「皇帝の手駒」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

皇帝の手駒」(2011/08/24 (水) 23:57:20) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*皇帝の手駒 ---- 彼──ルルーシュ・ランペルージの表情は苛立ちに満ちていた。 無理もない。仮にも知合いを一人失い、ここで自分の身すら危ういゲームに参加させられているのだから。 いや、冷静な彼のことだから、自分の保身を多少考えていても、まずはその恐怖に押しつぶされることなく状況の把握に努めているのだろう。 (……名簿が日本人の名前ばかりとはいえ、扇とカレンがあそこまで目立って行動してしまうとは。扇に至っては、あの場での印象が悪すぎる……!ブリタニアやEUが絡んでないとはいえ、ヤツとの合流は避けたほうがいいな……) 扇という男を信用できるかは、この現状ではノーと言える。 あそこまで強い挑発を全参加者の前で受け取った張本人だ。あの場で、浅倉という男に次いで殺し合いに乗る確率が高い人物──その認識は彼を知るルルーシュとて変わらない。 彼は殺し合いに乗るか否か、よりも彼に会ったときの対処法を考えた方がいいだろう。 ゼロとしてではなく、現在生身で──そして扇との交流の薄い、ルルーシュとして接する。これは最低条件だ。今のところ、ゼロとしての正体は扇にはばれていない。仮面とマントがない今、迂闊に上から扇に命令はできない。万が一殺し合いに乗っていたり、あるいは使い物にならなくなっていたりすれば、その時は切ればいいだけの話だ。 スザク、カレン、ロロ……参加者では、ルルーシュとゼロの関係について知るのはこの三人か。特にスザクとは会いたくはない。私情を挟み、全てが無かったことになるのなら彼と会うことも望むのだが。 オレンジは……まあいい。 とにかく、ルルーシュは本格的にスザクがいるということは命を狙われてもおかしくないということだろう。他の相手ならばギアスでなんとかすることもできるのだろうが──。 (しかし、ここはどこなんだ?) 洞窟のような場所に、機械やモニターが敷き詰められている。 これはただの洞窟ではない。おそらく、何か────黒の騎士団に準ずる何かの基地だと考えられる。 その中でも、何か機械を直すための場所だろう。負傷した兵士の治療場というよりは、むしろ人並の大きさのものを直す基地だ。 ルルーシュはコンピュータを使って、そこに存在する限りのデータを調べていく。 (な……なんだと!?) 上から順に目を追っていくと、ここにあったものが旧日本軍が太平洋戦争時代に作った兵器であることが理解できた。 目を下に向けていくたび、その能力には驚かざるを得ない。 人の姿をし、時に尊大な能力を発揮するロボット──これっはKMFなんかとは違う。自律して動く兵器だ。 なるほど、目を通していくとそれが普段「剣流星」という名前をしていることがわかった。参加者の一人の名前だ。 (この男には自省回路がある……つまり、他人を殺すことはできない! それでいてこの能力だ。探し出して味方につければ利用ができる) ギアスが効くかはわからないが、彼が善良なロボットならば味方につけて利用することも容易だ。 カレンや扇やロロよりも、安定した味方といえる。 「君はそこで何をしているんだ?」 不意に背後から声をかけられ、自分があまりにその資料に夢中になっていたことを知り、ルルーシュは慌てた。 支給品のパルセイバーを構え、背後の敵を相手に警戒態勢をとる。 ……が、そこでルルーシュは思わずにやけた。 丁度ほしかったものが向こうからやって来たらしい。 「……君は、剣流星君か」 「……わからない」 「わからない? どういうことだ、君はメタルダー。剣流星……」 「僕はまだ生まれてきたばかりなんだ。……ここで眠っていたような気がする。懐かしい場所のような気がして、ここにきた」 まだ生まれたばかり……太平洋戦争時代からずっと眠っていたというのか。 ということは、本当に言葉もあまり知らない使えない人形らしい……。 期待は大きく外れた。 ────いや ここでルルーシュは逆にこの状況を利用できないかと考える。 何も知らない相手ならば、催眠状態にもかけやすい。服従させることもたやすい。 ルルーシュの顔のほころびは、もはや隠せるものではなくなっていただろう。 「……そうか。ならば話が早い。お前の名前は剣流星。────この俺に忠実なロボットだ!!  貴様の造物主・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……我に従え!!」 「僕が、忠実なロボット……」 試しにギアスを使ってみたが、効いている様子はない。 それは当然だ。相手はロボットなのだから。要はバトルロワイアルに参加している、彼のような人物にギアスが効くかの実験だった。 ギアスを持つ彼がメタルダーを必要とした理由も、同種の参加者がいる可能性が高いからに違いない。 しかし、返ってきた返事は…… 「はい、わかりました」 メタルダーのコンピュータに宿ったものは、天使か悪魔か。 それはルルーシュにさえもわからなかった。 ★ ★ ★ ★ ★ 「隊長! 良かった、無事で……」 「マリア!」 このメタルダーの基地の前で、大神一郎とマリア・タチバナの二人が再会を喜び合った。 彼らは帝国華撃団花組の隊長と副隊長である。ここですぐに出会ったのも喜ばしい偶然であった。 しかし、それが偶然だということもあまり認識せず、近くに花組の仲間がいるものと思った大神は訊く。 「マリア、さくらくんたちには会ったかい?」 「いえ、私がここに来てから人を見たのは隊長が初めてです」 「そうか……。まだあまり時間も経ってないしな」 それで、大神はやはりランダムな配置ゆえの偶然だったのだと理解した。 短針はまだ12の文字を指している。おそらく、始まったのが十二時。まだ十分程度しか経ってはいない。 時間の経過の遅さに驚く大神に対し、マリアが真っ先に話題にすべきことを言葉にしようと口を開く。 「隊長、どう思います? この殺し合いについて……」 そう、殺し合いについてだ。 ビッグバンという男の悪趣味につき合わされ、一つの残酷な死を眼前にした彼らには、この殺し合いを批判する権利がある。 無論、彼らの意見は一つだった。 「決まってるだろう? 俺達は帝国華撃団だ。人々の平和を守るためにも、こんな殺し合いを止めなければならない!」 「それでこそ隊長です。では、ここは敢えて二手に別れてさくらたちを探しましょう」 「ああ、俺達が考えるべきは自分たちが一緒にいて安全だということじゃない。より多くの人を助けることだ」 「隊長、私の支給品ですが、紅蘭のキネマトロンでした。通信用に二つ入っています。片方は隊長に預けますから、何かあったら連絡をお願いします」 「ああ。わかったよ」 キネマトロンとは、帝国華撃団の紅蘭の発明で、現代でいうテレビ電話に近いものだ。 ダイヤルで番号を入力して、相手のキネマトロンに連絡をすることができる。 相手の番号は不明だが、相手先として保存されている名前があった。 マリアのものには「大神」の名前、大神のものには「紅蘭」の名前が、すぐに連絡できるよう保存されている。 つまり、マリアのキネマトロンは紅蘭、大神のキネマトロンは大神本人のものだということだろう。 「隊長、それで、申し訳ないのですが……」 と、マリアの表情は暗くなる。心底申し訳なさそうな顔だった。 これは決まって、マリアが何か頼みごとをするときの動作だ。 「私の支給品はこれだけでした。何か武器があれば、私に貸して欲しいのですが……」 「ああ、構わないよ。俺はその辺の木の棒でも戦えるしね」 大神が笑顔で渡したのは、特殊な改造が施された銃である。 それは撃つ側にとってプラスにはならない改造である。なぜ、こんな改造がされているのかは彼らでもわからなかった。こんなことをしても、使用者側には利益がないというのに。 だって、この銃は── 「銃口が湾曲していますが」 「そうなんだ。俺には撃てないけど、マリアなら弾道がわかれば命中させられるだろ?」 「ええ、おそらく。ですが、使いにくいことは確かでしょう」 「他に銃はなかったんだ、ごめん。マリア……」 「いえ、こちらこそ……」 やや気まずく感じつつも、マリアは一礼してこれを懐に隠した。 愛用のエンフィールドNo.1MkIスター・改はその懐にはない。主催者側によって没収を受けたらしい。 おかげで銃が調達できず、マリアの力は半減されたといっても過言ではない。彼女の本分はその銃にある。 確かに帝国華撃団の一員である以上、人並み外れた体術は使えるが、それも達人には遅れを取る程度だ。 「じゃあマリア。俺はこっちを捜しに行くよ。気をつけて」 「はい、隊長」 二人はここらで別れを告げる。一通り、装備の確認もしたし、旅立つのにやり残したことはない。 マリアはその背中の大きさに、一抹の寂しさを感じた。 こんな場所に一人というのは、心細い。 「ルルーシュ……あそこに女がいる」 大神がいなくなった途端、目の前の洞窟から声が聞こえてマリアは銃を構えたまま振り向いた。 その顔は戦慄にこわばっていたが、出てきたのは何ということのない男性二人だ。 片方はまだ年齢も若く見える。さくらと同じくらいだろう。日本人ではない。 片方はマリアと同じくらいの年代だろうか。こちらは日本人だ。もう片方の男性の前を歩いている。 「嫌だなあ、そんなに警戒しなくても何もしませんって」 少年が両手を挙げ、少し困ったように笑いながらマリアに言う。 よほどマリアの顔が怖かったと見える。思わず、守るべき相手に銃を構えてしまったことに罪悪感を感じながら、アリアは銃を下げて謝った。 「この洞窟の先には何もありませんでしたよ。行っても武器のようなものはありません」 「そ、そう……」 「そういえば自己紹介がまだでしたね。僕はルルーシュ・ランペルージ。彼は僕の付き人の剣流星。勿論、殺し合いに乗る意思はありません」 「私はマリア・タチバナです。銃は使い慣れているわ。あなたたちを保護することもできる」 「それは良かった! 正直言うと、心細かったんです。マリアさんの知り合いは他に、ここに連れてこられたりはしていませんか?」 「ええ、何人かいるわ。首輪を解除できるかもしれない人も、ね」 「本当ですか!?」 「ええ。李紅蘭という人よ。一応、参加している仲間の名前を言っておくわ。私とはぐれても、うまくその人たちと合流できれば、保護してくれるはずよ。大神一郎、神崎すみれ、桐島カンナ、真宮寺さくら……それから、まだ幼いけれどイリス・シャトーブリアン」 アイリスの名前は、保護してくれる人物として挙げるべきか悩んでいた。 二刀流、薙刀、空手、居合いなどの達人が参加している中、アイリスには霊力しかない。 仲間の回復をすることができるが、念のために言い方を変えて名前を出した。 この名前の群れを、メタルダーとルルーシュは一瞬で記憶する。 コンピュータが一瞬で物事を記憶するメタルダーも、その明晰な頭脳を持つルルーシュも、その程度の名前を覚えるのに難はなかった。 おそらく、マリアもだろう。 「僕が知っているのは、ロロ・ランペルージと流星だけです。ロロは僕の弟です」 なるべく扇やカレンの知り合いであることを悟られないように嘘をつく。 同じランペルージ姓であるロロに関しては嘘もつけないから情報を受け渡しただけで、ルルーシュに関する情報は嘘ばかりだ。 というのも、マリアは明らかに日本人ではない。日本人を付き人に使っているかのように装い、ブリタニア籍をアピールする。 黒の騎士団として名が知れてしまった扇との接点は今のうちに排除し、ゼロであることも悟られないようにするしかない。 それにしても、彼女も彼女で日本人との接点が強いようだ。苗字から察するに、片親が日本人なのだろう。李紅蘭は中国人の名前、シャトーブリアンという姓はおそらくフランス人。ほかは全員日本人だ。 ルルーシュは、日本と接点があり、銃が使え、首輪を解除できる知り合いがいるという、なかなか都合の良い女を得ることができたらしい。メタルダーのことと言い、物事がよい方向に進んでいる。 「なるほど。とりあえず、私についてきて。紅蘭たちを探すわ」 「ええ、僕も弟のことが心配です」 憎い相手のことだが、とりあえずは体裁を取り繕うために、ルルーシュはそう言っておいた。 【大神一郎@サクラ大戦】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-8 草原】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(大神)@サクラ大戦、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:何かあったらキネマトロンでマリアに連絡する。 ※キネマトロンには紅蘭のキネマトロン番号が登録されています。 【マリア・タチバナ@サクラ大戦】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】ネロの銃@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(紅蘭)@サクラ大戦 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:ルルーシュ、流星の保護。 3:何かあったらキネマトロンで大神に連絡する。 ※キネマトロンには大神のキネマトロン番号が登録されています。 ※ルルーシュから得た情報はロロが兄弟であることのみで、嘘ばっかりです。 ※ネロの銃は弾道が曲がっていますが、マリアは相手に命中させる角度を理解しています。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】パルセイバー(青)@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いからの脱出。 1:紅蘭なる人物を探す。 2:メタルダーとマリアを利用する。 3:邪魔な人間はうまく切り捨てる。 4:元の世界の知り合いとはなるべく会いたくない。 ※R2の中盤あたりからの参戦です。 ※メタルダーの構造について知りました。今は彼が何も知らないのを利用して手駒にしています。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 【剣流星@超人機メタルダー】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考・状況】 基本行動方針:ルルーシュに従って行動する。 1:今はルルーシュに合わせて行動する。 ※第1話で起動する前からの参戦です。物事についてよく知りません。 ※ルルーシュが主だと思い込んでいます。 ※自省回路があるので、人殺しはできません。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 |001:[[。笑]]|投下順|003:[[ヒーロー最大の危機]]| |001:[[。笑]]|時系列順|003:[[ヒーロー最大の危機]]| |COLOR(aqua):初登場|大神一郎|062:[[打倒ビッグバン!それぞれの進むべき道]]| |COLOR(aqua):初登場|マリア・タチバナ|| |COLOR(aqua):初登場|ルルーシュ・ランペルージ|| |COLOR(aqua):初登場|剣流星||
*皇帝の手駒 ---- 彼──ルルーシュ・ランペルージの表情は苛立ちに満ちていた。 無理もない。仮にも知合いを一人失い、ここで自分の身すら危ういゲームに参加させられているのだから。 いや、冷静な彼のことだから、自分の保身を多少考えていても、まずはその恐怖に押しつぶされることなく状況の把握に努めているのだろう。 (……名簿が日本人の名前ばかりとはいえ、扇とカレンがあそこまで目立って行動してしまうとは。扇に至っては、あの場での印象が悪すぎる……!ブリタニアやEUが絡んでないとはいえ、ヤツとの合流は避けたほうがいいな……) 扇という男を信用できるかは、この現状ではノーと言える。 あそこまで強い挑発を全参加者の前で受け取った張本人だ。あの場で、浅倉という男に次いで殺し合いに乗る確率が高い人物──その認識は彼を知るルルーシュとて変わらない。 彼は殺し合いに乗るか否か、よりも彼に会ったときの対処法を考えた方がいいだろう。 ゼロとしてではなく、現在生身で──そして扇との交流の薄い、ルルーシュとして接する。これは最低条件だ。今のところ、ゼロとしての正体は扇にはばれていない。仮面とマントがない今、迂闊に上から扇に命令はできない。万が一殺し合いに乗っていたり、あるいは使い物にならなくなっていたりすれば、その時は切ればいいだけの話だ。 スザク、カレン、ロロ……参加者では、ルルーシュとゼロの関係について知るのはこの三人か。特にスザクとは会いたくはない。私情を挟み、全てが無かったことになるのなら彼と会うことも望むのだが。 オレンジは……まあいい。 とにかく、ルルーシュは本格的にスザクがいるということは命を狙われてもおかしくないということだろう。他の相手ならばギアスでなんとかすることもできるのだろうが──。 (しかし、ここはどこなんだ?) 洞窟のような場所に、機械やモニターが敷き詰められている。 これはただの洞窟ではない。おそらく、何か────黒の騎士団に準ずる何かの基地だと考えられる。 その中でも、何か機械を直すための場所だろう。負傷した兵士の治療場というよりは、むしろ人並の大きさのものを直す基地だ。 ルルーシュはコンピュータを使って、そこに存在する限りのデータを調べていく。 (な……なんだと!?) 上から順に目を追っていくと、ここにあったものが旧日本軍が太平洋戦争時代に作った兵器であることが理解できた。 目を下に向けていくたび、その能力には驚かざるを得ない。 人の姿をし、時に尊大な能力を発揮するロボット──これっはKMFなんかとは違う。自律して動く兵器だ。 なるほど、目を通していくとそれが普段「剣流星」という名前をしていることがわかった。参加者の一人の名前だ。 (この男には自省回路がある……つまり、他人を殺すことはできない! それでいてこの能力だ。探し出して味方につければ利用ができる) ギアスが効くかはわからないが、彼が善良なロボットならば味方につけて利用することも容易だ。 カレンや扇やロロよりも、安定した味方といえる。 「君はそこで何をしているんだ?」 不意に背後から声をかけられ、自分があまりにその資料に夢中になっていたことを知り、ルルーシュは慌てた。 支給品のパルセイバーを構え、背後の敵を相手に警戒態勢をとる。 ……が、そこでルルーシュは思わずにやけた。 丁度ほしかったものが向こうからやって来たらしい。 「……君は、剣流星君か」 「……わからない」 「わからない? どういうことだ、君はメタルダー。剣流星……」 「僕はまだ生まれてきたばかりなんだ。……ここで眠っていたような気がする。懐かしい場所のような気がして、ここにきた」 まだ生まれたばかり……太平洋戦争時代からずっと眠っていたというのか。 ということは、本当に言葉もあまり知らない使えない人形らしい……。 期待は大きく外れた。 ────いや ここでルルーシュは逆にこの状況を利用できないかと考える。 何も知らない相手ならば、催眠状態にもかけやすい。服従させることもたやすい。 ルルーシュの顔のほころびは、もはや隠せるものではなくなっていただろう。 「……そうか。ならば話が早い。お前の名前は剣流星。────この俺に忠実なロボットだ!!  貴様の造物主・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……我に従え!!」 「僕が、忠実なロボット……」 試しにギアスを使ってみたが、効いている様子はない。 それは当然だ。相手はロボットなのだから。要はバトルロワイアルに参加している、彼のような人物にギアスが効くかの実験だった。 ギアスを持つ彼がメタルダーを必要とした理由も、同種の参加者がいる可能性が高いからに違いない。 しかし、返ってきた返事は…… 「はい、わかりました」 メタルダーのコンピュータに宿ったものは、天使か悪魔か。 それはルルーシュにさえもわからなかった。 ★ ★ ★ ★ ★ 「隊長! 良かった、無事で……」 「マリア!」 このメタルダーの基地の前で、大神一郎とマリア・タチバナの二人が再会を喜び合った。 彼らは帝国華撃団花組の隊長と副隊長である。ここですぐに出会ったのも喜ばしい偶然であった。 しかし、それが偶然だということもあまり認識せず、近くに花組の仲間がいるものと思った大神は訊く。 「マリア、さくらくんたちには会ったかい?」 「いえ、私がここに来てから人を見たのは隊長が初めてです」 「そうか……。まだあまり時間も経ってないしな」 それで、大神はやはりランダムな配置ゆえの偶然だったのだと理解した。 短針はまだ12の文字を指している。おそらく、始まったのが十二時。まだ十分程度しか経ってはいない。 時間の経過の遅さに驚く大神に対し、マリアが真っ先に話題にすべきことを言葉にしようと口を開く。 「隊長、どう思います? この殺し合いについて……」 そう、殺し合いについてだ。 ビッグバンという男の悪趣味につき合わされ、一つの残酷な死を眼前にした彼らには、この殺し合いを批判する権利がある。 無論、彼らの意見は一つだった。 「決まってるだろう? 俺達は帝国華撃団だ。人々の平和を守るためにも、こんな殺し合いを止めなければならない!」 「それでこそ隊長です。では、ここは敢えて二手に別れてさくらたちを探しましょう」 「ああ、俺達が考えるべきは自分たちが一緒にいて安全だということじゃない。より多くの人を助けることだ」 「隊長、私の支給品ですが、紅蘭のキネマトロンでした。通信用に二つ入っています。片方は隊長に預けますから、何かあったら連絡をお願いします」 「ああ。わかったよ」 キネマトロンとは、帝国華撃団の紅蘭の発明で、現代でいうテレビ電話に近いものだ。 ダイヤルで番号を入力して、相手のキネマトロンに連絡をすることができる。 相手の番号は不明だが、相手先として保存されている名前があった。 マリアのものには「大神」の名前、大神のものには「紅蘭」の名前が、すぐに連絡できるよう保存されている。 つまり、マリアのキネマトロンは紅蘭、大神のキネマトロンは大神本人のものだということだろう。 「隊長、それで、申し訳ないのですが……」 と、マリアの表情は暗くなる。心底申し訳なさそうな顔だった。 これは決まって、マリアが何か頼みごとをするときの動作だ。 「私の支給品はこれだけでした。何か武器があれば、私に貸して欲しいのですが……」 「ああ、構わないよ。俺はその辺の木の棒でも戦えるしね」 大神が笑顔で渡したのは、特殊な改造が施された銃である。 それは撃つ側にとってプラスにはならない改造である。なぜ、こんな改造がされているのかは彼らでもわからなかった。こんなことをしても、使用者側には利益がないというのに。 だって、この銃は── 「銃口が湾曲していますが」 「そうなんだ。俺には撃てないけど、マリアなら弾道がわかれば命中させられるだろ?」 「ええ、おそらく。ですが、使いにくいことは確かでしょう」 「他に銃はなかったんだ、ごめん。マリア……」 「いえ、こちらこそ……」 やや気まずく感じつつも、マリアは一礼してこれを懐に隠した。 愛用のエンフィールドNo.1MkIスター・改はその懐にはない。主催者側によって没収を受けたらしい。 おかげで銃が調達できず、マリアの力は半減されたといっても過言ではない。彼女の本分はその銃にある。 確かに帝国華撃団の一員である以上、人並み外れた体術は使えるが、それも達人には遅れを取る程度だ。 「じゃあマリア。俺はこっちを捜しに行くよ。気をつけて」 「はい、隊長」 二人はここらで別れを告げる。一通り、装備の確認もしたし、旅立つのにやり残したことはない。 マリアはその背中の大きさに、一抹の寂しさを感じた。 こんな場所に一人というのは、心細い。 「ルルーシュ……あそこに女がいる」 大神がいなくなった途端、目の前の洞窟から声が聞こえてマリアは銃を構えたまま振り向いた。 その顔は戦慄にこわばっていたが、出てきたのは何ということのない男性二人だ。 片方はまだ年齢も若く見える。さくらと同じくらいだろう。日本人ではない。 片方はマリアと同じくらいの年代だろうか。こちらは日本人だ。もう片方の男性の前を歩いている。 「嫌だなあ、そんなに警戒しなくても何もしませんって」 少年が両手を挙げ、少し困ったように笑いながらマリアに言う。 よほどマリアの顔が怖かったと見える。思わず、守るべき相手に銃を構えてしまったことに罪悪感を感じながら、アリアは銃を下げて謝った。 「この洞窟の先には何もありませんでしたよ。行っても武器のようなものはありません」 「そ、そう……」 「そういえば自己紹介がまだでしたね。僕はルルーシュ・ランペルージ。彼は僕の付き人の剣流星。勿論、殺し合いに乗る意思はありません」 「私はマリア・タチバナです。銃は使い慣れているわ。あなたたちを保護することもできる」 「それは良かった! 正直言うと、心細かったんです。マリアさんの知り合いは他に、ここに連れてこられたりはしていませんか?」 「ええ、何人かいるわ。首輪を解除できるかもしれない人も、ね」 「本当ですか!?」 「ええ。李紅蘭という人よ。一応、参加している仲間の名前を言っておくわ。私とはぐれても、うまくその人たちと合流できれば、保護してくれるはずよ。大神一郎、神崎すみれ、桐島カンナ、真宮寺さくら……それから、まだ幼いけれどイリス・シャトーブリアン」 アイリスの名前は、保護してくれる人物として挙げるべきか悩んでいた。 二刀流、薙刀、空手、居合いなどの達人が参加している中、アイリスには霊力しかない。 仲間の回復をすることができるが、念のために言い方を変えて名前を出した。 この名前の群れを、メタルダーとルルーシュは一瞬で記憶する。 コンピュータが一瞬で物事を記憶するメタルダーも、その明晰な頭脳を持つルルーシュも、その程度の名前を覚えるのに難はなかった。 おそらく、マリアもだろう。 「僕が知っているのは、ロロ・ランペルージと流星だけです。ロロは僕の弟です」 なるべく扇やカレンの知り合いであることを悟られないように嘘をつく。 同じランペルージ姓であるロロに関しては嘘もつけないから情報を受け渡しただけで、ルルーシュに関する情報は嘘ばかりだ。 というのも、マリアは明らかに日本人ではない。日本人を付き人に使っているかのように装い、ブリタニア籍をアピールする。 黒の騎士団として名が知れてしまった扇との接点は今のうちに排除し、ゼロであることも悟られないようにするしかない。 それにしても、彼女も彼女で日本人との接点が強いようだ。苗字から察するに、片親が日本人なのだろう。李紅蘭は中国人の名前、シャトーブリアンという姓はおそらくフランス人。ほかは全員日本人だ。 ルルーシュは、日本と接点があり、銃が使え、首輪を解除できる知り合いがいるという、なかなか都合の良い女を得ることができたらしい。メタルダーのことと言い、物事がよい方向に進んでいる。 「なるほど。とりあえず、私についてきて。紅蘭たちを探すわ」 「ええ、僕も弟のことが心配です」 憎い相手のことだが、とりあえずは体裁を取り繕うために、ルルーシュはそう言っておいた。 【大神一郎@サクラ大戦】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-8 草原】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(大神)@サクラ大戦、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:何かあったらキネマトロンでマリアに連絡する。 ※キネマトロンには紅蘭のキネマトロン番号が登録されています。 【マリア・タチバナ@サクラ大戦】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】ネロの銃@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(紅蘭)@サクラ大戦 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:ルルーシュ、流星の保護。 3:何かあったらキネマトロンで大神に連絡する。 ※キネマトロンには大神のキネマトロン番号が登録されています。 ※ルルーシュから得た情報はロロが兄弟であることのみで、嘘ばっかりです。 ※ネロの銃は弾道が曲がっていますが、マリアは相手に命中させる角度を理解しています。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】パルセイバー(青)@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いからの脱出。 1:紅蘭なる人物を探す。 2:メタルダーとマリアを利用する。 3:邪魔な人間はうまく切り捨てる。 4:元の世界の知り合いとはなるべく会いたくない。 ※R2の中盤あたりからの参戦です。 ※メタルダーの構造について知りました。今は彼が何も知らないのを利用して手駒にしています。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 【剣流星@超人機メタルダー】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:C-7 メタルダー基地前】 【状態】健康 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考・状況】 基本行動方針:ルルーシュに従って行動する。 1:今はルルーシュに合わせて行動する。 ※第1話で起動する前からの参戦です。物事についてよく知りません。 ※ルルーシュが主だと思い込んでいます。 ※自省回路があるので、人殺しはできません。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 |001:[[。笑]]|投下順|003:[[ヒーロー最大の危機]]| |001:[[。笑]]|時系列順|003:[[ヒーロー最大の危機]]| |COLOR(aqua):初登場|大神一郎|062:[[打倒ビッグバン!それぞれの進むべき道]]| |COLOR(aqua):初登場|マリア・タチバナ|067:[[料理でハラショー ~ルルーシュ編~]]| |COLOR(aqua):初登場|ルルーシュ・ランペルージ|067:[[料理でハラショー ~ルルーシュ編~]]| |COLOR(aqua):初登場|剣流星|067:[[料理でハラショー ~ルルーシュ編~]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: