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料理でハラショー ~ルルーシュ編~」(2011/09/09 (金) 22:46:56) の最新版変更点

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*料理でハラショー ~ルルーシュ編~ ----  この殺し合いに連れてこられたことによって剣流星の運命は大きく変わってしまった。  今、彼はネロス帝国についても自身の出生についても知ることはなく、ルルーシュ・ランペルージによって作られたという偽りの記憶を植えつけられている。  殺し合いをしろ──それが最初に聞いた言葉。  しかし、己を作り上げたルルーシュは命令するまで殺すな、と言う。  彼が流星にした命令は三つ。  一つ。ルルーシュの問いかけには「はい」とだけ答えよ。  二つ。聞かれたことのみを答えること。それ以外はルルーシュが許さない限り喋ってはならない。  三つ。ルルーシュに危害を加えるものは全力で蹴散らせ。ただし、殺人はするな。  どちらにせよ自省回路を取り付けられたメタルダーに、殺害を命ずることはできない。  ただし、相手が襲撃してくる場合にはどうにかして撃退してもらわねばならない。そのためにルルーシュはメタルダーを傘下に置いたのだから。 ★ ★ ★ ★ ★  マリアが最も助かったと思ったことは、他国籍ゆえにルルーシュと流星がマリアたち帝国"歌劇団"を知らなかったことだろう。万が一にでも彼らが男装の麗人の名を知っていたら、大きな信用問題になる。何せ、いきなり銃を突きつけてしまったのだから。  ルルーシュは時折饒舌、時折寡黙といった感じで、性格面ではそこいらを歩く普通の学生にしか見えない。いや、実際そういう人間なのだろう。だからこそマリアたち帝国"華撃団"が彼のような一般市民を保護しなければならない。  一方で、剣流星なる付き人は寡黙で、一言も喋ることはない。話しかけても応じる様子がなく、常にルルーシュの後ろを守るように歩いている。──ロボットのような男だ。  付き人を持つという時点で、おそらくはルルーシュはどこかの偉人の息子か何か──つまり言ってみれば、この流星はSP。まあ、これだけ厳重にならなければ護衛稼業も成り立たないのだろう。 (かつてのレニがそのまま大人になったような感じね)  レニ・ミルヒシュトラーセ──帝国華撃団の仲間にして、元々霊能力を持った兵士を作り出す実験のために感情を持たなかった少年。大神隊長のおかげで心を開いていくことができた少年である。  流星の寡黙さと、どこか能力に長けたような風貌もまた、レニのそれに似ている。  だからこそ、気になったのだろうか。彼も大神隊長と会うことができれば、変わることができるかもしれない。  いや、変えてしまってはいけないのだろうか。ルルーシュがこれから生きていく為には。彼は冷酷な付き人でい続けなければならないのだろう。ロシア革命の闘士だったマリアにもわからないでもない。  まあ、今は協力関係にあるとはいえ他人である。あまり深い関わりを持つのは良くないのではないだろうか。  ルルーシュ・ランペルージ、ロロ・ランペルージ──マリアの推測では偉人の子息。  剣流星──マリアの推測ではその付き人にしてSP。  マリアの推測にはおよそ間違いはなかった。現状で得られるだけの情報は得ている。  基本的にはカンが鋭く、疑り深さも持っているのがマリアだ。状況から疑える限りのことを疑い、最大限に情報を引き出す……。  そして、そのために彼女が向かうことにしたのが街エリアであった。  街のエリアならば、情報量は増えるし、人も集まりやすいと推測したのだ。  こういう用意されたゲームに、森林戦だけでなく市街戦があったのは意外だ。まあ、マリアはそちらのほうが得意なのだ。  それに、これはまだ戦闘じゃない。 (この街……この時代の日本とは思えないほど発展している)  太正時代という彼女がいた時間軸では、到底こんな高いビルなどはない。  日本国外──巴里や紐育の街並みはこんな感じだろうが、日本で最も発展している帝都東京よりも遥かに進歩した様子を見せている。  単純に金を使ってここまでしたとも思えない。  まあ、紐育をモチーフにしている場所だと言われたら、それで納得してしまうこともできるのだが。 「はぁ…………はぁ…………すみません、マリアさん。少し休んでもいいですか?」  街まで約二時間歩きっぱなし。ルルーシュのか細い体は、へし折れそうなくらいに曲がり、片腕は心臓を押さえるために身体の前へ、汗で濡れた体はふき取ることもできずに、顔は息を切らしている。  流星は汗一つ流さずに凛としており、疲れた様子もまるでない。ここまで歩いてきたら、マリアといえど多少は疲れているのに、彼は会ったときとまるで表情が変わらないのだ。  また随分と屈強な男と、軟弱な男が同時に現われたものだ。皇族や貴族ならば、もっと身体を鍛えておくべきだと思うのだが……まあ、生まれつきの向き不向きというのもあるだろう。別に志願してここに来たわけでもないし、偉人の子息でも一般人だ。体力の有無は問わないことにしよう。  第一、もう片方がマリアに負けず劣らず屈強なためにこの場で叱ることもできない。 「いいでしょう。今はゆっくり休んでおくことね」 「はぁ…………ありがとうございます」  ルルーシュへの心象は下がったものの、休憩に近くのロシア料理のレストランに寄る。  故郷ロシアへの思いもあり、無意識にその場所を選んだ。最も近く、休みやすい場所であるのも一因だ。  ルルーシュ、流星とマリアに続いてロシア料理店に入っていく。当然ながら中はガラ開きだ。 「……好きなテーブルに座って。私はボルシチを作ってくるわ。長いこと歩いてお腹も空いたでしょう?」  マリアの存在はまるで母のようだったが、ともかくルルーシュは好意に甘えようとする。  ……が、ルルーシュはその時に気付いた。流星はまず、食べ物を食べられない体である可能性が高いのだ。  ガウェインは飯を食うか? 否。  ランスロットは飯を食うか? 否。  マリアがボルシチを作り、運んでくるのまずい。うまい具合に流星について話を反らさなければ。 「すみません。流星は熱いものが食べられないんです」 「……そう。じゃあ、少し冷ましてから食べるといいわね」  と、厨房からやって来たマリアは既にフリフリのエプロンを着ている。  その上右手に包丁。左手に人参。──既にマリアは料理を開始する準備が整っていた。  確かにお腹も空いているが、流星について色々バレてしまうのも困り者だ。  仕方がない、とルルーシュは席を立つ。まだ少し足に疲れが残っているが、動けないほどではない。  料理が食べられなければ……ついうっかりのミスで料理を食べられない状態にしてしまえばいいのだ。 「マリアさん、僕も手伝いますよ」 「あら、そう? じゃあ何を手伝ってもらおうかしら……」  マリアは少し悩んだ後に自らの持っていた包丁と人参をまな板の上に乗っけて渡した。  人参を均等に切る……これくらいならできるだろう、という意図だ。  この程度の体力の少年に、どのくらいのことができるのだろうか。まあ、案外料理ができる家庭的な人間なのかもしれないが……。 「美味しい料理を作りましょうね」 「まず、人参を切ります」  ルルーシュはまな板を賞状を渡されるように受け取り、人参を切り始める。  この段階ではまだ、ミスが料理を食うか食わないかに大きく関わることはないだろう。人参の大きさが揃っていなくても、おそらくは飯を食う。  だからこそ、こういった作業はあえて完璧にこなしていかなければならないのだ。下手糞な切り方をしても、できないなりに頑張ったんだな……と思われて食う方向に持っていかれても困る。 「次は、調味料で味付けです」  そう、間違えるならここだ。マリアに言われた調味料を間違えればいい。  ともかく、何らかの事故で調味料の量を間違えておけば……。  ルルーシュの記憶力ならば全部覚え、全部間違えることだってできる。ここで料理の味を決定的に不味いものに変えてしまえば……。 「……今回は、私が入れておくわ」  隣で別の作業をしていたマリアも、調味料の種類が多すぎるうえに、普段料理をまかせっきりと思われるルルーシュが不安だったのか、調味料を全部適量入れ始めた。  結局ルルーシュが調味料を間違えて入れる隙などなく、ボルシチは完成に近付いている。 「最後は、いよいよ煮込みです」  煮込み……ここで、なんとか不味い料理に変えてしまう要素を作りださなければならない。  黒漕げにするなり、生煮えにするなりと、できることはいくらだってある。  いや、だが極端なことをすると、わざと黒漕げや生煮えにしているとバレる可能性も……。  ある意味一番やりにくいところだ。「ついうっかり」ではあまり出来ない。それに、生煮えならばまた温めることもできるし、黒漕げになるまでやっていたらさすがにバレる。  うまい具合に、「ついうっかり」に見せる方法はないだろうか……。 「手が開いたのでやっておくわ。食器を用意しておいてもらえると助かるわ」  だが、結局この役もマリアに取られてしまうのであった。  そのままルルーシュは適当な食器、適当な飲み物を持っていく。流星は言われた通り、ただ黙って座っている。  問題は、彼がこれらを喉に通せるか……。腹をくくるか。今、食うなと命令しても不自然。食えないことがわかっても問題……。  一体、どうすれば流星がロボットだとバレないのか。 「……ハラショー!」  ルルーシュは完成品のボルシチをそう褒めた。隣にはピロシキも用意されている。  素直に感嘆する。自分は人参を切っただけだが、マリアの作ったボルシチは確かに上手かった。  ──そして、ルルーシュの不安など他所に、流星は平然と皿の上のボルシチを食べ続けている。  ……まさか、動作不良を起こしたりなどしないだろうな。 「そう言ってもらえると嬉しいわ」 「気付けばもう朝食の時間ですね。こんなに美味しい料理で一日が始まると思うとかなり良い気分ですよ」  自分の苦労は何だったのか、とルルーシュは心の中で肩を落とした。  長時間、厨房でボルシチを作り続けるマリアを眺め、結果としてルルーシュは人参しか切っていない。  もう時刻は五時を過ぎていた。  いまやそれだけの時間を彼らと過ごしていたのか……というのは驚きよりも徒労感だった。  マリアには緊張するし、流星はいつ余計なことを言うのかもわからずヒヤヒヤする。その挙句に、このボルシチ騒動だ。  まあ、結果的に何も悪いことはなかった。とりあえず、長い間生き残れたことに感動でもするか。脱出に関して進展がないのは腹立たしいが。  流星は、初めて口にした「料理」というものに少なからずの感動を得る。  食物連鎖の果てに自分に食された料理に、生命の神秘を感じたのだ。  野菜だけでなく、肉も多く味として残っている。元は生物だったのに、今は死んで人間の糧となっている。  だが、その命のはかないことと、生きることの厳しさ・気高さを学んだ。  メタルダーはこのとき食べた愛情篭もったボルシチにより、生と死を深く学んだのである。 【1日目 早朝/E-7 街・ロシア料理店】 【マリア・タチバナ@サクラ大戦】 【状態】健康、満腹感 【装備】ネロの銃@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(紅蘭)@サクラ大戦 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:ルルーシュ、流星の保護。 3:何かあったらキネマトロンで大神に連絡する。 ※キネマトロンには大神のキネマトロン番号が登録されています。 ※ルルーシュから得た情報はロロが兄弟であることのみで、嘘ばっかりです。 ※ネロの銃は弾道が曲がっていますが、マリアは相手に命中させる角度を理解しています。 ※ルルーシュとロロはどこかの偉人の子息で、流星はそのSPである可能性が高いと思っています。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【状態】疲労(小)、満腹感 【装備】パルセイバー(青)@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いからの脱出。 1:紅蘭なる人物を探す。 2:メタルダーとマリアを利用する。 3:邪魔な人間はうまく切り捨てる。 4:元の世界の知り合いとはなるべく会いたくない。 ※R2の中盤あたりからの参戦です。 ※メタルダーの構造について知りました。今は彼が何も知らないのを利用して手駒にしています。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 【剣流星@超人機メタルダー】 【状態】健康、生命への感動 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考・状況】 基本行動方針:ルルーシュに従って行動する。 1:今はルルーシュに合わせて行動する。 2:ボルシチの味に感動。食物連鎖や生命の儚さ、生きることの厳しさを痛感。 ※第1話で起動する前からの参戦です。物事についてよく知りません。 ※ルルーシュが主だと思い込んでいます。 ※自省回路があるので、人殺しはできません。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 ※生命の概念についてなんとなく知りました。 【ルルーシュの基本命令】 ・ルルーシュの質問には「はい」とだけ答える。 ・それ以外ではルルーシュが許したときのみ喋っていい。余計なことは喋らず、聞かれたことのみを答える。 ・ルルーシュに危害を加えるものがいたら全力で蹴散らす。 |066:[[闇のゲーマー]]|投下順|068:[[ギガロの脅威/KとYの気づかぬ再会]]| |061:[[能力を縛る輪]]|時系列順|| |002:[[皇帝の手駒]]|マリア・タチバナ|| |002:[[皇帝の手駒]]|ルルーシュ・ランペルージ|| |002:[[皇帝の手駒]]|剣流星||
*料理でハラショー ~ルルーシュ編~ ----  この殺し合いに連れてこられたことによって剣流星の運命は大きく変わってしまった。  今、彼はネロス帝国についても自身の出生についても知ることはなく、ルルーシュ・ランペルージによって作られたという偽りの記憶を植えつけられている。  殺し合いをしろ──それが最初に聞いた言葉。  しかし、己を作り上げたルルーシュは命令するまで殺すな、と言う。  彼が流星にした命令は三つ。  一つ。ルルーシュの問いかけには「はい」とだけ答えよ。  二つ。聞かれたことのみを答えること。それ以外はルルーシュが許さない限り喋ってはならない。  三つ。ルルーシュに危害を加えるものは全力で蹴散らせ。ただし、殺人はするな。  どちらにせよ自省回路を取り付けられたメタルダーに、殺害を命ずることはできない。  ただし、相手が襲撃してくる場合にはどうにかして撃退してもらわねばならない。そのためにルルーシュはメタルダーを傘下に置いたのだから。 ★ ★ ★ ★ ★  マリアが最も助かったと思ったことは、他国籍ゆえにルルーシュと流星がマリアたち帝国"歌劇団"を知らなかったことだろう。万が一にでも彼らが男装の麗人の名を知っていたら、大きな信用問題になる。何せ、いきなり銃を突きつけてしまったのだから。  ルルーシュは時折饒舌、時折寡黙といった感じで、性格面ではそこいらを歩く普通の学生にしか見えない。いや、実際そういう人間なのだろう。だからこそマリアたち帝国"華撃団"が彼のような一般市民を保護しなければならない。  一方で、剣流星なる付き人は寡黙で、一言も喋ることはない。話しかけても応じる様子がなく、常にルルーシュの後ろを守るように歩いている。──ロボットのような男だ。  付き人を持つという時点で、おそらくはルルーシュはどこかの偉人の息子か何か──つまり言ってみれば、この流星はSP。まあ、これだけ厳重にならなければ護衛稼業も成り立たないのだろう。 (かつてのレニがそのまま大人になったような感じね)  レニ・ミルヒシュトラーセ──帝国華撃団の仲間にして、元々霊能力を持った兵士を作り出す実験のために感情を持たなかった少年。大神隊長のおかげで心を開いていくことができた少年である。  流星の寡黙さと、どこか能力に長けたような風貌もまた、レニのそれに似ている。  だからこそ、気になったのだろうか。彼も大神隊長と会うことができれば、変わることができるかもしれない。  いや、変えてしまってはいけないのだろうか。ルルーシュがこれから生きていく為には。彼は冷酷な付き人でい続けなければならないのだろう。ロシア革命の闘士だったマリアにもわからないでもない。  まあ、今は協力関係にあるとはいえ他人である。あまり深い関わりを持つのは良くないのではないだろうか。  ルルーシュ・ランペルージ、ロロ・ランペルージ──マリアの推測では偉人の子息。  剣流星──マリアの推測ではその付き人にしてSP。  マリアの推測にはおよそ間違いはなかった。現状で得られるだけの情報は得ている。  基本的にはカンが鋭く、疑り深さも持っているのがマリアだ。状況から疑える限りのことを疑い、最大限に情報を引き出す……。  そして、そのために彼女が向かうことにしたのが街エリアであった。  街のエリアならば、情報量は増えるし、人も集まりやすいと推測したのだ。  こういう用意されたゲームに、森林戦だけでなく市街戦があったのは意外だ。まあ、マリアはそちらのほうが得意なのだ。  それに、これはまだ戦闘じゃない。 (この街……この時代の日本とは思えないほど発展している)  太正時代という彼女がいた時間軸では、到底こんな高いビルなどはない。  日本国外──巴里や紐育の街並みはこんな感じだろうが、日本で最も発展している帝都東京よりも遥かに進歩した様子を見せている。  単純に金を使ってここまでしたとも思えない。  まあ、紐育をモチーフにしている場所だと言われたら、それで納得してしまうこともできるのだが。 「はぁ…………はぁ…………すみません、マリアさん。少し休んでもいいですか?」  街まで約二時間歩きっぱなし。ルルーシュのか細い体は、へし折れそうなくらいに曲がり、片腕は心臓を押さえるために身体の前へ、汗で濡れた体はふき取ることもできずに、顔は息を切らしている。  流星は汗一つ流さずに凛としており、疲れた様子もまるでない。ここまで歩いてきたら、マリアといえど多少は疲れているのに、彼は会ったときとまるで表情が変わらないのだ。  また随分と屈強な男と、軟弱な男が同時に現われたものだ。皇族や貴族ならば、もっと身体を鍛えておくべきだと思うのだが……まあ、生まれつきの向き不向きというのもあるだろう。別に志願してここに来たわけでもないし、偉人の子息でも一般人だ。体力の有無は問わないことにしよう。  第一、もう片方がマリアに負けず劣らず屈強なためにこの場で叱ることもできない。 「いいでしょう。今はゆっくり休んでおくことね」 「はぁ…………ありがとうございます」  ルルーシュへの心象は下がったものの、休憩に近くのロシア料理のレストランに寄る。  故郷ロシアへの思いもあり、無意識にその場所を選んだ。最も近く、休みやすい場所であるのも一因だ。  ルルーシュ、流星とマリアに続いてロシア料理店に入っていく。当然ながら中はガラ開きだ。 「……好きなテーブルに座って。私はボルシチを作ってくるわ。長いこと歩いてお腹も空いたでしょう?」  マリアの存在はまるで母のようだったが、ともかくルルーシュは好意に甘えようとする。  ……が、ルルーシュはその時に気付いた。流星はまず、食べ物を食べられない体である可能性が高いのだ。  ガウェインは飯を食うか? 否。  ランスロットは飯を食うか? 否。  マリアがボルシチを作り、運んでくるのまずい。うまい具合に流星について話を反らさなければ。 「すみません。流星は熱いものが食べられないんです」 「……そう。じゃあ、少し冷ましてから食べるといいわね」  と、厨房からやって来たマリアは既にフリフリのエプロンを着ている。  その上右手に包丁。左手に人参。──既にマリアは料理を開始する準備が整っていた。  確かにお腹も空いているが、流星について色々バレてしまうのも困り者だ。  仕方がない、とルルーシュは席を立つ。まだ少し足に疲れが残っているが、動けないほどではない。  料理が食べられなければ……ついうっかりのミスで料理を食べられない状態にしてしまえばいいのだ。 「マリアさん、僕も手伝いますよ」 「あら、そう? じゃあ何を手伝ってもらおうかしら……」  マリアは少し悩んだ後に自らの持っていた包丁と人参をまな板の上に乗っけて渡した。  人参を均等に切る……これくらいならできるだろう、という意図だ。  この程度の体力の少年に、どのくらいのことができるのだろうか。まあ、案外料理ができる家庭的な人間なのかもしれないが……。 「美味しい料理を作りましょうね」 「まず、人参を切ります」  ルルーシュはまな板を賞状を渡されるように受け取り、人参を切り始める。  この段階ではまだ、ミスが料理を食うか食わないかに大きく関わることはないだろう。人参の大きさが揃っていなくても、おそらくは飯を食う。  だからこそ、こういった作業はあえて完璧にこなしていかなければならないのだ。下手糞な切り方をしても、できないなりに頑張ったんだな……と思われて食う方向に持っていかれても困る。 「次は、調味料で味付けです」  そう、間違えるならここだ。マリアに言われた調味料を間違えればいい。  ともかく、何らかの事故で調味料の量を間違えておけば……。  ルルーシュの記憶力ならば全部覚え、全部間違えることだってできる。ここで料理の味を決定的に不味いものに変えてしまえば……。 「……今回は、私が入れておくわ」  隣で別の作業をしていたマリアも、調味料の種類が多すぎるうえに、普段料理をまかせっきりと思われるルルーシュが不安だったのか、調味料を全部適量入れ始めた。  結局ルルーシュが調味料を間違えて入れる隙などなく、ボルシチは完成に近付いている。 「最後は、いよいよ煮込みです」  煮込み……ここで、なんとか不味い料理に変えてしまう要素を作りださなければならない。  黒漕げにするなり、生煮えにするなりと、できることはいくらだってある。  いや、だが極端なことをすると、わざと黒漕げや生煮えにしているとバレる可能性も……。  ある意味一番やりにくいところだ。「ついうっかり」ではあまり出来ない。それに、生煮えならばまた温めることもできるし、黒漕げになるまでやっていたらさすがにバレる。  うまい具合に、「ついうっかり」に見せる方法はないだろうか……。 「手が開いたのでやっておくわ。食器を用意しておいてもらえると助かるわ」  だが、結局この役もマリアに取られてしまうのであった。  そのままルルーシュは適当な食器、適当な飲み物を持っていく。流星は言われた通り、ただ黙って座っている。  問題は、彼がこれらを喉に通せるか……。腹をくくるか。今、食うなと命令しても不自然。食えないことがわかっても問題……。  一体、どうすれば流星がロボットだとバレないのか。 「……ハラショー!」  ルルーシュは完成品のボルシチをそう褒めた。隣にはピロシキも用意されている。  素直に感嘆する。自分は人参を切っただけだが、マリアの作ったボルシチは確かに上手かった。  ──そして、ルルーシュの不安など他所に、流星は平然と皿の上のボルシチを食べ続けている。  ……まさか、動作不良を起こしたりなどしないだろうな。 「そう言ってもらえると嬉しいわ」 「気付けばもう朝食の時間ですね。こんなに美味しい料理で一日が始まると思うとかなり良い気分ですよ」  自分の苦労は何だったのか、とルルーシュは心の中で肩を落とした。  長時間、厨房でボルシチを作り続けるマリアを眺め、結果としてルルーシュは人参しか切っていない。  もう時刻は五時を過ぎていた。  いまやそれだけの時間を彼らと過ごしていたのか……というのは驚きよりも徒労感だった。  マリアには緊張するし、流星はいつ余計なことを言うのかもわからずヒヤヒヤする。その挙句に、このボルシチ騒動だ。  まあ、結果的に何も悪いことはなかった。とりあえず、長い間生き残れたことに感動でもするか。脱出に関して進展がないのは腹立たしいが。  流星は、初めて口にした「料理」というものに少なからずの感動を得る。  食物連鎖の果てに自分に食された料理に、生命の神秘を感じたのだ。  野菜だけでなく、肉も多く味として残っている。元は生物だったのに、今は死んで人間の糧となっている。  だが、その命のはかないことと、生きることの厳しさ・気高さを学んだ。  メタルダーはこのとき食べた愛情篭もったボルシチにより、生と死を深く学んだのである。 【1日目 早朝/E-7 街・ロシア料理店】 【マリア・タチバナ@サクラ大戦】 【状態】健康、満腹感 【装備】ネロの銃@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、キネマトロン(紅蘭)@サクラ大戦 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いを潰す。 1:帝国華撃団のメンバーを探す。 2:ルルーシュ、流星の保護。 3:何かあったらキネマトロンで大神に連絡する。 ※キネマトロンには大神のキネマトロン番号が登録されています。 ※ルルーシュから得た情報はロロが兄弟であることのみで、嘘ばっかりです。 ※ネロの銃は弾道が曲がっていますが、マリアは相手に命中させる角度を理解しています。 ※ルルーシュとロロはどこかの偉人の子息で、流星はそのSPである可能性が高いと思っています。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【状態】疲労(小)、満腹感 【装備】パルセイバー(青)@重甲ビーファイター 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2(確認済み) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いからの脱出。 1:紅蘭なる人物を探す。 2:メタルダーとマリアを利用する。 3:邪魔な人間はうまく切り捨てる。 4:元の世界の知り合いとはなるべく会いたくない。 ※R2の中盤あたりからの参戦です。 ※メタルダーの構造について知りました。今は彼が何も知らないのを利用して手駒にしています。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 【剣流星@超人機メタルダー】 【状態】健康、生命への感動 【装備】不明 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考・状況】 基本行動方針:ルルーシュに従って行動する。 1:今はルルーシュに合わせて行動する。 2:ボルシチの味に感動。食物連鎖や生命の儚さ、生きることの厳しさを痛感。 ※第1話で起動する前からの参戦です。物事についてよく知りません。 ※ルルーシュが主だと思い込んでいます。 ※自省回路があるので、人殺しはできません。 ※帝国華撃団のメンバーの名前だけ知りました。 ※生命の概念についてなんとなく知りました。 【ルルーシュの基本命令】 ・ルルーシュの質問には「はい」とだけ答える。 ・それ以外ではルルーシュが許したときのみ喋っていい。余計なことは喋らず、聞かれたことのみを答える。 ・ルルーシュに危害を加えるものがいたら全力で蹴散らす。 |066:[[闇のゲーマー]]|投下順|068:[[ギガロの脅威/KとYの気づかぬ再会]]| |061:[[能力を縛る輪]]|時系列順|078:[[Discovery(前編)]]| |002:[[皇帝の手駒]]|マリア・タチバナ|| |002:[[皇帝の手駒]]|ルルーシュ・ランペルージ|| |002:[[皇帝の手駒]]|剣流星||

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