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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」④

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456 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01:57:10.81 ID:PL/4xJCfo

「それじゃ、チャイムも鳴ったしこれで終わりにします」

起立、礼と日直が号令をかけ、小萌先生の退室を見送る。
これで上条のクラスは昼休みに突入した。延長もほとんどなかったので、晴れて昼休みを取れることになったのだが。

「さ、さー昼飯昼飯っと」

シンと静まり返った教室に、白々しく上条の言葉が響く。
昼休みなのだ。もっと、普段ならみんなはしゃぎまわるし、煩くなるはずなのだが。
……明らかに、そういう気配はなかった。

「なあカミやん。さっきは吹寄さんに邪魔されたけど」

トントンと静かな手つきで青髪がノートと教科書を整え、机に仕舞った。
周囲のクラスメイトも、青髪と心を同じくしているらしい。

「姫神さんとの関係について、ちゃんと喋ってもらおか」

コクリと、周囲が頷いて同調した。
遠めに姫神が戸惑っているのが分かった。
そりゃあそうだろう。たまたま知り合いである自分のいる学校に転校してきたからって、
まさかそれだけで好きな男の子を追っかけてきたとか、実は付き合ってるとか、
そういう噂を立てられたら迷惑に決まっている。
ちゃんと、否定するのも礼儀だとは思う。もちろん姫神に興味がない、というわけではないけれども。
……まあ、つい昨日から、興味を持ってはいけなくなったのだった。

「ほらカミやん、黙秘も事実を認めないのも、誰のためにもならへんよ」
「待て。ちょっと落ち着いて話をしよう」
「誰が興奮してるように見えるん?」
「興奮って言うかお前完全に自分の妄想を事実認定してるじゃねーか」
「……まさか、カミやんシラ切るつもり?」

すっと青髪の声に冷たい響きが混じる。
彼女なんているわけねーよ、なんて嘯きながら影でこっそり付き合う男と言うのは、
およそ人として最低の部類に入る。友好的な関係など、結ぶ余地はない。
そんな風に青髪は暗に宣告していた。

「シラを切るっていうか、姫神と付き合ってるって事実は否定しないと、姫神に悪いだろ」
「……」

なっ?と姫神に話を振ると、姫神はつまらなさそうな顔をした。

「確かに私は。この学校を選ぶ時に上条君がいるなんて知らなかった」
「で? 知らなかったけど、同じクラスメイトにまでなっちゃって、
 急激に意識し始めて二人の距離は見る見るうちに……ってことなん?」
「違うよ。別に。その。私は。上条君とはなんでもないし」
「そうだぞ! っていうかそういう変な気持ちなんかお互い持ってないっての!
 そういう邪推をするなよな、なあ姫神」

457 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01:57:46.87 ID:PL/4xJCfo

否定する姫神に便乗して、上条は青髪に食って掛かる。
カップル認定された人間の両サイドから青髪を攻め立てるつもりだったので、
再び上条は姫神にアイコンタクトを送った……のだが。
なんだか、姫神の顔がひどくつまらなそうだった。
表情には乏しいほうだが、それに輪をかけて醒めた感じと言うか。

「……姫神さん?」
「君は。もうちょっと人の気持ちを察する能力を身につけたほうが良いと思う」
「へ?」
「別に。私と上条君とはなんでもないけれど」
「けど、何だよ?」
「なんでもない。それより。もう一度言うけど。上条君と私は。別に付き合っているわけじゃないから」

大きな声ではなかったが、姫神はそうクラス中に伝えるように宣告し、
そして周りの視線を一切無視してお弁当箱を取り出し、昼食の準備を始めた。
いつになく強い姫神の主張に皆はちょっと戸惑ったらしかった。
青髪の煽りに乗せられて騒ぎ始めたクラスメイトだったが、
どうもそれが早とちりらしいということになって、またざわつき始めた。

「またアイツの先走りか?」「青髪を信じるとかお前ゴシップを真に受けるタイプかよ」
「ってことは姫神はまだ相手ナシってこと?」「俺の春到来?」「それはねーわ」
「とりあえず声かけてみようかな」「俺こないだ二三言で会話打ち切られた」「俺も」「俺も」「皆一緒か」
「で、結局上条に彼女ができたって本当か?」「アイツは女子の気を引いといて放置する最悪なヤツだからなぁ」
「もしアイツが誰かと付き合えば空白を縫って俺が」「……止めろよ、そういう甘い期待をすると後が辛いぞ」
「まあ、上条に彼女が出来るとか、ねーだろ」「結局はそうだろうな」「発端は青髪だしな」

空腹は食事以外への興味を薄れさせるいいスパイスだ。
四時間目という時間帯は、むしろ上条に好都合に働いたらしかった。

「で、お前ら。お前昼飯は?」
「ボクはもう買かってあるよ」
「俺は弁当があるにゃー」
「ん、じゃあ俺パンでも買ってくるわ」
「……まさかカミやん、誰かと逢引?」
「っていうかお前はそういう迷惑な噂を撒き散らしておいて開き直るんじゃねーよ!」

きわどい反論をこなすのに冷や汗をかきつつ、上条は自然な素振りで教室を後にする。
姫神はもうそっぽを向いていて視線は会わなかったし、その近くに座る吹寄は、いつの間にかいなかった。
昼に会うことは、朝のうちに約束した事柄だ。
だからこの後上条はこっそりと吹寄と二人きりになりたいのだが、どうやって、それを成すか。

「もっかい教室に戻って、顔を合わせるのは危ないな……」

クラスメイトの視線のなくなった廊下で、上条はそう思案する。
メールか電話で確認しようと思ったところで、大切なことに、気がついた。

「俺……制理のアドレス、知らねーじゃん」

458 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01:58:53.23 ID:PL/4xJCfo

由々しき問題だった。
学生カップルの癖に、互いのアドレスを知らないなんて、間抜けもいいところだ。
携帯が役に立たない以上、自分の足で吹寄を探すほかない、と言うことになる。

「見つかるか……?」

とりあえず、昼ごはんは用意するしかないので購買のパンを買いに行く。
そして腹が膨れる程度に見繕い、上条は吹寄を探してそのあたりをうろついた。

「あいつ、弁当派ではなかったよな」

そして購買にも学食にもいなかった。すでに昼食を買ったのだろうか。
準備のいい吹寄のことだから、その可能性は高かった。
となると吹寄がいるのは、どこだろうか。そのまま、二人であれやこれやをできる場所だろうか。
正直に言って、上条にはその心当たりはほとんどなかった。
無闇に変なところには行かない性分なのだ。何があるかわからないし。
心当たりというか、吹寄と二人きりで過ごした場所と言うと、
保健室か、あの倉庫代わりの教室くらいしかないのだった。
その二箇所をとりあえず当たってみるかと早足になったところで、横から声をかけられた。

「随分と挙動不審に見えるけど? 上条」
「え……先輩?」

廊下の窓際に背中を預け、豊かな胸元の下で腕を組んだ、上条の先輩。
雲川がニヤニヤと上条を見つめていた。
手には上条と同じパンの入った袋が下げられているので、あちらも昼食を買ったところなのだろう。

「先輩、購買のパン食べるんですね」
「珍しい行動なのは認めるけど。時々、この学校臭い垢抜けなさが恋しくなるんだ」
「普通の揚げきな粉パンをそこまで貶しますか」
「愛情の裏返しだよ。何もストレートだけが恋愛のアプローチじゃない」
「はあ」

なんというか、話がかみ合っているようでかみ合ってなかった。
というか常識的な上条の対応に取り合う気がないらしかった。
この聡明な先輩は、おそらくやろうと思えばそんなことは簡単に出来るのだろうが。

「それで、あちこちキョロキョロとしているのはどうしてなんだ?」
「え? いや、まあその」
「……どの女だ?」
「へ? てか先輩! どういう目で俺を見ているんですか」
「どうもこうも、極めて純正でフェアな目で見ているよ。時々悔しくなるがね」
「悔しいってなんでですか」

459 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01:59:26.64 ID:PL/4xJCfo

この先輩は、基本的に上条をブンブン振り回して遊ぶタイプの人だった。
会った瞬間から、なんとなく不安を感じている。
だが、そんな不遜な雲川の態度が、一瞬だけ、揺らいだ。
上条にもなんとなくしか分からない隙だった。

「今日の夜、パーティがあるんだ」
「はあ」
「私には、エスコートしてくれる男性がいない」
「……先輩、もてるでしょ?」
「侍らせたい男にはもてないよ。私は高望みなほうだからな」
「はあ」
「上条。夜は、暇か?」

ニッと雲川が笑う。仮に吹寄がいなくても、断りの言葉は口にしただろう。
そう言う場所が似合う柄じゃないし、先輩のエスコートなど到底こなせないから。
だが、そういう事情に加えて、断らなければならない理由は、ちゃんとある。

「時間は、あります」
「そうか、それじゃ」
「でも、いけません」
「……どうして?」
「雲川先輩とは、なんでもない関係なので、そういうことは出来ないです」
「……」

雲川は、それ以上言い返さなかった。
聡明な人だから、もっと上条を困らせることは出来ただろうけれど。

「お前、落ち着いたな」
「へ?」
「台風に手を突っ込む立場の人間ではない、なんて気取っていたのが莫迦だったのかもしれないな」
「いや、言ってる意味全然分からないんですけど。どういうことですか?」

なんでもないよと雲川は手を振り、なにやら鈍重そうな体つきで、ふらふらと上条から距離をとった。
背中越しにポツリとこぼす。

「恋人のいるお前に、私はそれを言えないよ」
「えっ?」
「吹寄は保健室の前にいたぞ。じゃあな」

ひらひらと手を振る雲川を、上条は呆然と見送った。
吹寄との関係はせいぜい小萌先生くらいにしか、知られていないはずだったのだが。
ハッと我に帰って、吹寄を待たせるわけにも行かないからと上条は早足でそこを後にした。



478 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18:41:17.63 ID:PL/4xJCfo

雲川先輩に言われたとおりに保健室に行くと、部屋の傍に吹寄がたたずんでいた。
こちらにはまだ気付かないらしく、落ち着かない様子で地面を軽く蹴っていた。

「吹寄」
「あ……」

一応人前なので、苗字で呼びかける。
それに気付いたのか、ほっとしたように吹寄の表情が和らいだ。
う、と上条は呼吸を乱した。普段はつっけんどんな顔をしているヤツなのに、
こうして時々見せる柔らかい表情は、なんだか悔しいくらいに可愛いのだ。
自分には勿体無い、と思う。人間、誰しも自分に対する自信というのは持ちきれないものだ。
こんなに可愛い吹寄の、立派な彼氏かと問われると頼りない気持ちになるのもまた事実だった。

「遅くなってごめんな」
「い、いいわよ。別に待ち合わせしたわけじゃないんだから。
 むしろ思ったより早かったくらい。そ、その、どうしてここだと思ったの?」
「え?」

吹寄は、どういうつもりでここに来たんだろう?
怪我をしているわけでもなく、そして昼休みの保健室なんて千客万来もいいところだ。
こんなところで吹寄の胸を吸えるわけもない。

「いやその、さっき吹寄がここにいるって人に聞いたから」
「……」

なんだか、吹寄が期待はずれだと言う顔をした。
そりゃあそうなのだ。なんら待ち合わせ場所を指定していない相手と出会うために、
一番ありえそうな場所として吹寄が選んだのが、ここ、保健室前なのだ。
それは昨日、上条が付き合おうと言ってくれて、ファーストキスをした場所なのだ。
吹寄としては、むしろここ以外の何処で会うのだと言いたかったが、
肝心の上条はゆっくり購買でパンなんて買って、自分のことは二の次みたいだったのが気に入らなかった。

「上条は、やっぱり上条なのね」
「え?」
「なんでもない」
「あの、急かして悪いけどここにいると色々困るだろ? その」
「分かってる! ちょっと離れてついてきて。三階にいくから」

ぷいと上条に背を向けて、吹寄は早足で歩き始めた。
その機嫌の悪さに上条は困惑する。
吹寄以外の女の子と親しくしたとか、そういう理由で怒られるのならわかるが、
一体自分は、何か悪いことをしただろうか。
不自然にならないように、上条は吹寄の後を追いかけた。

479 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18:41:53.38 ID:PL/4xJCfo

階段を上り、吹寄の姿を探す。
音楽室や理科室の集まる一角の一部、三年生向けの部屋を、吹寄は鍵を使って空けた。
吹寄と上条は、まだお世話になったことのない部屋。進路指導室だった。
特殊教室からはとっくに生徒はいなくなっていて人通りは少ない。
軽く目をしのんで、上条はその部屋に入った。

「お、お邪魔します……」

部屋に入り扉を閉めると、正面に置かれたソファに吹寄が座っていた。
状況によっては保護者も入れるような、ちゃんとしたつくりの部屋だ。

「上条、鍵を閉めて」
「あ、ああ」

不機嫌そうに言いつけられ、上条はそれに従う。
扉も簡素な教室のそれと違い、閉めたら簡単には開きそうになかった。

「ここ、大丈夫なのか?」
「……ここも一応、一端覧祭の資料があるのよ。悪いことはしているけれど、
 まったくあたしに関係ない場所の鍵を借りてるわけじゃないから、大丈夫」

吹寄はそう言って、スカートの裾を直した。
ちょっと座高が低くて、短いスカートなら中が見えてしまいそうなソファだった。
もちろん吹寄は真面目に膝下まであるスカートを履いているので、そういうアクシデントは期待できない。

「えっと、吹寄」
「……まだ苗字で呼ぶわけ?」
「あ、悪い。……制理」
「取って付けられても嬉しくないけれど、まあそれはいいわ」
「俺、何処に座ればいい?」
「勝手にすれば良いでしょ」

気を使って、尋ねたつもりだったのだ。
機嫌が悪いときに近づかれたくないなら、対面のソファに腰掛けてもいいと伝えたつもりだったのだが。
判断を丸投げされてしまった。

「じゃあ、隣に座るな」
「……うん」

不服な態度を崩してはくれなかったが、拒まれないからたぶんこれで正解だったのだと思う。
上条が腰掛けるとソファは沈み込んで、吹寄の体を少し上条のほうに近づけた。

「制理」
「何よ」

腕を組んでみると、軽く睨まれた。

「何でそんなに怒ってるんだよ」
「別に怒ってない」
「怒ってないって、いや、そうなのか?」
「知らない」

480 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18:42:45.25 ID:PL/4xJCfo

また、そっぽをむかれる。機嫌が悪いのは間違いなかった。
なんだか、胸の話を振ると怒られそうなので、無難な話題を頑張って探してみる。

「えっと、吹寄が授業終わって出てからさ、姫神との話を、ちゃんとクラスの連中に説明しといた」
「っ! ……なんて?」
「え?」
「どう、説明したわけ?」

真剣な表情で吹寄がこちらを見た。
それに若干うろたえながら、さっきのことを思い出して説明する。

「姫神とは付き合ってないって、言ったんだけど」
「……そう、なんだ」
「いや当たり前だろ? 今俺は制理と、付き合ってるんだし」
「付き合う相手は一人だけって、ちゃんと分かってるんでしょうね」
「当然だ! ってか制理は俺のことどう思ってるんだよ」
「だって! いっつも女子がらみで変な事件起こすでしょうが」
「なんだよその評価。んなことねーっての」
「どうだか。だってそうじゃない。あたしも噂で聞いたことしかなかったけど、
 姫神とは、転校前からの知り合いなんじゃない」
「そうだけど、関係ないって」
「じゃあなんで、姫神はここを選んだのよ。別にウチくらいの学校なんて山ほどあるのに」
「知らないって。別に転校してきてからも特別仲良くしてるわけじゃないし」

姫神と、他のクラスの女子との間に差をつけた接し方はしていなかった。
だっておんなじ友達だし、普通にクラスメイトだし、むしろ変な特別扱いのほうが失礼だ。

「じゃあ、授業中に姫神を見ていたのはどうして?」

潤んだ瞳で、ツンと唇を尖らせて、吹寄は最後にそう尋ねた。
それで、ようやく上条もなんとなく、察せた気がした。吹寄の不機嫌の種を。

「制理」
「何よ」
「姫神と制理って、席近いだろ?」
「ええ」
「俺が眺めてたのは姫神じゃなくて、制理だよ」
「え?」
「いや、当たり前だろ?」

好きな女のことを追いかけてしまうなんて、ごく普通の男の性だと思うのだが。
急に吹寄は慌てて、髪を整えるように手で梳いた。

「も、もしかして授業中あたしのことを見ているわけ?!」
「ああ。やっぱ、綺麗だなって」
「っ!? バ、バカ。恥ずかしいでしょうが」
「じゃあ姫神でも見てればいいのか?」
「駄目!! あっ……」

481 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18:43:29.21 ID:PL/4xJCfo

限りなく素直な本音を、吹寄がこぼした。
そしてそれに気付いて、あっという間に真っ赤になる。
とても、それがいとおしかった。
戸惑う吹寄を、抱き寄せる。

「授業中は、窓の外か、黒板か先生か、制理を見ることにする」
「……まあ、あたしだけを見られても困るけど。でも窓の外は余計でしょ」
「体育やってる女子を見るって意味じゃないぞ?」
「そういうつもりで言ったんじゃないんだけど、何、上条、そういうのを眺めているの?」

迂闊だった。そりゃ体育やってれば女子だろうが男子だろうが見えるので、
自分で言ったことは否定はしづらかった。

「制理の後姿に、今日は釘付けだった」
「な、なんでよ」
「だって、綺麗じゃん」
「……褒めても、何も出ないわよ」
「え?」

何気なく吹寄はそういったのだが、間違いなく、吹寄の胸から出る母乳を上条は吸いに来たわけで。

「……つまらないギャグを言いたいのなら、聞いてあげるわよ」
「いや、いいです」
「まったく、もう」

吹寄が仕方ないと言った風に嘆息した。
どうも、怒っていた態度はちょっと軟化してきたらしかった。

「なあ制理」
「なに?」
「その、昼飯は用意してあるのか?」
「ええ。貴方と一緒で、パンだけれど」

吹寄はスカートのポケットから小ぶりの惣菜パンを二つ取り出した。

「パン食べるのと、制理の胸を吸うのと、どっち先にすればいい?」
「え? べ、別にどちらが先でも良いけれど」
「昼飯食った口で吸われるのはやっぱ嫌だろうし、先に胸吸おうか」
「それは気にしなくていいわよ。別に、貴方に吸われるのを汚いとは全然思わないから」
「ん、まあそういってもらえるのは嬉しいんだけど、実は飲み物を買い忘れてさ。
 食べ終わった後、あんまり口の中がスッキリしないまま吸うことになるし」
「ウェットテッッシュがあるから、それは本当に気にしなくていいんだけど」

なんだか吹寄の言葉が歯切れが悪かった。
そういえば、吹寄も飲み物がないらしかった。
……そして、よくよく考えれば、吹寄の胸からこぼれるそれは、まぎれもなく液体なわけで。

「と、当麻。まさか」
「いやいやいやいや! さすがにそんなことは考えてない!」

胸を庇うようにした吹寄の仕草で、何を疑われたのかすぐに上条は理解した。
いくらなんでもそれは変態的すぎる。

「じゃ、じゃあどっちからするつもりなのよ」
「どっちでも俺は構わないけど……」

気の強い吹寄のために選択権を遺しているつもりの上条なのだが、
そういう気遣いは必ずしも必要ではないらしかった。
一瞬、無言の空白がさし挟まる。
先導して決めてやるかと、上条が心に決めて口を開こうとしたところで。
くうっと、吹寄のお腹が可愛らしく鳴った。

「あ」
「……昼飯にするか」
「……うん」

ちょっと恥ずかしそうな吹寄の髪を撫でてやって、上条はパンの入った袋の口を開いた。


520 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18:57:39.98 ID:lC4lpcXqo

ガサガサとビニール袋がムードのない音を立てる。
二人っきりの部屋で、無言で出来合いのパンを開ける時間は、なんだかちょっと居心地が悪かった。

「制理」
「え、何?」

上条が呼びかけると、吹寄が手を止めて振り向いた。
吹寄もなんだか自分と同じような表情をしているのを見て、上条はようやく何が腑に落ちないのか理解した。

「キスしよう」
「へっ?! ちょ、ちょっといきなりどうしたのよ」

上条がまさかそんなことを言うなんて、という顔を吹寄がした。ごもっともだ。
確かに自分も今しがたまで考えつかなかった。

「だって、二人っきりになれたんなら、やっぱそういうことしたいって思うんだけど、だめか?」
「嫌なんてことはないわよ。ただ、びっくりしただけで」
「制理」
「あっ……とう、ま」

二人並んで腰かけたソファの中で、絡まるようにして二人で抱き合う。
吹寄を初めて抱きしめたのは、まだ24時間前にもならない。だけど随分、慣れてきた自分がいた。
吹寄も上条に体を預けるのに慣れてきたらしく、すっと吹寄の体が上条の胸の中に納まった。
頬に、手を添える。

「あ……」
「好きだ」
「本当に?」
「こんなところで嘘つけるほど、器用じゃない」
「……うん。それは、信じてあげる」
「なんか色々信用されてないのが納得行かないけどな」
「だったら、もっと信用させてよね」
「お、おう」
「大好き」

拗ねたような吹寄の顔が、言葉を重ねるごとに柔らかくなるのが可愛らしかった。
顔を近づけると、吹寄が目をつぶった。

「ん……」

唇を重ねる直前で、上条は顔を近づけるのを止める。
いつまでたってもキスがこないで不安になった吹寄が、そっと目を開けた。
その顔に、ニッと笑いかける。

「ねだる顔、可愛いな」
「えっ?! ちょ、ちょっとやめてよ。もう、なんで」
「意地悪してごめんな」

不意打ち気味に上条はキスをした。
吹寄は警戒してか、今度は目をつむらなかった。

「んん」

鼻で、そっと息をする。
唇をわずかに擦らせながら、上条は吹寄の肩にかけた手を、撫でるように下におろしていく。
鎖骨に触れると、吹寄の体が震えた。

「ん、ぁ……」

521 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18:58:26.43 ID:lC4lpcXqo

たっぷりとしたボリュームの胸に、上条は手を伸ばす。
救い上げるように掌で包み込むと、しっかりとした重みと張りが手に伝わった。
ひととおりその感触を楽しんで、手を背中に伸ばす。
あんまり胸ばかりに集中すると、吹寄は不満な顔をするのだ。

「はぁ、ぅ」

吹寄が、心の中に残していた最後の緊張をほどいて、くたりとなった。
大きく背中をなでてやると、安心してそうなるらしかった。
四度目のこういう機会で、ようやく吹寄の体のことが、わかり始めていた。
吹寄の手が、安定を求めて上条の腕から肩を這う。

「制理。首に」
「……うん。ありがと」

キスをやめて、短くそう伝える。そしてすぐにまた唇を重ね合わせる。
ちゅ、ちゅ、と水音が狭い部屋に静かに響く。
昼休みを謳歌する学生達の喧騒が遠くなって、本の古くなったような匂いがするこの部屋で、
上条は吹寄の体と唇に、夢中になった。
ソファの軋む音と、二人の服が擦れ合う音と、そして吹寄の熱っぽい吐息。
舌を絡めると、吹寄の呼吸がリズムを見失って、不安定になった。

「可愛い」
「ふぁ、あ……」

吹寄は返事をしなかった。ただ、漏れる声に喜色が混じったのが分かる。
髪を撫でながら、しばらく上条は吹寄の口の中を堪能した。

「当麻……」
「昼飯前に、ちょっとやりすぎたか?」
「べ、別に、そんなことない」

ツンと尖った態度をすっかり軟化させて、切れ上がった目のすみが柔和になってしまった。
その吹寄の状態に、嬉しくなる。人前でさらけ出さないようなところを、見せてくれるのが嬉しい。
もう少し、可愛がりたいと上条が考えたところで、もう一度、吹寄のお腹が可愛くなった。

「あ……」
「ごめん」
「何で謝るのよ」
「恥かかせただろ。まあ、俺は気にしないけど」
「うん……雰囲気壊してごめん」
「そんなことないって。ほら、とりあえず食べよう」
「そうね」

吹寄に、袋からパンの頭を出して差し出してやる。
いつもからそうだったかは覚えていないが、小さく吹寄がパンにかじりついた。
上条も自分のパンにかぶりつく。二人して無言の時間が、生じた。

522 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18:58:59.69 ID:lC4lpcXqo

「……」
「……」
「う、美味いか?」
「え? まあまあ、かしら」

なぜかは分からないが、上条も、そしてたぶん吹寄も緊張していた。
別段学食のパンなど飛び切り美味しいわけでもないが、それにしても今日は味がしなかった。
なんというか、食べにくい。理由を考えると、そういえば口の中がカサついていた。
唾液の出が悪いのは、緊張の証拠か。

「なあ制理」
「え?」
「なんか、変に緊張しないか?」
「あ……当麻、も?」

どうやら思いは同じらしい。そうと分かると、途端にほっとした。
上条は吹寄を抱き寄せる。

「えっ?」
「食べながらで行儀悪いけど、なんかこの方が落ち着ける気がする」
「あ……ぅ」
「やっぱ嫌か?」
「ううん。そんなことない。なんか、そう言われて納得した自分がちょっと悔しかっただけ」

吹寄も、口の中にちょっと味が戻ってきたのを実感していた。
変な話だ。全くもって。
普通にパンを食べているより、上条に撫でてもらいながらのほうが、美味しいなんて。
そうやって目を瞑って、油断していたのが悪かったのか、
ちょっと面白がったような声の上条に、声をかけられた。

「制理」
「え?」
「あーん」
「えっ? ちょ、ちょっと」
「いらないのか?」

目を開けると、上条が吹寄の口元に自分のパンを差し出していた。
気を使っていないからなのか、それとも狙ってなのか、
ちょうどそこは、上条が齧って歯型をつけたところそのまんまだ。
そりゃあ、直接キスをしているわけで、今更こんなことで戸惑う必要もないのだが。

「もしかして、恥ずかしい」
「っ! べ、別になんでもないわよ、こんなの」

ニヤッと笑う上条を睨み返して、吹寄はそのパンに、口をつけた。
歯を立てて噛み切ると、そこそこ柔らかいパンの触感と、フィリングの味が口に広がった。

523 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18:59:42.16 ID:lC4lpcXqo

「美味いか?」
「ま、まあ普通でしょ。購買のパンなんだし」
「そりゃそうだけど。ほら、制理」
「ん?」
「俺にはくれないのか?」
「……コレが狙いで、やったんでしょ。変態ね」
「べ、別に普通だろ。俺と制理は、恋人同士なんだし」
「う……」

なんだか、むずがゆい。
そういう関係を、上条に歓迎されていると実感できるのは、嬉しい。
だけど、恥ずかしい。ストレートに言われると、顔が火照ってしまう。

「俺にもくれよ、制理の」
「……うん」

吹寄は内心で、ちょっとした冒険に出ようかと逡巡していた。
これくらい、恋人同士なら、その、普通よね。
手に持ったパンを差し出すことくらい、わけはない。
だけど、もうちょっと、その、恋人らしいのも、ありかな。
……いい、わよね。

「制理?」

吹寄は、手に持ったパンを、自分の口に持っていって、小さく齧った。
そして、無視されたのかと戸惑う上条に向かって、唇を差し出した。

「え?」
「ん」
「いやだから」
「ん!」

説明なんて、したくない。そんなの恥ずかしくて出来ない。
だから、分かって欲しかった。
手で食べさせてあげるんじゃなくて、口移しをしようとしているのだ、と。
すぐに上条も察したようだった。ゴクリと、唾を嚥下するように喉が動いたのが分かった。

「行くぞ」
「ん……」

舌の上にパンの欠片を乗せて待っていると、上条が唇を重ね、こじ開け、吹寄の口の中に進入してきた。
その生々しい感触に、ゾクリとなる。
そっと、上条にパンを渡すために、舌で口の中のパンを押した。
すぐに上条の口が、それを引き込むように、うごめく。

「ん、ん、んっ……!」

524 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 19:00:40.39 ID:lC4lpcXqo

普段のキスとも違う感触に、戸惑いという名の快感を、吹寄は覚える。
この倒錯的な感じが癖になりそうで、怖い。
上条には問われても絶対に正直になんていえないけれど、
吹寄はこの行為が、嫌いではなかった。

「んっ?! んっ、あ、ふぁ」

突然、上条がパンを引き込んでさらに、吹寄の口の中を犯してきた。
まだ口の中には、吹寄の咀嚼したパンの欠片があちこちに残っている。
それを綺麗に舐め取るように、上条の舌が吹寄の歯や舌を這い回る。

「とう、ま……ぁ。汚いよ」
「どこが?」
「どこ、って……」
「制理の体に汚いところなんてねえよ」
「ふぁぁ、ん」

そんな報告を、耳でされたら、駄目になってしまう。
支えるのが苦しくなって、吹寄は上条にしなだれかかった。
もう、ぐちゃぐちゃなのは口の中だけじゃなかった。
体も絡まりあうような、そんな心持ち。

「ほら、また一口」
「うん……」

今度は上条も、口移しだった。
自分でほお張るには少し大きいくらいの欠片を、吹寄は口に突っ込まれた。
緊張して味が分からないなんて思ったのをすっかり忘れて、
吹寄は陶然となりながらそのパンを味わう。
どこか冷静な脳裏の片隅で、もう二度と、このパンを今まで見たいに何気なく食べることは出来ないかも、なんて考えていた。

「半分くれ」
「え? あ、ん」

上条がまた、吹寄の口の中からパンを奪い取った。
もう咀嚼しかけで、吹寄の唾液と混ざり合って原型のないものだ。
そんなものを分け与えることが、欲しがられることが、たまらなかった。
口から少し、濡れた破片がこぼれた。それを上条が、舐め取る。

「ん……」
「制理の顔、すげえ蕩けてる」
「馬鹿ぁ……! あなたが、変なことをするから」
「俺のせいか?」
「どう考えてもそうでしょ」
「じゃあ責任取らなきゃな」
「うん……取ってよね。あっ」

上条が、再びパンの交換を始めた。
どちらかが噛んで、どちらかに渡し、そしてまたそれを返してもらって。
そんな行為を繰り返す。酷く時間の掛かる昼食だった。
そして食事というのは食欲を満たすための行為なのに、いつの間にか、
それをしながら、上条に胸をやわやわと弄ばれていることに気がついた。

525 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 19:01:28.68 ID:lC4lpcXqo

「ん、ふ、はぁん」

食べながらのせいで口を開けないから、必然、鼻から息がこぼれることになる。
それを聞いて、上条はおかしくなりそうだった。
あまりに、色っぽい。このまま、もっと先に行きたくなる。
少し腹が満ちて、食欲より性欲に流されそうな自分を、上条は自覚していた。

「胸、触っていいか?」
「……いいよ」
「素直だな」
「だって。責任、取ってくれるんでしょう?」
「理由になってない気がするけど」
「もう。じゃあ、断って欲しいの?」
「いや。ごめんな、意地悪いって」
「本当に、意地悪すぎるわよ。それにこんな変態行為をして……」
「嫌がることは絶対に、しないから」

そう言うと吹寄はそっぽをむいた。
だって、今していることに異を唱えないのは、吹寄自身が嫌がっていない行為だと言うようなものだ。
制服とキャミソールをたくし上げ、上条は、ぷつんとブラのホックを外した。
先端が少し濡れていた。そしてそれ以上に。

「堅くなってる……」
「馬鹿。い、言わないでよ……」
「自覚はあったのか?」
「知らない!」

天邪鬼すぎる態度は、正直者と同義だった。
ブラに触れて、濡れ具合を確かめる。幸いこの後吹寄が不快になるようなことはなさそうだった。
だからつい、上条は、問いかけてしまった。
……だから、という言葉にはたぶん論理的な整合性は全くない。

「吸っても、いいか……?」
「え?」

ぼんやりと、吹寄がテーブルを眺めた。
まだ、パンは残っている。

「それって、まさか」
「……さっきは、やらないって言ったけど」
「嘘」
「あ、嫌だったら、しない」
「……」

吹寄は、困った顔で上条を見つめた。現れたのは、明確な拒否とは、違う何か。

「ね、当麻」
「ん?」
「もう一口、当麻の、くれない?」
「あ、ああ……」

適当にパンを齧って、少し噛んで崩して、吹寄に与える。
小鳥のようにそれをせがんで、受け入れる吹寄が可愛い。

「貴方が、したいんなら」
「え?」
「し、しても別に怒らないわよ……」
「え? い、いいのか?」
「だ、だって! 恋人同士なんだもの。しょうがない、じゃない」

積極的にやりたいわけではない。だけど、いやと言うほどでもない。
上条が望むのなら受け入れてあげたい、そう言う感じの、表情だった。
目を見つめたまま、クリッと吹寄の乳首を捏ねる。

「んっ……馬鹿。恥ずかしい」
「じゃあ、飲ませてもらうな?」
「うん……」

吹寄が、自分の制服を、上条のためにそっとたくし上げた。


569 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/05(水) 22:04:02.20 ID:kQLeaVLRo

一応マナーかな、と思いながら上条は自分の口の中の食べかけをさらうように嚥下する。
水がないから完璧ではないが、ちょっときれいにしたその口で、
そろそろ見慣れつつある吹寄の乳首に吸い付く。
なんの因果か同年代や妙齢の女性の裸をうっかり見てしまうことがたまにある上条だが、
吹寄の乳房は、綺麗だと思えた。誰と比べてというほど、ほかの女の子のはあんまり覚えていないのだが。
たっぷりとした重みがあって、ちょっと張った感じがして、だけど手で包み込むと柔らかい。
乳首は、もしかしたら普通より大きめかもしれない。実際には普通というのを上条は知らないが。
色あいもヴァージンライクな、可愛らしい色だった。
そして口に含むと、優しいミルクの味がする。

「んっ……」

吹寄は上条の与えるその感触に、ずいぶんと素直に反応するようになった自分の体を、
受け入れ始めているところだった。
触れる直前の、上条の吐息でひんやりする感じ。
そして舌が触れた瞬間のぬるりとした感じ。
最後に、胸の先っぽを口でしっかりと包まれた、暖かい感じ。
そしておまけの、自分の体から母乳が染み出ていく感じ。
そういうのを感じると、無性に吹寄は上条の頭を抱きたくなる。

「美味い」
「もう、報告しなくていいの」
「制理。ほら、パンくれよ」
「え?」

上条に、パンを手渡される。口元に持っていけばいいのかと思って差し出したら、拒まれた。

「そうじゃなくて、パンは口移しで、さ」
「あ、うん……」

仕方がないので、上条の言うとおりにする。
ちょっとくらい噛んで崩したほうが喜んでくれるかなと思いながら、咀嚼する。
だが時々脳裏に走るピクンとした快感の波のせいで、味に集中できない。
執拗に、上条が乳首を責め立てるからだった。

「あ……」

無言で、上条が乳首からそっと口を離した。そしてニッと吹寄に笑いかける。
そっと、そのまま唇が吹寄の唇に重ねられた。

「んん……」

とろとろと、温かいものが口に流れ込んできた。味が付いていて、唾液じゃないとすぐに気づいた。

「んぅ?! ん、ん!」

素早く、上条が吹寄の口の中でそれをかき回し、パンに含ませた。
食べ合わせは、悪くない。悪くないのだが、さすがにこれは背徳的もいいところだろう。
女の子に、自分の母乳とパンを合わせたものを、食べさせるなんて。

「んー!」
「制理はいらないか?」
「ん!」

避難を込めて鼻声を出したら、軽く笑いながら上条が吹寄の口の中からパンを吸い上げ、平らげた。

「スゲー美味い昼飯だよな」
「馬鹿、馬鹿じゃないの。さすがにあたしもこんなの、喜べないわよ……」

というか彼氏がドの付く変態だと悟って付き合いを考え直してもいいレベルだと思う。

「嫌、だったか?」
「……大丈夫。吸ってもらっているんだし、別に怒るほどのことじゃなかったし」
「なら、いいんだけど」
「でも、その、ごめん。やっぱり自分のはあんまり味わいたくないっていうのが本音なのよ」
「そっか。ごめんな。それじゃ最後のやつみたいなのは、しないから」
「うん。だからその」
「続きをすれば、いいよな?」
「お願い、します」

なんでかわからないけれど、すごく従順な感じで、吹寄はそう上条にねだってしまった。


579 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/10(月) 10:26:40.60 ID:GlGOmDEHo

ぐっと、上条が強めの力で吹寄の肩を引き寄せた。その強さに、ドキリとする。

「まだ、パン食べられるか?」
「え? うん、なんだかかなりお腹いっぱいになっちゃったけれど、まだ大丈夫」
「そっか。じゃあ、ちょっと俺にもくれよ」
「うん……」

言われるままに、パンの残りのかけらを口に入れて、噛んでいく。
上条に食べてもらうために、自分の唾液をパンに含ませながら、形を崩していく。

「ん、ん……」

ピリッと背筋に暖かい電気が走る。上条が、乳首を舐めたせいだ。
吸うのは吹寄からパンをもらってから、ということだろう。

「ほら、くれよ」
「ん……ちゅ」

舌で、口の中にあるものを、上条の口の中に運び入れる。
貪欲に吸い込むのを、吹寄は可愛らしいと思った。
機嫌を伺うように髪を撫で、上条が、すっかりツンとなった吹寄の乳首を、口に含む。

「ふあ、ん!」
「……声、可愛いな」
「?! ば、馬鹿」
「声の大きさには、気を付けないとな?」
「別にそんな、大きな声とか」
「ま、外がうるさいから大丈夫だろうけどな」

なんて、意地悪なんだろう。
上条のせいで、自分はこんなふうになってるのに。
悪いのは、全部上条なのに。

「可愛いよ。制理」
「うん」

優しくされると、なんだか強く言えないのだ。
コクコクと鳴る上条の喉を見ていると、なんだかまあいっかと思ってしまうのだ。
惚れた弱みっていうのは、こういうのを言うのかしらと思いながら、
吹寄は静かに、上条の為すがままに逆らわなかった。


581 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/10(月) 11:59:45.92 ID:GlGOmDEHo

「……り、制理」
「え……?」

ふと、呼びかけられる声で、吹寄は意識を浮上させた。
それで気づく。いつの間にかうつらうつらしまっていたことに。
たぶん、上条が髪を撫でてくれたせいだった。

「何時?」
「ん? あと5分で昼休み終わり」
「えっ?!」
「どうかしたか?」
「あ……」

たぶん、10分くらい寝ていたのだろうと思う。
好きな人に撫でてもらって眠るというのは悪くないことだが、
限られた時間を無駄にしてしまったようで、やけに寂しかった。

「ごめん、ちょっと寝ぼけちゃって」
「寝顔見逃したな。寝てるって気づかなくて」
「そうなの?」
「ずっと撫でてくれてたからな」

ありがとう、という感じで上条が微笑んでくれた。
その笑みに、心がきゅっとなるのを吹寄は感じた。
なんだか、嬉しい。自分の行いで、好きな人に喜んでもらえるのが。

「さて、そろそろ教室に戻らなきゃいけないな」
「そっか。昼からも授業があるものね」
「サボるか?」
「バカ。学生が本分を投げ捨ててどうするのよ」
「真面目だな。……で、どっちが先に戻る? できれば制理に先に行って欲しい。
 土御門たちにパン買うって言って出てきたからさ、追求されないようにギリギリで戻るわ」
「うん……」
「制理?」

なんていうか、こういうことを校内でやっているのを見られるのは、困る。
だけど、こんなことをしたあとなのに、まるでなんでもない他人みたいに別れて、
教室でも知らんぷりし合うことになるのが寂しかった。

「一緒に帰ると、怪しまれるよね」
「……そりゃな」
「うん。じゃあ、あたしが先に戻るわね」
「ああ、よろしくな」

すっと、吹寄は名残惜しいような気持ちを断ち切るように、
上条にあずけていた重みを自分に取り戻した。
それだけで、なんだかもう淋しい。

「制理、好きだよ」
「うん。あたしも、好きだよ。当麻」

ごく自然と、二人はくちづけを交わした。
キスをやめないまま、上条が髪を手で梳いて整えてくれた。
はだけたブラも胸へと引き寄せてくれた。パチンと、ホックを自分で止める。
収まりが悪いのはこのあとトイレで直そう。
ぷつんぷつんと上条がボタンを止めてくれるのにドキドキする。

「……」
「……」

二人で、見つめあった。理由ははっきりしなかったけど、タイミングがばっちりとあったのが嬉しかった。

「寂しいな。なんか」
「え?」
「……貴方とこうするのをやめるのが、寂しいって言っただけ。
 聞き返さないでよね。柄じゃないって、私もわかってるんだから」

上条の肩に触れながら、吹寄はソファから立ち上がった。

「それじゃ、戻るね」
「また夜に」
「うん」

そう約束を交わして、昼の逢瀬を二人は終えた。





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