都城王土「ほう…。学園都市か、なるほどこの俺を迎えるに相応しい」4


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「クカカカカッ!……面白ェ 面白ェよテメエ さァてテメエは何回死ねば俺のもとに辿りつけるんだァ!?」


ベクトル反射により無数の瓦礫や小石が凄まじい速度で飛来する。

目前に迫るそれは喩えるならば銃口を無数に並べたショットガンのよう。
無数の凶弾に正面から相対した都城王土は微塵も躊躇うことなく飛び込んでいった。

小石を弾き飛ばし、砂利を叩き落とし、鉄材を蹴り飛ばす様はまさに獅子奮迅という言葉が相応しい。

だが。
それでもなお一方通行の放った嵐のような弾幕は凶暴で獰猛で分厚かったのだ。

「ぬっ!?」

小さな小さな小石の欠片が都城王土の爪先を撃った。
そして、その機を逃さんとばかりに暴風雨が都城王土を蹂躙する。

グシャグシャと耳を塞ぎたくなるような人体の破壊音。
脇腹に鉄材がめり込み、首筋を小石がえぐりとり、砂利が肉に食い込んでいく。

だがしかし、それでも都城王土は止まらない。

数瞬か数秒か数分か。
時間という概念すら置き去りにしたような刹那の刻。

都城王土は、その身体に降り注ぐ凄まじい破壊と引換に。
ついに。ようやく。念願の。

一方通行の目の前、数メートルに辿り着いた。

それはつまり都城王土の拳が届く射程圏内ということである。


.

「どら、待たせたな。 これより退屈はさせんぞ?」


ボタボタとおびただしい血を垂らしながら、それすら些事であると言わんばかりに都城王土が笑った。

「はァ~… よくもまァそのザマで生きていられるもんだわなァ?」

心底感心したというふうに目を見開くは一方通行である。
それは、目前に立つ満身創痍の金色の男に対する彼なりの賛辞であった。
そして都城王土はそんな賛辞を当然と受け止めて返事をする。

「俺が行くと決めて俺が行くのだ。 あれしきの妨害など問題にならん。 避けれないのならばそのまま突き進むまでのことよ」

そう言って尊大に笑う都城王土。
だが、それを聞いた一方通行は何処か苦しそうに決定的で残酷な事実を言い放った。

「…けどよォ 忘れてねェか? オマエの拳は俺には届かねェんだよ」

そうなのだ。
例え一方通行の暴虐の化身のような嵐を抜けようと。
その先にあるのはベクトル反射という無敵の盾。

どれほどの犠牲を払ったとしても、ただの拳でこの堅牢な要塞は破れはしない。


砲撃もいわんやと言わんばかりのその拳が“直撃”すれば、それこそ一方通行の身体など一瞬の痛みを感じる間もなく生体活動を停止するだろう。
だが、それは反射膜を超えたらという有り得ない話である。

「確かによォ大層な威力だわなァ …けどそンなこたァ関係ねェ。
 オマエが俺に触れでもしたらよォ …全身の血管と内臓が根こそぎ破裂して死ぬぜェ?」

そして、さらにもう一つ。

「テメエは“アイツ”じゃあねえ そこンとこァとっくのとうに確認済みだ」

“アイツ”とは誰のことかなど都城王土は判らない。
だが、目前に立つ白髪紅眼の男の言っていることは事実なのだろうと都城王土は理解した。

「…ふむ。 つまりだ。 おまえは何が言いたい?」

そう促し、先を問う都城王土に一方通行は静かに答える。

「あァ テメエは死ぬ思いをしてここまで辿りつきゃしたが… ザンネンなことにここが行き止まりなンだわ」

しかし、それを聞いた都城王土はとても楽しそうに笑った。

「…行き止まりだと? 面白いことを言うな」

ゆっくりと拳を握り締め

「生憎、俺はどこぞの生徒会長みたいに武術に聡いわけではない。 だから俺はただ俺の気の向くままに全力で貴様を殴るとしよう」

弓矢のように振り上げたその拳を見て、一方通行は吐き捨てるようにこう言った。

「……馬鹿だなテメエは」



「ぬんっ!!!!」

裂帛の気合と共に都城王土の握りしめた拳が一方通行の顔面めがけて繰り出された。
人智を超えた速度と威力はもはや武術などが及ぶ域ではない。
それはまさしく一撃必殺の兇器である。

だが…その拳が一方通行に届くことは無かった。

薄皮一枚の反射膜。

けれど、その薄皮一枚の反射膜こそが一方通行を学園都市最強の能力者たらしめている原点なのだから。


「ぐっ!?」


くぐもった呻き声と共に拳を放ったその姿勢のまま全身から血を吹き出す都城王土。
パシャリと軽い音をたてて吹出した血が一方通行の服に飛び散る。

「…ホント 馬鹿だなァテメエは 言ったよなァ? 俺に触れれば死んじまうってよォ?」

どこか寂しそうな口調でそうポツリと呟く一方通行。
チラリと横目で意識を失ったまま倒れている子供を見る。
何故金髪の男があの子供を眠らせたのかなど、今更判るわけもない。

先程までの胸の高揚感は既にどす黒い感情に変わり、一方通行の胸の中心に鎮座していた。


.
「…チッ 意地なんざはらずに逃げ出しゃあよかったのによォ…」

そう呟くと踵を返す一方通行。

「服…汚れちまったなァ このまま帰りゃあのガキがギャーギャーうるせえンだろうが…」

けれど今はそんな事もどうだっていい。
服が血で汚れたならばまた買えばいい。
それよりも胸に渦巻く重圧感から逃れることのほうが先決だ。
まるで逃げるようにこの場を去ろうとして。 一方通行の足が止まった。

“何故服に血が付着している?”

薄皮一枚の反射膜は一方通行の全身を覆っているのだ。
つまりそれが意味することを一言でいうならば。

“シャツに血液が付着することなどありえない”

何も考えること無く、何も考えられず、一方通行は己の胸に付着した血液を払った。
腕の動きにあわせて、血液がピチャリと地面に落ちる。
そして…赤い血が付着していたはずのシャツはシミひとつない普段の姿を取り戻していた。

シャツに血が付いているわけでもない。 

金髪紅眼の男の血液という残滓が逆らうように“反射膜”の表面に付着している?

その時だった。

意味が判らず硬直しきった一方通行の背に朗々たる声がかかったのだ。



「 『 待 て 《 マ テ 》』」


「俺をおいて一体何処に行くつもりなのだ?」


「……ンだとォ!?」


動けない、振り向けない。 指先ひとつすらピクリとも動かない。

知っている。
一方通行は知っている。
さっきのは『王の言葉』

声の主は金髪紅眼の自分によく似た“馬鹿野郎”に間違いない。

ベクトルを反射し動くことも忘れ、立ち尽くしたままの一方通行にやれやれ、といった独り言が風に乗って届いた。

「ふむ、“攻撃がヒットする瞬間に回復する”か。 俺にしては不安ではあったがどうやら“再現”はできたようだな」

「……よォ? どういうことだァ? 教えやがれよなァ」

背を向けたまま、何故か親しげとも取れる調子で。 一方通行がそう背後に立っているであろう男に声をかけた。
そんな問いかけを聞いて。
フン!と耳にたこができるほどの笑い声と共に男は言った。

「あぁ…そういえば言ってなかったか。 俺の身体は筋肉、骨格、神経はもとより循環器、呼吸器、血液に到るまで改造されているようなものでな」


――ここで少し二人の少女の事を説明をしなければならないだろう。
箱庭学園特待生2年13組の二人の異常者《アブノーマル》。

名瀬夭歌と古賀いたみという少女のことだ。


名瀬夭歌。
少女の名は偽名である。
真の名は黒神くじら。
その姓が示すとおり箱庭学園生徒会長黒神めだかの親族であり。
そして、名瀬夭歌は人体を生物学的に改造するというただ一点においては完璧超人と呼ばれる黒神めだかですら及ばない域に達しているのだ。


古賀いたみ
そんな名瀬夭歌と出会ったのが古賀いたみという少女だった。
常人であり、一般人であり、平凡な人生を過ごしてきた彼女はそのありふれた人生を変えるため、あえて己の身体を実験台として名瀬夭歌に捧げた。
“異常”に対する“異常”な憧れだけが“異常”なただの女の子。
だが、だからこそ古賀いたみは名瀬夭歌の非人道的という言葉すら生温い人体改造を耐え切ることができたのだ。


その古賀いたみの身体スペックは、途方も無いハイスペックである。
彼女は箱庭学園生徒会長黒神めだかを“圧倒”した。

亜音速で動き、100kgの鉄球が頭頂部に直撃してもケロリとし、果ては箱庭学園そのものを引きずる膂力を発揮することができる黒神めだかを“圧倒”したのだ。

例えそれが人格を失い空っぽのままの黒神めだかであろうとも、その事実は揺らぎない。
ましてやその時の古賀いたみは“ガス欠状態”の身体のままだったのだから本来のスペックなど想像するだに馬鹿馬鹿しい。


そして…都城王土はその古賀いたみの異常《アブノーマル》を“強制的に取り立てた”のだ。


それは、都城王土の特異性《アブノーマル》であり。

それは、黒神めだかですら不可能なことである。

無尽蔵の電力《アブノーマル》、『創帝《クリエイト》』という名の異常《アブノーマル》をもつ都城王土だけが掴むことの出来る答え。


ならば、出来ない訳がない。

目の前にいる白髪紅眼の男は先程、『王の言葉』をベクトルでねじ伏せたのだ。

ならばそれは必然。

ベクトルの反射を異常《アブノーマル》でもって強引に力尽くでねじ伏せることくらい、都城王土に出来ないわけがない。

都城王土はベクトル反射で裏返っていく血液を血管を内臓を上書きするように、“己”の意志でもって“己”の回復力で無理やり塗りつぶしたのだ。


「さっきキサマはこう言っていたな? ここが行き止まりだと」


紅い煙が都城王土の身体から湧き立っていた。
それは破壊と再生の繰り返しで極限まで酷使された細胞が発火寸前まで熱をもち、付着している血液を次々と蒸発させたものだ。


「確かに…過去の俺は王道を踏み間違えた。 行き止まったのだ」


都城王土の胸に飛来するは己が手を地につけて己が非を認めたときのことである。


.

「だが」


それでもこの男は、都城王土は立ち止まらない。


「今の俺が進むは“王道”ではない。 “覇道”だ。 ならば俺の“覇道”に行き止まりなどあるわけがなかろう」


こいつの馬鹿さ加減はどこかのヒーロー気取りの三下かよ、と一方通行は思いながら可笑しそうに笑った。

「ハッ! そいつァ随分とまァ大層な道だなァおい!」

そう背で返事をして。

ようやく一方通行は気付いた。
いつの間にか身体に自由が戻っていたのことに。

「おいテメエ… 何考えてやがンだァ?」

ゆっくりと、振り向きながら一方通行がギョロリと都城王土を見据える。
その視線を受けて都城王土はゆっくりと拳をかざした。


「言ったはずだろう?  俺の“覇道”に行き止まりなどないのだ」

つまりそれが意味することは。


まるで焼き直しのように再度拳を振りかざす都城王土。


「貴様が俺の“覇道”の行き止まりというならばだ。 俺はそれを正面から突破して粉砕して圧潰して押し通るまでのこと」


つまり、それは先程の展開を再度繰り返すということ。

「今の俺をさっきまでの俺と思うなよ? 俺は常に進化しているのだ。 もはや俺ですら今の俺がどこまでいけるか定かではないのだ」

笑いながら都城王土が拳をギシリと握る。
どれほど威力があろうとも反射膜が破られるはずがない。

「カカカカッ! 上ッ等じゃねェかァ!!!」

だというのに、一方通行は心地良い爽快感を感じていた。

首筋からは小さな電子音が聞こえる。
その音が意味することはとっくのとうに判っている。

そう、バッテリー切れだ。

脳の演算機能を外部に頼っている一方通行はチョーカー型の補助演算装置のバッテリーが切れれば、反射どころか歩くことすらままならなくなるだろう。

この男と戦闘を始めて何分たったのだろうか。
3分? 5分? 10分?
もしかすると数秒も残っていないのかもしれない


だが、それでも一方通行は退かない。

もう一方通行は。
アクセラレータは負けるわけにはいかない。

決して負けるわけにはいかないのだ。

脳裏にちらつくのは絶対に守ると決めた少女の影。
その少女と。 そして己に誓うように一方通行が静かに自らの非力さを認める。

「チッ…確かにこのザマじゃあ学園都市最強は返上だわなァ…」

だが、数瞬後、それは反転。
凄まじい気迫と共に一方通行が吠えた。


「けどよォ…それでも俺はあのガキの前じ…ゃ最強を名乗り続けることに決めてんだよォォ!!!!」


目の前の男が全てを押しつぶすというならば。
ならば自分は全てを跳ね返すだけのこと。

もはや侮りはしない。
この男の拳が届かないなどとは思っていない。
例外ならば既に味わっている。
敗北ならば既に経験している。


「…なるほど。 その気迫ならばわざわざ“俺の言葉”を解く必要など無かったな」

一方通行を見て感心したように都城王土がそう呟いた。


.

「名乗れ。 そして覚えておけ。 俺が、俺こそが都城王土だ」

相手を侮っている笑みではない。ただ己の好敵手に対してそう都城王土が自分の名を告げた。
それを聞いて、立ち向かっていた一方通行は満面の笑みを浮かべる。

「カカカッ! 一方通行《アクセラレータ》って呼んでくれよなァ! 王ォォォォ土くゥゥゥン!!!」

それを聞いて都城王土が満足そうに頷いた。

「なるほど。 いい気概だ。 どれ…歯を食いしばれよ“一方通行《アクセラレータ》”。 俺の拳が貴様の心の臓腑に届けばそれで全ての終わりだぞ?」

ギシリと神鉄のように固く固く拳を握りしめる都城王土。


「敬意を持って貴様の全てを簒奪してやるからありがたく思え」


それに相対した一方通行は両の手を広げ、大地を踏みしめる。


「いいぜェ…… 俺を打ち破るっつーなら…俺から全てを奪うっつーなら…」


先程まで浮かべていた歪な笑みではない。 まるで子供のように目を光らせて一方通行が吼えた。


「今俺がァ!テメエのその思い上がった幻想をブチ壊してやンよォ!!!」
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