【都市物語 ラタ城塞都市】

 ヘリサ大氷原の西の端、リサ大氷壁から溶け出す膨大な水が作り出すリサル川がイストモスをまるで西と東に区切るかのごとく流れるその川辺、中原の見渡す限りの大平原と緩やかな丘陵の中に場違いとも思えるその街はある。

 小高い丘の上にさらに土を盛り上げた場所に建つのは堅牢さと優美さを兼ねそろえた城塞、それを何重にも囲う堅固な防壁がその威容を際立たせている。
 しかし、その場所から少し目を離して見れば、そこには多くの人々の暮らしを示す家々が防壁の外にまで立ち並び、城塞へと延びる道沿いには星巡りの巡礼者や交易商人のための宿坊が軒を連ねている。
 城塞都市ラタ、東西イストモスのほぼ中間に位置するこの堅牢な防壁を持つ都市の歴史は約500年ほど、その歴史の中で東西の要所として幾度となく東西の氏族によって奪い奪われを繰り返し、その度に元は小高い丘でしかなかったこの場所は、大地を精霊の力を借りて盛り上げ、貴重な石材を大量に用いて防壁を築き上げ、やがて砦はイストモスでも有数の城塞都市へと変貌していくこととなった。

 現在のこの街の名前は今より400年ほど昔、東イストモスでも有数の戦士であったヘルデン氏族の長グリースンとの一騎打ちに勝利し、この土地を治めることとなった星騎士ラタの名前に由来する。
 星見の賢者に東の地に赴く運命にあると告げられたラタは、齢14にして従者を一人だけを連れて当時争いの絶えぬ地であった中原へと赴く、そこで当時カルザン丘と呼ばれていたこの土地を巡って幾度も争いを続けていたヘルデン氏族とオルタイ氏族の争いに関わることとなり、年老い子のいないオルタイ氏族の長の名代として戦士グリースンとカルザン丘を巡っての一騎打ちをしてこれに勝利、ラタの技量と人柄に感服したグリースンよりこの土地を譲り受けてからは、その生涯を終えるまでオルタイ氏族とヘルデン氏族の和平に尽力し、彼女はこの地に留まり人々の安寧と繁栄を見守ったと伝えられている。
 星騎士ラタの信奉者は東西問わず多く、公平・礼節・慈愛の守護星者として死後に天の座に列せられた彼女の墓所と死後建立されたラタ天導院は、今も星巡りの巡礼者立ち寄る星地として賑わっている。

現在のラタ城塞都市には3つの顔がある。
ひとつは星巡りの星地という顔、もうひとつは東西の要所に立つ軍事と交易の拠点という顔、そして異界との接続点という新しい顔だ。
 前述の通りラタ城塞都市は軍事拠点として建設されたが、それは歴史の移り変わりの中で変化し、安定期には東西の交易の中継地として栄え、また断続的に起きる東西の争いでは教会の仲介の下捕虜や星武具の交換交渉の場として度々歴史にその名を残してきた。
 そして、近年では地球との接続点である光の柱がラタ近郊に立ち上り、異世界との交流拠点としての顔も見せつつある。


  • イストモスでも東西が幾度となく交わった場所がゲートの出現で世界が交わる場所に…いいなぁ。ラタの逸話は中世というよりも日本の古代や飛鳥を彷彿させる雰囲気があった -- (名無しさん) 2014-08-28 23:15:24
  • 紆余曲折を経て今はと感慨深い場所。女ケンタ騎士ラタの清廉さが際立つな -- (名無しさん) 2014-08-29 22:26:22
  • 星のナントカと呼ばれる偉人賢人が多そうなイストモス。由緒ある星地がゲートの開いた場所となった今ではどれくらい変化したのか興味出る -- (名無しさん) 2017-03-20 17:12:34
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最終更新:2018年05月30日 07:04