ステラ・プレイヤーズ 10*大町星雨

 指定された場所に行くと、センサーで感知できないほど小さな空き地があった。せいぜい町の公園一個分。この宇宙船だと、五、六個並べられるぐらい。いくら操縦方法を全部覚えてても、これだけ狭いとさすがに手が汗ばむ。
 俺は手順どおりに戦闘機を着陸させた。ちょっと端により過ぎたかもしれないし、里菜の顔色が青白くなってるけど、成功は成功だ。
 キャノピーを上げて外に出る。冬だった地球(正確には日本)に比べてずっと暖かい。初夏って言ってもいいくらいだ。
 二人して上着を脱いでいると、森の中から数人が出てくるのが見えた。服を脇に抱えて、そちらに視線を向ける。
 四人中三人が迷彩服、一人がしわのない青い軍服を着ていた。迷彩服たちが素早く銃を向けてくる。……悪いことした覚えは無いんだけどな。まあ俺が今着てる服は確かにアラルのだけど。
 両手を上げた俺たちに向かって、軍服男が口を開いた。
「武器を持っていれば全て捨てろ」
 奴の背が高いんで、自然と俺たちを見下ろす格好になる。それと口調がぴったりだ。さっき通信してきたのも、この男かもしれない。
「やなタイプ」
 上着の裏に取り付けていた短剣を外しながら、里菜が日本語でつぶやいた。俺も軍隊に見えないように頷く。
 俺はエネルギー銃を脇に放った。里菜は散々迷ってから短剣を捨てた。
「名前と用件を」
 迷彩服二人が武器を拾う間、軍服男が言った。俺たちはチラリと目配せする。俺が口を開いた。
「知っての通り、俺たちは地球から逃亡して来ました。あなた方に危害を加えるつもりは全くありません。保護していただきたくお願いします」
 そう言って頭を下げる。里菜も横で慌てて真似をした。
「危害いかんはこちらが判断する」
 あっさり返された。頭下げて損した。
「ひとまず牢行きだ。お前らがスパイとも限らぬ。まあ自分で潔白を証明できるなら別だがな」
 迷彩服たちが銃を向けたまま近づいてきた。里菜が顔をしかめながら、頬から耳にかけてぬぐった。髪が一瞬押し上げられて揺れる。俺は軍服男を見ながら唇を噛んだ。
 と、里菜の側から寄ってきていた迷彩服が立ち止まった。驚いたように瞬きを繰り返している。それにつられるように、他の迷彩服と軍服の動きも止まった。全員目を見開いている。
 迷彩服の一人が、持っていた里菜の短剣をつかんで、引き抜いた。息を呑むのが聞こえる。軍隊の中に無言のざわめきが生まれた。軍服は青汁をバケツ一杯飲まされたような顔で俺たちを睨みつけている。状況の分からない俺たちは、そっと顔を見合わせる。
 しばらくして、軍服がきびすを返しながら怒鳴るように言った。
「寮の空き部屋に通せ! その後の扱いは上層部との話の後だ!」
 俺たちは、武器も向けられずに森の中を進んでいった。時々里菜が質問をぶつけてきたが、全部「後で」とだけ答えた。こっちも混乱してるんだ。ちょっとほっといてくれ。



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最終更新:2012年01月20日 16:15