2012年5月21日部会 リレー小説

『ちゃーんちゃーんちゃ ちゃんちゃららっちゃ ちゃーんちゃーんちゃちゃーん』(ラジオ体操)
今日もさわやかなあさである。
『腕を前からあげて、大きく背のびの運動から、はい!!』
晴れ晴れとした天にむかって、指示通りにバンザイをする一同。
『一、二、三、四っ! 五、六、七、八っ!』
リズム通りに同じ動きを繰り返す。いわゆるルーチンワークである。
さてここに、そのルーチンワークを壊そうと考えた少年がいた。
まず常に両足をついているのが納得いかない。
もっと動いた方が絶対運動になるって!と少年は考えた。
という事で、行進のように足を踏みならしてみる事にした。
それでも物足りなさを感じた少年は、手も打ち鳴らし始める。
ラジオ体操であることも忘れつつ、自分1人で盛り上がってきていた。
まわりのひややかな視線にきがつかないまま、少年は足をふむならし手を打った。
『腕を回します』
もちろん従わない。腕は地面につけて、足を天にむけてのばす。
「ちゃんとやれお前」
そして案の定怒られた。
しかしそこで黙って元通りのつまらない体操に戻る彼ではない。
「僕はこんな生温い運動じゃ満足できません。もっとやりがいのある体操がしたい」
言い切った少年。心の中で拍手が鳴り響く。心の中だけで。
白けた視線を寄越して体操を続ける周囲の中で、一人の男が歩み出た。
毎年ラジオ体操に参加し、今年で30年皆勤となる近所のじいさんである。
そのじいさんにラジオ体操の重要性をひたすらに説かれた。
「どんあに年をとっても動ける基本的な動作! 若いものも年よりもうごける体操!」
だが、
「オレに、ふれるな!」
頭に平手を打ちこんだのが破滅の引き金となった。まだ続けていた、我流ラジオ体操の蹴りを、爺さんの側頭部に打ち込んだのだ。わざと半分、反射半分の一撃だった……。
かくしてゆうがな一日をおくるために行う公会堂行事にて、暴力ざたをひきおこした少年によって解散となったのであった。むなしく響く、ラジオの声を、誰も止めることもしなかった。

































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最終更新:2012年05月21日 23:08