口先の魔術師×プロメテの子×危険な仲間



千樹憐は荷物の確認を終え、街の小さな公園にあったベンチに腰を下ろしていた。
行くあてがなく、ここでやるべきこともまだわからないからだ。
本当に殺し合いをしているというのなら、「人を守る」とか「生きる」とか様々な目的がある。
憐は西条凪という人によって、「生きるために戦う」──それを教えられた身だ。
無論、それがこの殺し合いで生き残るために他者と戦うということでないのはわかっている。
ラファエルがなければ死に瀕する危険のある彼は、かつて、自分が死んでもいいと思って戦っていた。そんな憐に大しての助言が、まさにそれだった。
それに、生きるためじゃない……。
生かすために戦うんだ。

だけど、先ほど言ったように、それは「本当に殺し合いをしているというのなら」で、まだ状況の確認もとれていない現状では、そう敏感に動く必要もなさそうに感じられた。
今、この間に誰かが死んでいる──そういう確証が全く感じられない。
憐の周りの時間が、ゆったりと進んでいたからだ。

──しかし、後ろから発された音によって、そのゆったりとした時間が終わる。

ガチャ、というその音は明らかに銃が攻撃の形を示した音であった。
憐は、とりあえず座ったまま両手を挙げた。

「誰だ? どうして俺に銃を突きつける?」

「あなたが殺し合いに乗っていないなら、危害を加えるつもりはありません。とにかく、今は情報が欲しいんです」

「俺も同じ気持ちだ。ただ、今は君が優勢だ。知ってることなら話す」

「ありがとうございます。……ただ、そちらの好意的な態度に答えるつもりはありません。銃は降ろしませんから、下手な真似はしないでください」

後ろから発された声が、自分より幼い──変声期ごろだろうか。
そのくらいなのを感じて、憐は「君」という二人称を使った。とにかく、中学生か高校生くらいの男性のものだ。
会話の才能は天性とでも言うべきか。ほどよく相手を安心させ、ほどよく相手を疑っている。この場においては最も上手い態度だ。憐は、相手の銃がどの辺りで構えられているのかも予想がついたので、この体勢からでも相手の武器を奪うことができたが……やめた。
今はまだ、その行為に意味がない。おそらく、こうして疑ってかかってくるということは、憐が殺し合いに乗っていないことを示せば、一緒に行動するように望んでいるからだろう。いくら殺し合いとはいえ、通りすがりでいちいちこういう真似をするわけはなさそうだ。

「俺の名前は千樹憐。殺し合いには乗ってない」

「支給品は?」

「たいしたものじゃない。何なら、確認すればいい」

憐は、自らのデイパックをベンチの後ろに落とす。
このデイパックの中から取り出したものはない。ただ唯一の持ち物はネクサスに変身するためのエボルトラスターだが、これは支給品とは別だ。ウルトラマンについて知られたくは無いし、わざわざ渡す必要はないだろう。万が一見つかっても、到底武器には見えないし、小物や雑貨と言い張ることもできる。
がさこそと、デイパックを確認する音が聞こえた。やはり、武器になるものは確認できなかったらしい。

「ありがとうございます。名簿の中に知り合いはいましたか?」

「弧門一輝、石堀光彦、西条凪、姫矢准……みんな信頼できる人だ。特に、弧門や西条さんは」

「その人たちとの関係は?」

「弧門は友達だ。石堀さんと西条さんは前に俺を助けてくれた人で、姫矢さんは……俺の先輩みたいなもんかな? まあ、みんな信用できる人だ。他に聞きたいことは?」

「そうだな…………いや、ありません。振り向いて構いません」

憐は、むしろ振り向けと言われているような気がして、後ろを振り向いた。
やはり、思ったとおり、彼は若かった。オレンジのランニングシャツに半ズボン。片手に持っているのは、……これもやはり銃である。

「君の名前は?」

「俺は前原圭一っていいます」

「前原、か。前原、俺はさっき言ったとおり、殺し合いに乗ってない。だけど、殺し合いが本当に起きてるかもわからないんだ」

「俺もまだ、全然状況が掴めてません。しばらくは待ってみる必要があるかも……」

「そうだな、俺も前原にどう意見だ。ここで一緒に、何か情報が来るのを待とう。それまで、前原がさっき俺に聞いたこと、聞き返していいかな?」

「ええ、構いませんよ……えっと、千樹さん」

「憐でいい。君の支給品と知り合いは?」

二人の会話はスムーズに進んでいた。
元々、田舎に来て人と関わる機会が多かった圭一や、人なつっこい憐の特性ゆえだろう。
圭一の知り合いが、竜宮レナ、園崎魅音、園崎詩音、古手梨花、北条沙都子、赤坂衛、鷹野三四。赤坂は本当に顔をあわせただけの人らしい。鷹野という人も、一応は医者で、怪しい雰囲気だが凄く悪い人でないとも聞いた。
支給品はニューナンブ──警察の使う銃だ──と、その予備弾。それから、数枚のカードらしい。
カードは、トランプのようだが、スペードの後半数枚しかなかった。なぜこんなものが支給されていたのか、圭一自身もわからないという。

「仲間と早く会いたい……か。俺も同じ気持ちだけど、しばらくは待ってみよう」

「ええ。目安はだいたい一時間程度ですかね」

「そうだな……。それ以上は、ここにいても飽きるだけだ。メリットもない。歩きたくなったら歩こう」

「そうですね。仲間が来てくれるといいんですが……」

二人は公園のベンチで虚空を見つめていた。
ただ、いま目に映っている情報など頭に入っているはずもない。
思考をめぐらせている。友人のこと、殺し合いのことを考えている。
目の行くままに視点をあわせていただけで、今は全く別のことを考えている。
空は寂しげに彼らを見守っていた。

【1日目 深夜/F-4 街の公園】

【千樹憐@ウルトラマンネクサス】
【状態】健康
【装備】エボルトラスター@ウルトラマンネクサス
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2(武器や使えそうなもの、ラウズカードはない)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1:とりあえずは前原とここで情報を待つ。
2:殺し合いが本当に行われているかの把握。あまり積極的に首を突っ込まない。
3:弧門、凪、石堀、姫矢との合流。
※本編終盤(憐の最終決戦直前)からの参戦です。
※圭一の仲間についての情報を得ました(鷹野なども味方と説明されています)。

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
【状態】健康
【装備】ニューナンブ(5/5)@現実
【道具】基本支給品一式、ラウズカード(スペード10~Q)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1:仲間との合流を最優先。
2:とりあえず憐とここで情報を待つ。
3:殺し合いが本当に行われているかの把握。
※皆殺し編で沙都子を救出した直後からの参戦です。赤坂については詳しく知りません。
※憐の仲間について情報を得ました(石堀なども味方と説明されています)。

024:『弟』 投下順 026:月明かり
024:『弟』 時系列順 026:月明かり
初登場 千樹憐 057:笑と画策
初登場 前原圭一 057:笑と画策

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最終更新:2011年08月15日 23:01