【空いた席には誰が座る?】

時代が進めば世界は変わる。 それは地球も異世界も同じこと。
かつてはならず者や追われた者、忘れられた者の集まりとして始まりやがて国と成った海賊国家ドニー・ドニー。
異世界の海で暴れ回り畏怖も蛮勇も振り撒いた彼らも時代の流れと共にその様相を変えていった。
船と見れば襲い掛かるのをやめ、逆に船を護ることを請けるようになった。
国と国との航路を千切るように進んだ艦は内ではなく大陸の外へ海を拓いていった。
国の持つ力のほとんどが武力であったが、その比重は経済力の占める割合が増していった。
集団から組織へ、そして国へと移る中で猛者達はその中でもより強い猛者による決定の元で異世界各国に並び立ったのである。
だが、そんな海洋強国のドニー・ドニーにも悩みがある。

 『七大会合』
ドニー・ドニーを率いるべく自他共に代表と自負する海賊団七つの団長が集まり国の指針などを決定し発布する会議である。
しかし、今現在一角を担っていたドワーフ造船団は船大工工房の更なる躍進のために世界に広く出ていくからと自ら退いた。
「なのに何で毎度ワシが呼ばれるんじゃい。これだとおいそれとドニーを空けることができんじゃろがい」
「すまんな親方、中々席が埋まらなくてな。それは後で何とかするとして合議の場で偶数だと何かと不都合なんだ、すまない」
「ドワーフのには迷惑をかけてすまないが、ラウダフルよ、こればかりは俺たちが「何とかする」のは無理な問題だと思うぜ?」
「それはアタイもオルチと同じ考えだねぇ。何とかするのは七大に立とうとする団であってアタイらがどうこうするもんじゃないよ」
「マムの意見は最もなんだが、このままというのはドニーにとってもよくないのは明白だ。今はまだ何とかできているが同じ構図がずっと続くというのは、な」
「ネモチーは気にし過ぎよぉ?髪に悪影響よ?私はとうぶんこのままでもいいわよぉ?」
「パル大姐は長生きだから感覚の擦り合わせは必要ですよ?うちの傘下でも後進は育ってはいるんだけども…それぞれの団が持ち味で軌道に乗ってるからか七大に挙手する気配がないのよね」
「お姫ちゃぁん、寿命のことは言わないお約束よぉ」
「ならお前も髪のことは言うな」

海運海商から他国の通商にも関係することになったことで海賊団の規模に限らず成功の道が多く開けたのだが、それがドニーの情勢に作用してきているのである。
自分達の商いで日々を送っていく間に生き甲斐を見出し大成への道を進んでいくことでドニーを統括する七つの席が目標から遠くなってしまっている所多数という。
「俺達の下には活きの良いのがまだいるんだがな」
「それらを片端からノしちゃうから駄目なんじゃぁないのぉ?」
下克上上等という魚人海賊団の習わしからか今での成り上がりを目指す血気盛んな団が多く集まっているのだが、それらの挑戦を尽く返り討ちにするオルチが当代の団に並ぶ芽は未だない。
海商にしても通じれば通じるほどそれぞれの分野で頂上の席に座する団の実力を知るためか、真っ向から勝負しよう並ぼうとする意識もほとんど出てこない。
「とは言え自ら立つ意思なければ国の舵取りを担うなど到底無理なことだ。波が来るまでは我々が踏ん張らねばならんか」
「ところでラウ大兄、今日の議題は何だったっけ?」
「なんじゃイツクシモ姫、今更それを言うんかい。未踏破海域への海洋開拓を国でやるかやらないかの決じゃろ。決まったらワシの工房も忙しくなりそうじゃ」
「そうだったそうだった」
「地球の組織からの協力打診も来ているんだが、まぁそれは次の段階で話をするのでもいいだろう」
「よし。それでは決を採ろうか」

会合後、ドニー・ドニーに発布された未踏破開拓の大号令に沸き上がる海賊達。
内から外へ、前に進むに飽くなき魂が海図を塗り替える日もそう遠くはないのかも知れない

トップの存在感が大きすぎて次が挙手しない問題のありそうなドニーを想像

  • 平和な時代には平和な時代なりの立身出世ってもんが生まれるんだろうけど国のトップはまた一つ上の次元の話かね -- (名無しさん) 2018-10-15 21:45:30
  • 世が豊かになっていくに従って社会の様相も変化していくということでしょうか。ドニーの形も違ったものになるのかもしれませんね -- (名無しさん) 2018-11-11 20:15:56
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最終更新:2018年10月14日 23:51