私家版・高校生物授業wiki
11年度1学期期末試験
最終更新:
bioota2010
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Ⅰ.次の文章を読み、以下の設問に答えなさい。
※授業中、漢字で書かれた語句に関しては漢字で書くこと。
※授業中、漢字で書かれた語句に関しては漢字で書くこと。
いまでこそ、「何が生物の発生を支配しているのか?」という説明には、遺伝子を用いた説明が一般的になされています。しかし、発生学のおよそ2300年間に渡る歴史のなかでは、この問いに対する説明として、長らく神学や形而上学が援用されていました。少なくともこの問いについて、物質・分子の働きに限定して説明する試みがなされるようになったのは、19世紀後半のドイツにおいてです。以下、発生のメカニズムの解明のためになされた、幾つかの実験を概観しましょう。
実験生物学の最初期に解明されることを望まれたのは、前成説と後成説のどちらがより発生のメカニズムとして妥当な仮説であるか? という問いでした。代表的な実験として、以下の3つをあげることができます。
実験生物学の最初期に解明されることを望まれたのは、前成説と後成説のどちらがより発生のメカニズムとして妥当な仮説であるか? という問いでした。代表的な実験として、以下の3つをあげることができます。
- 1881年、実験発生学の創始者であるルー(1850-1924)は、カエルの二細胞期の胚の一方を熱したガラス針で焼き殺し、その後の胚発生の経過を観察した。すると生き残った部分は発生を続けたが、完全な胚にならず、半胚となり、まもなく死亡した。
- 1892年、ドリーシュ(1867-1941)は、ウニの2細胞期の胚を100個ほど集め、少量の海水とともに試験管内に入れて激しく振った。すると、分離したそれぞれの割球は、大きさは小さいながらもほぼ完全なウニの幼生として発生した。
- 1898年、フィッシェル(1868-1938)は、クシクラゲを用いて上記のドリーシュの実験を追試。クシクラゲの幼生は通常、8個のくし板を持つが、2細胞期に割球を二つに分離すると4個のくし板を持った幼生が、4細胞期に4つの割球を分けると2個のくし板がある幼生が発生した。この現象は1905年にアメリカのコンクリン(1863-1952)によってホヤでも観察された。
彼らの実験により、生物の発生のメカニズムとして後成説の妥当性が証明されましたが、それは同時に大きな問いを生むことになりました。つまり、生物の形態が形成されるきっかけを担う部分はどこか? 発生運命はある時期に決定されるはずだが、それはいつか? どのようにして生物の複雑な形態はできるのか? この3つです。この問いに実験を介してアプローチしたのが、シュペーマン(1869-1941)です。
1921年、シュペーマンは、色素が少ないクシイモリと、色素が多いスジイモリの2種類のイモリの初期原腸胚を用いて、予定表皮域と予定神経板域の一部をそれぞれ切り取り、交換移植実験を試みました。その結果、移植された予定( ① )域は( ② )に、また予定( ② )域は( ① )に分化することが観察されました。この実験から、( ④ )の予定運命は( ⑤ )に決定されることがわかりました。
1921年、シュペーマンは、色素が少ないクシイモリと、色素が多いスジイモリの2種類のイモリの初期原腸胚を用いて、予定表皮域と予定神経板域の一部をそれぞれ切り取り、交換移植実験を試みました。その結果、移植された予定( ① )域は( ② )に、また予定( ② )域は( ① )に分化することが観察されました。この実験から、( ④ )の予定運命は( ⑤ )に決定されることがわかりました。
●予定運命図(原基分布図)
続いて、1924年、シュペーマンは、イモリを用いて胚の一部を移植する実験を試みました。イモリのある時期の胚ⅰの、ある部分ⅱを切り取り、同じ時期のほかの胚の腹側の胞胚腔に移植すると、神経管が形成され、やがてその部分に本来の胚とは別の脊索などを含む胚構造(2次胚)が形成されることを発見しました。この実験から、胚には、未分化な細胞群に働きかけて、それが特定の組織・器官に分化することを促す作用ⅲがあることが明らかになりました。この作用をもつ部分ⅳの代表例が下線部ⅱの部分であるといえます。分化した部分は、さらにそれ自身が二次、三次の分化を促す部分となり、体の構造を末端まで完成させていくという仮説ⅴをたてたシュペーマンは、以下に図示した眼球の形成プロセスの観察などでこの仮説を立証し、1935年、発生学者として初のノーベル医学生理学賞を受賞するに至ります。
続いて、1924年、シュペーマンは、イモリを用いて胚の一部を移植する実験を試みました。イモリのある時期の胚ⅰの、ある部分ⅱを切り取り、同じ時期のほかの胚の腹側の胞胚腔に移植すると、神経管が形成され、やがてその部分に本来の胚とは別の脊索などを含む胚構造(2次胚)が形成されることを発見しました。この実験から、胚には、未分化な細胞群に働きかけて、それが特定の組織・器官に分化することを促す作用ⅲがあることが明らかになりました。この作用をもつ部分ⅳの代表例が下線部ⅱの部分であるといえます。分化した部分は、さらにそれ自身が二次、三次の分化を促す部分となり、体の構造を末端まで完成させていくという仮説ⅴをたてたシュペーマンは、以下に図示した眼球の形成プロセスの観察などでこの仮説を立証し、1935年、発生学者として初のノーベル医学生理学賞を受賞するに至ります。
●眼球の形成プロセス
※ 下線部ⅱの部分の働きによって外胚葉から脳が形成されると、その一部がふくらんだのち、ふくらみの先端がくぼんで( ⅵ )に分化する。すると、( ⅵ )に接した部分の表皮から( ⅶ )が分化し、( ⅶ )に接した部分の表皮から角膜が分化する。
※ 下線部ⅱの部分の働きによって外胚葉から脳が形成されると、その一部がふくらんだのち、ふくらみの先端がくぼんで( ⅵ )に分化する。すると、( ⅵ )に接した部分の表皮から( ⅶ )が分化し、( ⅶ )に接した部分の表皮から角膜が分化する。
問1.ルー、ドリーシュ、フィッシェルのそれぞれの実験結果が支持する見解について、それが「前成説」、「後成説」と呼ばれる考え方のどちらであるか答えなさい。
なお、前成説の場合はP、後成説の場合はEを、解答欄に記しなさい。(各2点)
問2.なぜ実験素材としてウニを用いたドリーシュの実験と、クシクラゲを用いたフィッシェルの実験は、それぞれ異なる結果を示したのでしょうか。それぞれの生物種の分化に時期に着目して、3行以内で理由を記しなさい。(6点)
問3.文章中の空欄①~⑤に最も適する語句を、それぞれの語群のうちから一つずつ選びなさい。
(各2点)
〔(①), (②),(③)の語群〕
(ア)移植前 (イ)移植後 (ウ)神経板
(エ)神経板と表皮 (オ)原腸 (カ)表皮
〔(④),(⑤)の語群〕
(ア)外胚葉の一部 (イ)中胚葉の一部 (ウ)内胚葉の一部
(エ)胚のすべての部位 (オ)原口 (カ)胞胚期
(キ)原腸胚初期 (ク)原腸胚後期 (ケ)原腸胚初期と神経胚初期の間
問4.文中の下線部ⅰ~ⅴ、空欄ⅵ,ⅶの指す名称を答えなさい。(各3点)
問5.シュペーマンは実験で、2種類の色素濃度の異なるイモリ胚を用いていますが、その理由はどのようなものでしょうか。3行以内で記しなさい。(7点)
以上
なお、前成説の場合はP、後成説の場合はEを、解答欄に記しなさい。(各2点)
問2.なぜ実験素材としてウニを用いたドリーシュの実験と、クシクラゲを用いたフィッシェルの実験は、それぞれ異なる結果を示したのでしょうか。それぞれの生物種の分化に時期に着目して、3行以内で理由を記しなさい。(6点)
問3.文章中の空欄①~⑤に最も適する語句を、それぞれの語群のうちから一つずつ選びなさい。
(各2点)
〔(①), (②),(③)の語群〕
(ア)移植前 (イ)移植後 (ウ)神経板
(エ)神経板と表皮 (オ)原腸 (カ)表皮
〔(④),(⑤)の語群〕
(ア)外胚葉の一部 (イ)中胚葉の一部 (ウ)内胚葉の一部
(エ)胚のすべての部位 (オ)原口 (カ)胞胚期
(キ)原腸胚初期 (ク)原腸胚後期 (ケ)原腸胚初期と神経胚初期の間
問4.文中の下線部ⅰ~ⅴ、空欄ⅵ,ⅶの指す名称を答えなさい。(各3点)
問5.シュペーマンは実験で、2種類の色素濃度の異なるイモリ胚を用いていますが、その理由はどのようなものでしょうか。3行以内で記しなさい。(7点)
以上