漆黒の怪人



あれから、もう一時間以上経過している。
あの女、桐島カンナを殺したリュウガは街を歩き続けていた。
目的の一つは完全な肉体を得るために城戸真司の体を取り込むことだ。
しかし、捜しても城戸は一行に見つからない。

ここに連れて来られる前、リュウガは城戸真司=龍騎との勝負に敗北し、確かに死んだ。
が、会場で目を覚ますと消滅したはずの肉体が完全に再生されていた。
ということは、最強のライダーとして君臨するチャンスをビッグバンが与えてくれたことになる。
いきなり殺し合いを強制させられたのは気に食わないがそれだけは感謝していた。
そんな感情を抱いていると、二人組の男女が目に映ってきた。
片方は中年の男性、もう片方は二十代半ばの女性だ。

新しい殺害対象を見つけたリュウガはカードデッキを近くの建物のガラスに翳す。
すると、Vバックルと呼ばれるベルトが自身の腹部に巻かれた。
「変身」
そう呟きながら黒龍の紋章が刻まれたカードデッキをバックルへと装填した。
そこで、リュウガは大きく目を見開いた。姿が仮面ライダーのものへと変わらないからだ。
変身できないことに疑問を抱き、答えを探っていく。
彼が答えを導き出すのに長い時間はかからなかった。

(何の力も持たない人間のためにかけられた制限か…)

このバトルロワイアルには強者と弱者がいる。
前者の例は、ライダーに変身できる自分や先程戦った桐島カンナという女。
後者の例は、桐島カンナに逃がしてもらうことしかできなかった若い男女。
今、仮面ライダーリュウガに変身できないのは後者のような人間のためのハンディキャップだろう。
そして、この制限が永遠に続くものではないと考えていた。
自分のような者にずっと制限をかけていれば、やがてバトルロワイアルの進行が遅れる恐れがある。
殺し合いを傍観して楽しみそうなビッグバンがそんな制限をかけるはずがない。
おそらく、ある程度の時間が経ったらリュウガの変身制限は解除される。

(リュウガが使えなくても、俺にはこれがある)

リュウガは懐から、オルタナティブ・ゼロのカードデッキを取り出した。
これは殺害した桐島カンナの荷物に入っていたものだ。
あの二人を相手に力を試しておくのも悪くないだろう。
カードデッキをVバックルに差し込み、リュウガの身体に幾枚の残像が重なる。
あっと言う間に姿を変え、リュウガは漆黒の戦士、オルタナティブ・ゼロに変身を完了させた。


夜の街の中、人を捜し続ける二組の男女。
バッグから出した時計を見てみると時刻は深夜の二時を過ぎたところだった。
「人っ子一人見当たりませんな」
「そうですね。もう二時間近く歩いているのに…」
中年の男性、毛利小五郎が呟くと隣の女性、深沢小夜子が答えた。
小五郎と小夜子は知り合いと合流するため、街を歩いていた。
目当ての人物は橘朔也、毛利蘭、江戸川コナンの三人である。
だが、誰一人とも合流できていないのが現状だ。

「蘭もコナンの奴も無事だといいが…」

険しい表情で小五郎はそう言った。
彼は毛利蘭と江戸川コナンのことが非常に心配であった。
コナンはただの子供だ。凶悪な殺人者に出会ったら抗えるかどうか分からない。
蘭は空手の心得があるため、並の強さの相手なら軽く捻り倒せるだろう。
しかし、殺し合いの説明を受けた場にいた化け物が相手なら? そう考えると不安しかない。

そんな矢先、二人の背後から足音が聞こえてきた。
振り向けば、夜の闇の中から漆黒の怪人が姿を現した。
その手には大剣を構え、こちらに明確な殺意を持っているのが感じ取れる。
そして、こちらに向かって駆けてきた。
「小夜子さん、逃げましょう!」
「はい!」
このままでは殺されるということを確信した小五郎は小夜子を連れて地面を蹴る。
その時、女性の声のような電子音声が流れた。

―ACCELE VENT―

獲物を逃がす気のないオルタナティブ・ゼロはアドベントカードの力を使って加速し、二人の数メートル先に行く。
眼前にオルタナティブがいることを確認した小五郎と小夜子は立ち止まった。
怪人と形容するに相応しい者を前にして、小五郎は思う。
傍らにいるか弱き女性を守らなくては、と。
自分の力だけで勝てるとは思えない。銃があったとしても通用するとも思えない。
だが、せめて小夜子が逃げるだけの時間は稼いでみせる。

「おおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」
雄叫びを上げて小五郎がオルタナティブに突撃する。
精一杯の力で相手を押し倒そうとするが通用しない。
それを鬱陶しく思ったのか、オルタナティブは勢いよく振り払った。
コンクリートの地面に叩きつけられ、小五郎が転がっていく。
「毛利さん!!」
「何やってるんだ、小夜子さんは早く逃げろ!」

怪人を相手にして、小五郎が逃走するチャンスを作っている。
ここで逃げなければ両方とも殺されてしまう。
小五郎の行為を無駄にすることこそが彼に対する最大の侮辱。
そう判断した小夜子は『毛利さん、ごめんなさい』と言い残してこの場から全速力で逃げ出した。

【1日目 黎明/D-4 街】

【深沢小夜子@仮面ライダー剣】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、ガーベラの種@仮面ライダーTHE FIRST、リコの絵@ウルトラマンネクサス
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いからの脱出。
0:この場から逃げる。
1:蘭、コナン、橘を捜す。
2:毛利さん…


小五郎は必死になってオルタナティブに食らい付く。
何度返り討ちにされてもやらなければいけない。
深沢小夜子をオルタナティブの手の届かない場所に逃がすために。
「クッソォッ!!!」
自棄になったように小五郎が相手の胸板にパンチを浴びせていく。
だが、効果は皆無に等しい。
その後すぐに彼の腹部に痛みが走った。
腹の傷口を押さえながら倒れ込んだ時、剣で切られたことを分かった。
苦しみながら倒れる自分の心臓の位置に剣が振り下ろされようとしている。

(小夜子さんは逃げ切ったようだな…)
これから死に向かうというのに小五郎の顔がどこか満足気だった。
やるべきことはやった。後は深沢小夜子の無事を願うだけだ。
(蘭も…コナンも…死ぬなよ…)
心の中でそう呟いた時、彼の身体は裂かれた。

【毛利小五郎@名探偵コナン 死亡】
残り89人


オルタナティブは小五郎が死んだことを確認した後、近くに落ちているバッグを開けた。
武器が入っていることを望んでいたがそれが叶うことはなかった。
殺し合いで役立ちそうな物は何一つ入っていない。
なので、彼は小五郎のバッグをそこら辺に捨ててしまう。
その瞬間、オルタナティブの変身が解除されて人間の姿に戻った。

「変身していられる時間は十分といったところか」

【1日目 黎明/D-4 街】

【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【状態】疲労(大)、身体の各所にダメージ(特に脚部)、リュウガに三十分変身不可、オルタナティブ・ゼロに二時間変身不可
【装備】リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式×2、チェスのセット一式@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0~2(カンナ)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:真司の身体を乗っ取るのが最優先。
2:目に付く参加者は殺害する。
※死亡後からの参戦です。
※変身していられる時間が10分ということに気がつきました。
※変身の制限に気がつきましたが首輪によるものだとは思っていません。


大きな傷が胸に刻まれた男の死体を見下ろす者が一人。
それこそがダークザギ、石堀光彦である。
ゲームが開始された頃から小五郎と小夜子の後をつけていたのだ。
「こいつの娘は使えるかもしれないな」
つい先程、毛利小五郎は怪人に殺害された。
それは、ナイトレイダー隊員である石堀でも見たことがない姿をしていた。
奴が何者なのか気になるが、それ以上に気がかりなことがあった。
話を立ち聞きした際に知った小五郎の娘のことだ。
父親が死んだと知れば、心の中に確実に闇が生まれる。
それを利用してやるといいだろう。
新たなる行動方針を打ち出した石堀は毛利蘭を見つけるため、この場から去った。

【1日目 黎明/D-4 街】

【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:毛利蘭を見つけて闇を解放してやる。
2:できたら小夜子の闇も解放したい。
3:そのためにも橘を殺す。
4:後は凪にデュナミストの光が回ってくるのを待つ。
5:あの男(リュウガ)は何者?
※少なくとも凪がデュナミストになる前からの参戦です。
※小五郎と小夜子の交換した情報を立ち聞きしました。支給品や知りあいについて知っています。

049:これはジャマールですか?いえ、ジャマンガです 投下順 051:温泉ウォーアイニー
048:未来、それぞれ 時系列順 051:温泉ウォーアイニー
007:光を求めて影は リュウガ 084:DEAD OR ALIVE
019:今、そこにある闇 毛利小五郎 死亡
019:今、そこにある闇 深沢小夜子 066:闇のゲーマー
019:今、そこにある闇 石堀光彦 066:闇のゲーマー

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最終更新:2011年09月25日 01:18