「DEAD OR ALIVE」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「DEAD OR ALIVE」(2011/09/25 (日) 01:25:41) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*DEAD OR ALIVE
----
「……二時間か」
オルタナティブ・ゼロが鏡を前にそびえる。
彼には二つ、変身道具があったから、片方の変身道具を使い果たしてももう一つの変身道具がある。
第一、生身での戦闘能力もただの人間には引けをとらないのが彼ことリュウガである。
幾つかの考察のもとに、リュウガはあらゆる情報を得ようとしていた。
開始から僅か十分で、リュウガはこの空間が異質であることを理解した。
なぜなら、リュウガの体が消えないということは、この世界はミラーワールドということになる。
だが、明らかに現実世界の人間と思われる人間たちも、この場では平然と生きている。
既に二人殺したが、本来ならば彼ら人間はもっと前に消滅しているはずなのだ。
ミラーワールドと現実世界の中間とも言える空間。──それが此処。
だから、普段はその粒子化を恐れて十分の戦闘を行うライダーたちも、ここでは無限に戦えると思っていた。
しかし、やはり戦闘時間は十分。ライダーバトルと形式は違い、粒子化していく体を見て自ら変身を解くのせなく、自動的に変身が解けた。
──それゆえ、リュウガもこれは力無き者へのハンデと睨んだ。
ビッグバンが愉快犯であるというのなら、ライダーたちの一方的な虐殺に終わるのを楽しむとは思えない。
力無きものが次々と殺されていき、後半で力あるものたちの戦いが繰り広げられるとして、それは単純すぎる。
殺し合いにしても、首輪や禁止エリア、支給品といった妙に複雑なシステムを施した人間が、そんな単純なゲームを望むはずがない。
誰が生き残るかわからないというのが楽しみだったのではないだろうか。
誰が生き残るかのギャンブルでもしているのか……?
再変身が可能かを調べるため、リュウガは実験という意味でオルタナティブのデッキでの変身をしていた。
リュウガの変身を解除してからの正確な時間は覚えていないが、この実験を思いついたときにはオルタナティブ・ゼロは変身を解除したばかりだ。
数分単位での狂いはあるかもしれないが、リュウガの再変身が可能となった時間はちょうど二時間であった。
それまでの間、積極的に戦闘に出ることもなく、ずっとここに居る。
やることはないが、何もしないことは別に苦痛ではない。彼は人間とは少し違うのだから。
(貴重な情報だが……もう少し色々探ってみるか)
と、リュウガが考えた時に、窓の外で女性が歩いているのが見えた。
その女性は武器を構えているように、慎重で常に周囲の様子を警戒しながら歩いているように見えた。
まるで警官や軍人のような恐れの無さである。普通の人間の女なら、怯え震えるのみだろう。
(なるほど、ちょうどいい……)
リュウガはその女性の拉致を考えた。
あの女性はこの制限の能力がどんなものなのかを試すのに丁度いい。
周囲の協力を得て調べたいことも多々あった。まあ、それもかなり強引なものなのだが。
★ ★ ★ ★ ★
西条凪は、自分が数秒前に通り過ぎた家のドアが開いたことに驚く。──かなりの警戒を意識しながら歩いていたが、そこに人がいたということだろう。
暗がりで、音もなく、ただ闇と静寂に満ちたその家。
警戒の対象外ともいえるほど、生気とはかけ離れた家。
だから、どこか油断していた。
咄嗟にそちらを向いて、胸元の手榴弾を握る。
その動作は、その相手には一瞬遅かった。
その相手とは、先ほどの怪人(シャンゼリオン)と同じ────人とはかけ離れた外形の怪物。
燦然と輝くシャンゼリオンとは大きく違い、蟻のような蟲を思わせる黒い装甲の者が、長剣を向けていた。
「クッ! ──」
形勢は明らかに不利だが、低く構えた姿勢の上にその長剣を翳された凪は逃げることもできない。。
そんな威圧が、思わず不利の意識を口に出してしまう。
素早く攻撃できるし、敵の狙いも受けにくい戦闘態勢だったが、一度敵に武器を向けられ、止まってしまうと再度動くには勇気が要る。
だが、敵がそこで剣を止めている事には何かしらの意味があると読み取った。
凪の力を必要としている……?
そう、止めを刺せばいいのに刺さない。そこには、何かしらの取引や条件を出すための意味があるように感じられた。
──────それが凪にとって有利な条件とは限らないが、おそらく、敵が出す条件は「凪の命」だろう。
命を助ける代わりに、何かをしろ……そういうことだ。
拒否権はない。
「殺すなら殺しなさい。殺さないなら、剣をどけなさい」
敵が条件を出す前に、こうして威圧をかけた。
こういう場合、変に怯えるのは逆効果だ。敵の暴力性を誘発することがある。
こうして死に対する恐怖の軽薄さを見せて、敵を萎えさせるのが最も効果的。
そんな凪の強気な態度に答えてか、敵の答えは単純だった。
「……良いだろう」
くぐもった男の声とともに剣をどけるが、そこに逃走の暇など与える様子はない。
凪も、敵が尚放つ異様な雰囲気に飲まれ、まともに動くことさえできなかった。
いや、この相手が条件を出してくるのは確かだと思ったから、その条件を聞こうとしたのだろう。
「だが、まずはこちらへ来てもらおう」
凪の考えていたとおり、すぐに相手が条件を言い出した。
男は人の姿はしていないが、現在の装備で倒せる相手とは思えないし、殺意はないと言っている。
信用はしないが、今は従うべきと考えた。
隙あらば、うまく敵の命を絶ちたいところだが──。
★ ★ ★ ★ ★
暗い部屋の中で、リュウガと凪は互いを見つめていた。
凪が驚いたのは、先ほどの怪人が怪物でなく、人間の姿であることだった。
茶色の長髪──服装を見ても、一見普通の若い男性のようだったが、目つきは怪しく、暗い印象を与える。
「……ここで何をする気?」
「実験だ。お前を使っての、な……」
「何? ──うっ!」
凪が問い返したとき、既に凪の体は後ろから首を絞められ、左腕を強い力で曲げられていた。
それはもう、息もできず、左腕は折れてしまいそうなほどの強い力で。
この男の言う「実験」とは何か──それに対する恐れもあり、不安が凪の体の中を通っていく。
勇敢な女戦士も、死への恐怖に圧迫されていた。だが、助けを呼ぼうにも首を締め付けられて何もいえなかった。
この乱暴な行動が、実験とやらも、決して穏やかなものでないことはわかったのである。
凪は、右手の上に何かを握らされたことも感じた。
それはリュウガが先ほど変身に使用した、「オルタナティブ・ゼロ」のカードデッキだった。
押さえつけられ、抵抗もできないまま、凪は鏡の前へと移動させられた。
この男が何をしようとしているかわからないが、相手の自由を奪って鏡の前にわざわざ移動させたこの男に、女性として本能的な恐怖を感じた。
そこでリュウガは凪の首を締め付ける右腕を離す。
ぶはっ、と息を吐き、またすぐに息を大きく吸った。──文句を言うよりも自分の呼吸の確保が最優先だ。
鏡の向こうに見える自分の首は真っ赤になっている。どれだけ強い力で握っていたというのか。普通の女性ならば死んでいる、あるいは失神しているだろう。
「……これを鏡に翳して、変身しろ」
そんな命令に、凪は戸惑いながらも、鏡の向こうの男の、険しい目つきに圧倒され、それを鏡に翳した。
変身、しろ、?
意味はわからないが、自らの腰にベルトが巻かれたことで、凪はその言葉の意味など考えもしなくなった。
何故、突然こんなものが現われたのか……?
(なるほど……別の参加者が変身することはできるということか)
リュウガにとって二時間の制限がかかっているデッキも、他の参加者ならば使用できる。
おそらく、逆もまた然り。他人が使っていたデッキを、リュウガが使うこともできるということだ。
ならば他人からデッキを奪うことへのメリットもより大きくなるだろう。──誰かが変身していても、奪った時点で使えるとやはり便利だ。
「もういい……それで充分だ」
「──いや、やらせてもらう!」
凪は応とは答えない。
これは好機と見た。リュウガの手を離れ、尚且つ「変身」できる。
おそらく、このベルトは、先ほどこの男が異形をしていたとき、腰に撒いていたものとまるで同じだ。
そして、この紋章は相手が腹部につけていたものと同じである。
変身を完了すれば、あの姿になる。────人の姿でなくなることは、惜しいが、戻ることもできるらしい。
ならば、今はあの装甲で危機を脱すべきだと思った。
「……変身!」
思ったとおり、凪の体はオルタナティブ・ゼロのものへと変身する。
──その姿になったからといって、どうということはない。
なぜなら、彼女はこの姿になったことでパワーが格段にアップしていることを、まだ理解していないからだ。
ただ、防弾や対攻撃を目的としての変身である。
そして、その受けの体制は、あくまで逃走のために使う。
リュウガに背中を向けても、不思議な安心感があった。
すぐに目の前のドアへと走る。──あれを越えれば、自分はこの男の下へと走れるのだと。
「逃げるなっ!」
リュウガは一度、自らのデッキを掴んだ。
──だが、鏡を一度見て冷静さを取り戻す。
よく考えれば、リュウガの能力制限をここで使ってしまうのは勿体無い。
オルタナティブ・ゼロのデッキも惜しいが、あのデッキには「アクセルベント」というものがあった。
鬼ごっこで勝てる相手か……?
どちらにせよ、敵のデッキを奪えば変身できるということもわかったのだ。
オルタナティブ・ゼロ以外のデッキを得ればいいだけの話。
制限についてもよくわかった今、オルタナティブ・ゼロのデッキは必要ない。
あれを持っていても、すこしだけ有利にものを運べるようになる程度だ。
(今は制限中じゃない。リュウガのデッキだけあれば充分だ……)
だが、あの女──次に会った時は殺す。
リュウガは、凪が開けっ放しにしたドアを潜りぬけ、また殺し合いを再開しようと歩き出した。
★ ★ ★ ★ ★
「これが私を変身させた……?」
カードデッキを見て、凪は驚愕する。
その余りの破天荒さ。このバトルロワイアルの恐ろしさ。
まさか、人を変身させる道具があるとは。
あれを装着しているあぢあは走力も格段に上がり、あれだけの距離を移動したのに疲労は小さい。
「……あの男の力を奪うことができた……これなら、次に会った時は勝てる!」
あれだけの危険人物を生かしておくわけにはいかない。
ナイトレイダーでもないのに、こんな装備を持っているのも異常だ。
驚異的な腕力を持っている危険人物を倒す力を得た喜びとともに、凪は歩き出した。
【1日目 早朝/D-4 街】
【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【状態】疲労(小)、身体の各所にダメージ(特に脚部)、オルタナティブ・ゼロに二時間変身不可
【装備】リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式×2、チェスのセット一式@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0~2(カンナ)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:真司の身体を乗っ取るのが最優先。
2:目に付く参加者は殺害する。
3:変身能力を持つ者の殺害とデッキの奪取。
3:凪(名前は知らない)の殺害。
※死亡後からの参戦です。
※変身の制限についておよそ完全に把握しましたが、首輪によるものだとは思っていません。
【西条凪@ウルトラマンネクサス】
【状態】首と左腕に強い力で締め付けられた痕、疲労(小)
オルタナティブ・ゼロに二時間変身不可、能力を得たことへのかすかな喜び
【装備】手榴弾(3/5)@超光戦士シャンゼリオン、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式、アキトのラーメンのレシピ@機動戦艦ナデシコ
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いを潰す。
1:石堀隊員との合流。
2:リュウガ(名前は知らない)の殺害。容赦しない。
3:殺し合いに乗るものには容赦しない。
4:人外の存在を相手には容赦しない。
※参戦時期は第1話開始以前。石堀以外の参戦キャラの名前を知りません。
|083:[[剣士の片思い]]|投下順||
|083:[[剣士の片思い]]|時系列順||
|050:[[漆黒の怪人]]|リュウガ||
|003:[[ヒーロー最大の危機]]|西条凪||
*DEAD OR ALIVE
----
「……二時間か」
オルタナティブ・ゼロが鏡を前にそびえる。
彼には二つ、変身道具があったから、片方の変身道具を使い果たしてももう一つの変身道具がある。
第一、生身での戦闘能力もただの人間には引けをとらないのが彼ことリュウガである。
幾つかの考察のもとに、リュウガはあらゆる情報を得ようとしていた。
開始から僅か十分で、リュウガはこの空間が異質であることを理解した。
なぜなら、リュウガの体が消えないということは、この世界はミラーワールドということになる。
だが、明らかに現実世界の人間と思われる人間たちも、この場では平然と生きている。
既に二人殺したが、本来ならば彼ら人間はもっと前に消滅しているはずなのだ。
ミラーワールドと現実世界の中間とも言える空間。──それが此処。
だから、普段はその粒子化を恐れて十分の戦闘を行うライダーたちも、ここでは無限に戦えると思っていた。
しかし、やはり戦闘時間は十分。ライダーバトルと形式は違い、粒子化していく体を見て自ら変身を解くのせなく、自動的に変身が解けた。
──それゆえ、リュウガもこれは力無き者へのハンデと睨んだ。
ビッグバンが愉快犯であるというのなら、ライダーたちの一方的な虐殺に終わるのを楽しむとは思えない。
力無きものが次々と殺されていき、後半で力あるものたちの戦いが繰り広げられるとして、それは単純すぎる。
殺し合いにしても、首輪や禁止エリア、支給品といった妙に複雑なシステムを施した人間が、そんな単純なゲームを望むはずがない。
誰が生き残るかわからないというのが楽しみだったのではないだろうか。
誰が生き残るかのギャンブルでもしているのか……?
再変身が可能かを調べるため、リュウガは実験という意味でオルタナティブのデッキでの変身をしていた。
リュウガの変身を解除してからの正確な時間は覚えていないが、この実験を思いついたときにはオルタナティブ・ゼロは変身を解除したばかりだ。
数分単位での狂いはあるかもしれないが、リュウガの再変身が可能となった時間はちょうど二時間であった。
それまでの間、積極的に戦闘に出ることもなく、ずっとここに居る。
やることはないが、何もしないことは別に苦痛ではない。彼は人間とは少し違うのだから。
(貴重な情報だが……もう少し色々探ってみるか)
と、リュウガが考えた時に、窓の外で女性が歩いているのが見えた。
その女性は武器を構えているように、慎重で常に周囲の様子を警戒しながら歩いているように見えた。
まるで警官や軍人のような恐れの無さである。普通の人間の女なら、怯え震えるのみだろう。
(なるほど、ちょうどいい……)
リュウガはその女性の拉致を考えた。
あの女性はこの制限の能力がどんなものなのかを試すのに丁度いい。
周囲の協力を得て調べたいことも多々あった。まあ、それもかなり強引なものなのだが。
★ ★ ★ ★ ★
西条凪は、自分が数秒前に通り過ぎた家のドアが開いたことに驚く。──かなりの警戒を意識しながら歩いていたが、そこに人がいたということだろう。
暗がりで、音もなく、ただ闇と静寂に満ちたその家。
警戒の対象外ともいえるほど、生気とはかけ離れた家。
だから、どこか油断していた。
咄嗟にそちらを向いて、胸元の手榴弾を握る。
その動作は、その相手には一瞬遅かった。
その相手とは、先ほどの怪人(シャンゼリオン)と同じ────人とはかけ離れた外形の怪物。
燦然と輝くシャンゼリオンとは大きく違い、蟻のような蟲を思わせる黒い装甲の者が、長剣を向けていた。
「クッ! ──」
形勢は明らかに不利だが、低く構えた姿勢の上にその長剣を翳された凪は逃げることもできない。。
そんな威圧が、思わず不利の意識を口に出してしまう。
素早く攻撃できるし、敵の狙いも受けにくい戦闘態勢だったが、一度敵に武器を向けられ、止まってしまうと再度動くには勇気が要る。
だが、敵がそこで剣を止めている事には何かしらの意味があると読み取った。
凪の力を必要としている……?
そう、止めを刺せばいいのに刺さない。そこには、何かしらの取引や条件を出すための意味があるように感じられた。
──────それが凪にとって有利な条件とは限らないが、おそらく、敵が出す条件は「凪の命」だろう。
命を助ける代わりに、何かをしろ……そういうことだ。
拒否権はない。
「殺すなら殺しなさい。殺さないなら、剣をどけなさい」
敵が条件を出す前に、こうして威圧をかけた。
こういう場合、変に怯えるのは逆効果だ。敵の暴力性を誘発することがある。
こうして死に対する恐怖の軽薄さを見せて、敵を萎えさせるのが最も効果的。
そんな凪の強気な態度に答えてか、敵の答えは単純だった。
「……良いだろう」
くぐもった男の声とともに剣をどけるが、そこに逃走の暇など与える様子はない。
凪も、敵が尚放つ異様な雰囲気に飲まれ、まともに動くことさえできなかった。
いや、この相手が条件を出してくるのは確かだと思ったから、その条件を聞こうとしたのだろう。
「だが、まずはこちらへ来てもらおう」
凪の考えていたとおり、すぐに相手が条件を言い出した。
男は人の姿はしていないが、現在の装備で倒せる相手とは思えないし、殺意はないと言っている。
信用はしないが、今は従うべきと考えた。
隙あらば、うまく敵の命を絶ちたいところだが──。
★ ★ ★ ★ ★
暗い部屋の中で、リュウガと凪は互いを見つめていた。
凪が驚いたのは、先ほどの怪人が怪物でなく、人間の姿であることだった。
茶色の長髪──服装を見ても、一見普通の若い男性のようだったが、目つきは怪しく、暗い印象を与える。
「……ここで何をする気?」
「実験だ。お前を使っての、な……」
「何? ──うっ!」
凪が問い返したとき、既に凪の体は後ろから首を絞められ、左腕を強い力で曲げられていた。
それはもう、息もできず、左腕は折れてしまいそうなほどの強い力で。
この男の言う「実験」とは何か──それに対する恐れもあり、不安が凪の体の中を通っていく。
勇敢な女戦士も、死への恐怖に圧迫されていた。だが、助けを呼ぼうにも首を締め付けられて何もいえなかった。
この乱暴な行動が、実験とやらも、決して穏やかなものでないことはわかったのである。
凪は、右手の上に何かを握らされたことも感じた。
それはリュウガが先ほど変身に使用した、「オルタナティブ・ゼロ」のカードデッキだった。
押さえつけられ、抵抗もできないまま、凪は鏡の前へと移動させられた。
この男が何をしようとしているかわからないが、相手の自由を奪って鏡の前にわざわざ移動させたこの男に、女性として本能的な恐怖を感じた。
そこでリュウガは凪の首を締め付ける右腕を離す。
ぶはっ、と息を吐き、またすぐに息を大きく吸った。──文句を言うよりも自分の呼吸の確保が最優先だ。
鏡の向こうに見える自分の首は真っ赤になっている。どれだけ強い力で握っていたというのか。普通の女性ならば死んでいる、あるいは失神しているだろう。
「……これを鏡に翳して、変身しろ」
そんな命令に、凪は戸惑いながらも、鏡の向こうの男の、険しい目つきに圧倒され、それを鏡に翳した。
変身、しろ、?
意味はわからないが、自らの腰にベルトが巻かれたことで、凪はその言葉の意味など考えもしなくなった。
何故、突然こんなものが現われたのか……?
(なるほど……別の参加者が変身することはできるということか)
リュウガにとって二時間の制限がかかっているデッキも、他の参加者ならば使用できる。
おそらく、逆もまた然り。他人が使っていたデッキを、リュウガが使うこともできるということだ。
ならば他人からデッキを奪うことへのメリットもより大きくなるだろう。──誰かが変身していても、奪った時点で使えるとやはり便利だ。
「もういい……それで充分だ」
「──いや、やらせてもらう!」
凪は応とは答えない。
これは好機と見た。リュウガの手を離れ、尚且つ「変身」できる。
おそらく、このベルトは、先ほどこの男が異形をしていたとき、腰に撒いていたものとまるで同じだ。
そして、この紋章は相手が腹部につけていたものと同じである。
変身を完了すれば、あの姿になる。────人の姿でなくなることは、惜しいが、戻ることもできるらしい。
ならば、今はあの装甲で危機を脱すべきだと思った。
「……変身!」
思ったとおり、凪の体はオルタナティブ・ゼロのものへと変身する。
──その姿になったからといって、どうということはない。
なぜなら、彼女はこの姿になったことでパワーが格段にアップしていることを、まだ理解していないからだ。
ただ、防弾や対攻撃を目的としての変身である。
そして、その受けの体制は、あくまで逃走のために使う。
リュウガに背中を向けても、不思議な安心感があった。
すぐに目の前のドアへと走る。──あれを越えれば、自分はこの男の下へと走れるのだと。
「逃げるなっ!」
リュウガは一度、自らのデッキを掴んだ。
──だが、鏡を一度見て冷静さを取り戻す。
よく考えれば、リュウガの能力制限をここで使ってしまうのは勿体無い。
オルタナティブ・ゼロのデッキも惜しいが、あのデッキには「アクセルベント」というものがあった。
鬼ごっこで勝てる相手か……?
どちらにせよ、敵のデッキを奪えば変身できるということもわかったのだ。
オルタナティブ・ゼロ以外のデッキを得ればいいだけの話。
制限についてもよくわかった今、オルタナティブ・ゼロのデッキは必要ない。
あれを持っていても、すこしだけ有利にものを運べるようになる程度だ。
(今は制限中じゃない。リュウガのデッキだけあれば充分だ……)
だが、あの女──次に会った時は殺す。
リュウガは、凪が開けっ放しにしたドアを潜りぬけ、また殺し合いを再開しようと歩き出した。
★ ★ ★ ★ ★
「これが私を変身させた……?」
カードデッキを見て、凪は驚愕する。
その余りの破天荒さ。このバトルロワイアルの恐ろしさ。
まさか、人を変身させる道具があるとは。
あれを装着しているあぢあは走力も格段に上がり、あれだけの距離を移動したのに疲労は小さい。
「……あの男の力を奪うことができた……これなら、次に会った時は勝てる!」
あれだけの危険人物を生かしておくわけにはいかない。
ナイトレイダーでもないのに、こんな装備を持っているのも異常だ。
驚異的な腕力を持っている危険人物を倒す力を得た喜びとともに、凪は歩き出した。
【1日目 早朝/D-4 街】
【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【状態】疲労(小)、身体の各所にダメージ(特に脚部)、オルタナティブ・ゼロに二時間変身不可
【装備】リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式×2、チェスのセット一式@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0~2(カンナ)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:真司の身体を乗っ取るのが最優先。
2:目に付く参加者は殺害する。
3:変身能力を持つ者の殺害とデッキの奪取。
3:凪(名前は知らない)の殺害。
※死亡後からの参戦です。
※変身の制限についておよそ完全に把握しましたが、首輪によるものだとは思っていません。
【西条凪@ウルトラマンネクサス】
【状態】首と左腕に強い力で締め付けられた痕、疲労(小)
オルタナティブ・ゼロに二時間変身不可、能力を得たことへのかすかな喜び
【装備】手榴弾(3/5)@超光戦士シャンゼリオン、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】基本支給品一式、アキトのラーメンのレシピ@機動戦艦ナデシコ
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いを潰す。
1:石堀隊員との合流。
2:リュウガ(名前は知らない)の殺害。容赦しない。
3:殺し合いに乗るものには容赦しない。
4:人外の存在を相手には容赦しない。
※参戦時期は第1話開始以前。石堀以外の参戦キャラの名前を知りません。
|083:[[剣士の片思い]]|投下順||
|083:[[剣士の片思い]]|時系列順||
|050:[[漆黒の怪人]]|リュウガ||
|003:[[ヒーロー最大の危機]]|西条凪||