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エアームド虐待


「ギッ!ギーギィッ!」
今俺の目の前には、白く柔らかい羽根を持った一羽の鳥がいる。その羽根は
正に純白と言った美しさで、羽毛の間に小さな輝く欠片がちりばめられている。

俺はその鳥に目隠しをし、くちばしと足を縛り上げて動けなくした。しかし
それでもその鳥は暴れ回り、恐怖から逃げまどおうとしていた。

「さあ、時間だ」
暴れる鳥の力は、縛り上げられても凄まじかった。下手をすれば鋭い蹴爪に
手足を切ることもある。服の下には籠手を着ているが、これが破られるのも
恐らく時間の問題だろう。

無理矢理鳥を抱えると、俺はそのまま茨がドーム状に積まれた山にそいつを投げ
込んだ。一瞬の空白の後、鳥の全身は棘に突き刺されて血塗れになる。

「グー!グギィギィ!」
くちばしが封じられたままなので、鳥は満足に呻くことも出来ずにもがいて
暴れ回る。そしてそのたびに、身体の下にある棘が全身を傷つけていくのだ。

白い羽は既に血でまだらな赤に染まり、ひどく汚らしい模様になっていた。下に
しかれているいばらの方も、まるで元々赤い茎だったかのように色づいていく。

「グゲゲェイ!」
どこかの神経に棘が刺さったのか、鳥はいっそう暴れ回った。血の飛び散り方は
激しくなり、地面をも赤い斑点が汚染していった。


「くっ!」
俺が油断していた一瞬に、こちらにも血が飛び散ってきた。それは顔面に振り
注いできて、不快な臭いのする血と肉片、そしてわずかな金属片が目に入り
そうになった。

それを一張羅の、既に鳥の血で茶色い染みや錆跡が染みついている作業服で
拭うと、俺は鳥の様子を観察した。

鳥の身体には小さな傷がぱっくりと幾つも開き、ピンク色の肉と血を垂れ流す
血管の不気味な立体をそこに示していた。俺はその傷を見て、思わず落胆と
悪意に襲われた。

まだだ、まだだめだ。この程度じゃ足りない。もっと・・・もっとだ。

「監視ビデオ一旦中止!回復後一時間で再開だ」
俺は壁に仕掛けられたカメラにそう告げると、さっさと「いいきずぐすり」の
スプレーを取りだして鳥に掛けてやった。

剥き出しの神経にそれが浸みるのか、それとも目が見えない状態で突然の感覚に
怯えているのか、鳥は激しい抵抗を見せた。

「これでもう一本おじゃんか。まあいい」
一言だけ呟くと、俺はもう3本ほど取ってあった予備を取りだし、一気に鳥に
それを浴びせかけた。それが傷を急速に直していることを理解した鳥は、
暴れるのを止めてこちらに身を任せ始めた。


鳥の動きが完全に止まったところで、俺はそっと身体の下に手を入れて持ち上げ
ようとした。しかしまた急な感覚に怯えたのか、薬をかけた時よりももっと
強い動きを見せた。

そこまでは普段の作業時と全く変わらなかったが、その時に予想外の事態が
発生した。羽の拘束具が突然叩き切れたのだ。

急に自由になった羽を、鳥は思い切りばたつかせた。もはや半狂乱といった
その動きで羽は茨の間に挟まり、大きな裂傷をそこに作り出した。

次の瞬間には俺が無理矢理押さえたものの、鳥は傷口から血を流し大暴れ
したままだった。それは見ていて痛々しかったが、取り敢えず抱えたまま
俺はその部屋を後にした。
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「しかしこんな事で、本当にちゃんと育つんですかねえ?あのエアームド」
「分からない。だがこれしか方法は無いんだ。やるしか無いだろう」

俺のつぶやきに返答してくれたのは、ポケモン保護センターの先輩レンジャー
だった。俺はいまこのセンターで、エアームドと呼ばれるポケモンの育成をして
いる。彼はその指導官という訳だった。

エアームドと言うのは、いばらの中に巣を作るはがねどりポケモンだ。全身が
鋼鉄よりも強靱な羽に覆われている、とされている。

ただしこれは、自然環境下での話でしかなかった。


エアームドの鋼の固さは、日々暮らすいばらの巣で棘が刺さり、傷付き、その
傷口が徐々に徐々に硬質化して行く過程で形作られる。逆に言えば、普通の巣で
普通に暮らしている場合、硬質にならないまま育ってしまうのだ。

特に今対処中の「鳥」は余りにひどい物だった。本来ならばエアームドは、
孵化したときからある程度の固さが有るはずなのに、この「鳥」はそうなる前に
生まれてしまった。

不慮の事故で卵が未成熟なまま孵ってしまい、それがセンターに持ち込まれたのだ。
当然ながらその時点で本来の成長と硬化は止まり、普通の鳥となんら変わらぬ程度の
身体になってしまった。

この事が何を意味するかというと、エアームドが大きくなりすぎると言うことだ。
人間で言う巨人症などのように、体格に比して体が大きすぎる場合には、サイズに
変化のない心臓などの臓器に負担が掛かりすぎ、すぐに死んでしまう。

そこで現在肉体の成長を制限し、本来の姿に戻すために「本来の環境に近い」
茨の山に、定期的に放り込んでいるのだ。

外科手術などで羽や足、負担の掛かる部位を切り取る手などもあるが、それは
最後の最後で取るべき手段である。


もちろん茨の山に放り込む必然性は無いが、結局身体を傷付けなければいけない
事に代わりはない。防衛反応としての羽の硬化だから、一定以上の刺激が無くては
身体が硬化しようとしないし、しても本来の物と違うから障害を残しかねない。

電圧刺激や高周波・低周波刺激などもやはり痛みを伴うし、棒やナイフで身体を
傷つけるのは職員の精神衛生、外聞の問題上行われなかった。そこで結局
「棘の中」という本来の姿に徹しようという風になった訳なのだ。

予定ではしばらくすれば自然と『一番効率の良い刺さり方』を自分で見つける
はずで、その時点で屋外飼育まで考慮に入れるはずだった。しかし元から野生でも
頑丈でもない「鳥」は、恐怖心で身を守ることを覚えてしまった。

そうした次第で、現状では強制的に茨の山に放り込むという方法がとられている。
現状では体表に摂取した金属片が浮き出始めているが、まだまだ硬化と言うには
ほど遠かった。

俺は一体あと何度、あいつを棘で刺さねばならないのだろうか?

「回復終了。一時間のサイコ・ヒーリングの後再度訓練を開始」
取り留めのないことを考えている内に、「鳥」の回復は終了したようだった。
これで後一時間後には、またあの血みどろの状況が始まるのだ。

凍えた手を暖め、また冷やすような苦行の連続。これから俺と「鳥」が解放
されるのは、きっとまだ先なのだろう。俺は重苦しい溜め息を吐いた。
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