The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に― 11*雷華

 彼女の部屋は、一年生の二人が使っている部屋よりもだいぶ広く、二間続きで、真ん中に大きなソファが置いてあり、どこかの高級ホテルの一室を思わせる作りになっていた。
「じゃあ、先に使わせてもらうね」
 言ってアリスがさっさとシャワールームに入ると、ソファに腰掛けた愛和に、ライラが紅茶を出してくれた。
「ミルクはおいてないけど、砂糖ならあるわよ。いる?」
「いえ、ストレートでいいです。ありがとう」
 くるくるとスプーンでかきまわし、イギリスの特徴的な丸いティーバッグを小皿に出す。
 香りはイングリッシュブレイクファスト。時間的に朝の方が似合う気がしないでもないが、いつだっておいしい紅茶はおいしい。
「さてと」ライラが向かいに腰掛けた。私服らしいロングのワンピースが良く似合う。
「ほんと、エンジェルに来てくれてありがとう。七年間でもしかしたら一番の出来事かもしれないわ。あら、よく理解できないって顔ね。実はね、エンジェル寮はほんとここ数年何をやっても最下位でね」
 そこで一息をつくようにカップに口をつける。
「だから、あなたが来て、二十八年ぶりにリトルブルーローズになって。入試の一位二位はあなたたちよ? 三位は確かリトルレッドローズのあの子だったけど、続く四位もエンジェルの子、ルナだったかしらね。こんなにうれしいことは無いわ」
「そうなんですか」
 愛和は勿論そんな内情を知っていて寮を選んだわけではない。希望を聞かれたときに、ただ響きが良いというだけでエンジェルにしたのだ。それにこれが一番分かりやすいキリスト教のネタであった。
「そうね。偶然だとしたらその偶然を起こした神様にも感謝しなくちゃね」
 そうかな。そうかも。と、愛和は紅茶を一口飲んだ。


 おかげさまで二人ともさっさとシャワーを浴びることが出来、お休みと挨拶をして部屋を出た時、シャワールームの前にはまだ人が待っている状態だった。
 部屋に帰り、荷解きの続きに励む。
 夜の十時も過ぎたくらいに、また、部屋をノックする音が聞こえ、今度は愛和が出た。
「えへへぇ。二人とも昼の説明は別行動だったからあ、これからみんなで二人を囲んでちっちゃいパーティをしようかって話なの。どう?」
 一も二も無く二人は部屋を出た。

「大天使様きたよー」
ミリィの声に、八人部屋の一つに集まったエンジェルの一年生が歓声を上げた。
「ふたりとも、自己紹介してよ」とルナがいい、まず愛和を輪の中心に押し出した。
  真ん中でぐるりと見回すと、自分と同じくらいの年の、少女たちが、興味津々の目で自分を見ていた。七年間このメンバーで一つのクラスとして生活するのだと思うと、ドキドキワクワクしてくる。
 愛和は満面の笑顔で自己紹介を始めた。



                      つづく



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最終更新:2012年07月18日 15:14