The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に― 6*雷華

「The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に― 6*雷華」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

The Fairy Tale Of The St. Rose School ―芽吹きの季節に― 6*雷華 - (2012/07/18 (水) 15:02:12) のソース

 はたと三人の手が止まり、皆一様に表情を変え。真顔になる。
「そっか、留学生か」
「ついでに言うなら、昨日聞いたところによればアイナ、学校の生活についての項ほとんど読んでないみたい」
「入学説明会もヨーロッパ以外からは参加義務ないものねえ」
「それに、日本って、聖書はクリスチャン以外は全然知らないって言うし」
「な、なんなの?」
 ひとしきり情報を交換してから、愛和の方を三人が見つめる。
「アイナ、あたしたちの寮はなんていう名前?」
「エンジェル」
「そしたら、天使における最高位って誰か知ってるか?たしか入学試験でも出たが」
「ミカエル。でしょ?」
「そう、ミカエル。そして、ガブリエルは新約聖書において、受胎告知という重要な役割を担っているよね」
 交互に説明をされるうちに、なんとなく愛和も理解をし始めてきた。
「つまり、寮のトップ二か、ってことはほかの寮では名称が変わるの?」
「そういうこと」と、三人の表情が重なる。
「ブロッサム寮はホワイトリリーとバイオレット。ウィング寮はドーヴとクロウ。スター寮はポーラスターとヴィーナスだ。その中のリリー、ドーヴ、ポーラ、ミカエルのなかから、トップ二人がブルーローズとレッドローズ、つまり生徒のリーダーを兼任することになってる。これらすべて、執行部組織を慣例的にシークレットガーデンと呼ぶ。って、本当にしらなかったのか?」
 ルナがきびきびと解説をし、それからやっぱり不思議だと言う顔をした。この学校の一般常識というやつらしい。
「うん。知らなかった。けど今覚えた」
「それからあ、各寮の各学年で二名ずつ、学年のリーダーとして、リトルっていう役職があるよ」
 ミリィが言うと、後をついでアリスが説明を加える。
「私たちの寮なら、リトルミカエルとリトルガブリエルだね。今年はミカエルはアイナじゃないかな」
「え、なぜ?」
 ルナが聞いた。
「それがさ、昨日二年生のリトルミカエルが言っていたんだけど、この子入学試験で全教科満点だったらしい」
「はぁ!?」
 ルナとミリィが驚いたように声を上げ、当たりの目線を浴びたことに気づいて口を抑えて、ヒソヒソと頭を寄せる。
「それほんとか?あんなに難しかったのに」
「そう? そりゃ、簡単って言うわけじゃなかったけど、そこまで難しくもなかったよ?」
「解けた人が言うなって」
 ルナがため息混じりに言う。
「どうせそういうことならアリスがガブリエルだろ?」
「なんでえ?」
 ミリィが不思議そうに聞く。答えたのはやはりルナだった。
「だって、アリス・サンヴィターレって言えば有名だもの」
「?」
 この疑問符はミリィではなく、アリス本人である。
「今年の入学者に彼女がいるって、ネットじゃ有名な話だよ。八才で名門セントローズに入学だっつってさ」
「えっえぇー………もごもご」
 大声を上げかけたミリィの口を、隣から手を伸ばしてルナが素早く塞ぐ。
「ほんとに?」
 ミリィが確認するようにアリスに聞く。
「ほんと。それにあたしたち二人部屋なのよね。驚いたけど」
「な、きまりだろ?」
「きまりだね」
「あーあ。リトル、狙ってたのにな」
 ルナが残念そうに誰にともなく言う。
「で、でもさ。まだわかんないよ? だって私たちなんにも聞いてないし、それにわたしこっちの事なんにもわからないもの」
 実際お前がリーダーだと言われたところで、愛和にはできる気がこれっぽちもなかった。国籍ははるか遠く、いくら勉強がでいるといえど人格的にもっと良い人は他にもいるだろうし。と考えたのだ。
「国籍が気になるならそれは大丈夫だ。今までにはアラビア語が母国語のブルーローズに中国からきたレッドローズが同時にいたこともある。二人とも立派に務めあげたと聞いた」
「そっか、じゃあ私でもどうにかなるかな」
 不安をぬぐって皆に笑いかける。なんとなくどうにかなるような気もしてきた。
 
 ちょうど、話が落ち着いたところで、二年生のリトルミカエル、セーラが一年生に向けて言った。
「そろそろ部屋に戻って着替えて来てください。時間厳守で寮のホールに集合です」

 一年生がぞろぞろと立ち上がり部屋に向かう。その波にのって四人も食堂の出口に向かった。
 愛和が食堂を出る前にセーラの方を振り向くと、ちょうど視線があい、セーラが微笑んだ。その胸には、昨日は私服だったから付けていなかったらしい青い翼をかたどった小さなバッチが輝いている。
 私もあれを付けられるのかな。と愛和は前を向きながら思った。



***[[戻る>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/137.html]]       [[進む>http://www47.atwiki.jp/bungeibuanzu/pages/139.html]]











.