光を求めて影は



「へえ、カンナさんって凄い空手家だったんですね~。私、尊敬します」

「いやあ、別にまだ凄え空手家ってわけじゃあないんだ。あたいは、もっと強くなる。帝都のみんなを守るためにもな」

「確かに、今は女性も随分強くなったもんだよなぁ。こんなにデカい女がいるなんて……」

桐島カンナの身長は197センチメートル。普通は男性であっても、これだけの身長には滅多にならない。
その証拠に、片霧大作よりも身長が大きい。180センチある大作は、男性の中でも大柄に見られるのに、その身長をゆうに越すカンナの姿は女性的ではなかった。
バストに関しては申し分なく女性なのだが……。

彼らの出会いは、C-1エリアにあったオープンカフェのような場所に始まる。
毛利蘭は、その付近を堂々と歩いていた。空手の有段者である彼女は、他人の気配を感じることもできたし、多少恐ろしい感じもするが隠れたりはせずに街を歩いていけた。
だが、そんな彼女が歩いていると、大柄な女が大量の飯を食べ、同じくある程度大柄で──しかし、その女性よりも小さい男が、彼女に比べると少量……しかし人に比べれば多量の飯を食べていた。
流石に気になったのと、目が合ったことから彼らとの交流が始まる。といっても、まだそれから一時間と経っていないが。
その時は、一緒に飯を食べようと誘われたが、流石にこの状況では食事が喉を通るとは思えず、遠慮をした(カンナには、「それじゃあ動くときに動けないぞ」と軽く怒られた)。

一応、カンナが同じく空手の達人だったこともあって、なんとか今、二人と問題なく会話を弾ませながらこのオープンカフェで情報交換をしている。
椅子や机があり、店内には冷凍やレトルトの食品があるのは、この場ではとても便利なことだった。

「そうだ、蘭、大作。あたいには心強え味方がいて、そいつらもここにいるんだ」

「ああ、それなら私の知り合いもいました」

「俺の知り合いもいるぜ。……まあ、心強い味方だけが連れてこられたってわけじゃあないんだけどな」

空手の話に花が咲いてしまったが、この場においてとても大事な話がまだだった。
殺し合いについてだ。
飯を食い、空手の話をし……と、まだ全然殺し合いについて話しては居なかった。頭の片隅にはあったのだが、どこか忘れていたというか──まあ、避けていたのだろう。

「大神たい……いや、なんでもない。大神一郎、それにさくら、……えっと、真宮寺さくらな。佐倉杏子じゃない方だ。すみれって奴に、紅蘭って奴に、マリアって奴に、アイリスって奴。こいつらはみんなあたいの仲間だ」

「アイリス……?」

「えっと、名簿じゃあイリス・シャトーブリアンって書いてあったな。悪い悪い」

カンナは恥ずかしそうに頭を掻いて、説明する。一応、彼女たちは劇団のスタアで、全国に名前が知れているらしいが、大作も蘭も聞いたことはなかった。大作はともかく、蘭はそこそこ劇の俳優についても知っている。
それでもあまり知らなかったくらいだ。カンナは空手家としても、おそらくこの体格を見た限りでは結構鍛えている。それこそ、どこぞの大会で名前を轟かせるには充分だろう。
蘭は自分が無知だったのだろうと思ったが、それにしてもやはり自分が知らないのはおかしかった。
しかし、とりあえず自分の番だと思って蘭は口を開いた。

「この毛利小五郎っていう人がうちのお父さんです。探偵なんですけど」

「小五郎! あの名探偵の毛利小五郎か!?」

「ええ……」

毛利小五郎の名前も、ある程度は知られている。そう、普通の人には当たり前のことだった。
数々の事件を解決した眠りの小五郎……その名前は行く先々で畏れられる。蘭は、そんな父を尊敬もしていたし、身内の恥だとも思っていた。

「確か、怪人二十面相と戦った……いや、でも君のお父さんは物語の中の人物じゃなかったかな?」

「それは明智小五郎ですよ」

と、蘭は笑った。
某推理オタクのせいで、その名前は何度も聞いている。大作は冗談のうまい人だな、と思ったが、大作は本気で間違えただけである。毛利小五郎なんて名前は知らないし、探偵と言って肯定したのも乗ってくれたとしか思わなかった。

「あとは、江戸川コナンくんと灰原哀ちゃん、服部平次っていう人も知り合いです。みんな悪い人じゃないはずだけど、……コナンくんと哀ちゃん、心配だなあ」

「ん? コナンっていう奴と哀っていう奴は、もしかしてまだ子供なのか?」

「ええ。それも、まだ小学一年生で……本当に心配です」

「こりゃ本格的にまずいな。アイリスだってまだ10歳だ。子供も結構な人数、ここにいる」

「こんなところで油を売っている場合じゃないってわけか」

大作だけ、まだ知りあいについて話していないが、彼はすぐに席を立った。
彼はビーファイターだ。ここで話しこんでいる暇はない。コナン、哀、それにアイリス。子供がいるなら、その保護に急ぐべきだろう。

「話すのは歩いてでもできる。コナン君たちを探しにいこう」

「そうだな。アタイも賛成だぜ」

「決まりだな」

蘭とカンナも席を立ち始めた。
もう、この場所ですることもないだろう。大作の情報は歩きながら公開することにしよう。
そう思った矢先だ。

このオープンカフェに、他にも近付いてくる人間がいることに気付いた。
若く、髪を茶色に染めた長髪の男である。近付いてくるその手には、何かを持っていた。
彼が真っ先に向かったのは、カンナたちのいるテーブルではなく、その店を覆うガラスの一部であった。

「おい、あんた……」

「変身!」

すぐに、異様な空気を感じ取った。
彼が人の姿を捨て、漆黒の戦士・仮面ライダーリュウガの姿になったのはその直後である。
この時点ではまだ敵か味方かの判断はできなかったが、すぐにわかった。

──SWORD VENT──

敵、だと。
空中から降ってきた剣を構えたリュウガは、すぐにカンナたちに向かって走り寄った。
赤い複眼がこちらを睨むように光っていた。

「逃げろ、二人とも!」

カンナが真っ先に、向かってくるリュウガを相手にデイパックを降ろして、桐島流の構えに移った。
巨体が生身でリュウガを睨む。……しかし、負けそうにない勝気な笑みを顔に残して、その身体からは霊気を発していた。
帝国華撃団・花組。
その一員であるカンナは、霊力を使うことができる。空手にその力をミックスさせて戦うこともできるのだ。

「てやぁっ!!」

前方から向かってくるリュウガにカンナも走り寄った。
距離がゼロに近付くなり、相手の構えるソードベントを上段回し蹴りで吹き飛ばす。生身とは思えない力であった。持ち手を握る力でさえ、跳ね返してしまうほどに。
リュウガも一瞬唖然とし、目の前の女の姿を疑う。それは、女としては見てはいけない。油断してはいけない相手の姿──戦士の構えをしている。

「カンナ、大丈夫か!?」

「心配すんなって。あんたらは先に行ってな!」

「しかし……」

「安心しろ。アタイは死なねえ。こんな奴、一ひねりだ。だいたい、こんなところで油を売ってるわけにはいかねーって言ったのは大作だぜ!?」

「……すまないっ! 蘭ちゃん、行くぞ!」


大作の持つジースタッグの力があれば、或いはもっと有利にことを運べたかもしれない。
しかし、カンナの知る大作は生身の男だ。彼を危険に巻き込むわけにはいかない。
それに、一度蹴りを入れて、すぐにわかった。

────この敵は、一ひねりとはいかない、なかなか手ごわい相手だと。

「かかってきな、ド三流」

リュウガは挑発も受けずに無言で、次のカードを召喚機に入れる。

──ADVENT──

真横のガラスから、ドラグブラッカーと呼ばれる、リュウガと体色が同じ龍が現われた。
咆哮とともにカンナに向かってくるが、カンナはそれを紙一重でかわした。

「そんなのアリかよ!?」

ドラグブラッカーとリュウガの二体の敵が、こちらを睨んでいた。
いまかわしたときに、ずれてしまった体制を少しずつ直しながらカンナもリュウガを睨んだ。
本当に、人を攻撃することに躊躇のない相手らしい。というより、人間かどうかすら怪しい。あの人間の姿は仮のものとも考えられる。
特に、あの龍だ。あれは既に人間ですらない。

「ヘッ。こうなったら、アタイの必殺技を拝ませてやるしかねえな」

──FINAL VENT──

二人が対峙しながら、必殺技の構えをとった。
片方は、龍とともに高く飛び上がって蹴る準備を。
片方は、霊力を込めて突く準備を。

「桐島流最終奥義…………っ!! 目にもの見せよう……っ!!」

既に急降下を始めたリュウガのファイナルベント・ドラゴンライダーキックがカンナの身体に向かって来ていた。
だが、カンナは最も上手いタイミングが来るのを待って、目を瞑ったまま構えていた。
タイミングがモノを言う。それを悟るには、目の見えるものを待つより、相手の気配を待つことだ。

「今だっ!! 四方攻相君ッッッッッ!!!!!」

重力の力を伴うリュウガの攻撃に勝つには、相当のエネルギーが必要だ。
幸い、先ほどカンナは食べ物を調達して万全である。
カンナの力が、リュウガを圧していた。重力さえも逆らわせて。

だが、それが所詮は人の力であることも悟っていた。
これはかなり消耗が激しい。このリュウガの攻撃を防ぐのが精一杯だろう。

ドラゴンライダーキックを、その拳が遂に弾き返した。
リュウガは無様に、地面に転がっていく。攻撃を弾き返して、余りあるほどの霊力を使ったのだ。
しかし、人の命を脅かす、この「魔」はまだ滅んではいない……。

「おいおい……しぶとすぎるぜ、全く……」

カンナは、ある限りの力を構えに使った。
気力を溜める。
ああ、嬉しいことがあったら……大神隊長が傍にいてくれたら、もっと強くなれたかもしれない。
霊力とは、そういう感情によって上がるものだ。

カンナは、そんなことを考えている自分を少し笑うと、リュウガが起き上がったのを確認する。

「まだ、終わりじゃないぜ……アタイの全てをここに……………っ!!」

カンナの身体中の霊力が、全て拳に込められていく。
もう、四方攻相君は無理だろう。思えばあれがカンナの全てだったのかもしれない。
だが、120パーセントの力を持っても、悪を倒さなければならないのだ。

────それが、帝国華撃団なのです!

そんな台詞が頭をよぎった。
それを言う仲間の姿を思い出すと、不思議と身体に力がわいてくる。

(ああ、見逃すわけにはいかないよな……。こいつが暴れりゃあ、みんなに迷惑がかかる。ここには子供だっているんだ。こんなやつに勝手にさせてなんていられないよな)

霊力が限界まで達した。
身体はもう、立っているのが限界だろう。
全身の麻痺が始まり、相手に向かっていくだけの力も出ない。
だが、一瞬だけよぎった仲間の姿に、不思議と心強さだけが湧き上がってくるのは何故だろう。

好都合にも、リュウガはカンナに向かっていていた。
それも、結構なスピードだ。霊力がいつ切れるかわからない今、すぐに敵が来てくれるのは願ったり叶ったりだろう。
そして、すぐにタイミングは来る。

「へっ。隊長、後はよろしく頼むぜ…………一百林牌(スーパーリンパイ)!」

──GUARD VENT──

「何っ!?────」

リュウガの腕に出現した盾が、一百林牌を全て飲み込んだ。
こういうカードがあることを知らなかったのは──そこまで頭が回らなかったのは、迂闊なことだっただろう。

──STRIKE VENT──

(そんな……隊長…………みんな…………)

二度の必殺技で消耗した彼女に、それを防ぐ盾などなかった……。
カンナの身体は、一瞬で燃え尽き、倒れた。
意思を繋ぐものなど、最早ない。
強いて言えば、もうちょっと強くなっていけばよかったという後悔もこの世に残してきたかもしれないし、死にたくないという思いは心の中に強く残っていただろう。
しかし、彼女の意識はもうないのだ。その意思は、もう彼女の肉体に宿らず、死者の怨念として残っていくのみだ。

彼女の仲間が、それを受け継がない限りは──。

【桐島カンナ@サクラ大戦 死亡】
残り99人

リュウガは変身を解除すると、傍らに落ちているカンナのデイパックを開けた。
リュウガ自体の武器は、デッキ以外にはチェスのセットのみだった。彼はチェスなど嗜むことはないし、間違いなく不要物であった。

デイパックの中には、「オルタナティブ・ゼロ」のデッキが入っている。
十三人のライダーのデッキではないようだが……。
まあいい。リュウガのサブとして、充分に重要性の高い武器だ。

龍騎──城戸真司の身体を得るために、リュウガはなるべく強い力を持っておくべきなのだ。

【1日目 深夜/C-1 オープンカフェ】

【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【状態】疲労(大)、身体の各所にダメージ(特に脚部)、リュウガに二時間変身不可
【装備】リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式×2、チェスのセット一式@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0~2(カンナ)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:真司の身体を乗っ取るのが最優先。
2:目に付く参加者は殺害する。

★ ★ ★ ★ ★

「カンナさん、大丈夫かしら……」

「わからない。だけど、……俺もあそこで戦った方が良かったんじゃないか……ふとそう思ってしまうんだ」

「そうですね。私だって、あの黒いやつが何なのかはわからないけど、少しは力になれるかもしれないのに、逃げてきた……」

「いや、君が気に病むことは無い。だって、君は普通の高校生じゃないか。俺は違うんだ……蘭ちゃん、このことは絶対秘密だ。俺は、ビーファイターなんだ」

「ビーファイター?」

蘭は、聞いたことのない言葉にきょとんとした。

【1日目 深夜/B-1 街】

【片霧大作@重甲ビーファイター】
【状態】軽い疲労、罪悪感
【装備】ビーコマンダー@重甲ビーファイター
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いからの脱出。
0:蘭にビーファイターのことを話す。
1:カンナが心配。
2:蘭と行動する。なるべく早く仲間について話しておく。
3:自分、蘭、カンナの知りあいを捜す。コナン、哀、アイリスが優先。
※サクラ大戦、名探偵コナンの参加者について知りました。

【毛利蘭@名探偵コナン】
【状態】軽い疲労
【装備】不明
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いからの脱出。
0:ビーファイター?
1:カンナやコナンが心配。
2:大作と行動する。
3:自分、カンナの知りあいを捜す。
※サクラ大戦の参加者について知りました。

006:『魔法少女』といこう! 投下順 008:愛する人を取り戻すため
006:『魔法少女』といこう! 時系列順 008:愛する人を取り戻すため
初登場 桐島カンナ 死亡
初登場 片霧大作 041:限りなく遠い世界
初登場 毛利蘭 041:限りなく遠い世界
初登場 リュウガ 050:漆黒の怪人

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最終更新:2011年08月12日 01:19