ドリームチーム・ファイル0(試案)

……と、いうわけで


ドリームチーム・ファイル0(試案)
ファイルNoが0なのは、DT設立の契機となった事件であるため。
第0話を置くことで、中心メンバーであるC・ハーパーのキャラと、DTの設立趣意を一気に説明する。
犯罪者は「ツーリスト(旅人)」を起用。
飛行機や車、列車を使い、北はアラスカから南はメキシコに至るまで、北米全土をまたにかけて殺人を続ける殺人鬼。
しかし、犯罪領域があまりに広すぎるため、地方警察はもちろんのこと、FBIですら同一犯の犯行とは考えていない。
一方、南のロスではC・ハーパーが友人の英国人学者バーナード・B・ウォレスと会食の機会をもっていた。
「…それじゃあウォリー、君は我々が進化する犯罪に対応できなくなるだろうというんだね?」
「そうでは言っとらんぞ、ハーパー。対応『できなくなる』のではなく、既に対応『できていない』と言っとるんじゃ」
「そこまで言い切るんならウォリー、なんでもいいから一つ、我々が対応できていないという実例を上げてはくれないか?」
「それならばだな……」
そして、学者は「このあいだアラスカで起こった殺人事件」を取り上げる……。
「これは怨恨とか、プロ犯罪者の犯行じゃない。特有の性向をもった犯罪者による犯行に間違いないんじゃ」
「しかしウォリー。君の言うような犯罪者は、犯行に特有のパターンが出て来るはずだろう?しかしアラスカ州内や隣接するカナダでは……」
「何故、アラスカとカナダに限る必要があるんじゃ?さっき君自身も言っとったじゃろうが。人や物の移動がグローバル化しとると。物流がグローバル化するのなら、犯罪だってグローバル化するんじゃよ」
「……」
そしてその翌日、ハーパーは単身アラスカへと飛んでいた。


あとはコンピュータを使った南米、西ヨーロッパ、英国、日本、韓国にたいるまでの犯罪照会などから、実は全米規模で類似傾向の犯罪がばら撒かれていたらしいことが浮かび上がる。
「……まるで旅人ですね」
「いわゆる『悪魔の巡回』ってヤツだ」
ハーパーは直ちに、コンピューターデータから、「ツーリスト」の行動パターン解析を指示。
コンピュータは、「ツーリスト」の次の仕事場がロスである可能性を70%以上と弾きだした。





 ハーパーがアンカレッジ空港のロビーに出ると、ガラスの向こうでは猛然と雪が降りはじめていた。
(タッチの差で降りられたか……)
あの降り様だと、降着が数分でも遅れたら、飛行機はロスに引き返したかもしれなかった。
ここまでは幸先良いと言えるだろう。
だが、ハーパーの任地は、「少なく見積もっても365日晴れている」と言われるカリフォルニアだ。
ここから先、数十キロは続くであろう雪道ドライブを考えると、さしものハーパーも気が重くならざるをえない。
意を決して彼がレンタカーの窓口に向かい歩きだしたときだった。
「キミ、ハーパーくんだろ?」
名前を呼ばれ振返ると、防寒着姿の年配の男が、口角を上げ、目を細めて笑っていた。
「やっぱりキミがハーパーくんだな」
男は農夫か樵のように分厚い掌を差し出して言った・
「オレはベックマン。アラスカ支局のトーマス・ベックマンだ」



「キミの上司、実は私の古くからの友達でね、それが久しぶりに電話をよこして私に言うんだ」
「……わざわざ冬のアラスカまで出かけよって物好きがいるから、面倒みてやってくれないかと?」
「まあ、そんなとこだな」
わざわざ車を出して、ハーパーを迎えに来てくれたのだという。
慣れない雪道ドライブをせずに済むのはありがたいが……、先にたって空港を行くベックマンの話を聞きながら、ハーパーは少しばかり驚いていた。
彼の上司は典型的な官僚肌の男で、軽い気持ちで友達に電話をかけるような男ではないはずだった。
しかし、人狩り人としてのハーパーの経験からいって、ベックマンが嘘をついているとも思えない。
すこしばかり首をひねりながらついて行くと、駐車場で待っていたのはもっと奇妙な光景だった。
「やあハリー!待たせたな」
ベックマンが手を上げ合図すると、制服姿の男が二人、四駆の運転席と助手席から降りて来た。
迎えの車は、アラスカ州警察のパトカー。運転手は州警の警官だったのだ。
ハーパーらFBIは、地元警察が手掛けていた事件の捜査権を自分たち側に強制移行させる「捜査の横取り」をするため、概して地元警察には好かれない。
だがこのベックマンという男は、その限りではないらしい。
後部ハッチにハーパーの荷物を放り込むと、二人の警官と二人のFBI捜査官を乗せたパトカーはガダガタ車体を揺するとおもむろに走り出した。

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最終更新:2011年03月16日 20:06