【モグタイ外郭会場:熱戦!】

キエム「さぁ始まりました、モグタイ!選手はガルパオを食べ書簡を受け取り上中下の三難易度のゴールリングへシュートします!」
マリアンヌ「長テーブルに座るとガルパオが出されますので食べます。美味しそうな匂いがします」
キエム「まずはガルパオを平らげなければ玉がありません。誰が食べ誰が投げ誰が休むのか、時間いっぱい体力と知恵比べとなります!」
 試合は東西四人対四人。まずはガルパオ担当がテーブルにつく。水はおかわり自由であるが飲み過ぎるといたずらに膨満感を誘うだろう。
 しかし、麦飯・肉・野菜・卵・ソースという組み合わせは自ずと食道をずっしりゆるりと進むであろうに、水はどうしても欲しくなる。
 更に今大会では各地より集まった料理人が腕を振るったことにより、出されるガルパオも未知数なのである。
キエム「西チームからはナテア選手とタンホイザ選手が、東チームからは牧場選手とシィ選手がテーブルにつきます。…さぁ!ガルパオの第一波がやってきました!」
マリアンヌ「ほかほか湯気と香ばしいソースの匂いが…ごくりっ」

 ワァァアアーーーーッッ!!

キエム「早い!早いぞ!鍋が出されて三拍で平らげました!エルフは遂に“食”まで順応したと言うのでしょうか? ナテア選手のファーストアタックにより西チームに書簡が一つ渡されます」
 係から早速書簡を受け取るラニ。そして自らの腕力では全力渾身で投擲したとしても下段の一点ゴールに放り込むのが関の山だろう。となれば投げるのは彼の役割となる。
カナヘビ「任せな!」
キエム「カナヘビ選手、微塵も躊躇せずに上段ゴールに向けて力強く投げました! …しかしこれは ──
 円筒の形状のせいか空気抵抗も不規則であるために、力を乗せても真っ直ぐに飛ばないそれはゴール下にぶつかり落下した。
ラニ「ちょっとカナヘビさん!狙いを定めるとか下から攻めていくとかもうちょっと考えて下さい!」
カナヘビ「男は黙って大穴狙いっつーいつもの癖が…すまんー」
ラニ「次弾!次弾です!どうですかっ?タンホイザさん」
タンホイザ「うーん、こんなご馳走をすぐに食べてしまっては勿体無いと思います」
キエム「これはタンホイザ選手、隣のナテア選手とは対照的にゆっくりとしっかりと噛み締め味わっています! そしてナテア選手は二杯目を平らげたー!」
牧場「ご馳走様でしたっ!」
キエム「続いて牧場選手も完食っ!両チームに書簡が渡されます」
タンホイザ「本当に美味しいです」
カナヘビ「せいやっ!」
 書簡は上ゴールの少し上、壁に跳ね返り地に落ちる。
ラニ「カ~ナ~ヘ~ビ~さぁ~ん?」
カナヘビ「一投目で距離感なんとなく分かったんで、次はいけるかな?と」
ブレンダ【ていっ】
 スポンっ 書簡は何の危な気もなく下段ゴールに入った。
双鏡「片手投げなのに素晴らしい姿勢!絵になるわ~絵になるわ~」
キエム「見事1点を選手しました東チーム!得意気な表情で次を待つブレンダ選手とその傍らで何やら一心不乱にノートで筆を走らせる双鏡選手です」

青鬼師匠「カナヘビのやつ、全く性格が変わっとらんのぅ。あの大勝ちに張る性分が毎度悪い方に出るというのに」
コギリ「えぇまぁ、あれだけは一生どうしようもないかと」
青鬼師匠「そう言えばお前が護衛しているもんはどこへ行ったんじゃ?」
コギリ「彼でしたら料理人としてあそこに」

タンホイザ「食べ終わりました。ご馳走様でした」
ナテア「もごっそん!」
シィ「完食だ!」
キエム「おぉっと!これは三人ほぼ同時に完食だー! しかし点が動いたここからは駆け引き、相手の出方など多くが作用してくるのは必然!どうする東西チーム!」
マリアンヌ「私にも一杯もらえませんでしょうか?ダメでしょうか?」
キエム「まぁまぁ落ち着いて下さい。 西チームは二つの書簡を受け取ったが一点先取されているだけに動向が気になるところです」
ラニ「絶対に下ですよ下!」
カナヘビ「わ、分かってますよっと!」
 トントンと一投二投、テンポを崩さずに連続して投げる。一投目は下段ゴールに見事入るが、二投目は惜しくもゴール枠に弾かれた。
キエム「あーっと残念!西チームは1点です」
ブレンダ【はいっ】
 丁寧に確実に投げる。するりと下段ゴールに吸い込まれた。
キエム「全く外れる気がしませんでした!見事東チームは2点目となります」
 しかしここで空気が変わる。 四杯目に手をつけたナテアの動きが止まる。
キエム「これは一体どうしたことでしょう?先程までは問答無用でガルパオを平らげていたナテア選手ですが、急にスプーンが止まりました。喉でも詰まらせたのでしょうか?」
ナテア「こっこれはっ」
 プルプルと頬と腕を振るわせるナテアの前に立つ丼からは湯気が立っている。そして何の変哲もない麦飯が盛られているのみである。
マリアンヌ「これは…微かに鼻をくすぐる香りが漂ってきましたよ?」
 ただの麦飯より香り立つそれはとても爽やかで鼻から口内をめぐり、一粒も食していないのに味を感じるのである。正しくは香りを嗅いだ者の想像する味であるが。
キエム「おーっとナテア選手、意を決してスプーンを丼に差し入れます!」
ナテア「ふわわっ?!」
 スプーンの頭が麦飯の中に隠れてすぐに異なる触感が指先から伝わる。 そして ───
マリアンヌ「何てことでしょう!香ばしさと野菜の瑞々しさが一緒になって丼から溢れ出してきます!」
キエム「一風変わったガルパオ!それが発するのは今までにない香り!しかし一体どうして?何処から?あの麦飯の中にどんな秘密がっ!?」
シゲ「それは俺から説明しましょう!」
 少し前からバトンタッチしてガルパオを作っていた料理人。ミズハミシマで居酒屋を切り盛りする青年、斎藤茂、シゲ。
 彼が料理したのはそれまでの派手に盛ったガルパオとは打って変わり飯だけが見えるものだった。
シゲ「麦飯はどっしりとした肉と野菜の味とソースを受け止めるために芯を残して炊き上げています。そして飯が包むのは…イストモス山脈から採れた岩塩をベースに根菜、獣肉から抽出した旨味汁から作ったスープで焼き上げた草原羊の肉とじゃが芋の短冊切り!
それらに予め蜂兜蜜に漬け込んでおいた野菜をみじん切りにして混ぜ、蒸した丸星キャベツの葉で何層にくるんだもの!」
マリアンヌ「焼けた塩と温められた蜜、そして肉と野菜のハーモニー!もう我慢できませんっ!」
ポルスレーヌ「いけません姫様!くっ、こうなってしまっては仕方がありません。小鉢であのガルパオを姫様に!」
 沸き上がる観客席と解説席。その喧噪もナテアの耳に届いてるのだろうか、ゆっくりとスプーンですくった飯と野菜と肉とスープを口へと運ぶ。
ナテア「ぱくっ。 ………むっほぉぉおおおぉぉぉんっっ!!」
キエム「ナテア選手絶叫!いや絶頂かっ?!そのガルパオの味は如何ほどなのかッ!?」
マリアンヌ「はっふぅぅうううぅぅんんっっ♪」
ポルスレーヌ「姫様!そのようなはしたない顔をされてはいけません!」

 風雲急を告げる会場!勝負の行方は?ナテアの進撃はどうなる?!
 未知なる美味がもたらすのは勝利か…はたまた!?
  ─── 続く!

  • ナテアの胃袋があれば玉は確保できそうだけどギャンブル性分がどうにも足枷になっちゃうラニチーム -- (名無しさん) 2018-08-30 01:45:20
  • 姫騎士王をアヘらすのに美味い飯があれば事足りるっていう。ナテア以外でいっぱい食べれそうなのは牧場かな? -- (名無しさん) 2018-08-31 02:45:58
  • 全員で一斉に食べて玉ストックすればよさそうと思ったけど椅子が限られてるとか脇のルールがあったりしそう -- (名無しさん) 2018-09-22 08:17:08
  • 人間の異世界における強味って異世界の固定観念に囚われない地球産発想による今までにない創造なんだろうか -- (名無しさん) 2018-09-30 19:13:14
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最終更新:2018年08月29日 01:36