼えた。力一杯吼えた。ご主人様が居なくなってしまったら、私には一体何が残るのか。
ご主人様はもう見えなくなってしまった。静まり返る洞窟の中で、例え様の無い孤独感が押し寄せてきた。
私は吼え続けていた。吼え続けていないと孤独に押しつぶされ、死んでしまう。そんな気がした。
それから私は声が枯れるまで、いつまでも吼え続けていた。

――――――私のご主人様は何処にいるのですか?
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