シナリオ3日目シーン2 昼休み行動選択 --- 一樹(さて昼休みだ。今日は明が文化祭の件で生徒会室に行くので一緒には食べられないらしい。) 一樹(どこで食べようか……。) (選択肢) 1.明は居ないが教室でいつも通り食べる 2.たまには学食に行ってみるか 3.屋上で食べるのも気持ちいいかもしれない (選択2) 一樹(たまには学食に行ってみるか。毎日購買部のパンというのも代わり映えがしないし。) 学食は相変わらずガヤガヤと賑わっている。 このガヤガヤが、実はあまり好きじゃないので、普段はパンを買って教室で食べることが多い。 学食で食べるのはいつ以来だろうか。 食券の券売機はいつに無く長蛇の列だ。これに並ぶのかと思うと学食に来たことを少し後悔してしまった。 列の最後尾辺りに来ると見覚えのあるツインテールがぴょこぴょこと跳ねたり右往左往している。 一樹(水樹さん?) 列の前を覗いたり食券を買っている人をジッと見つめたりなにやら挙動不審だ。 気付いておいて無視するのも冷たいかと思い話しかけてみた。 一樹「水樹さんも学食でお昼?」 葵「……?」 きょろきょろと見回しているが僕がどこに居るか見つけられないらしい。 トントンと肩を叩いたところでようやく背後の僕に気付いたようだ。 葵「一樹も、学食?」 一樹「うん。券売機の順番待ちの列が長くてげんなりしてたところ。よかったら一緒に並ぶ?」 こくりと頷いて水樹さんは僕の後ろに回った。 僕の制服のすそを掴んで、こちらを見上げている。まるで迷子の小学生みたいだ。 葵「買い方がわからなくて困ってた。」 葵「ありがとう。」 なるほどさっきの挙動不審な行動はそういうことだったのか。 確かに、転校してきてまだ三日目なのだから慣れてなくて当然だ。 一樹「食券を買うのはこっちの列だね。あっちは厨房から料理受け取る方の列。」 一樹「お昼になると結構並ぶから休み時間に先に食券だけ買っておくって人も居るね。」 葵「……先んずれば人を制す。」 一樹「そ、そうとも言うね。」 一樹「そこまで大げさに言うほどの事でも無いと思うけど。」 そうこう言ってるうちに僕達の番が回ってきた。 一樹「何買うの?」 葵「天丼が食べたい。天丼。今日は天丼。」 一樹「わかったよ。何回も言わなくても。」 葵「繰り返して言うのと天丼がかかっている。笑うところ。」 わかりずらいボケを自分で解説する水樹さんに困惑しつつ、天丼のボタンを代わりに押してあげた。 ボタンが最上段にあって水樹さんの身長だと少し届き辛そうだったから。 葵「ありがとう。」 一樹「……!」 上目遣いで素直にお礼を言う水樹さんの仕草が可愛くて思わず赤面して目をそらしてしまった。 葵「需要あり……。」 照れてる僕を尻目になにやら手帳にメモを取っている。 需要?からかわれたんだろうか僕は? 相変わらず水樹さんのすることはよくわからない。 ともかく、列の後ろもつっかえているので自分の分の食券を急いで買って券売機を離れた。 〜〜〜 厨房を覗くカウンターで食券と引き換えに料理を受け取り、ようやく席に落ち着くことができた。 一樹「この学校は慣れた?って慣れてないからさっき戸惑ってたんだよね。」 葵「少しづつ。」 葵「学食はもう大丈夫。」 一樹「お役に立てたならよかった。」 水樹さんは時折僕の質問に返事をしつつ静かに天丼を食べている。 おしゃべりが好きなタイプでは無いようなので、僕も無理に話しかけるのはやめた。 黙々と食べるだけの二人になってしまっているが、不思議とその沈黙が苦にはならなかった。 一樹「よかったらこの後案内しようか?学校の中。」 葵「いいの?」 一樹「いいよ。と言ってもさっき食券買うのに時間かかっちゃったから全部は回れないと思うけど。」 一樹「教室に帰る途中にある部屋なら。」 葵「図書室に行きたい。教えて。」 一樹「うん、図書室なら丁度教室に帰る途中にあるね。」 一樹「何か読みたい本でもあるの?」 葵「鬼兵。」 一樹「ん?」 葵「鬼兵犯○帳。」 水樹さんの挙げたタイトルはTVでよくやっている時代劇の原作小説だった。 主人公が鬼と恐れられる凄腕の与力の話だったような。 葵「平蔵を侮ってはいけない。面白い。」 一樹「平蔵?そういえば主人公はそんな名前だったっけ。」 葵「かっこいいんだぞ。」 一樹「へぇ。水樹さんは時代劇好きなんだね。」 葵「一樹も読んでみればいい。」 一樹「そ、そうだね。機会があれば……。」 葵「今日がその機会。」 一樹「う、うん。」 結局この後お昼を済ませてから、意外に押しが強い水樹さんを図書館に連れて行き、 余り興味も無かったのに一緒に歴史小説を借りる羽目になるのだった。