花を散らせよ、乙女の意地で



人を殺めたこの惨状の中、神崎すみれにとっての幸運は生きていることだろうか。
 あれは事故ではなく、明確な故意で、それゆえ死を思うこともあったが、仲間のためにすみれは誓う。
 これまで帝国華撃団は人々を守ってきたが、その人々とやらに足を引っ張られて死んでしまうのは彼ららしくないとも思った。
 彼らが人を殺すとも思えないし、──いや、むしろ彼らはすみれを除いて全員、人を助けて回っているというところか。でも、それでは生きてはいけない。時折、人は汚さを武器に生きていかなければならないのだ。
 だから、彼らが生き残るには誰かが汚れ役を買うしかないのだろう。
 何、あやめに帝国華撃団を紹介されてからは、毎日のように殺しをしてきたすみれだ。怨霊なり、降魔なり、──そんなものの相手ばかりで、人間を殺したのは初めてだが。

 すみれはそんな戦いのうちに、やがて守りたい者のために命をかける気にさえなった。
 それが、汚い市民よりも帝国華撃団だったというだけの話だ。
 今すみれがかけているのは命というより、己の人生というべきか。

 普通の女の子に戻ることなど、あやめに連れてこられたあの時──いや、もっと前からとうにできないのだ。
 人知を超えた能力──霊力を隠していたが、すみれの家は成金とまで呼ばれた家である。ビジネスの名目で人の人生を潰したことだってあるだろう。
 現実に、すみれのかつての親友の家も、神崎家のビジネスによって破滅した。


(血は争えないですわね……)


 先ほどそうしたとおり、すみれは既に他人の人生を一つ崩した。
 それが、自らの保身のために他者を犠牲にするような人間であれ、そこに命であるという違いはないだろう。
 普通に暮らしていた少女はあんなことはしない。
 この殺し合いという異様な状況こそが、彼女にあんな行動をとらせたのだ。ここに連れてこられなければ、彼女が手を血に汚そうとしていないかもしれない。


(生きるためには仕方が無い……みんなそう思うに違いないですわ。あの人たちと出会うまでの私なら、きっと同じことを思う……)


 帝国華撃団の仲間が、すみれを確かに変えていた。
 だが、彼女が完全に変わるには時が早すぎたのだ。 
 もっと後の彼女ならば、何が何でもビッグバンと真っ向から戦うだろうし、人々を守っていくだろう。
 仲間への強い信頼は芽生えても、そこにある正義はあくまでも自分や仲間のために戦う──いや、彼女には帝都やこの世界に生ける人々への信頼も、詩音の行動は見事に打ち砕いてくれたのだ。


 海沿いに歩いていた彼女は、やがて一つの橋を渡ることになる。
 何時間も歩いて詩音しか出会わないこの場所よりも、一つ向こうの島へ行ったほうがいいと考えたのだ。
 防波堤のある橋を、すみれはゆっくりと渡っていく。
 護るためでなく、殺すためにこの橋を渡っていくんだということがもの悲しかった。


【1日目 黎明/G-3 橋】

【神崎すみれ@サクラ大戦】
【状態】健康
【装備】古賀竜夫の短刀@超人機メタルダー、デッキブラシ@サクラ大戦
【道具】基本支給品一式×2、上條恭介のバイオリン@魔法少女まどかマギカ、ゲキ・ガンガー3のビデオ@機動戦艦ナデシコ、ピンチクラッシャーの玩具@スクライド、ファイヤーキー&ファイナルファイヤーキー@魔弾戦記リュウケンドー
【思考・状況】
基本行動方針:帝国華撃団のために殺し合いに乗る。
1:帝国華撃団のメンバーとは会いたくない。
2:あくまで自分は「自分のため」に殺し合いに乗ったことにする。
3:とりあえず向こうの島へ。
※少なくとも参戦時期は1の時点です。

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014:人を想えばこそ 神崎すみれ

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最終更新:2011年08月30日 01:17