『弟』
暴魂チューボは、鎧をガシャガシャと鳴らして街を歩いていた。
ここでは、あくまで軍団長のクールギンに逆らうことなく、ビッグバンの打倒を目指そうと考えている。
倒すべき相手は、剣流星──メタルダーと裏切り者のトップガンダーのみだ。
一端の暴魂に過ぎない自分が、凱聖のクールギンをさしおいて殺し合いで優勝することはできない。
だいたいが、バルスキー、クロスランダーは仮にも仲間。なぜ彼らと相容れなければならないのか。
武人である彼とは言え、無意味に仲間と戦いたいとは思わない。
(とにかく、軍団長やバルスキーたちと合流することにするか……)
彼は野心を持つか、忠誠を誓うかでいえば、後者にあたるタイプの軍団員だ。
ましてや、彼はクールギンの片腕のような存在。その信頼に値するだけの忠義を持っている。
クールギンがいる以上は、少なくともこの殺し合いの覇者になろうとは考えない。
メタルダーやトップガンダーを相手に剣を振るうことはあるかもしれない。
その時に彼らと心中し、命と引き換えの手柄をあげるのも悪くは無いだろう。
だが、逆にそれ以外のことには興味はない。
人間に会ったとしても、軽々しく刀の錆を作る気にはならない。だいたい、あまり目立った行動はしたくないのだ。
(……ん? 誰か来るようだな……)
チューボは、すぐに近くからヨロイの音が聞こえるのを感じた。
ヨロイ軍団でここに来ている仲間ということは、クールギンという可能性が高い。
つまりは、なかなか早い段階で仲間を作れたということだろうか。
これでメタルダーやトップガンダーの打倒も有利になる。
──が、
いざ姿を見てみれば、その姿はチューボの期待する軍団長のものとはかけ離れていた。
青と黒のまだらのヨロイ。それは確かに、チューボの仲間の一人のものである。
「タグスロン!」
仲間との再会に、思わずチューボは駆け寄った。
ヨロイ軍団・豪将タグスロン。
名簿には載っていなかった気がするが──まあいい、ここにいるということは見落としていたか、あるいは名簿のミスプリだろう。
何にせよ、軍団の仲間と会えたことで彼はこのゲームに有利性を感じていた。
メタルダーを相手にするには、多くの味方が必要だ。
「タグスロン、メタルダーを倒すことに協力してもらえないだろうか?」
チューボの心は油断し切っていた。
一応は、志の同じ仲間である軍団員である。少なくともメタルダーやトップガンダーを倒す気概はあるだろう。
第一、タグ兄弟の任務は裏切り者の抹殺。その任務を放棄するような人間ではない。
そのヨロイのせいで、チューボは完全に相手がタグスロンだと信じていた。
100パーセント信じているとはいえないが、タグスロンにとっては────いや、ロロ・ランペルージにとっては充分な信頼度だったと言えるだろう。
★ ★ ★ ★ ★
──ロロは始め、ヨロイの男を殺すつもりで近付いていた。
ロロの支給品はこの「タグスロン」なる者のヨロイと、薙刀だけである。
それは防御と攻撃の両方を補える、うまい具合の支給品だった。歩きにくく、目立ってしまうのも問題だが、ロロには『ギアス』もある。
流石に堂々と、強固な鎧の相手に攻撃を仕掛けてくる人間は少ないだろう。人を敬遠させる力も、この鎧にはある。ロロとしては、他者を殺すにも、狙われないという状況にも、そして狙われたときの防御にも重宝する道具であった。
見かけた相手は皆殺しにする。それは全てロロに『人生』をくれた兄──ルルーシュ・ランペルージのためだ。
皮肉にも、この鎧はタグ兄弟の『弟』であるタグスロンのものである。
タグ兄弟は義理の兄弟でありながら、絆が強かった。ロロとルルーシュも血は繋がってないし、ロロが兄に捧ぐ愛情も大きかった。
この鎧の本来の持ち主も、ロロによく似た人間だったのかもしれない。
★ ★ ★ ★ ★
「タグスロン、俺はメタルダーと心中する気だ。万が一にでも、クールギン様に会うことがあったなら、俺の死に様をクールギン様に報告してほしい」
「あ、ああ……任せてくれ」
「止めはしない……か。まあいい、それが俺たちの生き様だ」
「そう、クールギン様はメタルダーの死を望んでいる。そのためなら、私も喜んでこの命を投げ出そう。戦士としては当然だ」
ロロはチューボの言葉に、上手くあわせていく。
言葉遣いなどは多少の違和感があるかもしれないが、チューボが大きく不信感を持っている様子はなかった。
声もくぐもらせ、あたかも風邪でもひいて声が変になったように振舞う。
そもそも、鎧の中では声が聞こえにくく、元々声が判別できるような状態ではない。
「ゆくぞ、打倒メタルダーだ!」
チューボの気概は、戦士として充分なものであった。
誰かと心中する覚悟の男、ということはそれなりの利用価値がある相手だ、というのもロロは理解した。
メタルダーという者のことも、軍団長という者のことも、この男の名前さえもわからないし、今更聞き出すこともできないが……とりあえずは一緒に行動して死を見届けようと思っていた。
もし、本当に使えない相手であったり、正体が発覚しそうになったりすれば、ギアスもある。
大丈夫だ、ぬかりはない。
「応!」
ロロは、さもメタルダーを倒す気概があるかのようにそう答えた。
【1日目 深夜/B-3 草原】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、タグスロンの鎧を装着
【装備】タグスロンの鎧と薙刀@超人機メタルダー
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:兄を優勝させるため、殺し合いに乗る。
1:うまく「タグスロン」になりきり、チューボを利用する。
2:メタルダー、軍団長、チューボの名前をうまく聞きだせたら……。
3:チューボが利用できなければ、殺害するのみ。
※チューボの名前を知りません。
【暴魂チューボ@超人機メタルダー】
【状態】健康
【装備】愛用の刀@超人機メタルダー
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考・状況】
基本行動方針:メタルダーの抹殺。
1:メタルダーを殺害、トップガンダーも殺す。
2:クールギン、バルスキー、クロスランダーとの合流(左ほど優先)。
3:タグスロン(ロロ)と行動する。
※ロロをタグスロンと勘違いしています。
最終更新:2011年09月12日 18:40