文芸部杏電子書架
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文芸部杏電子書架
ja
2013-06-04T17:20:32+09:00
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いらっしゃいませ。
文芸部杏電子書架へようこそ。
*第11号春部誌 配布はじめました。
*第12号夏部誌 製作中!
**教育学部 図書館カウンター
**および工学部 図書館にて配布中です!
**2011年度夏部誌の作品をUPしました。
-[[文芸部杏とは?>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/13.html]]
-[[部員紹介]]
-[[部誌書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/27.html]]
-[[個人書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/16.html]]
-[[連載作品書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/88.html]]
-[[姉妹サークル『文芸部楓』へ>http://kaede.manjushage.com/]]
-[[御意見処>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/19.html]]
-[[部員向け 作品掲載の決まり>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/41.html]]
// 冬のテーマはハッピーエンド。さあ頑張ろう。表紙は美術四年ななちゃんにお願いしました。
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2013-06-04T17:20:32+09:00
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黒猫スリーデイズ
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/29.html
『黒猫が目の前を横切ると、不幸になる』
一部の人はこの迷信を、今も信じ続けています。私の友人もその一人です。
ある日の事です。
私がいつもと同じように、家から駅まで十五分自転車をこぎ、三十分電車に揺られ、着いた駅から五分歩いて登校した日の事。
高校に到着して教室に入るなり、友人が私に泣きついてきました。
登校中に黒猫を見てしまったとのことです。
「どうしよう! あたし不幸になっちゃう!」
友人は、それはもう、この世の終わりのように震えながら目をうるませています。
私は無責任に「そんなの偶然だよ!」「ダイジョーブダイジョーブ!」とは言えない性格です。なので、黒猫が不幸の象徴になった所以や、その逆に「からすねこ」と呼ばれ幸福の象徴ともなっている事例を紹介しました。そんなもの、本人の受け取り方次第。暗にそう伝えたつもりです。
友人は戸惑った顔で、ありがとう、とは言ってくれましたが、それはとても弱弱しいものでした。
お昼休みの事です。友人に、一緒に食べよ、と誘われたので、窓際にある私の席で、机をくっつけて一緒にお弁当を食べることになりました。
お弁当をあらかた食べ終えた頃、本を開こうとした私に友人が「あのね……」と言いかけて口を止めてしまったので、不思議に思い友人の顔を見ました。視線が外にそそがれていたので追ってみると、学校のグラウンドを黒い何かが走っていく様子を見る事ができました。その黒い何かは、弓道場の藪の中に入り込んでいきました。小柄でつややかな毛並み、体を揺らさずにゆったり素早く走る姿、黒猫に違いありません。
友人は顔を青くして、持っていた箸を机の上に置きました。そして最後にとっておいた大好物の鶏の唐揚げを、私にくれました。
私は今度は、学校周辺の野良猫生息数とその黒猫の割合について論じ、さきほどの事象、つまり黒ネコが学校の校庭をよこぎる現象がそんなに珍しいものではない事を説明しました(真昼に堂々と校庭を横切る可能性についてはわざと話しませんでしたが)。
猫の中でも人懐っこいことが多い黒猫は、どこかしらの家の人に気に入られ半野良となって生き延びている事が多い。あるいはペットとして近所の幼子と散歩に来たのかも知れない。はたまた、悪がきに追われてやぶれかぶれで逃げて来たのかも知れない。そんな黒猫が不幸の運び手であるわけがない。そも、黒猫が不幸の運び手であるなら、例の運送業者はどうなってしまうのか。
私は言葉を尽くして友人を励まそうとしましたが、笑顔が戻る気配はありませんでした。最後には己の信念を曲げて「私も見たから一緒に不幸になっちゃうね!」と同族意識に訴えかけようとしましたが、友人だけが不幸な目にあったらフォローできる自身が無いので止めておきました。
帰りのホームルームが終わる頃、私は友人と一緒に下校する事に決めました。朝からずっと落ち込んでいる彼女を一人にするには大きな不安があったのです。しかし彼女と一緒に通る道は。駅までの五分間しかありませんでした。
私は友人に言いました。
「明日は一緒に遊ぼう」
友人は喜んで頷きました。私はその笑顔を見ながら、災い転じて福となす、そんな発想に彼女が至ることを祈りました。
次の日の事です。学校に到着した私は、友人が学校を休んでいる事を知りました。担任の先生が言うには風邪だそうです。嫌な予感がしました。昨日の彼女には全くそんな兆候は無かったからです。
私は事故に近い何かが起こったのだと思い、すぐに友人に携帯で電話をしました。友人は数秒も経たない内に電話に出ました。その様子や元気そうな声を聞く限り、大きな怪我を負ったり咽喉をウィルスにやられたりはしていないようです。
私はとりあえず、ホッとしました。
私は、今日休んだ理由を聞いてみました。友人は少し黙った後に、笑わないでね、と頼んできました。私はもちろん笑うつもりなどないので了承しました。
「昨日、あなたと別れた後にまた黒猫を見たの……。あたし、三回分の不幸に襲われないように家を出ない事にしたの」
私は思わず黙ってしまいました。友人はそれをどう受け取ったのか、そのまま何も言わずに電話を切ってしまいました。
偶然とはかくも恐ろしい物です。
私は一生懸命、友人が迷信のしがらみから逃れる術を考えていました。
友人はビクビクしながら、次の日には学校に登校してきました。しかし終始、何か不幸が襲ってくるのではとビクビクしていました。
私は昨日から一晩通して考えてきた事を友人に話しました。不幸をふりまくには何かしら魔術的なものが必要であろうが、黒猫の生まれる過程にそのような怪しげなものは見られない事。不幸をふりまく黒猫を実証した科学者はいない事。私も一回、黒猫が目の前を横切るのを見たことがあるが、何の不幸にもみまわれなかった事。
私としてはどれも完璧な説得でミスもなかったはずなのですが、友人が曇った顔を晴々とする事はありませんでした。
陽は傾き、もう下校の時間になりました。
友人は学校が始まってから終わるまで、ずうっと不幸に敏感になっていたものですから、下校する頃にはすっかり気疲れしていました(男子の笑い声にすらビクビクしているのです)。私も、友人を安心させられるような言葉を使いきっていましたから、二人そろって八方塞がりな状況になっていました。
校門を出ても友人の顔は晴れません。
すっかりくたびれていた私は、もう、やぶれかぶれにこう言いました。
「一日の三倍、三日間も不幸だったんだから、これで不幸は終わりだよ」
友人は、そうなのかなあ、と半信半疑に呟いていましたが、こうなったら乗りかかった船。私は畳みかけるように言いました。
「考えてみてよ。あなたはずっと不幸続きだったでしょ? これまでの三日間をよく思い出してみて」
「そう言われればそうとも言えるけど……」
友人は釈然としない顔をしていましたが、私がドーナツ屋に寄ろうと提案すると満面の笑みを浮かべました。私も不幸について考えてばかりであったので、ドーナツのことに意識を移すと頭に詰まったおもりが解き放たれたような気分になります。
私たちは小走りに横断歩道を渡ります。とおりゃんせ、とおりゃんせ。行く細道の先は駅ではありません。商店街です。ドーナツ屋さんに行くのです。
おっと、足元に小柄な黒い影が
「にゃあ」
あ。
2013-04-27T09:02:38+09:00
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部員紹介
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/42.html
文芸部杏のメンバーを紹介します。
名前をクリックすると、その部員の個人書架に飛びます。
***2年生
**有内毎晩
工学部情報工で文芸部所属。周りから「何がしたいの?」と訊かれます。
書くジャンルはファンタジー寄りですが、日常コメディ系もたまに書きます。
好きな小説家は、谷川流や井上堅二。読みやすい文章を念頭に日々試行錯誤中。
**灰傘日光
中途半端な時期に入部しました。機械システム工でふらふらしています。灰傘といいます。
好きな作家さんは伊坂幸太郎さん、冲方丁さん、伊藤計劃さん。
読むのも書くのもファンタジックなものが好きですが、いろんなジャンルが書けるようになりたいです。
よろしく御願いします。
**万変億化
物質工で動いてる謎の人です。ペンネイム不明(上記は借)でころころ名前は変わ
り、ほぼ気まぐれで決めています。好きな作家は福井晴敏です。誤字脱字に気をつけ
て綺麗な文体を作れることを目指しています
***3年生
**[[雷華>雷華ん家の物置]]
行動が遅いことに定評があります。締め切り破り常習犯から脱出したい芸術科の雷華です。
やりたいことをやりたいように。そう思っていたら、音楽も美術も文芸もやる多芸な人になっていた。はずかしながら、H24年度部長をしています。仕事は遅いですが。。。
ハッピーエンドじゃないけど、バッドエンドとも言い難い。案ハッピーエンドを目指して物語を紡ごうかと思いますが、本質的には、女の子が女の子と仲良くしてれば満足なんです。
好きな作家と言いますと、紅玉いづき ですかねえ。作品でいくなら、オペラ座の怪人やウィキッドが好きです。救われなさがたまりません。
***4年生以上
**[[赤嶋小豆(小豆)]]
言語教育です。男です。漢になれたらかっこいいな、と思っています。
「誰が得するの?」「俺が得する!」という話ばっか書いています。
最近の目標は毎日継続して創り続けることです。
よろしくお願いします。
【好きな作家】
近代文学:中島敦
現代文芸:浅田次郎、池波正太郎
ライトノベル:十文字青、竹宮ゆゆこ
サブカル:橙乃ままれ、無触蹌踉童帝
**[[大町星雨>大町星雨の頭ん中]]
SFやファンタジー系統、時々推理小説を書いています。とうとう4年になってしまった!
好きな小説家は、はやみねかおるとテイモシイ・ザーン。後者はあまり日本では馴染みがないですが……。
私、就活終わったら小説書きとゲームを思いっきりやるんだ。(←死亡フラグ)
**[[替え玉]]
未熟ですが頑張ります。
好きな作家は京極夏彦と乙一です。
良い話と怖い話が好きです。あと、身代わりが三人ぐらい欲しいと思っています。
**[[師走ハツヒト>師走ハツヒトの机の上]]
どうも、元編集長師走ハツヒトです。親サークルの楓ではHPを担当していましたが最近引退しました。
書く小説は基本的にライトノベル寄りです。ファンタジー成分を抜いては生きていけないような気がした時期が私にもありました。
読む小説は、数年前まで500冊を読んだライトノベル好きでしたが、最近は一般的なのや児童書も読みます。あと台本。
好きな作家は野梨原花南さんや吉田直さん、日日日さんや西尾維新さん、中島かずきさん。
最近は過去の部誌に掲載された部員の作品を読み直しました。思ったより読みそびれがあった。
多重兼部&研究&院試&就職活動&単位取得でもうどっちに向かって歩けばいいのか分からない。
**[[夕暮れ]]
工学部です。純文っぽいものを書きたいなと思いながら、今一つ頭の方が追いつかない気がします。
好きな作家さんは、三島由紀夫さんや、最近亡くなられましたが北杜夫さんなんかが好きです。
あと、外国の作家さんならマイケル・クライトンも好きです。
2013-04-26T06:10:26+09:00
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雷華ん家の物置
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/20.html
こちらは雷華の物置でございます。適宜増えます。
ところでらいかって、カメラじゃないのよ。どちらかと言えばライカ犬にあやかったのよ。
クドリャフカすきー。
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[[鮮烈な色>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/21.html]]
[[三題噺 映画地雷変化球>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/163.html]]
[[一題噺 桜>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/164.html]]
***連載作品
[[The fairy tale of St. Rose>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/91.html]]
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2013-04-23T10:48:03+09:00
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桜の呼ぶ
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/164.html
桜の呼ぶ (一題「桜」 4月第二回提出作品)
「ああ、良い天気でございます。しんとしみる、桜の散るのが良く似合う天気であります」
舞台の中央、桜の古木の太い枝に座った人間にスポットが一筋射している。白の照明に、絶えまなく花弁がちらつく。バックライトが青色にゆらゆらと深海のような雰囲気を漂わせている。
「古来、桜のとは儚い物のたとえとして扱われ。それはそう、まるであなたたち人間と同じように。日本に書かれる文字にあるように、人の夢とは儚いものなのです。咲いて数日このように消えゆく桜のように」
一条の光は照明であるが、あるいはまるで雲の隙間から差す月の満ちた光かとも見える。
「人の儚いとは夢ばかりか。人はとめどなく溢れる夢を散らせるにとどまらず、そのただ一つの命さえいともたやすく夢か桜かのように散らせてしまう」
ああ、と溜息をつき袂を目に当て、大きな動きで目元を抑える。
しかしその口元は冷たく笑っている。
「おかげで。そのおかげで私は美しく咲ける」
笑顔を隠すこともなく素早く大きな動きで袖を返して、右手を幹の根元に向ける。
「あれをごらんなさい。桜と人は引きあうものなのです。安定を失った人間は、桜に呼び寄せられるのです。私が呼んでいるわけじゃありませんけれども、あちらからよってきていただけるなら随分と有難いことでもあります」
枝に座った人のセリフの間に、徐々に明るくなる白のスポットに照らされ、木の根元、幹の一部と見えていた瘤が、白い顔を照明に向け、木の色に似たぼろをまとった男性と解る。
「知っていますか? 桜にまつわる話には、人の血が必要なのです。桜の下に首が埋まっています。桜のなかには人が眠っています。桜が長く生きるには、人が必要なのです。そんな話が他のどの木より多いのです。ほら、そこでもまた一つ」
「ああ! いとよ! お前は何故奴を求めた! 俺はいらないというのか」
両腕を高く月に伸ばして、悲痛に男は叫ぶ。
「いと、俺のいと! 俺に愛を語らない口で、誰に愛を語ると言うのだ。俺を見ることの無いその目で、誰を見ると言うのだ! 」
見開かれた瞳が、白い光を反射して、光る。
男は拳を膝に叩きつけて歯ぎしりを交えながら、じょじょに苛立ちを高まらせていく。
「あの腕は俺の物だ。あの髪は俺の物だ。あれは俺の物なのだ! 奴にくれてやるものか。いとは俺の女だ」
「俺の物でなければならないのだ。俺の元に無いのなら、俺が取り戻さなければならないのだ」
「奴が邪魔なら奴はいらない。俺が俺の物を所有して何が悪いというのだ。俺は何一つ間違っていない。ああそうだとも。俺はいとを所有するものなのだ。いとを思い通りにすればいいのだ。俺の元からいとを奪ったのだ。奴の元からいとを奪い返してやればいい! どんな手を使ってでもだ!」
言い続ける激しいしぐさをそのままに、音量を落とし、桜のセリフをかぶせる。
「おやおや、良い具合です。今年の花には赤色が足りないと思っていたものですから、丁度いい。きっと良い色をくれます。ほら、今にも」
思いつめた様子で立ち上がり、後ろ手に刀を掴み着物の裾を蹴立てて下手に走って退場。
「行ってらっしゃいませ。お帰りお待ちしております」
冗談めいた冷たい頬笑みのままひらひらと手を振り、照明が絞られて消える。
あらい息遣い。女性の悲鳴。無地の質素な着物をまとった女性が、後ろを気にしながら、追い立てられるように上手から現れる。
「おやめくださいませ! 松吉さま! 」
「何を言う。お前は俺のものだろう。俺に逆らう事は許さないと言ったのに、聞かなかったのはお前だ」
いとを追って、上手から登場するにあわせ、枝の上で桜の精が手を叩いて喜ぶ。
「良い感じに役者がそろってきましたよ。ほら、もうすぐお待ちかねの見世物です! 」
いとは更に逃げようとして桜の正面を通り過ぎようとして躓き、背後の松吉からはいずってでも逃げようとするが、手足が震えて動けない。松吉はその正面に迫り、無表情でいとを見下ろす。
「なぜおれをそんな目で見るのだ。なぜそんなに恐ろしいものを見る目で俺を見るのだ」
「あ、あなたが恐ろしいのです」
「なに」
「あなたの顔が恐ろしいのです。まるで鬼のような顔がおそろしいのです! あなたは鬼です! 」
「何だと」
衝動的に松吉は左手に持っていた刀を抜きはらい、鞘を投げ捨て、上段に構え、わずか逡巡ののち、袈裟に切りおろした。
「ああ! 」
切られた瞬間背景のが赤に変わる。
悲鳴をあげ、痛みに悶えあえぐ姿を淡々と見下す松吉。苦しみはしばらく続き、段々と狂気じみていた松吉の表情が穏やかになって行く。同時に、照明の色が青に戻って行く。
「これで、よかったのだ。これで、いとは俺の物になったのだ」
動かなくなったいとの横に膝をついて、肩を抱く松吉。その目が重い深気にとじられる。
「冷たいな。いと。お前はいつからこんなに冷たくなったんだ」
目を細め、開き、懐から小刀を取り出し、ゆっくりと、鞘を抜く。
しばらく刃を見つめ、目を見開いて瞬間に逆手に持ちかえ、カタカタと震える右手を左手で抑えるように握り締めて、一息に自らの喉を突いた。
再び赤に変わる照明。絞られる白のスポット。
舞台の上にはまた最初と同じように、枝に座った桜の精だけが白く浮かび上がっている。その化粧は白塗りからいくらか赤みが増している。
「良い具合でした。私の寿命がいくら延びたことか。ほうら見てごらんなさい。花弁にいくらか朱が差したでしょう。この二人の流した悲壮な血が、移ったのです。ほうら、美しい」
花弁を受けるように手のひらを広げ、無邪気に笑う。
「それにしても良い色です。人間のおかげですねえ。この花が散る後三日。存分に人々の目を楽しませるのでしょう、その二人の命が。おや、夜が明けてくるみたいです」
バックライト青から紫がかりはじめる。
「それじゃあ、また次の機会に。私はもう休みますからね」
手を振って枝に立ち、木の裏に回って消える。朝が来るように明るくなる照明。倒れていたはずの二人の姿は無い。
幕
2013-04-23T10:46:37+09:00
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右メニュー
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**書架マップ
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***[[部誌書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/27.html]]
-[[2010杏夏部誌>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/28.html]]
-[[2010杏まほろば部誌>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/51.html]]
-[[2011杏春部誌>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/92.html]]
-[[2011杏夏部誌>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/126.html]]
***[[個人書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/16.html]]
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***[[連載作品書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/88.html]]
-[[こえをきくもの *師走ハツヒト>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/89.html]]
-[[ステラ・プレイヤーズ *大町星雨>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/90.html]]
-[[The fairy tale of St. Rose *雷華>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/91.html]]
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**更新履歴
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2013-04-05T23:40:33+09:00
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個人書架一覧
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/16.html
こちらは部員の執筆した作品を収めた書架になります。
部誌ごとに作品を探したい場合は[[部誌書架一覧>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/27.html]]からどうぞ。
以下の名前のリンクから、それぞれの棚へお進みください。
***[[大町星雨>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/14.html]]
***[[師走ハツヒト>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/18.html]]
***[[雷華>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/20.html]]
***[[小豆(赤嶋小豆)>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/22.html]]
***[[替え玉>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/45.html]]
***[[共同制作作品>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/25.html]]
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2013-04-05T23:37:48+09:00
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はれのち 2
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/95.html
目が覚めると、今度は家に帰って来ていた。
「今日はお泊りするからね」
従兄がそう言ったので少年は、わぁい、と喜んだ。早くお父さんとお母さんが帰ってくればもっと楽しいのに、と思った。
朝になった。まだ雨は降り続けている。伯父さんと伯母さんと従兄に、おはようございます、と挨拶をした。
伯父さんが笑顔で言う。
「今日からしばらく、学校を休もうな」
「なんで?」
少年が聞く。
「お父さんとお母さんがいないからだよ」
「おとうさんとおかあさんがいないと、がっこうをやすむの?」
「そうだぞ」
よくわからなかったが、伯父さんがそう言うのだからそうなのだろう。少年は家で伯母さんとお留守番をすることになった。
少年は茶の間で、従兄のテレビゲームを借りて遊んでいた。外では雨が降っているし、クラスの友だちはみんな学校に行っているから、そうするしかなかったのだ。従兄のゲームはどれもオトナな感じがして、思う存分それで遊んでいる自分もその仲間入りをしている気分になってくる。でも段々ゲームに集中できなくなってきて、楽しくなくなってしまった。変な声が聞こえてきたのだ。それは小さな小さなひそひそ声で、周りのどこからでも聞こえてくるような気がした。
少年はその声の出所を探す事にした。
今いる部屋から始まり、廊下、台所、玄関、客間、茶の間、二階の部屋とひと巡り。しかし声の居場所は分からない。そこにいるのかと思ったら、いつのまにかひそひそ声は別の場所に移動しているのだ。
「どうしたの?」
食器洗いを終えた伯母さんが少年に尋ねた。
「ひそひそしてる」
「ひそひそ?」
伯母は首をかしげたが、気にしない事にした。少年が一人遊びをしているのだと思ったのだ。
「おばさんもさがしてね」
「うん、分かった」
伯母さんはそう言って洗濯の用意を始める。少年はまた声を頼りに家じゅうを歩き回った。
「そと、かなぁ」
少年は玄関に向かう。靴をはいてドアノブに手をかけた。すると、ひそひそ声がすぐドアの向こうから聞こえてきた。少年は興奮して、勢いよくドアを開ける。そこには雨宿りをする二匹の野良猫がいた。猫は驚いたように雨の中へ逃げていった。
ひそひそ声がぴたりと止まった。
「ねこのおしゃべりだったのかなあ?」
少年は不思議に思う。
すると、今度はひそひそ声が頭上から聞こえ始めた。雨に構わず庭に飛び出て屋根の上を見あげる。ベランダと屋根の隙間に二羽の小鳥がいた。小鳥は少年に気がつくと飛び去ってしまった。ひそひそ声はまた途切れた。
「こんどはことりさんのおしゃべり!」
少年はそう叫んで庭に視線を走らせる。動物の姿を探したのだ。しかし水溜りはあれど、動く物はどこにもいなかった。少年は玄関に戻って傘立てに向かった。外に出かけて動物を探そうと思ったのだ。すると、今度は家の中の方からひそひそ声が聞こえ始めた。
「また!」
少年は傘を戻し、靴を脱いで家の中に戻った。そしてまたひそひそ声を探した。ひそひそ声は大きくなっている。少年は時折、そのひそひそ声から自分の名前を聞き取った。一体だれが自分の話をしているのか興味が沸いてくる。もしかしたら、ネズミのおしゃべりかも知れない。
色んな部屋を探していくと、仏壇がある部屋にたどりついた。その部屋からひそひそ声は聞こえている。それは仏壇の方から聞こえてきていた。
「なんだろう……」
仏壇の近くの床に、あの「ほうじせんたぁ」で見た、大きな綺麗な湯呑のような入れ物が二つ置いてあるのを少年は見つけた。伯父が、お父さんとお母さんは死んだんだよ、と言っていたのを思い出した。
声は入れ物から聞こえている。
お父さんとお母さんの声だ、と少年は思った。少年は入れ物の前に座って、どうしてそんなところにいるの、と尋ねた。ひそひそ声はぴたりと止まった。
右の入れ物がお父さんの声で言った。
「死んでしまったんだ」
左の入れ物がお母さんの声で言った。
「死んでしまったのよ」
少年は、うそつき、と言って二つの入れ物を突き飛ばした。でも二つともとても重かったので、少し床を滑っただけだった。
少年は泣きそうになりながら茶の間に戻った。テレビゲームを始めようとコントローラーを手に取った。すると突然テレビが言った。
「うそじゃないよ、ほんとの事だ」
同調するようにテレビゲームが言った。
「死んでしまったんだよ」
少年はコントローラーを放りだした。逃げるように廊下へ飛び出した。すると今度は壁が物を言った。
「死んじゃったんだよ」
床が言った。
「死んだのよ」
少年は目を閉じて耳を塞いだ。床にうずくまって全ての感覚を閉じた。声は聞こえなくなった。もう何も聞こえなくてもいいと本気で思った。
やがて少年は泣き始めた。
外では雨が止んで晴れになっていた。
***[[戻る>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/94.html]] [[2011杏春部誌に戻る>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/92.html]]
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2013-04-05T23:36:55+09:00
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はれのち 1
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/94.html
雨が降り始め「梅雨の季節です」とテレビが言い始めたその日、一人の少年が親を亡くした。交通事故だった。一人息子の八回目の誕生日プレゼントを買うために街に出かけていた時、信号無視をした車に突っ込まれてしまったのだ。
誕生日に両親を亡くした少年は今、お葬式に出ている。
少年にはまだ実感がない。正月やお盆にしか顔を合わせない親戚が突然やって来て、あたふたと何やら働き始めて、気がつけば皆黒い服を着て、少年も黒い服を着せられて、今は両親の顔写真が乗った、仏壇を豪華にしたようなものの前に座らされている。
お坊さんが奇妙な調子で何か言っている。
雨の音がそこに加わり、少年はうつらうつらと眠くなってきた。気がつけば寝ていた。
目を覚ますと少年は車の後部座席にいる事に気がついた。隣には高校生の従兄が暗い顔でうつむいている。従兄は少年が目を覚ました事に気がつくと、無言で頭をなでてきた。少年は従兄が泣いている事に気がついたので、どうしたの、いじめられたの、と尋ねた。従兄は首を振った。それでも泣いているので、少年は、変なの、と言って窓の外を見た。雨がまだ振っていた。
少年の乗った車は、「ほうじせんたぁ」という所に着いた。少年はきっと「じどうせんたぁ」や「げぇむせんたぁ」の仲間に違いないと思った。「じどうせんたぁ」も「げぇむせんたぁ」も楽しいところだ。「ほうじせんたぁ」も楽しいところだろう。でも建物には「ほうじせんたぁ」と書いてあるのに、親戚は皆、「さいじょう」と言っていたのが不思議だった。
少年にとって、楽しいところという予想は少しだけ正しかった。親戚みんなでお菓子を食べ(何と食べ放題だった!)、たくさんおしゃべりをしたのだ。途中の伯父さんの長い話や、暗い雰囲気や、お父さんやお母さんがいないのは嫌だったが、我慢できた。もう小学生だから頑張ったのだ。
「これから霊柩車が来るからね」
従兄が言った。
「きゅうきゅうしゃのなかま?」と尋ねると、従兄は少し考えて、うん、と頷いた。少年は、今日は色んな「なかま」を見つけるなぁ、と思った。
霊柩車は、大きな大きなそれは大きな長い箱を二つ運んできた。それは「棺」と呼ばれているものだった。
お父さんのお兄さん、伯父に呼ばれたので行ってみると、だっこをされた。そしてその大きな箱を覗きこまされた。左の箱にお父さん、右の箱にお母さんが寝ていた。
「お父さんとお母さんにお別れを言おうね」
少年は首をかしげた。
「なんで?」と尋ねると、伯父は目線をあちこちに迷わせた。少年はその視線を追いかけた。親戚が次々と目を反らしていく。伯父さんは一度、口を真一文字に結んで、ごくりと咽喉をならして言った。
「お父さんとお母さんは、死んだんだよ」
少年は首をかしげた。
「まだ、分かんないか」
伯父はそう言って、少年を下ろした。
少年は理解できなかったのではなかった。学校でのケンカは「しね!」で始まって「ごめん」で終わるし、蟻を踏みつぶして殺したりすることある。死の意味はちゃんと知っている。ただ、お父さんとお母さんが死ぬわけないのに、おじさんは変な事を言うなぁ、と思ったのだった。
伯父は長い箱に手を合わせた。それから、親戚全員が伯父と同じ事をするために列を作った。
やがてその長い箱は、奥行きのある棚のような場所に入れられた。これから火葬されるのだが、少年はお父さんとお母さんが新しい遊びをしているのだと思った。
「ねぇ、ぼくもあれやりたい」
少年が言うと、伯父が、え、という顔をした。
「何だって?」
少年は説明しようと思ったが、長くなりそうで面倒になってくる。少年はなんでもない、と言って説明するのを止めた。お腹も空いてきたのだ。伯母が、お昼ごはんを食べよう、と呼んだせいでもあった。
お昼ごはんはおにぎりだった。とても大きいおにぎりで、少年は一個でお腹いっぱいになってしまった。従兄が五つも食べたので、すごいなぁ、と感心した。
「ほうじせんたぁ」で働いているらしい人が、終わりました、と厳かな声で言った。親戚達は突然静かになった。さっきお父さんとお母さんの入った箱がしまわれた、棚のような場所に集まるらしい。少年はお腹がいっぱいになったので眠かったが、従兄に促されたので一緒に行った。
棚の中から取り出されたのは、鉄の大きなトレーのようなものだった。その上には白い粉っぽい物体がいっぱいあった。
従兄が神妙な顔になってそれを見ていた。少年は瞼の重さと戦いながらそれを見ていた。
その白い粉っぽい物体は、綺麗な大きな湯呑みたいなものに移されていった。親戚が一人一人、大きな箸でその物体をつまんで入れていった。入りきらないので「ほうじせんたぁ」の人が、ざっくざっく、とその物体を砕きながらスペースを開けた。何とか全部入りきった。
それをもう一回した。
少年はもう眠いのが我慢できなくなってきた。眠い、と伯母に言うと、もうちょっと我慢して、と言われた。「いや」と少年はだだをこねる。従兄がおんぶしてくれたので、その背中で寝ることにした。
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2013-04-05T23:36:38+09:00
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小豆(赤嶋小豆)
https://w.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/22.html
&bold(){小豆のページです。}
小豆の書いた小説を貼っていきます。
現在は「赤嶋小豆」で書かせてもらっています。よろしくお願いします。
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[[正義と正義と正義>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/23.html]]
虫のお話。ファーブル昆虫記とシートン動物記を足して都合の良いところを抽出したようなお話。
2009年銀嶺祭初出
[[It is God!>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/24.html]]
神様のお話。
いつが初出か忘れてしまった。
[[黒猫スリーデイズ>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/29.html]]
2010杏夏部誌掲載作品「黒猫」。2013年改題「黒猫スリーデイズ」。
女子高生を書いてみたかったの。
ダンゴムシは口を閉ざす [[1>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/50.html]] [[2>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/52.html]] [[3>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/53.html]] [[4>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/54.html]] [[5>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/55.html]] [[6>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/56.html]]
2010杏まほろば部誌掲載作品。
ダンゴムシとワラジムシがケンカする話。
はれのち [[1>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/94.html]] [[2>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/95.html]]
2011杏春部誌掲載作品。
少年が両親を亡くす話。
コンストン物語 [[1>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/127.html]] [[2>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/128.html]] [[3>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/129.html]]
2011杏夏部誌掲載作品。
狐(コン)と石(ストーン)の友情物語。
2013-04-05T23:28:41+09:00
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