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蝙蝠と蛇



 俺はヘルメットを片手に野山を歩いていた。
 あれから数十分経っているように感じるが、まるで戦いの気配も人の気配も感じなかった。
 城戸が合図を送ったというなら、反応はもっと早いはずだし、おそらく何かに巻き込まれた可能性が高いだろう。しかし、その様子は一切ない。ミラーワールド側にいるとしても、この付近に鏡はないはずだ。
 あるいは、何の気なしにヘルメットを落としたのか──とにかく、この付近にあのバカがいるのは間違いない。
 どこへ行ったのか。
 そう考えたときだ。
 不意に俺は、あることに気づいてヘルメットの方を睨んだ。月明かりが照らすヘルメットには、鏡ができていたのだ。それに気づいた俺は、一度鏡の向こうを覗いてみたが、この辺りで龍騎が戦っている様子はまるでない。

 その時、一種の不安を感じた。
 おそらく城戸はミラーワールドに行った。だが、ミラーワールドには城戸の姿はなく、同時に現実世界でもこの鏡から戻った様子はない。
 だいたい、この山林では、このヘルメット以外に戻れる場所などないだろう。
 時間切れ────人間がミラーワールドに入れる禁忌の時間・わずか十分という短い時間制限に飲まれたというのか。
 この殺し合いが始まってから、まだ大して時は経っていないというのに。

 いや、あのバカが死んだとことでライバルが一人減っただけだ。俺が気にするようなことじゃない。
 恵里のためには、仕方がない犠牲。あいつはその一人でしかない。
 こんなにも早く脱落してくれるなら、本望じゃないか?
 まあ、後で優衣は色々というだろうが、今は気にすることじゃない。

 どちらにせよ、城戸が死んだという確証はない。死者の話をする、あの「放送」とやらを待つか。
 できれば、あの放送で浅倉や北岡の死を知れることを願いたいところだ。
 犠牲者の多くは浅倉が作り上げたものだろう。あの男は、随分とこの殺し合いを楽しんでいたようだからな。
 一番戦いたくない相手が消えてくれるならそれは至高の喜びだ。どこかのバカの死よりよほど吉報といえる。
 北岡もまた、ミラーワールドの戦いの中では厄介な技を持っている。四方八方に弾丸を散らすエンドオブワールド──あれを避けるのは毎回大変だ。

 山登りは中断だ。
 生きているにせよ、死んでいるにせよ、城戸はここにはいそうにない。
 今はこの先を進みたいとも思わないし、別に良い景色を見に来たわけじゃない。
 苦労して来たばかりの道をまた逆戻りするというのも何だが、今は戦いやすい街エリアに引っ越すのが先決といえるだろう。
 敵はライダーだ。おそらく、ライダーの考えることは共通して、ライダーを消す事。それなら、おそらく全員が全員街に向かうと容易に想像できる。
 俺は、その戦いの中に入り込むことを望んでいる。

★ ★ ★ ★ ★

 僕はあれからしばらく、この山林で自らのバッグを漁っていた。
 何が入っているのか、何がこのゲームで重要なのかを確認するために。
 あくまで、僕が手に握っている道具は装備し続けられるような品ではない。あくまで臨機応変に、敵を発見したらデイパックから出して使うような品ばかりだ。
 いま僕の手にある支給品は、魔神器という「破邪」の武器の一つ「珠」。剣・珠・鏡の三つの魔神器が揃って、初めて使用できるような武器であり、現状では使いようもない。それに、説明書きには三つの魔神器について書かれているが、それもどうも言い伝えじみていて妖しかった。
 剣・珠・鏡の三つの魔神器が「破邪の血」を持つ人間に使われることで、悪を滅ぼす力となる。──その、破邪の血を持つ人間の命と引き換えに。
 信じようとは思わなかったし、懐に入れて持ち歩きたいとも思わない。確かに、綺麗な珠であるとは思うが……。

 それから、メモレイサーという携帯電話も支給されている。
 人の記憶を消す光を浴びせる携帯電話らしいが、その記憶というのも限られており、僕には使えそうもない。別にこの殺し合いの参加者のために消しておきたい記憶などないし、あったとしてもそれを消すことはできないだろうと思う。
 多くの機能は使用禁止・閲覧禁止を受けており、ただ「ウルトラマン」や「ビースト」、「TLT」といった聞きなれない言葉が載っていた。
 これらのことに対して、記憶削除機能は有効と書かれている。
 ウルトラマン、ビースト、TLT──それらの言葉は、さきほど言ったとおり記憶にないため、この機能を使うことはない。

 あとは、ダーツの矢とオマケで的がついている。矢は赤と黄色がそれぞれ三つずつ。対戦用だろう。
 おそらく、これも使い道がない。明らかに有効とはいえない武器だし、針部分にキャップのないダーツなどポケットに入れても、自分に刺さるだけだ。
 この的という木の板のほうも武器にはなりそうもない。これで殴ったり、防御したりというのはいくらなんでも改造人間がやる行動じゃないだろう。おそらく自らの肉体のほうが遥かに強靭なのだから。
 強いて言えば、暇つぶしの遊びにでも使いたいところだ。僕はあまりこういう遊びをやったことはないけど、初心者でも難しそうではない。

 全ての支給品を確認し終えた僕は、再びデイパックを肩に乗せる。
 先ほどまでの支給品が皆入っているとは思えないほど軽い──まるで羽毛を持っているような感覚だった。
 ともかく、僕はそのまま山林を歩いていく。道はランダム。降りるでもないし、登るでもない。どちらかといえば、横に傾斜を歩かないよう、横に歩いている。
 本郷、一文字への復讐以外に興味のない僕は、目的地もなく歩いていくだけだ。
 コブラもバッタも森の生き物。この自然に引き寄せられれば良いが……。

 その時、僕は遠目で誰か別の参加者の姿を確認した。
 赤く目立ったヘルメットを小脇に抱えているが、服は黒ずくめで、その赤だけが夜の山林では目印となっている。
 ともかく、僕は彼に情報を聞き出そうとしていた。
 本郷、一文字──いずれかの人間について知らないかを聞きだすのだ。
 ただ、今の姿はお世辞にも強そうとはいえず、それは僕自身に友達を作らせなかった原因の一つでもある。病気で入院したときも、お見舞いに来てくれた人間は一人もいない。
 だからこそ、そんな僕に唯一声をかけてくれた美代子さんを手にかけた二人の改造人間をこの手で──。

 変身。
 僕は、軟弱な三田村晴彦としてでなく、コブラの仮面を被った改造人間として彼に接触しようとしていた。
 無論、危害を加えるつもりはない。ただ、情報を聞き出すにはこの姿のほうが都合が良いと判断したのだ。
 本郷たちについて口を割らなかった場合など、状況によっては、何だってするが。

★ ★ ★ ★ ★

俺の視界は、すぐに外敵を捉えた。
 紫色のコブラ──と聞いて連想するのは一人だが、そいつとは全然別の、コブラの人型。
 浅倉とは違い、闘争本能がある様子はないが、ライダーのようで力強い姿をしている。
 ミラーワールドではなく現実世界で戦う……か、それも悪くない。
 相手が危害を加えるか加えないか以前に、ああいったライダーのような相手と対応するときは、こちらもライダーの姿に変身したほうが、身を守るにも長けて都合がいい。

「変身!」

 俺は城戸のヘルメットを使い、仮面ライダーナイトに姿を変える。
 相手がどう出るか、こちらの姿で伺おう。
 デッキに手をかけて、カードを使うか否かについても考える。

「……変身した!?」

 思ったよりも相手の反応は弱弱しい。
 こちらの変身に動揺し、愕いているように見える。
 まあ、それを見ると自らの行動がやはり正確だったように思えた。
 まずは、近寄って接触だ。

★ ★ ★ ★ ★

 僕は、眼前で変身した黒色の騎士に愕きを隠せない。
 改造人間ならば、変身するのも当然だが──まさか、こんなにも早く改造人間と合流することになるなんて。
 僕は戦慄する。
 相手が僕と同じく、固有の目的を持つ改造人間か、それとも脳改造の影響が強く、闘争本能に秀でた改造人間か。場合によっては、拳を交えることにもなるが、それも良いだろう。
 僕の改造人間としての性能は高いらしく、晴彦でいた頃の自分にはない様々な格闘能力が記憶されている。
 それはこの殺し合いでもアドバンテージとなる。
 さあ、どう来るか。

「……」

 こちらに向かっている相手に対し、僕は息を飲む。
 攻撃してくるならば、絶対の自信で返すのみだ。
 僕の腕は、蛇ように相手の命を絡み付けるのだから。

「どうした? 戦わないのか?」

 ようやく、相手が口を開き始めた。
 まあ、その口が動いている姿は、マスクに遮られて見られないのだが。
 ともかく、問いかけに聞こえたその言葉に、僕は正直に答える。

「……僕は、人を捜しているだけだ」

「そうか。ならば、俺にもお前に用はない」

「僕の質問にも答えてもらおうか。お前は本郷猛、一文字隼人という人間を知っているかな?」

「いや、初めて聞く名前だ。俺も知らない」

 相手が正直に答えているという確証はないが、ともかく返ってきた返事から、彼がショッカーの改造人間ではないと推測した。
 二人の名は、裏切り者の一人としてショッカーのリストにも載っている。指名手配犯に近い意味での有名人だ。
 ショッカーに彼らの名前を知らぬ者はもういないと言っていい。

 ともかく、このままこのそっけない会話だけで彼と離別するのは躊躇われる。
 敵意はないようだし、話しかけてみるか。
 僕にも、改造人間以外にこうした力を持つ人間がいるのは少し気になったのだ。ひとつ聞いてみたい。

「──あともうひとつ。その力について教えて欲しい。改造人間じゃないみたいだし」

「……この力は、神崎士郎という男に託された殺し合いのための力だ。その『改造人間』とやらのように、俺自身が強いわけじゃない」

 双方が双方を警戒し、会話は慎重だった。
 聞き方も比較的腰が低く、乱暴なもの言いはしない。相手の力がどの程度のものか計れないため、恐れているのだろう。いや、僕自身そうなのだ。相手の様子からも、それはわかる。
 僕は、その力に興味があったので、少し詳しく彼と話そうと思った。
 この殺し合いのために、わざわざ支援を送った者がいるという風に聞こえたからだ。

「良かったら、一つ行動を共にしないか? 少し話しが聞きたい」

 僕はコブラのマスクを脱ぐ。
 その下にある、人間の顔に相手は愕いたようだった。
 彼はそれを見て変身を解く。変身してまでの警戒は無用だったと判断したのだろう。
 僕はそれを見て、ほっと息をついた。どうやら、ここで腹の探り合いをするべき相手じゃなかったようだ。

 ともかく、相手も僕も変身を解いたので、僕は相手の様子を見る。
 目つきが悪い。服が黒い。まるでチンピラだ。僕はこういう人間が少し苦手だが、まあいいだろう。
 相手の様子をじっくり探るその慎重さ、臆病さは戦いにおいて武器にもなると思うのだ。
 あまり迂闊に己の力を過信し、殺し合いに飛び込んでいく人間よりは遥かにいい。
 協力者としても使いようがある。

「……僕の本当の名前は三田村晴彦」

「俺は秋山蓮だ。ただ、あらかじめ言っておくが俺はお前に用はない。用なら、手短に言ってくれ」

 秋山という男の口調はきわめて粗暴である。これは変身後も変身前も同じだ。
 僕はまず、問う。殺し合いと絡んでいる神崎士郎という男が気になったのだ。名簿には確か、風見志郎という名前があったが、名前が正確に合致しない。

「神崎士郎について詳しく聞きたい」

「……ライダーバトルという、この殺し合いとは別のゲームを主催した男だ。それぞれ13人、選ばれた者がカードデッキを使って仮面ライダーという戦士になって殺し合い、生き残った一人は願いを叶えることができる」

 どうやら、神崎士郎がこの殺し合いに関わっているというのは早とちりらしい。
 そんなゲームを主催するとは趣味が悪いが、このゲームも同じく生き残った一人が願いを叶えるシステムだ。
 少しばかり、その殺し合いとこの殺し合いの関連性は気になった。

「どんな願いでも……?」

「ああ、神崎が言うにはそうらしい。もっとも、信用はできんがな。この殺し合いに関しても同じだ」

「────たとえば、恋人を蘇らせるとか、そんな願いはどうなのかな」

 僕は自分でもわからないくらい、咄嗟に己の願いを口にしてしまう。
 すぐに僕自身の口を塞ぎたいと思ったのだが、それより前に目の前の秋山という男が掴みかかった。

★ ★ ★ ★ ★

俺は落ち着いて三田村という男の話を聞くことができなかった。
 咄嗟に、実力差など考えずに掴みかかってしまうのは、俺の悪い癖だ。
 とにかく、俺はこの男の言葉に苛立っていた。まるで、俺が恵里の命をかけて戦っていることを知って、そのあてつけとして言ったように聞こえたからだ。

「もう一度言ってみろ、お前は今何と言った!?」

「こ……恋人を蘇らせることはできるのか……って……」

「なるほど、まるで俺がそのために戦っていることを知ったうえで、わざと言っているような物言いだな」

 俺はその男の襟元をより強く掴んだ。だが、男は怯えているようにさえ見える。
 挑発にしても、少しあっけなすぎないか? もっと自信満々な態度で挑んでもいいだろう。
 この男の真意は、すぐに本人の口から開かされる。

「し……知らなかったんだ! 僕はただ……恋人を蘇らせることもできるのかって聞いただけだ!」

「何!? ……お前も、誰かを……」

 俺は自分が思っているよりも遥かに強い力で彼の襟元を握っていることに気がついて、すぐに手を緩める。
 この男もまた、俺と同じように大切な人がいない日常を送っている──そういうことらしい。
 共感もあった。同情もあった。
 だが、だからと言ってこの男にそう優しくできる性格じゃない。

「すまん。力が入りすぎた」

「ごめん。厭なことを聞いて」

「……お前、そいつが生き返ると知ったら、周りの人間を殺せるか?」

「え?」

「俺はライダーと戦い、たとえどんなに傷ついても恵里に新しい命を与える。……この殺し合いに乗るつもりはないが、ライダーだけは全員殺さなければならない」

「僕は、ただ復讐のために戦う。美代子さんは、本郷と一文字に殺されたんだ! だから、ヤツらをこの手で殺す! ……あとは、美代子さんと同じ墓で眠れれば、それでいいんだ……」

 この男の考え方は意外だ。
 先ほどまで、恋人を蘇らせることについて聞いていた三田村だが、それはあくまで少しの願望らしい。
 執着している様子はない。それにしても、殺人とは随分な過去である。
 蘇らせたい思いよりも、憎しみが優先されるのか──俺もきっとそうだろう。

「……考えが変わった。やはりお前とは共に行動したい。その力がどの程度のものだかわからんが、ライダーとの戦いには使える」

「僕は確かに、あなたと行動を共にしたい。だけど、本郷と一文字を倒すことにしか興味はないし、ライダーの戦いなんかする気はない」

「だから、その本郷と一文字を倒すときも俺がお前に協力する。どうだ? 悪くない条件だろう? それに、誰かの協力がなければ勝てないようなヤツもいるしな……」

 浅倉や北岡のことだ。
 特に浅倉は城戸や他のライダーと組んで戦ったこともある。
 俺一人で戦うには、手厳しい相手かもしれない。
 それに、三田村の恋人を殺した本郷や一文字──どんな人間かはしらないが、他人の恋人を殺して平然と生きているような輩だというのなら、真っ当な人間じゃない。無論、俺のいえたことじゃないが。
 ともかく、この男の過去を聞くと、すこし放っておけなくなった。
 彼はすぐに、俺の言葉に返事をした。

「……わかった」

 三田村も了承だ。
 この男もさほど馴れ馴れしい仲間ではない。いや、むしろ人とのコミュニケーションが上手くなさそうに見える。変身後、あれだけ剛健な身体で戦っていたのに、今のコイツは不良に絡まれた少年に近い。そうなると、何かと都合も良さそうだ。
 条件も、どちらにとっても悪い条件ではない。
 俺が街へ向かうことを提案すると、三田村も賛同した。ライダーと違い、本郷や一文字は神出鬼没。当て所はないという。
 俺たちは二人、山を降り始めた。

【1日目 黎明/B-8 山道】

【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【状態】健康、ナイトに二時間変身不可
【装備】ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2、真司のヘルメット@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:ライダーを倒して願いを叶える。
1:三田村と行動し、ライダーと本郷・一文字を撃退する。
2:ライダー以外の参加者に興味はない。
3:死んだはずの手塚、東條、須藤がいるのは何故?
4:恋人を失った三田村に少しの同情と共感。
5:真司に関しては放送まで保留。
※参戦時期は本編終盤(最後の三日間)です。真司はまだ死んでません。
※残りライダー(真司、北岡、浅倉)を倒せばオーディンとの決着になると考えています。
※殺し合いに神崎が絡んでいる可能性があると思っています。
※真司が死亡した可能性があると判断していますが、放送まで保留予定です。

【三田村晴彦@仮面ライダーTHE FIRST】
【状態】健康、コブラに二時間変身不可
【装備】不明
【道具】基本支給品一式、魔神器(珠)@サクラ大戦、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、ダーツセット@現実
【思考・状況】
基本行動方針:ゲームには乗らない。
1:本郷猛、一文字隼人だけは殺す。
2:その後は死んでも構わない。
3:蓮と行動し、ライダーを倒す代わりに協力してもらう。
※死亡後からの参戦です。

075:俺たちも、正義のために戦うぜ! 投下順 077:服部平次、悪魔の橋へ
075:俺たちも、正義のために戦うぜ! 時系列順 082:怪獣使いとウルトラマン
042:シザースが残したもの 秋山蓮
023:純愛と復讐 三田村晴彦
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