中井秀雄のレポート

「闇の子供たち」を読んで

闇の子供たち
梁石日(ヤン・ソギル)
幻冬舎文庫

私は今回、「闇の子供たち」という本を読んだ。この本では主にタイにおける幼児の裏側が書かれている。幼児売買や幼児売春に焦点が当てられ、非常に心に訴えかける作品であった。この本によると現在タイではストリート・チルドレンの増加、貧困層の収入源のための幼児売買の横行により行くあてのない子供や、餓えている子供が大変増加しているとのことだ。本作ではこのような子供が主人公になっている。話はある一家の少女が家族によってマフィアに売られるところから始まる。少女は幸せに暮らしていたのだが家族によってある男に売られてしまう。少女は男のことを最初はニコニコしており大変雰囲気のいい男と感じていたものの売られた瞬間に暴力を振られてしまう。この時少女はとてつもない恐怖に駆られたと思う。親は目の前で実の娘が暴力を振られているにも関わらずこれを黙認してしまう。そして少女を売ったお金でテレビや冷蔵庫を買ったのである。私は自分の娘がこれから辛い生活を強いると知っておきながら売りそのお金で家電製品を買うとは信じられなかった。娘と家電製品の重みは計らずとも分かることであり、命より機械を優先させてしまうことに驚いた。同時にお金を得るためなら実の子供さえも商売の道具とし、人として扱ってあげないその世界観に恐怖を覚えた。しかし、そうまでしないと生活できない貧しさゆえ仕方がないことだとも思ってしまった。このようなことがタイでは日常茶飯事に起こっているのだ。同じ地球なのにここまで日本と違い、また価値観が違うことに私は衝撃をうけた。売られていった子供は売春宿につれていった。そこで女の子は宿の地下に監禁されてしまう。女の子は商売できるようにひどい調教をされてしまう。泣き声をあげればタバコの火で焼かれ、なにか刃向えばぶたれるなどの暴力をうける。余計な感情は殺され恐怖だけを植え付けられるのだ。そして大人たちにいいように使われてしまう。しかし子供達は生きていくために必死で耐え言うことを聞くしかないのだ。とてもひどいことだと思った。

タイはペドファイル(幼児性愛者)に有名な場所でペドファイルが頻繁に訪れる。子供達は男の子女の子関わらずペドファイルに売春するのだ。一回の売春で約50バーツ日本円で約150円と格安なのである。子供達はまだ自分が何をしているかもよく分からずお金を稼ぐため売春する。ここに子供の人権なんてないと思った。

純粋な子供達を利用し商売をする大人達は非道だと思う。また子供達は恐怖で逆らうこともできず大人の欲望に付き合わされとても可哀そうだと思った。更にひどいことは、当然売春していればエイズにかかる子供もいる。この時点で大人達のモラルに疑いを持つがその子供を、「エイズの子供がいたら店に客が来なくなる」といった理由でゴミ袋にいれゴミ捨て場に捨ててしまうのだ。子供は同じ人間であり生きる権利は当然ある。しかしそれをゴミ同然の扱いをしてしまうことに激しい怒りを感じた。日本では考えられず私もこんなことは考えられない。いくら生きていくためといえ非人道的でありすぎる。貧しさとは凶器であると思った。

この本にはそんな子供達を守ろうと立ち上がった人達がいた。社会福祉センターに勤務する人たちだ。彼女らは子供を救おうと売春宿に監禁されている子供の救出や政府に子供の人権を訴えるなどの活動をした。しかし彼女らの行動は成果に結びつかなかった。国自体の治安が悪く、みんなお金が欲しいと考えているためマフィアが幼児売買をしていると警察が知っていても、マフィアが賄賂を渡せば黙認されてしまうのである。警察も賄賂は貴重な収入源でありお金さえ貰うことができればマフィアとグルになり事実を隠ぺいしてしまうのだ。だから彼女たちが捜査しようとしても警察に妨害されてしまい上手くいかないのだ。政府の高官でさえも他国からの支援金などを自分の懐に収めてしまっている状況である。警察は市民の味方であるべきなのにお金次第で態度を変えるなんて信じられなかった。日本は警察もしっかりしており治安も安定している。裕福な国であると実感した。ストリート・チルドレンを減らそうとしているだけなのだが、警察さらにその上の政府自体変えなければいけないわけで、この問題は思ったよりも根が深くとても重い問題であると認識した。彼女らは常にマフィアに命を狙われ、なかなか前進しなかったが子供達のため諦めなかった。彼女らの勇気は凄く粘り強く頑張っており心打たれるものがあった。彼女らのような心の持ち主が多くなれば貧困という問題も好転していくのではないかと思った。
 タイの子供達は常に死と隣合わせであり、なにも光が見えない生活をしている。逃げようにも逃げる場所がなく全てが敵である。毎日必死に体を張り生きていくために悪環境のなかで働いている。日本では今となっては全く見ない現状であり朝鮮戦争やベトナム戦争といった流血の土台があったからこそ発展できた経済であり、闇に生きる子供達のためもっと支援すべきだとおもった。あまりにも人権などとは程遠いタイの現状を救うべきだと思う。またタイ自身も将来を見通し変わらなければいけないと思った。確かにこれらはすぐできるものでないし、難しいことである。しかし、同じ人間であり誰だって生きる権利は当然、幸せになる権利を持っているはずだ。世界で協力し全ての子供達、全ての人が笑って過ごせるような時代にしたいものだ。

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最終更新:2011年10月26日 11:18