【通販しました】

サミュラ邸
「やだいやだい!今から日本に行くんだい!」
「駄々をこねてもどうしようもないですよモルテ。二日もぐうぐう寝て出発をぽかしちゃうからいけないんですよ」
「もっ、もんっ」
コミティアに行くんだ!と意気込んでいたモルテはがくんと肩を落とす。
「今から行っても…」
「間に合いませんよ?というかもう終了しています。それに地球でスラヴィアと同じ様な力が行使できないのは分かっているでしょう?
強引に雪原を越えようとしてペンギンさんに救助されたのを忘れました?」
「もっ、もんっ。それなら“ちゃーたー便”を呼ぼう!」
「会場まで飛行機でなどと…無理です。それにこの前勝手に南極基地に特別チャーター便を呼んでましたよね?一体あれでいくらほど国庫から支出したと思っているんですか」
「ぐぬぬ…ヤフヌールにも二冊頼まれてたけど今回は諦めるしかないかぁ」
「あら、その当人が来ていますよモルテ。どうしたのですか?ヤフヌール」
【モルテ様、サミュラ様、お邪魔します】
トロールスラヴィアンのヤフヌールは喋ることができないので会話は筆談、脇に抱えたホワイトボードで行うのである。
「うひぃ!ボクがコミティアに行けないのを察して来たのか!何と言われても借りてる漫画はまだ返さないぞ!」
【モルテ様、やはり寝過ごしてしまいましたか。七日徹夜で徳間書店コミック読破なんてするからですよ】
「ですよねぇ」
「もっ、もんっ」
【それはそれで置いておいて、基地から朗報で御座います。ククラ氏が報せてくれました】
「あのペンギンさんが、ですか?」
「何て?」
【はい。何とコミティア終了から間を置かずに新刊の通信販売が開始された、とのことです】
「なんやて!?」
「あら、それは確かに朗報ですね」
「よっし!そうと分かれば早速ゲート向こうの基地に行ってパソコン借してもらって通販してくるぞ!」
「駄目です。モルテが通信販売すると余計なものまで買ってしまうでしょう。基地には私が行ってきます。それぞれ2冊づつでよろしいですね?」
【サミュラ様、それには及びません。既に私が注文して参りました】
ヤフヌールがプリントアウトしてきた明細書を見せる。確かに。
「お前そんなぶっといトロール指でキーボードなんてよく叩けたな?!」
「基地の方にお願いしたのでは?」
二人の問いかけに、ほんのちょっぴりドヤ顔でヤフヌールが返す。
【タッチペンというものが御座います。基地に預けてある私のスマートフォンから注文してきたのです】
成程、と二人は手をうつ。
異世界に電子機器を置いておくとどうしても精霊の影響や悪戯で故障する確率が高いため地球に預けておくのが現状ベストとのこと。
「そういやアイパッドでキンドルしてたら光精霊と火精霊に中身焼き切られて泣いてたっけ」
「お手柄ですねヤフヌール。モルテもこれに懲りたらイベントの前は自制して寝過ごすことのないように気を付けて下さいね」
「よっしゃまかさんかい。次回は絶対会場に行って買うからな!」

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最終更新:2018年11月28日 03:17