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ロシア軍侵略ネタ

作者:虐待犯

ロシア人達の暴虐は、ここカントーの地においてもとどまることを知らなかった。
19××年に始まった侵攻作戦は、ジョウトおよびホウエン北部に対する着上陸を
皮切りにして、恐るべき順調さですすんでいた。

防衛協定の失効により、クチバのアメリカ軍兵力を除く全てのアメリカ戦力は
撤兵していたのだ。常に戦力不足に悩まされていた「防衛軍」では、世界第二位の
超大国の陸軍に屈するより他無かった。

組織的抵抗は消滅し、現在ではシロガネ山・イワヤマ・オツキミ山戦線も崩壊して
平野部や都市、一部村落でのゲリラ戦のみがこの国における戦いとなっていた・・・

1 ポケモン狩り

カントー最大の都市にして、世界有数のハイテク企業を抱えるヤマブキシティも、
今では見る影すらない。シティ最大のオフィスビル「シルフビル」は爆撃と砲弾穴で
スピアーの巣のごとくであり、市街の約70%は消失していた。

しかしそれでも、この街には戦闘力が残っていた。シティ北東部郊外にある
ポケモンジム「ヤマブキジム」にいるトレーナーたちである。

「ナツメさま!敵戦力はシティ南西部に移動した模様です。防衛軍遊撃隊に
通報済みです」
おかっぱ頭の少年が、手短に報告を口頭で伝える。年格好はまだ10歳になるか
ならないかと言ったところで、体つきも華奢である。しかし表情はあどけなさや
幼さよりも、何か冷徹な強さを感じさせるものがあった。


「ごくろうさま。では救助班を北西部の第3,第4ブロックへ向かわせて」
ナツメと呼ばれた少女が、長い黒髪をなびかせて振り向いた。腰まであるその
髪はシルクのカーテンのようであり、鋭い釣り目と凛とした声を響かせる口許と
相まって、少女の美しさを際だたせていた。

ナツメの瞳に見据えられた少年は、一瞬だけ動揺したように動きを止め、慌てて
さきほどの言葉を復唱した。
「北西部3,4ブロックに救助班を派遣!了解しました!」

少年がそう叫んだとたんに、周囲の空気が揺らいだ。その揺らぎが少年を飲み込んだ
とたん、少年の姿はそこから消えてしまった。

それを見たナツメは、微苦笑しながら脳裏に言葉を思い浮かべた。それは声に
ならない言葉でありながら、どこへでも届く言葉でもあった。
<<たった今、シュウが民間人救助へ向かったわ。他の班員も、北西部の第3、4
ブロックへ向かって>>

ナツメの思い浮かべた言葉は、すぐにジムのトレーナーたちへと伝わっていった。
四方の壁から声にならない返答が帰ってきた。すぐにその気配も消え、彼らが
指示どおりの場所へ救助に向かった事が、ナツメには感知できた。

ヤマブキジムに所属するトレーナーは、全員が超能力、つまりESPを持っている。
テレポーテーション(瞬間移動)やテレパシー(精神会話)など、基本的なことは
誰もがこなせるのだ。

少年がいきなり消えたのも、ナツメが思うだけで言葉を伝えられたのも、すべては
この超常能力のお陰であった。彼らが戦力として存在しうるのも、この力に依る
ところが大きい。


といっても、正規の軍隊相手に殴り合うなどは流石に出来なかった。そのため
ヤマブキジムは、逃げ遅れた民間人の救護と、防衛軍残存兵力に対する通信・通報
を行う施設として活動を始めたのだ。

そしてそのもくろみは、今の所成功を収めていた。防衛軍遊撃隊との連携により、
シティ周辺の戦力にそれなりの出血は強いることが出来たのだった。
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ナツメの命令を受けた救助班は、テレポートでもって現場へ到着した。数カ所で
空気の揺らぎが発生した後、各地区ごとにジムトレーナーが現れる。

「よーし、全員救助開始!」
敵兵の気配を警戒しながらも、救助班の面々は周囲を捜索した。といっても、
基本的には機械を使うわけではない。テレパシーの応用で声を出せない人を探し、
サイコキネシスで瓦礫をどけるなど、サイキッカーならではの方法を用いて
捜索するのだ。

「出てこい、ゴース、ヤドラン!」
トレーナー達は、周囲にポケモンも展開する事にした。ポケモンならば狭い隙間や
人の気付かない所を捜索できるし、何よりテレパシーで繋がっていれば、人間同士の
密な通信網と同じレベルの連携が取れるからだ。
しかしこの捜索網が招く悲劇を、この時は誰も予知できていなかった。

数時間後、周辺の救助はある程度の成果を見せていた。死体は一箇所に集めて
火葬し、生きている者は負傷や症状の程度に合わせ、見合った医療施設へと送致
することで、これまでに約50人近くを助け、100近い死体を葬ることが出来た。

しかしそれは同時に、トレーナー達の消耗や注意力低下をも意味していた。
十歳になるかならないかの少年たちにとって、人の死体や怪我人の群はただでさえ
刺激が強い。おまけにテレポートの連続使用によって、超能力は衰え始めていたのだ。

子供たちの作業中に、突然それは起こった。幾つかの銃声が響き、何匹かのポケモンに
弾が命中したのだ。幸い本能的に防御したため即死はしなかったものの、瀕死に
近い重傷を負った個体もいた。

慌てて伏せた子供たちは、銃声の方向に目を向けた。するとそこには、AK74を
構えたロシア兵が数人、こちらに向けて発砲していた。どう見ても素行が悪そうな連中で、
軍人でなければマフィアの下っ端でもやっていそうな顔つきをしていた。

「ポケモン狩りだ!飛べる者はすぐに戻って連絡!残りは負傷したポケモンを回収して
逃げるぞ!」
ポケモン狩り-それはロシア人たちが始めた、この国での新たな商売だった。ポケモンを
他人から奪い、また野生のポケモンを狩って海外に売り飛ばす事を目的とした非軍事行動、
ようは略奪の一部だった。

この国にいた犯罪組織「ロケット団」に近い連中で、つまりはどうしようもない
悪党だった。しかも警察力さえ崩壊した現状に加えて、彼らは田舎のチンピラどころか
殺人のプロフェッショナルなのだ。

中には公然と中隊・大隊規模での略奪を行う連中もいたが、戦力が南にある現状では
それは無かった。恐らくは独断で動いている小隊程度と思われたが、それでも
戦争では素人同然の子供達にはきつい相手だった。

片腕を失ったバリヤードが、一本だけでバリアを展開し始めた。それに合わせて
他のトレーナーとポケモンも力を振り絞り、とにかく弾雨をそらす事にした。


集中効果のかいもあり、AKから放たれる曳光弾の光はぐにゃぐにゃと折れ曲がり
有効な弾はほとんどなくなった。隙を見て歩けるトレーナーや銃弾の効かない
ゴースが、負傷したポケモンを抱えて瓦礫の中を動き回る。

弾を完全に防いではいないので、低姿勢で走り回っても銃弾は近くをかすめる。
一人などは耳の後ろに銃弾がかすめ、危うく射殺されそうになったほどだ。

負傷したポケモンの回収に成功すると、トレーナー達はとにかく瓦礫の隅に隠れ、
ジムからの増援を待つことにした。消耗した少数では、戦うのはおろか防御すら
おぼつかないからだ。

しかしAK74は口径が5.56㎜しか無いため、AK47の7.62㎜に比べて
貫通力が低い。その為瓦礫を貫通する事が出来ないので、トレーナー達はいくらか
余裕を取り戻した。

そして彼らは増援をまつ間、負傷したポケモンの応急処置を行うことにした。
といっても彼らは医者では無いため、その処置は全くお粗末だった。はみ出した
腸を念力で押し戻し、どくけしをかけた上で傷薬をひたすら吹き付けたり、
傷口をエネルギー波で強制的に埋めたのだ。

医療行為としてはどうかと思われたが、ポケモンの生命力の高さからすれば、
それなりに有効な措置ではあった。出血もいくらかは収まり、ヤドンたちは
小康状態を迎えていた。

その内弾代に見合わないと分かったのか、それとも政治将校に嗅ぎつけ
られたのかは分からないが、ロシア兵たちは銃撃をやめて引き上げていった。
後に残された子供達は、その後少しして飛んできた増援に合流して逃げ去った。


「負傷したポケモンはジョーイさんの所へ!軽傷者は医務室に行って、重傷者は
軍医さんに見て貰いに行きなさい」
仲間達に連れられた救助班は、テレポートで戻ってくるなり仕分けられた。
満足な治療は出来ないが、それでも放置よりはましな体制が復旧しているのだ。

無傷の者と軽傷の年長者は、ナツメの前に集まって報告を始めた。その中には
最初の命令を受けたシュウも混じっていた。

「難民の救護活動中、敵兵の攻撃を受けました。襲撃は小規模で後続も
無かったこと、火力の低さ等から、単独行動していた小隊規模のものかと
思われます。執拗な銃撃を受けた事から見て、斥候ではありえません」
一人のきとうしが硬直した面持ちで、ナツメに報告した。

「なぜ襲撃に気付かなかったの?予知は出来なくとも、気配を探っているので
あれば、ある程度の距離で探知してもおかしくはないはず」
ナツメのその言葉を聞いたとたん、報告を聞いていたシュウは身体を震わせた。
おずおずとシュウは顔を上げ、恐ろしげに口を開いた。

「ヤドンやゴース達とテレパシーで呼び合って、そして瓦礫の中の念に意識を
向けていました。それとテレポートの連続使用で、注意散漫になっていました」
その報告を聞いたナツメは、鋭い目尻を更に細く釣り上げた。


「テレパシーでの連絡は良いけど、瓦礫にだけ集中したのは失敗よ。人によっては
死体の中に身を潜める場合もあるんだから。それにテレポートの使用で疲労
した場合は、交代要員を呼ぶか自分から休息・交代を申し出なさい」

ナツメの口調はきつく、そして容赦なかった。仲間を危険にさらした事は当然
重罪であるし、その事は分からせなくてはならない。それに関しては、超常的で
一般人には無い力を持つ、サイキッカー特有の意識も関係していた。

報告を聞いたシュウは、肩を大きく震わせると、ただ顔を伏せて頭を下げた。
「すみませんでした。以後、このような失敗はいたしません」

その言葉を受けて、ナツメはシュウに命じた。
「反省文の作成と懲罰房一日。死人は出なかったし、負傷者も大したことは
ないわ。よく反省して、また仕事に戻りなさい」

命令を受けたシュウは、懲罰だというのに嬉しそうに受領した。
「はっ!それでは懲罰房に向かいます!」

歩き去っていくシュウの背を見ながら、ナツメは他の班員にも命じた。
「あなた達も今回の報告書、使用医療品の許可書、ほかにも色々書く物や
やることはあるんだから、各自行動開始!」

「はいっ!」
報告に来ていたきとうしやジプシージャグラーは、素早く元の配置に戻るか、
拾ってきたデスクで机仕事を始めた。



全員がめいめいに仕事を始めた後、ナツメはひとりごちるように呟いた。
「ジムは所詮国営施設で、ジムリーダーや所属員も非常時には軍属扱い。
でもこんな命のやりとりも、懲罰やら命令やらも、ばかげているわ」

そうよ、何もかもが馬鹿らしい。ナツメはそう思っていた。法的にはトレーナーは
独立した大人と同等の権限を持つとはいえ、肉体的には未熟だし、経験の量も普通の
大人とは比較にならないほど少ない。いくら権利には義務が付き物と言っても、
これでは義務が過多に過ぎるわ。

「まったく、この戦いはいつ終わるのかしら・・・」
誰にも聞こえないように、しかし自分にだけは聞こえるようにナツメはつぶやいた。
雑然とした空気と負傷者たちのうめきの中では、ちょっとした声でも聞き取られる
事はないのだが。
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