HAARPで雲に丸い穴? ナショナルジオグラフィック公式記事

雲にあいた“穴”は軍の陰謀か?

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 1月31日(月)20時12分配信



以下、リンク先記事を転載

サウスカロライナ州マートルビーチの澄んだ空に、“穴”のあいた雲が浮かぶ。
 アメリカ、サウスカロライナ州マートルビーチの上空に、UFOのような形の穴が3つあいた雲が浮かんでいる。最近起こった鳥の大量死と関係があるのだろうか、それとも軍事実験だろうか。この写真の公開とともに憶測が憶測を呼び、インターネット上で激しい議論が巻き起こっている。

 一説によると、「ホールパンチ雲(穴あき雲)」というこの雲の発生には軍事施設が絡んでいる可能性があるという。

 1月7日、IT専門家ウェスリー・タイラー氏は、コンピューターの部品を取りに自分の車まで向かう途中、UFOのような不思議な形の穴があいている雲に気付いた。

「最初は竜巻雲かと思ったけど、大気は不気味なほど穏やかだった。普通ではなかったね。この辺りに住んでもう何年にもなるけど、あんな雲は見たことがない」とタイラー氏は語る。自宅に戻って雲の写真をFacebookにアップすると、気象学者の知り合いがホールパンチ雲であることを確認した。

 小規模な吹雪を発生させるホールパンチ雲は、氷点下の薄い層で形成されるタイプの雲だ。ちりなどの微粒子が少ない高層の雲の周囲では、水滴はほとんど凝縮せず、液体のまま摂氏マイナス36度ほどまで温度が低下する。

 雲の内部を航空機が通過すると、湾曲した翼上部に押し上げられたり、プロペラが後方に押しやる力が働き気圧が下がる。雲のある一点が円形に冷却し、そこでは水滴の大部分が氷の結晶となる。それから45分ほどで氷の結晶が成長、外側に拡散し、時には密度の高い小規模な吹雪となる。周囲の水蒸気が凝縮する結果、雲に円い穴があくのだ。

 しかし、写真を撮影したタイラー氏は航空機が原因だとは思えなかった。3つも同時に発生した例がないためだ。

「インターネットでいろいろと調べてみたけど、穴が2つの写真すら見つからなかった。近くにあるマートルビーチ国際空港の運行量もそれほど多いわけではない。それに、ホールパンチは高度6100メートル付近で形成されるとどこかで読んだけど、あのときの雲はもっと低かった。航空機が原因だとは考えにくいね」と同氏は話している。

 興味深い話を紹介しよう。アメリカ軍出資の「高周波活性オーロラ調査プログラム(HAARP)」陰謀説だ。信じる向きによると、この計画は地震や慢性疲労症候群、地球温暖化などの現象とも関連しているという。

 アラスカのガコナにあるHAARPの照射施設では、機密体制が敷かれているわけではない。しかし、電波を照射して地球の電離層を“活性化”する試みが進められており、一部では天候をコントロールできるとも言われている。3つの穴もこの施設が作り出したと見られているのだ。

 あるHAARP説の支持者は、今回の雲についてニュースブログの「Big Wobble」に次のようなコメントを残している。「間違いない。これは人為的に創出された電磁通路だ」。陰謀説には与しないタイラー氏だが、未だにどうも腑に落ちないようだ。「自然現象かもしれないし。とにかく理由は他にあると思う」。

 これに対し、コロラド州ボルダーにあるアメリカ大気研究センター(NCAR)の物理学者アンドリュー・ヘイムズフィールド氏は、自然とそれ以外の両方に理由があると説明した。「航空機がつくった普通のホールパンチ雲だ。何も驚くことはない。遠くの澄んだ空からもわかるように、上に層がなく、薄いタイプの正常な雲に決まっている」。高度が低かった点に関しても、「要は雲の層が十分に冷やされていれば問題ない」と同氏は語った。

 では、3つも同時に“穴”があいたのはなぜだろう?

 ヘイムズフィールド氏は、「穴の大きさとそこから降った雪の質から、3つ共ほぼ同時に形成されたようだ。おそらく、複数の軍用機が編隊飛行したのだろう」と説明する。事実、マートルビーチ上空では軍用機の訓練飛行が頻繁に行われている。しかも写真が撮影された1月7日の午前9時~午後2時の間、サウスカロライナ沿岸の沖合では戦闘機の軍事訓練が行われていたのである。

 この話を聞いて、タイラー氏も航空機が原因であることに納得したが、身もふたもない証拠には少々がっかりしたようだ。「でも、それならそれで悪くはないね。陰謀話は好きだけど、ナチュラリストでもあるのさ」と同氏は話してくれた。

Ted Chamberlain for National Geographic News

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最終更新:2011年05月06日 01:52