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温泉ウォーアイニー



このお風呂の効能は神経痛、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、疲労・ストレス回復etc etc…
ここに入れば殺し合いなど忘れて歌を口ずさみ、温かいお湯と湯気に埋もれ、ついゆっくり入り込んでしまう。
この気持ちを中国語で言うならウォーアイニー。私はアナタを愛しているという意味だが、ここで温泉に対して使うのも間違ってる臭い感じがする。
が、細かいことは気にせず、ただお湯から伝わる熱や効能だけが頭の中に伝わってきた。

カポーン

この音が本当に聞こえてくるこの独特の雰囲気。
一応混浴かつ露天で、見られたくない艶姿を披露しながらも、どこか満足げな表情を浮かべている。
通常、この時間帯は温泉宿でも風呂に入れることはない。……が、別に温泉が夜に休んでいるというわけじゃない。ただ宿の人がケチってるだけで、この時間に温泉に入るのは今までにない気分だった。

温泉は希望の街。温泉は自由の都。
ああ、温泉ウォーアイニー。

先ほど艶姿と言ったとおり、ここに入る者はみなタオルしか巻いてはならないという掟を背負うことになる。
つまり、砕けた言い方をするなら一糸纏わぬ全裸である。
夜──風は冷えている。もうすぐ朝と微妙な時間。全裸はそこに追い討ちをかける。だが、お湯は熱い。
熱いお湯は大好きだ。
江戸っ子じいさん曰く、お湯は熱いほうがいいと。

華奢な身体。
湯船を彩る四肢。
熱さと微妙な恥ずかしさゆえに紅潮する肌。

湯気が晴れ、少しずつ早朝に近付いていくとそこにある艶姿がようやく姿を現す。

「あぁ~気持ち良いなァ! 炎~!」

「そうだねェ! 君島ァ!」

はい、お約束。

★ ★ ★ ★ ★

さて、前話まで風呂に入ると言っていたのは紅蘭である。
紅蘭という少女はスリーサイズを上から、78、55、81。花組の中では貧乳で悩んでいるとはいえ、その姿を見たいに決まっている。
その三つ編みを解き、めがねを外し、チャイナ服を脱ぎ──そこにあるのはさぞ色っぽい姿だろう。
だが、そんなものはサクラ大戦本編をやれば、大神隊長が「身体が勝手に……」と花組隊員の入浴を覗きに行くので、そっち見てろ。
とはいえ、前話と比べ脈絡のないシーンなのは確か。
一応説明のために話は前話の三秒後までさかのぼる──。

「なんだ夢か……」

「おい、本当に大丈夫か?」

「いや、待て。あんた誰だよ……。えっと、俺が魘されてたって?」

そういえば、藤宮はちょと前まで悪夢を見ていたような気がする。
いや、あれは悪夢の次元じゃない。幼い頃に、赤ちゃん言葉のピエロに誘拐される夢を見て以来の悪夢──。
あんな夢を見るのも仕方がないかもしれない。斧が眼前に……。
だから魘されていたのか。

「俺は君島邦彦」

「俺は藤宮炎……。で、ここは……今何時?」

「ここはA-8エリアの温泉で、まだ2時を少し過ぎたくらいだな……」

「ありがと」

ここに浅倉のようなヤツがいないなら、もう少し眠っていればよかったかもしれない。殺し合いあたりが夢でないのもなんとなくはわかっていたし、A-8といわれてもすぐにピンときた。もしかしたら、彼は島にいた俺を保護してくれた警察とか自衛隊とかかな……と期待もしたが、それにしては年齢が若すぎる。
まあ、一度寝て起きると、寝る前の出来事は遠い過去の出来事のようにしか思い出せず、それゆえ気分は落ち着いていた。 まだ、少し早く心臓が鳴っているような気もするが……。

「で、なんでお前はあんなとこに倒れてたんだよ?」

「ん……。確か、浅倉さんに襲われて……」

「なんだ、俺と同じかよ……」

君島も、浅倉の名前を聞いた瞬間露骨にイヤそうな顔をしていた。
というのも、彼もまた浅倉に襲われた一人で、情けなくも同世代の女の子に助けられた身だからだ。
で、あの浅倉という男が二人も逃がした事実に君島は驚く。何らかの助けが入ったのか、自力で逃げ切ったのか──。
君島はそれが気になった。

「で、どうやって助かって、どうしてあんなところで?」

「…………ごめん、覚えていない」

「はぁ?」

「本当にアイツに追われて走ってる記憶しかないんだよ。……夢がそれと微妙に違ったせいで、夢と現実が少し混乱してるのかも……」

確かに、藤宮の記憶は混乱している。
誘拐、殺傷、傷害、殺人事件、戦争──そういった対人の状態で死を恐れたことはない。震災や事故程度でなら、死の恐怖を感じたことはあっても、殺人鬼に襲われたことはない。
初めて体験することでありながら、人もこの年齢になると、人に殺される夢を見たことがあるだろう。
そういった記憶も全て含め、彼の記憶はうまくいかなくなっていた。

「ああ……なるほど。まあ、要するに浅倉のヤツに追われて逃げて倒れたってことか」

「うん。時間が経てばまた思い出すかも……」

藤宮の頭の中では、若干だけ記憶がある。
体育館での一人の女性の死──あれも一応現実の記憶だというのはわかっているが、やはりドラマの死体と大差ないように思えてしまった。彼にとって、初めて見る死体である。
それから、現実に浅倉に襲われたとき、凶器がバールのようなものだったことも記憶にある。斧ではなかった。
バールのようなもので襲ってくる彼の姿は、焼きついて離れない。あれこそが現実と思わせる最大の理由だ。
それから、地面に倒れた藤宮は浅倉にバールのようなものを向けられて、死を覚悟した──。
もしかしたら、そこで藤宮は気絶したのかもしれないし、その後があったかもしれない……。

「わかった。…………で、ここには実はもう一人俺らと同じくらいのトシの女の子がいるんだが……」

「へえ、温泉にでも入ってるの?」

「ああ……。ちょうど温泉に入ってるところだ。で……」

「パス。少なくとも俺は行かない」

「俺、まだ何も言ってねえよ!」

君島の回りくどい言い方から察するに、覗きをしたのだろうと一瞬でわかった。
あまり、覗きとかそういう言葉を聞きたくないので、藤宮は早い段階でパスをしておいた。知りあいでなくとも、男子が集まるとこういう話になるのは知っている。
別に、興味がないわけじゃないが、状況が状況なせいで気分が萎えていた。寝汗で気持ちが悪いし、ついでに言うと寝起きだから、また寝たいという気持ちもある。
それに、その女の子というのもどんなヤツかわからない。君島は見たところ、さほど悪い性格には見えないが、外見上不良系に見えるし、ケバケバしい化粧だらけの女かもしれない。

「ちなみに、その子の名前は李紅蘭。中国人で、チャイナ服で、三つ編みで、めがねで、関西弁で、発明家で、女優らしい」

「んなヤツがいるわけねえだろ! ────と思ったけどいたぁぁぁぁ!! いたよっ! そいつ! 体育館に!」

体育館には様々な人がいた。そもそも人でないヤツ、黒づくめの男、小学生くらいの男女、袴姿の少女、メーテルさんみたいな格好の外人女性、身長が異常にデカい道着姿の女性、フランス人形のような格好の少女──あらゆるものを初めて見たので、こちらは結構印象深く残っている。
確かに、そこに「三つ編みで、めがねで、チャイナ服で、アジア系の少女」はいたはずだ。その人だろうと、藤宮は思う。

「だ・か・ら、……今からチャイナ服を脱いだ彼女の姿を拝みに……」

「だるいから後で」

「なんでそうなるんだよっ!」

「うまくいったら写真だけ撮ってきて。俺は寝る」

「虫が良すぎるぜまったく。ていうか、カメラねえよ」

「じゃあいい。俺の分まで見てきて。俺はここにいる」

基本的にルールを守り、他人に迷惑のかかるようなことはしないのが藤宮である。
というより、何となくだがバレる気がしてならなかった。他人との関係が悪化するのはいやだ。

「じゃあ脱衣所の前までついてくるだけでいいからさ」

「脱衣所から忍び込む気かよ。最悪鉢合わせるよ」

「大丈夫だ、ここには他に誰もいないから脱衣所に紅蘭がいたら音でわかる」

「おまえ実は小心者でしょ」

「うるせえ! おめえにだけは言われたくねえよ! 」

ともかく、二人は部屋を後にする。邪魔になるので、荷物の類は部屋に置いたままだ。
君島は気にしなかったが、藤宮はちゃんと部屋の番号を覚える。
「023」……オニーサンだ。

廊下には温泉の効能などが紹介されている張り紙が張られている。
藤宮がそれに少し興味を持って目を通している隙に君島がさっさと行ってしまうので、藤宮は張り紙に書いてあることなど全く記憶していなかった。記憶してどうということはないと思うが。

「ついたぞ! 炎!」

「う……いかん、身体が勝手に……!」

「動き出したか、炎!」

「身体が勝手に扉だけ開けました。お前だけ勝手に入れ。俺はここにいる」

「つれねえヤツだな……」

君島を軽くからかったつもりである。
渾身の冗談のつもりだったが、どうやら君島としてはあまり良い気分ではなかったらしい。少し絶望感に落ちたような表情だった。
というのも、やはり一人で覗いてバレたときと、二人でバレたときでは重みが違うからだろう。

君島が扉を開けて脱衣所に入っていく。
ガラガラガラ、という音が鳴るはずだが、結構慎重に開けていた。
やはり、現実主義で慎重な性格も君島には入っている。

「……ってウボォォォォッ!」

そんな君島が、入って数秒で奇声を発した。というより、一瞬は断末魔のようにいさえ聞こえた。
足が何かに引っ掛かったらしく、君島は派手に転倒していたのだ。
そのうえに──

カポーン

風呂にある、あの桶が君島の頭上にクリーンヒットした。
ロープに足が引っ掛かると、頭上から桶が落ちてくる仕組みになっていたのだ。
君島はその場で顔を強打し、身体中にロープが絡まり身動きがとれなくなってしまっている。

「誰や!!」

身体の前をバスタオルに包みながら、驚いて地面にもだえる男を見つめる女が一人。
彼女こそ、紅蘭である。
これは誰かが万が一脱衣所に入ったら……という想定のワナだ。引っ掛かるのは未熟の証。
だが、これは温泉にいる最中に引っ掛かるだろうと思って仕掛けたため、今の紅蘭は身体の前を小さなタオルでギリギリ隠し、かえってセクシーな姿になっていた。というより、さっと着替えるつもりだったのだろう。
君島が、「中に誰もいないのを確認して入る」と言ったのは、思い切り藤宮のせいで失敗したらしい。扉を開けたのは彼である。

「なんだ、君島はんか……ええから早く出てって!!」

「おい、待て! 実はもう一人実行犯がいてな……! おい、炎! ────っていねぇ!」

後ろを向いても、そこに藤宮の姿はない。当たり前である。
バレたのだから、逃げるに決まっていた。
……が、

「どうしたんですか! 今こっちで凄い声が!」

「白々しいぞテメェ! 今更現われやがってぇ!」

「まさか、覗きか! 君島、お前『トイレに行く』とか言いながら何をちゃっかり──」

「よくもそんな嘘をベラベラと吐けるな、オイ!」

「オイ、お前一体何を言って……意味がわからねえぞ!」

ついさっき、藤宮はある考えに至った。
君島が罠に引っ掛かった瞬間、藤宮は全速力で逃げ出しつつ、一応君島がどんな風に怒られているのか聞きたかったので、盗み聞きをしていた。鬼の様子を探りながらかくれんぼをしているような気分だった。
それで、その時に聞いた感じだと、女性の声も聞こえた。それが紅蘭に違いないだろう。
ということは、その紅蘭という少女が脱衣所にいたということになる──
ならば……?
そう。さも、今紅蘭や君島の大声を聞いて駆けつけた風を装えば、合法的に覗くことができるのだ。

「すみません、俺が君島の見張りを怠ったばかりに……」

謝るフリをしながら、チラッと紅蘭という少女のほうを見た。
タオル一枚の紅蘭という少女は色っぽい。体育館ではあまり紅蘭という人の姿を見ることができなかった。というより、その衣装に気をとられていて顔やその他を確認することができなかったのだ。
そのため、声とスペックだけで聞いた紅蘭という少女を想像しているときも、少しドキドキしていた。
だが、今顔もスタイルも含めておよそ把握することができた。スタイルはともかく、美人である。
それから、

「あっ! すみません……すぐに出て行きますから!」

これも忘れちゃいけない。そう、これは全て偶然。今、紅蘭という少女のタオル一枚の姿を見てしまったのも天然ボケゆえの所為だということになる。
みんなと同じことをしながらも、みんなが怒られる前にサッと引いたり、幼稚園でみんなが怒られているときには隠れて一人だけやりすごしたり。それらは得意。他人の印象を良く映すのは、彼の得意中の得意である。

「いや、あんたはええんよ。えっと、炎はん? ウチは向こうで着替えます。悪いけど、君島はんの目も閉じといててくれません?」

「あ……ああ、そうだね。俺も向こう向いてるから」

と、君島の目を右手ひとつで覆った。
紅蘭は温泉で着替えるらしい。そのため、タオルでうまく身体を隠しながら温泉のほうへ向かわなければならないということだ。
バスタオルがあろうと、片手は離せないし、後ろ向きに歩くにも動きづらいから、紅蘭の歩く方と反対側を向かせていたのだろう。おそらく尻が露出する状態なのだろう。

ガラガラガラ。
温泉へと入るドアの音が聞こえた瞬間は逃さない。
サッと後ろを向いて、サッと元に戻す。一瞬、何かが見えたような気がするが、一瞬すぎて何だかわからなかった。ともかく、それでも充分だろう。振り向いたとき、そこは髪の色と肌の色しかなかったはずである。
それから、紅蘭は向こうに行ってしまったので、君島に話しかけた。

「ありがとう、君島。おまえのおかげで色々と得した」

「オイ」

「まあ、安心して。足はすぐに解いてやるから」

「……まあ仕方ねえか。自業自得っていうヤツだな」

その言葉を聞いて、君島の身体のロープを、藤宮は解いた。
あとは、足についてる輪っかをとるのみ。……で、それを解いた瞬間──

「とでも言うと思ったかバカヤロゥ!!」

また、イヤな予感を感じていた藤宮は全速力で逃げていく。案の定、最後に聞こえた君島の声は、藤宮への怨みつらみをぶつけようとしたものだった。
とりあえず、走れ。階段は何段も抜かして登れ。一段ずつ走るより速い。
そして、023の部屋まで……。
と思ったが、君島はどうせその部屋に来るだろう。なので、隣の022に入り、紅蘭が来るまでは待機しようと考えていた。

★ ★ ★ ★ ★

「あぁ~気持ち良いなァ! 炎~!」

「そうだねェ! 君島ァ!」

バシャッ、バシャッ、バシャッ。
水の音が鳴る。熱湯を互いに掛け合う男二人、全裸。冒頭の描写である。
先ほどの出来事の後、紅蘭が来た事を確認して部屋に戻った藤宮は、ひととおりの自己紹介を終えた(君島の紹介と違って、今の紅蘭は浴衣)。
ちなみに、紅蘭が帰っているということは君島も帰っているということ。一緒の部屋にいる君島と離れるために、「寝汗をかいたから温泉に入りたい」という理由で風呂へと逃げた。
だが、「親交を深めたい」とバカなことを言い出した君島がついてきたのだ。

で、結局は今、おとなしくできるはずもなく、お湯の掛け合いが始まっている。
熱湯といっても、火傷するレベルではなく、彼らの行動は遊び同然だった。
そのまま、ちょっと時間が経つと結局飽きて二人はおとなしく湯船につかっていた。

「ふう……この首輪、本当に解除できんのかよ」

「紅蘭の言葉が信用できねえのか?」

「つけてても首に負担がかからないし、濡れても何ともない。機械とは思えないんだよ」

「まあ、そうだな……」

「でも、現実に目の前で爆発してる。ありえないくらい高性能だろ、この首輪。もしかしたら盗聴器とかビデオカメラとか発信機とかついてて俺たちの行動が筒抜けだったり……」

「オイオイオイ、マズいじゃねえか! 全裸だぞ、俺たち」

「いや、そういう問題じゃないだろ……。まあ、ちょっとそういう可能性もあるかもしれないって思っただけ。1パーセントくらい。さすがにコレじゃあ爆弾で限界だろ」

「そうだな……」

カポーン。

★ ★ ★ ★ ★

ここは023の部屋。
温泉からあがった彼らは、浴衣に着替え、コーヒー牛乳を飲み、部屋に戻っていた。
この辺りがまた、殺し合いの気持ちを忘れさせてくれる。
お財布の中身がそんなにないとはいえ、ついつい藤宮は二本も飲んでしまっている。しかも、この空き瓶でさえ、「何かに使えるかも」と持ち帰ってくる始末。とにかく慎重で、あらゆる可能性を考えるような性格だった。
その性格ゆえ、話もだいたい決まる。

「なるほど、つまりこれからしばらくここで待とう、というわけやな」

「うん。監視役とか攻撃方法とか決めて、浅倉さんみたいなのが来たら反撃できるようにする」

「それで? 禁止エリアになったら?」

「逃げる。それはどこにいても同じだし」

「……せやな。この近くには、浅倉もおる。しばらくはここにじっとしておったほうがええに決まっとるわ」

「俺も同意見だ。かなみちゃんが少し心配だけど……」

誰かしら、捜し人がいるのは確かである。
だが、今はその人たちを捜しに行って逆に浅倉に遭遇する可能性だって否めない。
二人が藤宮を運ぶ先として、ここを選んだのも、森の中よりこういう施設のほうが安全だと本能的に感じたからだ。

「でさぁ、武器なんだけど……ビッグバンさんが武器を支給するって言ってたじゃん。あれ、もしこの場で開けて、銃とか入ってたら銃刀法違反とかになるかな?」

「は?」

「いや、開けてないんだよ、まだ。名簿は見たけど、武器は見てない」

「もうひとつオマケに、……は?」

「なんかドキドキするから、一緒に確認して」

デイパックから銃が出てきたら、法律に抵触して捕まるかもしれないから開けなかったと供述する藤宮のデイパックを奪った君島は、半ば強引に中身を散らばらせた。

「おい、誰のカバンだと思ってるんだよ! 片付けろよ!?」

「うるせえな、お前はよう……ったく、さっさと確認済ませろよ」

散らばった中身を、藤宮と紅蘭がひとつずつ並べていく。
君島は、まだバッグに何か入っているかもしれないと、バッグを逆さにして叩いていた。
中身がない、と彼が認識するまでにささっと片付けは終了している。

「えっと……ビートイングラム?」

「サンダーキー? サンダーファイナルキー?」

「…………マラカス?」

中から出てきた支給品の数々。
説明書も付属しているので、一応彼らはそれぞれひとつ支給品の説明書を読み始めた。

「えっと、何々……? 次元の覇者の銃で、大型戦車を消滅させる威力を持つ……」

「なんやそれ、凄い銃やないか!」

「……ただし、持ち主であるブルービート以外は一切使用不可能」

「あかん。ブルービートおらへん」

「で、紅蘭は?」

「ウチのはリュウケンドーっていうヤツのパワーアップアイテムらしい」

「だめだ、リュウケンドーいねえ」

「で、藤宮はんは? ……って、ただのマラカスやな」

「説明書曰く、『ただの楽器』だって」

「そんなこと言わんでも知っとるわ」

渋々、藤宮は自らの持ち物をデイパックに入れ始めた。
他人が出したものの片付けは、だいたい違う人が任される。
このメンツでは使いようのないものばかりだ。少なくとも、ブルービートなるものやリュウケンドーに出会うまでは使いようがないだろう。ラウズアブゾーバーといい、こんな支給品ばかりだ。ともかくデイパックの中に封じ込める。
デイパックも、首輪と同じく羽のように軽い。そのため、ビートイングラムのような重いものが入っているのは信じがたかった。
というより、体積を考えると無理がある気がする。中身が四次元なのだろうか。……なら、牛乳の空き瓶を持ってきたのも荷物にはならないらしい。

「ちょい待ち。なんで、マラカスだけ残しとんねん」

紅蘭に指摘されるが、とにかくチャックを閉めた時点でマラカスが残っている。
ビートイングラムのほうが鈍器など、武器としては有効そうだが。

「いや、面白そうだったから」

こんな口が利けるのも、この場所と二人に安心感があったからか。
ともかく、二つのマラカスをそれぞれ両手に持ちながら、藤宮はここでしばらく待つことにした。
今は、嫌な予感など欠片も感じていない。──それが良いことなのか、悪い事なのかはわからないが。

【1日目 黎明/A-8 温泉 二階寝室『023号室』】

【李紅蘭@サクラ大戦】
【状態】健康、浴衣
【装備】紅蘭特製の煙玉(一消費)@サクラ大戦
【道具】基本支給品一式、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、ロープ
【思考・状況】
基本行動方針:打倒主催者。
1:しばらくは温泉で待機。
2:首輪の解除。
3:君島、藤宮と一緒に行動する。
4:自律機械(メタルダー勢など)と会いたい。
5:浅倉を警戒。
※ スクライドの参加者(カズマ、由詑かなみ)について知りました。

【君島邦彦@スクライド】
【状態】健康、浴衣
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【思考・状況】
基本行動方針:打倒主催者。
1:しばらくは温泉で待機。
2:紅蘭、藤宮と一緒に行動する。
3:浅倉を警戒。
※サクラ大戦の参加者の情報を得ました。

【藤宮炎@ヒーローズオペレーションF】
【状態】強いストレス(解消気味)、浅倉への強いトラウマ、一部記憶が混乱、浴衣
【装備】マラカス@現実(サクラ大戦3?)
【道具】基本支給品一式、ビートイングラム@重甲ビーファイター、サンダーキー&サンダーファイナルキー@魔弾戦記リュウケンドー、コーヒー牛乳の空き瓶×2
【思考・状況】
基本行動方針:死にたくない。
1:しばらくは温泉で待機。
2:紅蘭が首輪を外す可能性に期待。
3:紅蘭、君島と行動する。
4:浅倉への強い恐怖。
5:できれば浅倉とは二度と会いたくない。
※浅倉に殺されかける直前で、記憶が混乱しています。罪悪感やバルスキーに関しての記憶は、今のところ忘れていますが、それについて話したり、連想することを言うと思い出すかもしれません。
※首輪に盗聴器やビデオカメラ、発信機がついている可能性を想像しているので多少の警戒は示すかもしれません。

050:漆黒の怪人 投下順 052:優しい風が集まって空のブルーのなるんです
050:漆黒の怪人 時系列順 053:君はなぜ戦い続けるのか
046:それは正夢ですか? 君島邦彦 074:よみがえる記憶
046:それは正夢ですか? 李紅蘭 074:よみがえる記憶
046:それは正夢ですか? 藤宮炎 074:よみがえる記憶
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