こんびにわすれもの

異世界交流特区ポートアイランドにて24時間営業ともなると色々な出来事が起こる。それが『コンビニ』。
そんなコンビニの『忘れ物』は他所とは一風変わったものもあったりする。
そんな忘れ物の対処に店員は今日も頭を抱えたり抱えなかったりする。

不思議なサボテン(鉢植え付き)

「店長、あのサボテンって」
「うん?どうしたんだいヒロト君」
「いつまで置いておくんですか?」
レジカウンター後ろにある『忘れ物棚』に長らく鎮座し続けるサボテン。よく見ると目?と口?があるのだ。
時々位置が変わったりするので動くことができる異世界の植物なのだろうけども、地球でそういった類の活動は弱まることが多いという。
「今年の大ゲート祭期間中の忘れ物ですよね。ゲート移動緩和でミズハミシマ以外からの旅行者だったらもう取りに来ないんじゃ…」
サボテンは傘立ての穴にすっぽり収まっていた。
警備カメラの映像をチェックしたところ、ノームの少女が店内に入る前に傘立てにサボテンの鉢植えを差し入れて買い物を済ませ、サボテンを回収することなくそのまま行ってしまったのである。
「それ以上は言わない方が良いだろう。なぁに来年の大ゲート祭になれば取りにくるさきっとそうさ。それまでは店で預かって置こうじゃないか。私はね、時々とても悲しい目をする彼をほってはおけないんだよ」
「店長はあのサボテンの喜怒哀楽が分かるんですか?」
「フッ。悲しみを知るものは他人の悲しみを感じ取ることができるのさ…」
そしてサボテンは時々動きながら忘れ物棚で今日も迎えを待っている。


CLHB(キャット・ルッキング・ヘア・ボール)

「ヒロト君、今日も店は華やかだねぇ」
(とき)は正に下校ラッシュ。客層で学生が増えるのは必然だが、今店内で起こっている女子波の理由はそれだけではない。
ウニャープスー ウニャースプー ウニャースププー
黄色い声に囲まれる冷凍ショーケースの中、【これは商品ではありません】のシールが貼られた透明パックが膨らんだり縮んだり…その中にCLHB!
「今回は中々帰ってきませんね、彼」
「うーん、あの猫少年も難儀だねぇ。神の試練というのは時も場所も選ばないんだなぁ」
先月、ふらっとやってきた猫少年は前と同じように肩に乗せていた毛玉をショーケースの傍に乗せて中を物色する。
ウニャス!ニャス!
毛玉はケースの中にある一つを咥えて猫少年に見せ上げる。
「おいおい、それは王は王でもモナカ王だぞ。俺の方が偉いんだぞ。 …っと、ちょっと待ってろよ」
そして彼は毛玉を残しいなくなった。
「ここ、彼がトイレに入った後…中が光って、少し間をおいて他のお客さんが普通に入ったんですよね、トイレ」
警備カメラの映像では、その後に猫少年がトイレから出てくるのを確認することはできなかった。
残された毛玉、CLHBを忘れ物として預かることになったのだが、どうやら冷えた場所か猫少年の肩の上でなければ元気がなくなるようで、仕方なく冷凍ショーケースに入れることになったのである。
衛生問題をクリアするためにビニルパックの中に入れたのである。
ウニャニャー スププー ウニャースププー
一日のほとんどを寝ているCLHBだが、時々目を覚まして愛くるしい様でケース内をころころ転がったりぴょんぴょん飛び跳ねたりする。
そのキュートな瞬間を映そうと可愛いもの好きな女子陣が集まってくるということなのだ。
「ヒロト君、若いっていいねぇ」


ガマ口小物入れ

「この小物入れ、中々持ち主が現れませんね。 中身は…まぁそんなに高価なものじゃないんですけども」
そのガマ口を開くと中には2ダースの薄々スキンと蛇の抜け殻のようなものの欠片が入っている。
「ふっ、分からないかねワトソン君。この小物入れに隠された秘密を」
「いや、ワトソンって何ですかワトソンって。 で、何が秘密なんですか?」
「小物入れに書かれた記号、ヒロト君はどう思うかね?」
小物入れにはマジックで『ロ』と書かれている。
「くち…いや、ろ、ロですか?」
「そう、片仮名のロだね。物の数え方にイロハというものがある。機械や電気図面などでよく用いられるものなのだが…分かるかい?」
「うーん、イロハってことは2個目ということですか?」
「そう!そこまでくればゴールはもう少しだよワトソン君!」
「うーん…それ以上はちょっと思いつかないですね」
「ふっ、ロということは恐らくハもあるだろう。1個2個であればABという記号でも足りるしともすれば何も書かなくてもいいだろう。
しかし3個以上となるとどれがどれか分かるようにしておかないと色々面倒が起こる。 そして中には2ダースのスキン!分かるかい?!」
「店長、ちょっと興奮してません?」
「ヒロト君!小物入れの持ち主は2ダースを失くしてもそこまでダメージがないくらいに予備を持っているんだよ!だから探しにこないんだ!」
店長の無茶苦茶な理論に若干引き気味のヒロト。
じゃあ抜け殻の欠片は何かの願掛けか縁起担ぎなのかな?と思案していると店内ラジオから軽快なBGMが流れてきた。
『はぁ~い、午後のステキなひと時をヤマカさんと一緒にエンジョイ!ヤマラジスタートっ!』
「持ち主は2ダース以上常備している、やりまくりなんだよ!」


異世界交流特区のコンビニには、今日も不思議が集まってくるのであった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2018年11月07日 02:44