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人を想えばこそ」(2011/08/28 (日) 00:35:41) の最新版変更点

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*人を想えばこそ ----  園崎詩音の支給品は、支給限度である三つそのままであった。  ひとつ。短刀がある。  ふたつ。何かのカギがある。  みっつ。玩具がある。  唯一武器として使えるのは、短刀のみであった。  ただ、一つしかなかろうが、何だろうが、詩音は殺し合う宿命があるのだ。  実の姉でさえ殺す覚悟がある。友達を殺す覚悟もある。  だって、あの子は──  あの子だけは──  北条悟史に託された、沙都子という少女だけは、他の全てを排除してでも守らなければならないから。  彼女のいた世界──詩音は叔父に虐待を受けていた沙都子のために、その叔父を殺そうともしていた。  沙都子のために、悟史のために。  使えるものは全て使って、沙都子以外の全てを排除する。  生き残った彼女が願うのは、おそらく兄のことだろうが──自分の命なんてどうだっていい。  最後には自分も死んで、沙都子以外の全てはここから消え去る。  後は、彼女と悟史が幸せな人生を歩んでいけばいい。 「──私は、悟史くんを想えばこそ──」  簡単にそういう行動に出ようとするのも、彼女の性格だった。 ★ ★ ★ ★ ★  神埼すみれの支給品は、支給限度である三つそのままだった。  ひとつ。デッキブラシがある。  ふたつ。バイオリンがある。  みっつ。ビデオがある。  神埼風塵流の使い手である彼女には、デッキブラシたれど長棒は武器となる。  流石にバイオリンやビデオを武器とすることはできないが(そもそも、彼女のいた時代にビデオはないので、これが何かも理解していない)。  デッキブラシを握っていたところ、すみれは背後に殺気を感じて、すぐにそちらにデッキブラシを向けた。  手ごたえを感じた。  背後を見てみれば、デッキブラシにぶつかって吹き飛ばされた詩音の姿がある。  まだ齢はそこまでではない。すみれより年下だが、凄く年下というわけでもない美人だ。その右手に短刀を握っている。おそらくその目的は護身などではなく、……襲撃だろう。 「どういうことですの? これは一体……」  やはり、殺し合いに乗ってしまうような人間がいたということか。  すみれにとっては至極残念なことで、腹立たしいことだった。  詩音は起き上がると、「やだなあ、ほんの挨拶ですよ」と苦しい笑顔で言う。が、殺気は拭えていないようだ。もちろん、すみれもこんな少女を信用するはずがない。  すみれは彼女を一睨みする。  すると、詩音は真意が察されたことを理解し、再び短刀をすみれに向けた。 「殺しますよ。いいんですか? 私は本気です」 「なんでこんなことをするんですの?」 「どう行動しようと私の勝手です。ただ、生きたいからに決まってるじゃないですか」  何故こんなやつに教えなければならない、とばかりの態度だ。  本来、彼女は他人のために殺し合いに乗っている。しかし、その人のために死んでもくれない相手が、「その人はそんなことを望んではいない」と説教する姿を想像して、こうして嘘をついていた。  安っぽい同情をされるくらいなら、悪役を貫いてやる……と。  すみれがそういう説教をする人間かというと違うし、これは詩音の勝手な思い込みと決めつけに過ぎないだろう。  もちろん、すみれもこの言葉が全てだと思い込み、そんな彼女に強い怨念を感じた。 「なるほど。それがあなたの真意ですか……ならば、容赦はいたしませんことよ!」  神崎風塵流の薙刀の技が、詩音を相手に繰り出される。  まず、一撃目は足の自由を奪った。これで詩音はよろめく。実はデッキブラシの硬さは、人間を殺傷できるほどだ。ただし、この一撃は自由を奪うためと、そちらに目を行かせるための手加減の一撃。  本命は次。後ろに回ったすみれは背中から急所をついた。鳩尾を疲れたように、すぐに、詩音は嗚咽を吐き、そのまま地面に倒れた。無論、そこに意識などない。  あまりの一瞬の出来事に、驚いたのが最後の記憶だろう。  この後のすみれの言葉など、知る由もない。 「未熟者が私に勝てるとお思いになって?」  格闘技をしたわけでも、武術に富むわけでもない詩音が、すみれに一瞬で負けるのは当然のことである。  ただでさえ、薙刀をやっている相手でも軽く一ひねりにする女だというのに。  真下を見下ろすと、倒れた詩音が目に入る。 (…………私たちは、こんな人間を守るために戦ってきたんですの?)  詩音の苦しそうな寝顔を見て、すみれは苛立ちを覚えた。  もともと、ヒステリックな性格の彼女が、本当の悪を目にして、強い怨念と嫉妬の感情を感じたのだ。  彼女は人間だ。いわゆる、黒之巣会とは全然別の存在で、すみれと同じ存在。ごく身近で、当たり前の存在。  「生きたい」と願うのも人間だが、こうして自分の生のために他人を手にかけられるのが人間だというなら……。  それなら、いっそすみれもこんな人間など見捨てて── (そう、ですわね……私たち──帝国華撃団が守ってきた帝都の市民に殺されるなんて、私たちらしくありませんわ)  帝国華撃団。それはすみれにとって安寿の地である。  帝都を守り、そのために命をかける乙女たち。自分の愛する仲間たち。  折角、命懸けで帝都を守ってきたのに、その帝都に裏切られるように、一般人に殺されて幕を閉じるのは、何か帝国華撃団の死に様として違う気がした。 (少尉……私は決めました。私は今、帝国華撃団のために戦います。帝都ではなく、仲間のために……。  少尉はきっと、こんな私を止めるでしょうね。でも、それは──)  ──帝国華撃団を想えばこそ。  皮肉にも、その理由は詩音と同じだった。  だが、彼女にとって詩音は身勝手な理由で攻撃をしてきた相手だ。ましてや、短刀──ヤクザの世界ではドスと呼ばれる凶器で。  あんなもので刺されたら死んでしまうだろう。そう、間違いなく殺す気だったのだ。  人を殺す気でかかってきて、殺されずに済むと思うな……。  人を殺す気だったなら、殺される覚悟もなければならない……。  その覚悟がないのに、殺しにかかったとは言わせない。  いや、よく考えればもう言えない……。  ──だって、既にすみれは彼女の胸に短刀を刺してしまったのだから。   (……やってしまった)  少し、後悔もした。躊躇したこともある。  だが、これはすみれの生き方のひとつなんだ。ここで、すみれはこうして仲間のために参加者を減らしていく。  帝国華撃団は関係ない。すみれが勝手に、狂って殺した……それだけのこと。──すみれもまた、そういう風に自分一人のせいにする。 (少尉……私はもう、あなたに会わないことに決めました。さようなら、少尉。さようなら、帝国華撃団……)  すぐに短刀を抜き、詩音のデイパックを奪った。  彼女の生き方は、この時点で決まってしまったのだ。  誰より、仲間想いな彼女の生き方は──。 &color(red){【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に 死亡】} &color(red){残り98人} 【1日目 深夜/G-1 草原】 【神崎すみれ@サクラ大戦】 【状態】健康 【装備】古賀竜夫の短刀@超人機メタルダー、デッキブラシ@サクラ大戦 【道具】基本支給品一式×2、上條恭介のバイオリン@魔法少女まどかマギカ、ゲキ・ガンガー3のビデオ@機動戦艦ナデシコ、ピンチクラッシャーの玩具@スクライド、ファイヤーキー&ファイナルファイヤーキー@魔弾戦記リュウケンドー 【思考・状況】 基本行動方針:帝国華撃団のために殺し合いに乗る。 1:帝国華撃団のメンバーとは会いたくない。 2:あくまで自分は「自分のため」に殺し合いに乗ったことにする。 |013:[[人の自由を奪う 種アンチを倒せ]]|投下順|015:[[戦士の苦悩。燃え上がる正義]]| |013:[[人の自由を奪う 種アンチを倒せ]]|時系列順|015:[[戦士の苦悩。燃え上がる正義]]| |COLOR(aqua):初登場|神崎すみれ|| |COLOR(aqua):初登場|園崎詩音|COLOR(red):死亡|
*人を想えばこそ ----  園崎詩音の支給品は、支給限度である三つそのままであった。  ひとつ。短刀がある。  ふたつ。何かのカギがある。  みっつ。玩具がある。  唯一武器として使えるのは、短刀のみであった。  ただ、一つしかなかろうが、何だろうが、詩音は殺し合う宿命があるのだ。  実の姉でさえ殺す覚悟がある。友達を殺す覚悟もある。  だって、あの子は──  あの子だけは──  北条悟史に託された、沙都子という少女だけは、他の全てを排除してでも守らなければならないから。  彼女のいた世界──詩音は叔父に虐待を受けていた沙都子のために、その叔父を殺そうともしていた。  沙都子のために、悟史のために。  使えるものは全て使って、沙都子以外の全てを排除する。  生き残った彼女が願うのは、おそらく兄のことだろうが──自分の命なんてどうだっていい。  最後には自分も死んで、沙都子以外の全てはここから消え去る。  後は、彼女と悟史が幸せな人生を歩んでいけばいい。 「──私は、悟史くんを想えばこそ──」  簡単にそういう行動に出ようとするのも、彼女の性格だった。 ★ ★ ★ ★ ★  神埼すみれの支給品は、支給限度である三つそのままだった。  ひとつ。デッキブラシがある。  ふたつ。バイオリンがある。  みっつ。ビデオがある。  神埼風塵流の使い手である彼女には、デッキブラシたれど長棒は武器となる。  流石にバイオリンやビデオを武器とすることはできないが(そもそも、彼女のいた時代にビデオはないので、これが何かも理解していない)。  デッキブラシを握っていたところ、すみれは背後に殺気を感じて、すぐにそちらにデッキブラシを向けた。  手ごたえを感じた。  背後を見てみれば、デッキブラシにぶつかって吹き飛ばされた詩音の姿がある。  まだ齢はそこまでではない。すみれより年下だが、凄く年下というわけでもない美人だ。その右手に短刀を握っている。おそらくその目的は護身などではなく、……襲撃だろう。 「どういうことですの? これは一体……」  やはり、殺し合いに乗ってしまうような人間がいたということか。  すみれにとっては至極残念なことで、腹立たしいことだった。  詩音は起き上がると、「やだなあ、ほんの挨拶ですよ」と苦しい笑顔で言う。が、殺気は拭えていないようだ。もちろん、すみれもこんな少女を信用するはずがない。  すみれは彼女を一睨みする。  すると、詩音は真意が察されたことを理解し、再び短刀をすみれに向けた。 「殺しますよ。いいんですか? 私は本気です」 「なんでこんなことをするんですの?」 「どう行動しようと私の勝手です。ただ、生きたいからに決まってるじゃないですか」  何故こんなやつに教えなければならない、とばかりの態度だ。  本来、彼女は他人のために殺し合いに乗っている。しかし、その人のために死んでもくれない相手が、「その人はそんなことを望んではいない」と説教する姿を想像して、こうして嘘をついていた。  安っぽい同情をされるくらいなら、悪役を貫いてやる……と。  すみれがそういう説教をする人間かというと違うし、これは詩音の勝手な思い込みと決めつけに過ぎないだろう。  もちろん、すみれもこの言葉が全てだと思い込み、そんな彼女に強い怨念を感じた。 「なるほど。それがあなたの真意ですか……ならば、容赦はいたしませんことよ!」  神崎風塵流の薙刀の技が、詩音を相手に繰り出される。  まず、一撃目は足の自由を奪った。これで詩音はよろめく。実はデッキブラシの硬さは、人間を殺傷できるほどだ。ただし、この一撃は自由を奪うためと、そちらに目を行かせるための手加減の一撃。  本命は次。後ろに回ったすみれは背中から急所をついた。鳩尾を疲れたように、すぐに、詩音は嗚咽を吐き、そのまま地面に倒れた。無論、そこに意識などない。  あまりの一瞬の出来事に、驚いたのが最後の記憶だろう。  この後のすみれの言葉など、知る由もない。 「未熟者が私に勝てるとお思いになって?」  格闘技をしたわけでも、武術に富むわけでもない詩音が、すみれに一瞬で負けるのは当然のことである。  ただでさえ、薙刀をやっている相手でも軽く一ひねりにする女だというのに。  真下を見下ろすと、倒れた詩音が目に入る。 (…………私たちは、こんな人間を守るために戦ってきたんですの?)  詩音の苦しそうな寝顔を見て、すみれは苛立ちを覚えた。  もともと、ヒステリックな性格の彼女が、本当の悪を目にして、強い怨念と嫉妬の感情を感じたのだ。  彼女は人間だ。いわゆる、黒之巣会とは全然別の存在で、すみれと同じ存在。ごく身近で、当たり前の存在。  「生きたい」と願うのも人間だが、こうして自分の生のために他人を手にかけられるのが人間だというなら……。  それなら、いっそすみれもこんな人間など見捨てて── (そう、ですわね……私たち──帝国華撃団が守ってきた帝都の市民に殺されるなんて、私たちらしくありませんわ)  帝国華撃団。それはすみれにとって安寿の地である。  帝都を守り、そのために命をかける乙女たち。自分の愛する仲間たち。  折角、命懸けで帝都を守ってきたのに、その帝都に裏切られるように、一般人に殺されて幕を閉じるのは、何か帝国華撃団の死に様として違う気がした。 (少尉……私は決めました。私は今、帝国華撃団のために戦います。帝都ではなく、仲間のために……。  少尉はきっと、こんな私を止めるでしょうね。でも、それは──)  ──帝国華撃団を想えばこそ。  皮肉にも、その理由は詩音と同じだった。  だが、彼女にとって詩音は身勝手な理由で攻撃をしてきた相手だ。ましてや、短刀──ヤクザの世界ではドスと呼ばれる凶器で。  あんなもので刺されたら死んでしまうだろう。そう、間違いなく殺す気だったのだ。  人を殺す気でかかってきて、殺されずに済むと思うな……。  人を殺す気だったなら、殺される覚悟もなければならない……。  その覚悟がないのに、殺しにかかったとは言わせない。  いや、よく考えればもう言えない……。  ──だって、既にすみれは彼女の胸に短刀を刺してしまったのだから。   (……やってしまった)  少し、後悔もした。躊躇したこともある。  だが、これはすみれの生き方のひとつなんだ。ここで、すみれはこうして仲間のために参加者を減らしていく。  帝国華撃団は関係ない。すみれが勝手に、狂って殺した……それだけのこと。──すみれもまた、そういう風に自分一人のせいにする。 (少尉……私はもう、あなたに会わないことに決めました。さようなら、少尉。さようなら、帝国華撃団……)  すぐに短刀を抜き、詩音のデイパックを奪った。  彼女の生き方は、この時点で決まってしまったのだ。  誰より、仲間想いな彼女の生き方は──。 &color(red){【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に 死亡】} &color(red){残り98人} 【1日目 深夜/G-1 草原】 【神崎すみれ@サクラ大戦】 【状態】健康 【装備】古賀竜夫の短刀@超人機メタルダー、デッキブラシ@サクラ大戦 【道具】基本支給品一式×2、上條恭介のバイオリン@魔法少女まどかマギカ、ゲキ・ガンガー3のビデオ@機動戦艦ナデシコ、ピンチクラッシャーの玩具@スクライド、ファイヤーキー&ファイナルファイヤーキー@魔弾戦記リュウケンドー 【思考・状況】 基本行動方針:帝国華撃団のために殺し合いに乗る。 1:帝国華撃団のメンバーとは会いたくない。 2:あくまで自分は「自分のため」に殺し合いに乗ったことにする。 |013:[[人の自由を奪う 種アンチを倒せ]]|投下順|015:[[戦士の苦悩。燃え上がる正義]]| |013:[[人の自由を奪う 種アンチを倒せ]]|時系列順|015:[[戦士の苦悩。燃え上がる正義]]| |COLOR(aqua):初登場|神崎すみれ|070:[[花を散らせよ、乙女の意地で]]| |COLOR(aqua):初登場|園崎詩音|COLOR(red):死亡|

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